NAFLD/NASH診療ガイドライン2020改訂第2版
編集 | : 日本消化器病学会・日本肝臓学会 |
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ISBN | : 978-4-524-22546-0 |
発行年月 | : 2020年11月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 120 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
サポート情報
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2021年01月27日
日本肝臓学会ガイドライン統括委員会の利益相反
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本消化器病学会・日本肝臓学会の共編による診療ガイドライン。Mindsの作成マニュアルに準拠し、臨床上の疑問をCQ(clinical question)、BQ(background question)、FRQ(future research question)に分けて記載。CQではエビデンスレベルと推奨の強さを提示。NAFLD/NASH診療における、疫学、病態、診断、治療、予後・発癌・フォローアップ等について、エビデンスに基づき現時点の標準的な指針を示す。
クエスチョン一覧
第1章 疫学
BQ1-1 NAFLD/NASHの有病率に性差は存在するか?
BQ1-2 NAFLD/NASHの有病率は増加しているか?
BQ1-3 NAFLD/NASH有病率の国際比較は?
BQ1-4 小児におけるNAFLD/NASHの有病率は?
BQ1-5 非肥満者におけるNAFLD/NASHの有病率は?
BQ1-6 NAFLD/NASHからの肝発癌率は?
BQ1-7 NAFLD/NASHにおいて肝臓以外の癌の発生頻度は増加するか?
第2章 病態
(1)遺伝的背景
BQ2-1 PNPLA3遺伝子多型は,NAFLD/NASHの発症・進展に関係するか?
FRQ2-1 PNPLA3遺伝子多型以外にNAFLD/NASHの発症・病態進展にどのような遺伝
(2)その他
BQ2-2 インスリン抵抗性,糖尿病,肥満,メタボリックシンドロームはNAFLD/NASH病態進展に影響を及ぼすか?
BQ2-3 脂質の摂取はNAFLD/NASHの発症・病態進展に影響を及ぼすか?
BQ2-4 メタボリック因子以外にNAFLD/NASHに影響を及ぼす病態は?
FRQ2-2 NAFLD/NASHにおける肝線維化進展のメカニズムは?
FRQ2-3 腸内細菌叢の変化はNAFLD/NASHの病態に影響するか?
FRQ2-4 サルコペニアとNAFLD/NASHの病態は関連するか?
第3章 診断
BQ3-1 NAFLD/NASHを疑うべき臨床症状は?
BQ3-2 NAFLDと定義する飲酒量は?
BQ3-3 二次性脂肪肝の原因は?
BQ3-4 NAFLD/NASHの診断は?
CQ3-1 肥満や2型糖尿病患者にNAFLD/NASHのスクリーニングをいかに行うべきか?
CQ3-2 NAFLD/NASH患者における肝脂肪量の画像診断は有用か?
CQ3-3 NAFLD/NASH患者の肝線維化進行度の評価に血液学的バイオマーカーおよびスコアリングシステムは有用か?
CQ3-4 NAFLD/NASH患者の肝線維化進行度の評価に画像診断は有用か?
CQ3-5 NAFLD患者における肝生検の適応は?
FRQ3-1 NAFLD/NASHの画像診断は何が有用か?
第4章 治療
(1)食事・運動療法
BQ4-1 食事・運動療法による減量はNAFLD/NASHに有用か?
CQ4-1 NAFLD/NASHの改善に勧められる食事内容は?
CQ4-2 運動療法はNAFLD/NASHに有用か?
(2)薬物療法
BQ4-2 常用量のUDCAはNAFLD/NASHに有用か?
CQ4-3 チアゾリジン誘導体はNAFLD/NASHに有用か?
CQ4-4 ビグアナイドはNAFLD/NASHに有用か?
CQ4-5 SGLT2阻害薬はNAFLD/NASHに有用か?
CQ4-6 GLP-1アナログ,DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬はNAFLD/NASHに有用か?
CQ4-7 ビタミンEはNAFLD/NASHに有用か?
CQ4-8 脂質異常症改善薬はNAFLD/NASHに有用か?
CQ4-9 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)はNAFLD/NASHに有用か?
FRQ4-1 将来NAFLD/NASHに有用性が期待できる薬剤は何か?
(3)その他
BQ4-3 減量手術は高度肥満のNAFLD/NASHに有用か?
BQ4-4 NASH進展肝不全に肝移植は有用か?
CQ4-10 少量から中等度のアルコール摂取はNAFLD/NASHの病態へ影響するか?
CQ4-11 瀉血はNAFLD/NASHに有用か?
第5章 予後・発癌,follow up
BQ5-1 NAFLDでは一般集団に比較して全死亡率,肝関連死亡率,心血管イベントのリスクが増加するか?
CQ5-1 NAFLD/NASHのfollow upは,どのように行うのが適当か?
CQ5-2 NAFLD/NASHを背景とした肝癌のスクリーニングはどのように行うのが適当か?
CQ5-3 NAFLD/NASHにおいて心血管イベントの発生率は上昇するか?
CQ5-4 NAFLDの予後(心血管イベントを含め)を規定する病理学的所見は何か?
刊行にあたって
日本消化器病学会は、2005年に跡見裕理事長(当時)の発議によって、Evidence-Based Medi-cine(EBM)の手法にそったガイドラインの作成を行うことを決定し、3年余をかけて消化器6疾患(胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、肝硬変、クローン病、胆石症、慢性膵炎)のガイドライン(第一次ガイドライン)を上梓した。ガイドライン委員会を積み重ね、文献検索範囲、文献採用基準、エビデンスレベル、推奨グレードなどEBM手法の統一性についての合意と、クリニカルクエスチョン(CQ)の設定など、基本的な枠組み設定のもと作成が行われた。ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)を重要視し、EBM専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員のCOIを公開している。菅野健太郎理事長(当時)のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として継続されたガイドライン作成は、先進的な取り組みであり、わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したものとして大きな価値があったと評価される。
第一次ガイドラインに次いで、2014年に機能性ディスペプシア(FD)、過敏性腸症候群(IBS)大腸ポリープ、NAFLD/NASHの4疾患についても、診療ガイドライン(第二次ガイドライン)、を刊行した。この2014年には、第一次ガイドラインも作成後5年が経過するため、先行6疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行われた。改訂版では第二次ガイドライン作成と同様、国際的主流となっているGRADE(The Grading of Recommendations Assessment、Development and Evaluation)システムを取り入れている。
そして、2019〜2021年には本学会の10ガイドラインが刊行後5年を超えることになるため、下瀬川徹理事長(当時)のもと、医学・医療の進歩を取り入れてこれら全てを改訂することとした。2017年8月の第1回ガイドライン委員会においては、10ガイドラインの改訂を決定するとともに、近年、治療法に進歩の認められる「慢性便秘症」も加え、合計11のガイドラインを本学会として発刊することとした。また、各ガイドラインのCQの数は20〜30程度とすること、CQのうち「すでに結論が明らかなもの」はbackground knowledgeとすること、「エビデンスが存在せず、今後の研究課題であるもの」はfuture research question(FRQ)とすることも確認された。
2018年7月の同年第1回ガイドライン委員会において、11のガイドラインのうち、肝疾患を扱う肝硬変、NAFLD/NASHの2つについては日本肝臓学会との合同ガイドラインとして改訂することが承認された。前版ではいずれも日本肝臓学会は協力学会として発刊されたが、両学会合同であることが、よりエビデンスと信頼を強めるということで両学会にて合意されたものである。また、COI開示については、利益相反委員会が定める方針に基づき厳密に行うことも確認された。同年10月の委員会追補ではbackground knowledgeはbackground question(BQ)に名称変更し、BQ・CQ・FRQと3つのQuestion形式にすることが決められた。
刊行間近の2019〜2020年には、日本医学会のガイドライン委員会COIに関する規定が改定されたのに伴い、本学会においても規定改定を行い、さらに厳密なCOI管理を行うこととした。また、これまでのガイドライン委員会が各ガイドライン作成委員長の集まりであったことを改め、ガイドライン統括委員会も組織された。これも、社会から信頼されるガイドラインを公表するために必須の変革であったと考える。
最新のエビデンスを網羅した今回の改訂版は、前版に比べて内容的により充実し、記載の精度も高まっている。必ずや、わが国、そして世界の消化器病の臨床において大きな役割を果たすものと考えている。
最後に、ガイドライン委員会担当理事として多大なご尽力をいただいた榎本信幸理事、佐々木裕利益相反担当理事、研究推進室長である三輪洋人副理事長、ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに評価委員会の諸先生、刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御礼を申し上げたい。
2020年10月
日本消化器病学会理事長
小池和彦
多くの諸氏が渇望してやまないガイドライン書が改訂された.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD),非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の概念自体,認知されてからの歴史が浅く,それゆえ当然ながら,『NAFLD/NASH診療ガイドライン』も今回で2版を重ねるのみである.ガイドラインとしても,まだ将来の発展を期待される状況ではあるが,正鵠を射た良書である.現時点では他に及ぶもののない書であるといってよいであろう.日常の実地臨床のみならず,臨床研究や基礎的研究にも大いに活用されることは想像に難くない.
また,国民病ともいえるNAFLD/NASHは,消化器を専門とする医師のみならず,他科の医師も含め多くの医療者が相対しなくてはならない疾患である.疫学,病態,診断,治療,予後・合併症についての現時点における標準的内容がわかるこの書は,すべての医師や医療スタッフにとってNAFLD/NASHの理解を深め知識の向上につながる.このことを考えると,このガイドラインの占める意味はあまりにも大きいものであるといえる.
今回『NAFLD/NASH診療ガイドライン』作成という大きな仕事のために,最先端のスタッフが集結した.そこで,NAFLD/NASHの線維化を具体的に提示し,発がんについてはっきりと明示したことは今回のガイドライン作成における大きな功績といえる.また,開業医諸氏が肝臓専門医に紹介する際に利用しやすいフローチャートが作成されている点も特筆すべきことであろう.これにより専門外の臨床医家がNAFLD/NASHを診療しているなかで生じた疑問を霧消させることができる.併せて心血管系イベント発症の際の紹介に際しても的確な道筋が掲載されていることが心強い.
多くの他のガイドラインがそうであるように,このガイドラインもまた,今後発展していくであろうことは当然といえる.非侵襲的線維化マーカーで,その日の採血データから算出されるFib‒4 indexのカットオフ値を今後さらに検証することや,近未来的に上市されるであろう新薬に期待しつつ,治療の項の充実が望まれる.診療上で問題となるさまざまなクエスチョンに対して,膨大な文献を吟味し臨床上の疑問をCQ(clinical question),BQ(background question),FRQ(future research question)に分けて記載するという新たな試みを取り入れることにより,このガイドラインの利用者とともに進化を遂げるべく取り組む姿勢が感じられ,多くの医療者に理解を広めようという作成委員の意気込みが感じ取れる.多忙のなか,秀逸な本ガイドラインをまとめられた関係諸氏に深甚なる謝意を表するとともに,このガイドラインを端緒としてNAFLD/NASH診療のさらなる発展を期待したい.
臨床雑誌内科128巻1号(2021年7月号)より転載
評者●虎の門病院肝臓内科 部長 鈴木義之