膝関節鏡技術認定・公式トレーニングテキスト[Web動画付]
監修 | : 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)関節鏡技術認定制度委員会 |
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編集 | : 石橋恭之 |
ISBN | : 978-4-524-22516-3 |
発行年月 | : 2020年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 202 |
在庫
定価9,570円(本体8,700円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)が、2016年より開始した「関節鏡技術認定制度(膝)」公式トレーニングテキスト。鏡視下手術の基本とコツ、模範的な術式を、認定審査委員が余すところなく解説。「技術不足」など審査に関係するポイントを多数掲載し、不足している知識・技術を着実に学べる。Web上に模範となる認定医の手技動画を13項目収載し、初学者もゼロから学べる。
I 関節鏡の基本
A.関節鏡と手術器械
1.関節鏡の歴史
a はじめに
b 高木式関節鏡の開発
c 渡辺式関節鏡の開発
d 映像技術の進歩
2.関節鏡・ビデオカメラシステム
a 関節鏡
b ビデオカメラシステム
c 関節鏡・ビデオカメラシステムの構築と取り扱い
3.鏡視下手術器械
a 概要
b プローブ
c 鋭匙鉗子
d オーバル鉗子,バスケット鉗子
e シェーバーシステム,高周波電気装置(RF)
f その他の有用な器具
g 灌流システム
4.手術体位,セッティング
B.膝関節鏡基本手技
1.ポータルの位置と作製法
a 概要
b 前外側ポータル
c 前内側ポータル
d 経膝蓋腱(正中)ポータル
e 外側膝蓋上ポータル
f 内側膝蓋上ポータル
g 後内側ポータル
h 後外側ポータル
2.関節鏡挿入と鏡視の基本
a 概要
b 関節鏡の挿入
c 診断的鏡視
3.鏡視下正常解剖学(鏡視像)
a 膝蓋上嚢部
b 膝蓋大腿関節
c 外側・内側谷部
d 顆間窩
e 内側コンパートメント
f 外側コンパートメント
4.手術器械の基本操作
a 鏡視下手術で用いる器具
b 手術器具の特徴と使い方
5.鏡視下手術の合併症
a 神経血管損傷
b 関節内構造体の損傷
c 感染症
d 血栓塞栓症
e コンパートメント症候群
II 膝関節鏡視下手術
A.半月板手術
1.半月板損傷の概要
a 断裂形態
b 診断
c MRI
d 予後
2.鏡視下半月板切除術
a 概要
b 半月板切除術の適応
c 視野確保
d 損傷半月板のプロ−ビング
e 処置の際の注意点
f シェーバー使用時の注意点
g 高周波電気装置(RF)を使用する際の注意点
h 確認
i 後療法
3.鏡視下半月板縫合術(inside-out)
a 概要
b 鏡視下手術の実際
c 後療法
4.鏡視下半月板縫合術(outside-in)
a 概要
b 鏡視下手術の実際
c 後療法
5.鏡視下半月板縫合術(all-inside)
a 概要
b All-inside法の適応
c 鏡視下手術の実際
6.円板状半月手術:切除,縫合
a 概要
b 手術適応
c 前評価
d 鏡視下手術の実際
B.靱帯再建術
1.前十字靱帯損傷の概要
a 概要
b 病態
c 診断
d 治療
2.前十字靱帯再建術(single-bundle)
a 概要
b 鏡視下手術の実際
c 後療法
3.前十字靱帯再建術(double-bundle,triple-bundle)
a 概要
b 手術適応
c 二重束・三重束再建術の特徴
d 鏡視下手術の実際
e 後療法
4.前十字靱帯再建術(ART-BTB)
a 概要
b 骨付き膝蓋腱の特性
c 手術体位,膝蓋腱の採取
d 鏡視下手術の実際
5.後十字靱帯再建術
a 概要
b 適応
c 診察
d 画像診断
e 鏡視下手術の実際
f 合併症とその対策
g 後療法
C.軟骨損傷・離断性骨軟骨炎
1.軟骨損傷・離断性骨軟骨炎の概要
a 概要
b 診察
c 画像診断
d 治療
2.軟骨欠損に対するmicrofracture法
a 概要
b 適応
c 鏡視下手術の実際
d 後療法
3.軟骨欠損に対する自家骨軟骨移植
a 概要
b 適応
c 鏡視下手術の実際
d 後療法
4.離断性骨軟骨炎ドリリング・固定術
a 概要
b 鏡視下手術の実際
c 後療法
D.膝蓋大腿関節障害
1.膝蓋大腿関節障害の概要
a 概要
b 診察
c 画像診断
d 鏡視下手術の実際
2.外側支帯切離術
a 適応
b 鏡視下手術の実際
c 合併症とその対策
d 後療法
3.反復性膝蓋骨脱臼に対する内側膝蓋大腿靱帯再建術
a 概要
b 適応
c 反復性膝蓋骨脱臼に対するMPFL再建術の実際
d 合併症とその対策
e 術後の肢位,外固定,後療法
E.その他
1.滑膜切除術(関節リウマチ,その他)
a 概要
b 適応
c 鏡視下手術の実際
d 合併症とその対策
e 後療法
2.遊離体摘出
a 概要
b 適応
c 鏡視下手術の実際
d 合併症とその対策
e 後療法
3.滑膜ひだ(タナを含む)切除
a 概要
b 適応
c 鏡視下手術の実際
d 合併症とその対策
e 後療法
4.合併症の対応:器具破損,感染など
a 器具破損
b 神経血管損傷,血流障害
c 感染
索引
WEB動画一覧
I 関節鏡の基本
◆ポータルの位置と作製法(22〜26ページ)
動画1:前外側ポータルの作製
動画2:前内側ポータルの作製
◆関節鏡挿入と鏡視の基本(27〜32ページ)
動画1:各部位の診断的鏡視
◆鏡視下正常解剖学(鏡視像)(33〜39ページ)
動画1:膝蓋上嚢・膝蓋大腿関節の観察
動画2:外側・内側谷部の観察
動画3:顆間窩の観察
動画4:内外側コンパートメントの観察
II 膝関節鏡視下手術
◆鏡視下半月板切除術(55〜60ページ)
動画1:断裂部位の特定
動画2:パンチによる転位した半月板の切除
動画3:パンチによる変性半月板の切除
動画4:シェーバーによる切除
動画5:RFによる処置
動画6:最終確認
◆鏡視下半月板縫合術(inside-out)(61〜70ページ)
動画1:縦断裂の縫合
動画2:横断裂の縫合
動画3:水平断裂の縫合
◆鏡視下半月板縫合術(outside-in)(71〜76ページ)
動画1:円板状半月に対する形成術
動画2:断裂部の新鮮化
動画3:縫合手技(1)
動画4:縫合手技(2)
◆鏡視下半月板縫合術(all-inside)(77〜82ページ)
動画1:鏡視下半月板縫合術(all-inside)
◆円板状半月手術:切除,縫合(83〜89ページ)
動画1:外側不完全円板状半月損傷に対する形成的部分切除(右膝)
動画2:外側不完全円板状半月損傷に対する形成的部分切除+縫合(左膝)
動画3:外側完全円板状半月損傷に対する形成的部分切除(左膝)
動画4:外側完全円板状半月損傷に対する形成的部分切除+縫合(右膝)
◆前十字靱帯再建術(double-bundle,triple-bundle)(103〜109ページ)
動画1:大腿骨骨孔の作製
動画2:脛骨骨孔の作製
動画3:移植腱の挿入・固定
◆前十字靱帯再建術(ART-BTB)(110〜116ページ)
動画1:大腿骨骨孔の作製(1):ランドマークの確認
動画2:大腿骨骨孔の作製(2):マーキング
動画3:大腿骨骨孔の作製(3):Outside-in手技(1)
動画4:大腿骨骨孔の作製(4):Outside-in手技(2)
動画5:大腿骨骨孔の作製(5):骨孔縁の仕上げ
動画6:脛骨骨孔の作製(1):ランドマークの確認
動画7:脛骨骨孔の作製(2):骨孔の作製
動画8:移植腱の挿入と固定(1):腱の導入
動画9:移植腱の挿入と固定(2):Interference screwによる固定
動画10:移植腱の最終確認
◆軟骨欠損に対する自家骨軟骨移植(138〜144ページ)
動画1:前内側ポータル作製のための郭清(滑膜切除)
動画2:病巣の切除
動画3:骨軟骨柱の移植
◆離断性骨軟骨炎ドリリング・固定術(145〜151ページ)
動画1:Trans-articular approach
◆外側支帯切離術(156〜160ページ)
動画1:外側支帯と上内側ポータルの作製
動画2:外側支帯切離
巻頭言
膝関節鏡は、1918年に高木憲次先生により世界に先駆けて行われました。その後、高木先生、渡辺正毅先生らにより精力的に関節鏡の開発が進められ、1959年に渡辺式第21号関節鏡が完成、1962年には世界初の鏡視下半月板切除術が施行されています。渡辺先生は、1974年に国際関節鏡学会の初代会長に就任するとともに「Father of Arthroscopy」の称号が与えられています。このように膝関節鏡は日本で大きく発展してきました。
関節鏡の開発当時は主に診断的関節鏡が中心でしたが、カメラシステムの進歩と手術器械の開発により、現在では膝関節手術の多くが鏡視下に行われるようになっています。主なものとして、靱帯再建術や半月板縫合術といった軟部組織の治療、関節内骨折や離断性骨軟骨炎などの骨軟骨組織の治療が行われています。また、従来修復が困難であった軟骨欠損も、再生医療を用いた鏡視下自家培養軟骨移植術の応用へと進歩しています。このように、関節鏡視下手術は低侵襲にさまざまな疾患の治療を可能にしてきました。しかし、鏡視下手術の本質は従来の治療法と違いはありません。そして観血的手術以上に大きなlearning curveが存在し、かつ特殊な器具を用いて行うことから高度な技術も要求されます。適切な適応と正確な手術手技のもとに行わなければ、思わぬ合併症を引き起こすことにもなりかねません。
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)では、「本邦における鏡視下手術の健全な普及と進歩を促し、延いては国民の健康や福祉に貢献することを目的」として、2018年から膝関節を対象に関節鏡技術認定制度を開始しました。本認定制度は「共通の基準にしたがって(膝関節)鏡視下手術に携わる医師の技量を評価し、一定の高い基準を満たした者を認定する」制度であり、受験者が提出する書類と手術ビデオで合否が決定されます。初年度から2019(令和元)年度までに144人が受験し、87人が認定されてきました。合格率約60.4%と非常に狭き門ではありますが、審査基準(https://www.joskas.jp/screening_criteria.php)に則り、適切な手技に基づいて手術が行われていれば、合格は決して難しくはありません。
本テキストでは、主にJOSKAS関節鏡技術認定制度の審査員が手術手技のポイントを解説し、さらに認定医によって行われた実際の鏡視下手術を収録しています。テキストとともに動画を確認することで、読者の技術は確実に向上するものと思います。現在、認定試験では前十字靱帯再建術と半月板縫合術のみをビデオ審査しておりますが、本テキストでは鏡視下に行われる主な膝関節手術はすべて網羅しました。これから関節鏡を学ぶ初学者のみならず、すでに鏡視下手術を行っているエキスパートにとっても十分な内容であると思います。本テキストが日本の膝関節鏡視下手術の技術レベルを向上させ、さらにarthroscopistを目指す先生方に少しでもお役に立てば幸いです。
2020年1月
一般社団法人日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)
関節鏡技術認定制度委員会担当理事 石橋恭之
膝関節鏡は、いまや膝関節外科医にとってもっとも重要なツールといって過言ではない。人工関節置換術や骨切り術を除けばほとんどの膝関節手術が関節鏡視下に行われている。ときどき、変形性膝関節症の患者が、若いころに受けた関節切開による半月板切除術の手術瘢痕をみせてくれることがあるが、今の関節鏡手術のものと見比べると隔世の感がある。筆者が関節鏡を始めた1990年代は、すでに鏡視下前十字靱帯再建術や半月板縫合術がスタンダードな術式になっていたが、当時は小さなモニタに映し出された粗い画像で手術が行われていた。さらに時代をさかのぼると、モニタなしで関節鏡手術が行われていた。
今から20余年前に、関節鏡発祥の地である東京逓信病院で研修する機会があった。『Atlas of Arthroscopy』執筆者のお一人である故池内宏先生は、モニタを使わずスコープ越しに関節内を観察されていた。また関節内所見を数頁にわたってスケッチで残されていた。よくぞモニタなしで関節内をこんなにも詳細に観察できるものだと感心させられたことを記憶している。その後、映像技術は飛躍的に進歩し、今では関節鏡初学者であっても簡単に超高画質の関節鏡視像を得られ記録して残せるようになった。また、エキスパートが行う鏡視下手術の動画映像なども簡単に手に入るようになり、効率的に短期間で手技を習得できる時代になった。さまざまなメディアを通して学習できることは素晴らしいことであるが、指導者の立場としては、一定期間指導者のもとで修業することは必須であることを強調しておきたい。ちょっとしたコツやピットフォール、ミスからの回復法、さらには熟練医師の治療哲学など直接の指導でないと伝わらないことが沢山ある。
さて、膝関節鏡に関する書物は数多く存在するが、日本関節鏡学会をルーツとするJOSKASが監修して仕上がった本テキストはほかと一線を画している。表紙は落ち着いた青で派手さはない。日本語タイトルは、技術認定のためのテキストを意味しているが、英語の副題は幅広く「The Textbook of Knee Arthroscopic Surgery」となっている。目次をみると、技術認定で必要な前十字靱帯再建術や半月板縫合術だけではなく、代表的な関節鏡手術がほぼすべて網羅されており、英語の副題どおり膝関節鏡全般に関する包括的なテキストに仕上がっている。内容は非常にわかりやすい。まず、全編を通じて関節鏡視像や図、写真がふんだんに使われている。テキスト中で重要なポイントは太字でアンダーラインがつけられている。手技上のピットフォールはOne Point Memoとしてハイライトされ、見落とすことがないよう配慮されている。また特筆すべきは、関連する動画を実に44本もwebで閲覧できることである。手術手技は、静止画よりも動画のほうが数倍理解しやすい。ほぼすべての代表的な関節鏡手術をweb動画で閲覧できる。今やどこにいてもインターネットへアクセスできる時代である。Web動画は、付属CDやDVDで動画を開くよりも早く簡単にアクセスできて便利である。
本書は関節鏡の基本を一から学べるため、特にこれから膝関節鏡を身につけようと考えている若手医師にとっては必読の書である。また、すでに多くの鏡視下手術を経験した整形外科医にとっても十分な内容であり、知識の整理や最新手術手技を獲得するのに役立つ。膝関節鏡に関するスタンダードテキストとして、本書「青本」は多くの整形外科医に読まれていくと思われる。
臨床雑誌整形外科71巻12号(2020年11月号)より転載
評者●高知大学整形外科教授 池内昌彦
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