書籍

悪性リンパ腫治療マニュアル改訂第5版

監修 : 飛内賢正/木下朝博/塚崎邦弘
編集 : 永井宏和/山口素子/丸山大
ISBN : 978-4-524-22645-0
発行年月 : 2020年11月
判型 : B5
ページ数 : 406

在庫あり

定価8,800円(本体8,000円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

1998年の初版刊行以来、好評を博している悪性リンパ腫治療の決定版マニュアル。今改訂では、WHO分類改訂第4版(2017年)や学会ガイドラインとの整合性を図るほか、遺伝子検査による診断・予後予測等の発展、治療法の進歩(分子標的治療薬、腫瘍免疫療法)等の反映も行い、最新の内容にアップデート。治療方針を立てるために必要な知識を体系的にまとめた、悪性リンパ腫診療に携わる医師・医療スタッフ必読の一冊。

第I章 治療の前に
 1.悪性リンパ腫の疫学
 2.悪性リンパ腫の分子生物学
 3.生検材料取扱いポイントと実際
  A.臨床側からみたリンパ節生検のポイント
  B.病理組織検査と細胞診検査
  C.免疫組織化学とフローサイトメトリー
  D.染色体・遺伝子・ゲノム検査
 4.悪性リンパ腫病理診断のポイント
  A.WHO分類の概説と今後の方向性
  B.低悪性度B細胞リンパ腫・マントル細胞リンパ腫の病理診断のポイント
  C.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・バーキットリンパ腫の病理診断のポイント
  D.T/NK細胞リンパ腫各疾患の病理診断のポイント
  E.ホジキンリンパ腫の病理診断のポイント
  F.反応性リンパ性病変とリンパ腫の鑑別のポイント
 5.病期診断
 6.予後予測因子と予後予測モデル
 7.リンパ腫診療・研究とインフォームド・コンセント/セカンドオピニオン
第II章 悪性リンパ腫の治療手段と有害反応対策
 1.化学療法
  A.リンパ腫治療に用いられる抗がん薬と併用療法の考え方
  B.化学療法による血液毒性と感染症対策のポイント
  C.化学療法による非血液毒性と対策のポイント
  D.腫瘍崩壊症候群への対策
  E.ウイルス性肝炎への対策
 2.放射線療法の実際と最近の進歩
 3.抗体療法
 4.抗体療法以外の分子標的治療
 5.免疫療法(CAR-T療法,BiTE療法を含む)
 6.造血幹細胞移植の適切な施行対象と施行時期
 7.自家造血幹細胞移植併用大量化学療法
 8.同種造血幹細胞移植
 9.無治療経過観察(watchful waiting)
 10.悪性リンパ腫治療後の晩期障害と二次がん
第III章 悪性リンパ腫−治療の実際
 1.病型別治療方針−標準的治療,研究的治療
  A.濾胞性リンパ腫
  B.粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫とその他の辺縁帯リンパ腫
  C.慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
  D.リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症
  E.マントル細胞リンパ腫
  F.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
   1)限局期
   2)進行期
  G.バーキットリンパ腫
  H.末梢性T細胞リンパ腫
  I.成人T細胞白血病・リンパ腫
  J.節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型
  K.リンパ芽球性リンパ腫
  L.ホジキンリンパ腫
  M.治療上特別な配慮を要する疾患
   1)high-grade B-cell lymphoma
   2)皮膚のリンパ腫
   3)中枢神経系のリンパ腫
   4)眼付属器のリンパ腫
   5)消化管のリンパ腫
   6)精巣のリンパ腫
   7)血管内大細胞型B細胞リンパ腫
   8)HIV関連リンパ腫
   9)免疫不全関連リンパ増殖性疾患(HIV関連を除く)
 2.治療レジメンと治療遂行上の注意点
  A.非ホジキンリンパ腫
   1)CHOP/R-CHOP療法
   2)bendamustine/bendamustine-R療法
   3)CVP/R-CVP療法
   4)DA-EPOCH/DA-EPOCH-R療法,EPOCH/EPOCH-R療法
   5)CODOX-M/IVAC,R-CODOX-M/R-IVAC療法
   6)hyperCVAD/MA,R-hyperCVAD/R-MA療法
   7)VR-CAP療法
   8)RT-2/3DeVIC療法
   9)GDP/R-GDP療法,gemcitabine/gemcitabine-R療法
   10)CHASE/CHASER療法
   11)ICE/R-ICE療法
   12)ESHAP/R-ESHAP療法
  B.ホジキンリンパ腫
   1)ABVD療法
   2)A-AVD療法(brentuximab vedotin併用AVD療法)
   3)増量BEACOPP療法
  C.成人T細胞白血病・リンパ腫
   1)VCAP-AMP-VECP(mLSG15)療法/mogamulizumab併用mLSG15療法
 3.分子標的治療薬の使用の実際
  A.抗CD20抗体薬(rituximab,ofatumumab,obinutuzumab)
  B.ibritumomab tiuxetan
  C.mogamulizumab
  D.brentuximab vedotin
  E.nivolumab,pembrolizumab
  F.romidepsin,pralatrexate,forodesine
  G.ibrutinib
  H.lenalidomide
  I.CAR-T療法
 4.治療効果判定の実際と注意点
 5.リンパ腫診療におけるFDG-PETの役割
第IV章 高齢者,小児,合併症を有する患者の悪性リンパ腫
 1.高齢者の悪性リンパ腫
 2.小児の悪性リンパ腫
 3.合併症・臓器機能障害を有する悪性リンパ腫
第V章 新薬開発,臨床試験のあり方
 1.がん臨床試験による標準治療変革とJCOGの活動
 2.JCOG リンパ腫グループによる多施設共同研究
 3.適応外医薬品を用いた臨床試験
 4.悪性リンパ腫におけるゲノム医療の現状と可能性
 5.プレシジョンメディシン時代における新たな臨床試験の枠組み
付録
レジメン名と使用薬剤一覧表
索引

改訂第5版の序

 この度『悪性リンパ腫治療マニュアル(改訂5版)』(以下、今版)を皆様にお届けすることになった。
 『悪性リンパ腫治療マニュアル』は、1998年に当時藤田保健衛生大学教授の平野正美先生と国立がん研究センター中央病院の飛内賢正先生により初版が出版されて以来、継続的に版を重ねてきた。その後、堀田知光先生(現国立がん研究センター)、木下朝博先生(現愛知県赤十字血液センター)、塚崎邦弘先生(現埼玉医科大学国際医療センター)が編集に加わられた。改訂第4版(前版)は2015年の出版であり、5年を経ての今版の出版となる。今版では前版の編集者の飛内先生、木下先生、塚崎先生を監修、永井宏和(国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター)、山口素子(三重大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科)、丸山 大(国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科)を編集とし、新たな編集体制になった。
 悪性リンパ腫の診断・治療は、膨大な研究のもと、日進月歩である。
 病理診断に関しては2017年に『WHO分類改訂第4版』が出版され、臨床上重要な疾患単位がいくつか独立して記載された。また、遺伝子変異の診断は病理解析に包括されてきている。これらについては「第I章 治療の前に」に詳述している。
 最近の抗体薬、低分子薬などの新規薬剤の開発は著しく、多くの薬剤が臨床で使用できるようになった。CAR-T療法などの免疫療法が登場したことも大きな変化である。「第III章 悪性リンパ腫−治療の実際」で、標準療法に加え、これら新しい治療法も盛り込み、充実した内容となっている。また、薬剤有害反応とその対策については「第II章 悪性リンパ腫の治療手段と有害反応対策」や「第III章」の該当項目で触れており、この内容は臨床現場で役立つことが期待される。
 私たち医療者が取り組んでいかなければならない臨床研究の役割は大きくなっている。「第V章 新薬開発、臨床試験のあり方」では、それら臨床研究の意義を、標準療法の確立、新薬開発、プレシジョンメディシンなどのおのおのの切り口でまとめたが、今後のリンパ腫臨床研究の方向性を考える上で参考になると思われる。
 今版が、医師のみならずさまざまな医療スタッフにとって実際の診療で役立つ一冊となり、リンパ腫患者の診療の向上につながれば、著者・編集者・監修者にとって大きな喜びである。皆様のご要望があったからこそ、この企画が20年を超えて継続していると考えている。今版に対しての皆様からのご意見を歓迎する。ブラッシュアップされた次版に向け早速準備する所存である。

2020年10月
永井宏和
山口素子
丸山大

 『悪性リンパ腫治療マニュアル(改訂第5版)』が発刊された.20年以上の歴史をもつロングセラーシリーズである.「治療マニュアル」という名称ではあるが,内容は悪性リンパ腫の疫学から始まり,病因,分子病態,診断,分類についてもわかりやすくまとめてあり,支持療法を含めた治療の詳細はタイトル通りきわめて充実している.さらに,悪性リンパ腫を対象とする臨床試験についても触れられるなど,治療を軸として記載されている悪性リンパ腫の教科書ともいえるだろう.
 悪性リンパ腫領域ではゲノムレベルでの病態解析とそれに基づいた病型分類が急速に進んでいる.病型,病態に合わせた化学療法レジメンの開発とともに,多数の分子標的治療薬,細胞療法の開発,導入が続いている.悪性リンパ腫治療はこれらの組み合わせとして構成されており,多数の治療方法のなかから,エキスパートによる適切な治療レジメン選択とその精緻なマネジメントが必須の造血器腫瘍領域となっている.
 今回,本書の病型別治療方針では代表的な悪性リンパ腫12病型に加えて,特別な疾患として9種のリンパ腫が取り上げられており,治療レジメンとしては非Hodgkinリンパ腫に対して12レジメン,Hodgkinリンパ腫に対して3レジメンが記載されている.さらに,成人T細胞白血病・リンパ腫についても2種類のレジメンが加えられている.すなわち,20を超える病型(疾患)ごとに,17の治療レジメンをどのように使い分けるか,が悪性リンパ腫治療の重要な選択となっていることがわかる.さらに分子標的治療薬,細胞療法がこれに加わる.現場では,患者ごとに合併症,全身状態などを考慮して投与できる薬剤を選択し,投与量が調節されており,リンパ腫治療の幅広さ,奥深さがよくわかる.この治療マニュアルでは,このような複雑な治療の現場がどうしてつくられてきたのか,そういった基本的な考え方,化学療法に伴う合併症への対処,悪性リンパ腫に対する放射線治療の基本,分子標的治療薬の総論など,治療レジメンのみではなくその周辺についても解説されている.
 本書では治療の実際として,病型別の治療方針(標準治療と研究的治療),治療レジメンごとの詳細な説明,さらに分子標的治療薬それぞれの解説がなされており,病棟で主治医として悪性リンパ腫治療を施す際に,実臨床の現場ですぐに役立つよう書かれている.そればかりでなく,担当する疾患(病型)ごとに,選択した治療レジメンごとに,また薬物についての解説に目を通すことで,担当する患者さんの治療を多方面から学ぶことができるようになっている.
 患者さんを担当する,とくに若手の血液内科医にとって大変役立つ悪性リンパ腫の治療の手引きであり,本書の読者のなかから将来この分野で活躍するエキスパートが出てくることを期待したい.

臨床雑誌内科127巻4号(2021年4月号)より転載
評者●長崎大学原爆後障害医療研究所 教授 宮ア泰司

9784524226450