入門腫瘍内科学改訂第3版
編集 | : 日本臨床腫瘍学会 |
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ISBN | : 978-4-524-22542-2 |
発行年月 | : 2020年7月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 360 |
在庫
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
正誤表
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2023年03月03日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本臨床腫瘍学会編集による医学部生を主対象とした、臨床腫瘍学の入門書の改訂第3版。各項の冒頭には内容の要旨がわかる「summary」、項目末には「この項のキーポイント」を掲載し、理解しやすい構成となっている。近年の本領域の診療におけるめざましい進歩を反映しつつ、基礎的な内容から診断・治療の総論、疾患各論までが網羅されており、医学部生に必要な臨床腫瘍学の知識が、わかりやすくまとめられている。
I 総論
1 日本のがん医療の現状と疫学
1.日本のがん医療と腫瘍内科学
2.がんの疫学
3.がんの予防と早期発見:検診,スクリーニング
4.わが国のがん対策の動向
5.遺伝性腫瘍と遺伝カウンセリング
2 腫瘍とは
1.がんの病理学
A 発生母地
B 悪性度,分化度,異型性
C 浸潤と転移,微小環境
2.がんの分子細胞生物学
A シグナル伝達
B 細胞周期
C 細胞死
D エピジェネティック変化
3.がんと免疫
3 がんの発生(病因)とその特徴
1.遺伝的要因と外的因子
2.遺伝子の変化と多段階発がん
4 がん診断
1.がん診断のアプローチ・考え方
2.がんにかかわる主要症候(がんの症候学)
3.腫瘍病理学(実践的な病院病理として)
4.病期決定
5.画像診断
6.内視鏡診断
A 消化管内視鏡検査
B 気管支鏡検査
7.がんの分子診断
A 腫瘍マーカー
B 遺伝子・染色体診断
C 予後因子,治療効果予測因子としてのバイオマーカー
D がんゲノム医療
5 がんの治療
1.がん治療の考え方
2.外科療法
3.内視鏡治療
4.放射線療法
5.IVR
6.がん薬物療法
A 殺細胞性抗がん薬
B 分子標的薬
C 免疫チェックポイント阻害薬
D 内分泌療法
7.集学的治療
8.がんサポーティブケア(支持医療)
9.チーム医療とリスクマネジメント
10.がん緩和医療とサバイバーシップ
11.告知,倫理,インフォームド・コンセント,セカンドオピニオン
12.がん医療におけるコミュニケーション
13.がんの臨床試験
14.がんの診療ガイドライン
15.がん診療におけるEBMの実践
II 各論
1 消化管
1.食道がん
2.胃がん
3.大腸がん
4.消化管間質腫瘍(GIST)
2 肝・胆・膵
1.原発性肝がん
2.胆道がん
3.膵がん
3 肺がん
1.非小細胞肺がん
2.神経内分泌腫瘍(SCLC,LCNEC,AC/TC)
4 中皮腫(胸膜,腹膜など)
5 縦隔腫瘍
6 乳がん
7 頭頸部がん
8 婦人科
1.子宮がん
2.卵巣がん,卵管がん,腹膜がん
9 泌尿器
1.腎細胞がん
2.尿路上皮がん
3.前立腺がん
10 原発不明がん
11 胚細胞腫瘍
12 その他
1.骨軟部腫瘍
2.悪性黒色腫,非黒色腫皮膚がん
3.中枢神経腫瘍
4.神経内分泌腫瘍
5.小児がん,思春期がん
13 造血器
1.白血病
A 急性骨髄性白血病
B 急性リンパ性白血病
C 慢性骨髄性白血病
D 慢性リンパ性白血病
2.骨髄異形成症候群
3.骨髄増殖性腫瘍
4.悪性リンパ腫
A ホジキンリンパ腫
B 非ホジキンリンパ腫
5.多発性骨髄腫
14 腫瘍随伴症候群
1.内分泌症候群
2.血液学的随伴症候群
3.神経学的腫瘍随伴症候群,皮膚筋炎症候群
15 Oncology emergency
1.心血管系
2.骨転移(脊髄圧迫)
3.呼吸器系
4.腔閉塞,瘻孔形成
5.中枢神経系(がん性髄膜炎を含む)
6.感染症
7.腫瘍溶解症候群
8.免疫関連有害事象(irAE)
16 転移がん
1.悪性胸水,悪性腹水
2.転移性骨腫瘍
主な略語一覧表
薬剤名一覧表
索引
改訂第3版 序文
『入門腫瘍内科学』は、医学部で卒前専門教育を受ける医学生のためのテキストとして、2009年10月に初版が上梓されました。初版はがん医療の基本書として、医学生はもとより、薬剤師や看護師など多くの医療者にも利用されてきました。初版を上梓して6年後に改訂第2版を出版し、さらに5年の歳月を経て、改訂第3版を出版する運びとなりました。
この5年間、がんの臨床医学の進歩はめざましく、すぐれた分子標的薬の開発、ドライバー遺伝子を標的とした個別化治療のさらなる進歩、個別化治療のためのコンパニオン診断の進展、がんゲノム医療の保険収載、免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発のさらなる拡大、ロボット支援手術をはじめとする先端的外科療法や粒子線治療をはじめとする先端的放射線療法の進歩、支持療法や緩和療法の進歩など、枚挙にいとまがありません。一方、難治がん・希少がん・小児がん対策やがんサバイバー支援、AYA世代がん支援、がん患者就労支援、高齢社会におけるがん対策、医療経済、がん教育など、取り組まなければならない問題も多く指摘されています。
このような動向を踏まえて、改訂第3版では各項目で増補改訂がなされています。本文の総ページ数が初版では274ページ、改訂第2版では289ページでしたが、改訂第3版では304ページと、ご執筆いただいた先生方のご尽力により、15ページ増に収めることができました。変更・追加になった主な項目は以下のとおりです。「総論2。腫瘍とは」および「各論13。造血器」において大幅に項目立てを変更しました。また新規に追加した項目は、「総論1-5。遺伝性腫瘍と遺伝カウンセリング」、「総論4-7-D。がんゲノム医療」、「総論5-12。がん医療におけるコミュニケーション」、「総論5-14。がんの診療ガイドライン」、「各論3-2。神経内分泌腫瘍(SCLC,LCNEC,AC/TC)」、「各論15-8。免疫関連有害事象(irAE)」です。また、この5年間に多くの新規治療薬が開発され、がん治療の第一線で活用されておりますので、本書巻末の「薬剤名一覧表」には60種類を超える薬剤を新たに追加しました。
本書では、医学生をはじめとする初学者にとってやや難しいところや詳細すぎるところは平易に簡潔に記載しており、複雑な病態や詳細な治療については言及していない場合もありますので、本書のみで十分でない点については、『新臨床腫瘍学』(日本臨床腫瘍学会編集)をはじめとする専門的な教科書などを参考にしていただくことをお勧めします。
今後、本書を腫瘍内科学入門のための教科書として、より一層良いものにしていきたいと考えております。講義や臨床実習などにご活用いただき、ご意見などを南江堂ホームページ(https://www.nankodo.co.jp/contact/contact.aspx)よりいただけましたら幸いです。
最後に、お忙しい中、編集いただきました編集委員ならびに執筆いただきました執筆者の諸先生方に深謝します。また、ご尽力いただきました南江堂の関係諸氏に感謝します。
2020年6月
『入門腫瘍内科学改訂第3版』編集委員長
秋田弘俊
日本人の死亡原因の第一位は悪性新生物(がん)であり,今後も増加傾向にある.がんの基本的な治療法には「手術療法」「薬物療法」「放射線療法」の3種類があり,高い治療効果を得るには,しばしば診療科を越えた「集学的治療」や,職種を越えた「チーム医療」が求められる.また,全国どこでも標準的で専門的な医療が受けられるよう,医療技術,医学的知識において地域格差の是正(均てん化)が求められている.
がんの分子生物学や腫瘍内科学の進歩によって新規分子標的治療薬が多く導入され,また,個々のがん遺伝子異常に基づき治療薬を選択する,いわゆる「ゲノム医療」なども臨床の現場で開始されている.これらは肺がん,乳がんなど発生臓器で分類されるがんの種類を越えて有効性を示すことが多く,質の高いがん薬物療法を実践するためには,臓器横断的な視点をもって,その適応と実施を判断することが求められている.
最近,京都大学の本庶佑氏がノーベル賞を受賞したことでも話題となった免疫チェックポイント阻害薬(nivolumab(商品名:オプジーボ)など)は,がんの種類を越えて優れた治療効果を示す一方,甲状腺炎,薬剤性肺臓炎,下垂体炎,副腎不全,腸炎,腎炎,肝炎,糖尿病など,頻度は少ないが,免疫に関連する重症な副作用(免疫関連有害事象)が発生することが知られている.このような副作用のマネジメントには,内科学と腫瘍学の両方の専門的知識を有する医師が必要とされ,広い領域のがん薬物療法に関する深い学識と高い臨床技能を備えた「腫瘍内科医」の役割が期待される.
『入門腫瘍内科学』は2009年に初版が上梓された.多くの医学生,看護師,薬剤師などが「腫瘍内科学」を最初に系統的に学ぶ教科書として現在まで愛読されている.将来「腫瘍内科医」を目指す医学生にとっては,土台となる基本知識を得ることに役立つ書籍といえる.その後,がん治療の進歩に対応する形で,2015年に第2版の改訂が行われ,このたび,改訂第3版の出版となった.
改訂第3版では,昨今,飛躍的に進歩した,がんゲノム医療,免疫チェックポイント阻害薬と免疫関連有害事象,遺伝性腫瘍とカウンセリング,神経内分泌腫瘍,がん医療におけるコミュニケーションなどの項目を追加している.図表,写真も豊富で非常にわかりやすく,項ごとに「キーポイント」が記載されており,かなり専門的な内容にもかかわらず,すんなりと頭に入ってくる印象を受ける.項目立て,頁数(ボリューム)も,医学生,看護師,薬剤師が読むのに適切である.「腫瘍内科学」の入門書として優れた一冊であり,また入門書といっても,その内容は実際のがんの治療に直結するものである.
『入門腫瘍内科学(改訂第3版)』を用いて学んだ医学生,看護師,薬剤師が,それぞれ腫瘍内科医,がん専門看護師,がん専門薬剤師となり,チーム医療を実践し,がん患者の治療に貢献することを望みたい.
臨床雑誌内科127巻5号(2021年5月号)より転載
評者●島根大学医学部附属病院先端がん治療センター・腫瘍内科 教授 田村研治