呼吸器外科手術アドバンス[Web動画付]
編著 | : 岩ア昭憲 |
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著 | : 白石武史/山下眞一/岡林寛 |
ISBN | : 978-4-524-22509-5 |
発行年月 | : 2019年11月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 160 |
在庫
定価12,100円(本体11,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
内視鏡手技やロボット手術、肺移植など、豊富な診療経験を有する福岡大学呼吸器外科の手術手技を動画付きで解説。多くの拡大手術法や、さまざまな技量を駆使した呼吸器外科手術手技を提供する。書籍にも動画にも、基礎から応用まで手術のヒントを解説した「ポイント」欄を豊富に盛り込み、手技の細かなポイントが論理的にも直感的にも理解できる仕立てとした。
I.総論
1.胸部外科の手術器具
2.胸部外科手術アプローチ〜開胸〜
3.胸部外科手術アプローチ〜低侵襲手術〜
II.各論
A.気道手術
1.気管瘢痕狭窄に対する気管切除再建
2.気管悪性腫瘍に対する気管切除再建(頸部気管)
3.気管悪性腫瘍に対する気管切除再建(胸腔内気管)
4.声門下狭窄に対する気管切除再建
5.フラップ型気管支形成術
6.気管支(環状)切除術
B.気管分岐部手術
1.スリーブ肺全摘術〜技術総論〜
2.スリーブ右肺全摘術(上大静脈再建を伴う)
3.スリーブ左肺全摘術(残肺全摘)
4.分岐部右肺上葉切除術(肺静脈移動による右中下葉授動を伴う)
C.胸部外科における血行再建
1.Double sleeve肺葉切除術(右上葉)
2.Double sleeve肺葉切除術(左上葉)
3.Double sleeve肺葉切除術(拡大左上葉)
4.人工心肺下右房合併切除再建
5.人工心肺下左房合併切除再建
6.肺動脈conduit再建
D.胸壁手術
1.肺尖部胸壁浸潤肺癌への前方アプローチ
2.胸壁切除再建
E.肺移植
1.脳死両肺移植
2.脳死片肺移植
F.胸腔鏡・ロボット手術
1.胸腔鏡下肺葉切除術
2.胸腔鏡下肺区域切除術
3.単孔式胸腔鏡下肺葉切除術
4.ロボット手術(縦隔腫瘍摘出術)
5.ロボット手術(肺葉切除術)
G.難治性感染性肺疾患
1.慢性有瘻性膿胸の二期的手術(閉窓術)
2.非結核性抗酸菌症に対する胸腔鏡手術
H.特殊手術
1.胸腺腫胸膜播種に対する胸膜肺全摘
2.アスペルギルス症に対する肺全摘・大網充.
3.先天性肺気道奇形
4.胸部外傷(主気管支損傷・肺血管損傷)
5.術中肺動脈損傷
索引
WEB動画タイトル一覧
I.総論
動画(1):Forceps
動画(2):Castroviejo Needle Holder
動画(3):Mayo,Metzenbaum Scissors
動画(4):ロボット支援手術
動画(5):ロボット支援手術
動画(6):ロボット支援手術
II.各論
A.気道手術
動画(7):気管瘢痕狭窄に対する気管切除再建
動画(8):気管悪性腫瘍に対する気管切除再建(頸部気管)
動画(9):気管悪性腫瘍に対する気管切除再建(胸腔内気管):硬性鏡
動画(10):気管悪性腫瘍に対する気管切除再建(胸腔内気管):気管再建
動画(11):声門下狭窄に対する気管切除再建
動画(12):フラップ型気管支形成術
動画(13):中間気管支幹再建(気管支環状切除術)
動画(14):左主気管支壁再建(気管支環状切除術)
B.気管分岐部手術
動画(15):スリーブ肺全摘術.技術総論.
動画(16):スリーブ右肺全摘術(上大静脈再建を伴う)
動画(17):スリーブ左肺全摘術(残肺全摘)
動画(18):左肺動脈確保法
動画(19):分岐部右肺上葉切除術(肺静脈移動による右中下葉授動を伴う)
C.胸部外科における血行再建
動画(20):Double sleeve肺葉切除術(右上葉)
動画(21):Double sleeve肺葉切除術(左上葉)
動画(22):Double sleeve肺葉切除術(拡大左上葉)
動画(23):人工心肺下右房合併切除再建
動画(24):人工心肺下左房合併切除再建
動画(25):肺動脈conduit再建
D.胸壁手術
動画(26):肺尖部胸壁浸潤肺癌への前方アプローチ
動画(27):胸壁切除再建
E.肺移植
動画(28):脳死両肺移植
動画(29):脳死片肺移植
F.胸腔鏡・ロボット手術
動画(30):胸腔鏡下肺葉切除術
動画(31):胸腔鏡下肺区域切除術
動画(32):単孔式胸腔鏡下肺葉切除術
動画(33):ロボット手術(縦隔腫瘍摘出術):症例(1)重症筋無力症
動画(34):ロボット手術(縦隔腫瘍摘出術):症例(2)神経腫瘍
動画(35):ロボット手術(肺葉切除術):症例(1)右下葉
動画(36):ロボット手術(肺葉切除術):症例(2)右上葉
動画(37):ロボット専用器具
G.難治性感染性肺疾患
動画(38):慢性有瘻性膿胸の二期的手術(閉窓術)
動画(39):非結核性抗酸菌症に対する胸腔鏡手術
H.特殊手術
動画(40):胸腺腫胸膜播種に対する胸膜肺全摘
動画(41):アスペルギルス症に対する肺全摘・大網充.
動画(42):先天性肺気道奇形
動画(43):胸部外傷:症例(1)(2)気管支損傷
動画(44):胸部外傷:症例(3)肺血管損傷
動画(45):術中肺動脈損傷
巻頭言
『呼吸器外科手術アドバンス[Web動画付]』を発刊する運びとなりました。
私たちは、これまで諸先輩方のもとで様々な指導を受け、その技術を受け継いできました。順調に経過した症例や、予想に反しよい結果が得られなかった症例など多くの臨床経験を通して、ある程度の技術レベルに達することができました。そこで、若い呼吸器外科医や専門医取得後の医師に、これらの手技の要点を、わかりやすく解説し提供することが私たちの大切な役割と考えるようになりました。この30年で内視鏡手術による低侵襲手術、肺移植、ロボット支援手術が実施されるようになりました。また効果的な新規薬物治療も登場し、肺癌外科治療にも様々な局面が生まれています。
これまで福岡大学では、あらゆる呼吸器外科手術を実施し、特に悪性疾患に対する拡大合併切除術には積極的に取り組んできました。また肺移植や胸腔鏡による低侵襲手術、ロボット支援手術の診療にも多く携わってきました。
幸い近年はHi-Vision、4K、8Kなど質の高い画像で記録を残すことも可能になり、鮮明で有用な手技を一度取りまとめておくことは大切であると考えます。教室では、これまでに胸腔鏡手術関連のテキスト、気道インターベンションや一般的な手術書などを発刊してきましたが、このような一歩踏み込んだ手技で、しかも動画を中心にしたものは今回がはじめてになります。まだ書店には呼吸器外科関連のアドバンス的な手術書は極めて少なく、鮮明な動画像による解説書も少ないようです。本書の特徴は、手技が複雑になった症例を選び、手順の解説を行い、ネットの動画で確認できるようにした点です。また手術器具の特徴を知ることが手技の基本でもありますので、総論で取り上げました。各論は手技別テーマに分け、各手技に対応する症例を具体的に提示しました。重要な点は、コラム欄を設け解説を加えました。最近のロボット手技や外傷についても情報を加えています。
もちろん手術書として完璧なものではなく、世の中には「手術の手練れ」といわれる先生方も多いのは存じております。この手術書だけではなく、他の手術書とともに書棚の一冊として置いていただき、日常診療で類似ケースに遭遇した場合に活用いただける書になることを願っております。本書は、白日高歩先生や川原克信先生に薫陶を受けたメンバーで分担執筆いたしました。両先生から受け継いだ手技が盛り込まれている書でもありますし、教室員総力で取り組んだ日常診療から生まれた書です。発刊にあたりこれらの皆様と、出版までご助力をいただきました南江堂の方々にも心から深謝いたします。
2019年10月
福岡大学医学部呼吸器・乳腺内分泌・小児外科
岩ア昭憲
呼吸器外科手術のほとんどは肺機能の低下を前提としている。肺機能の低下を回避するためには肺の温存を余儀なくされるわけであるが、諸家の報告によれば肺を温存することによって肺悪性腫瘍の局所再発の頻度が高まる。局所進行肺癌に比べて悪性度が低い小型肺癌ですら、肺葉切除を縮小切除にすることによって局所再発が増えると報告されているので、局所進行肺癌においてはなおその傾向が強まるのである。つまり、肺機能をいかに温存するかという術後のperformans status に大きくかかわる短期的成果と、癌の根治という長期的成果は相反するものであり、双方を最大化するためにその落としどころが呼吸器外科医には求められている。
このように、外科医の力量がダイレクトに患者の予後に反映されるという点では、心臓血管外科との手術に似ているのであるが、心臓血管外科の手術は基本的に機能改善を求めるものであるのに対して、呼吸器外科の手術は機能低下を宿命的に伴うものである点が決定的な特徴となっている。本手術書は、「肺の機能温存」と「癌の根治性」というこの二律背反の事象を追い求めた外科医による渾身の自伝ともいえる名著である。
本邦の呼吸器外科領域で三本の指に入るとされる福岡大学の手術成績は、岩ア昭憲教授に負うところが大である。そしてその手術の技術と哲学を受け継ぐ現在のスタッフにより本書は構成されている。多くの手術書ではあまり経験のない手術に関する記載がややもすると机上の空論となりがちであったのだが、本書にはそれに該当する部分がない。通常ではきわめてまれな手術に関しても、多くの経験を誇る本邦の第一人者ならではの内容となっている。いわゆる拡大手術とはいっても、重要なことは基本技術であることは論をまたない。拡大手術において必要なことは、術前に得られる情報と患者の耐術能を掛け合わせた結果もたらされる許容手術侵襲を勘案したうえでの戦略といえる。この熟考された戦略のうえに基本技術が加われば、ほとんどの拡大手術は視野に入るということを本書で確認することができる。そのうえで外科医にとって重要なことは、腫瘍を取り切るという強い意志であろう。基本技術・戦略・意志、この三者が伴ったときに拡大手術は成功裏に終わるということが随所に読み取れる。
本書を手にとる外科医が一人でも多くいること、そして福岡大学における手術成績に少しでも多くの施設が近づいていくこと、結果として多くの胸部悪性腫瘍を患った患者が生還することを祈りたい。本邦の呼吸器外科医、そして可能であれば世界の呼吸器外科医に本書を推薦する次第である。
胸部外科73巻11号(2020年10月号)より転載
評者●順天堂大学呼吸器外科教授 鈴木健司