教科書

看護学テキストNiCE

看護倫理改訂第3版

よい看護・よい看護師への道しるべ

編集 : 小西恵美子
ISBN : 978-4-524-22508-8
発行年月 : 2021年1月
判型 : B5
ページ数 : 292

在庫あり

定価2,530円(本体2,300円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

ナースに必要な倫理的素養を育む大好評テキストの改訂版。学生にとって一見難解な倫理問題を学習しやすいよう、身近な事例を多用し、倫理の学びを進められる構成となっている。日本の伝統的価値観「和」「礼」「徳」の顕在化が本書の大きな特徴。今改訂では「ケアの倫理」「共感」など、近年注目が高まっている概念についての項目を新設したほか、好評の「4ステップ事例検討シート」にもケアの倫理の視点を取り入れリニューアルした。

第I章 看護倫理についての基礎知識
 1 倫理の基礎
  A.倫理とは
  B.価値
  C.価値観の形成に影響するもの
  D.倫理と道徳
  E.倫理と法
  F.倫理理論
 2 看護倫理の基礎
  A.看護倫理とは
  B.看護倫理のアイデンティティ
  C.倫理綱領code of ethics
  D.看護倫理の必要性
  E.看護倫理を学ぶ意義
 3 看護倫理の歴史的推移
  A.徳の倫理オンリーの時代(1970年ごろまで)
  B.徳の倫理から原則の倫理へ(1970年代〜2000年ごろまで)
  C.21世紀の現在
  D.倫理綱領の変遷
第II章 看護倫理のアプローチ
はじめに
 1 徳の倫理
  A.徳の倫理とは
  B.徳の倫理の歴史
  C.看護にとっての徳の倫理の意味
  E.徳の倫理の問題点と今後の課題
 2 原則の倫理
  A.原則の倫理とは
  B.倫理原則
  C.倫理原則の意義,および問題点と注意
 3 ケアの倫理
  A.ケアの倫理とは
  B.ケア,ケアリングとは何か
  C.看護実践におけるケアの倫理の特徴と限界
第III章 看護倫理に関係する重要な言葉
はじめに
 1 和
  A.「和」の意味
  B.職場の「和」
  C.医師たちと話し合う看護師の「和」
  D.看護師が自分を大切にするということ
  E.国際看護師協会のスローガンとしての「和」
 2 共同体,家,親孝行,礼,面子,和−東アジアの文化と倫理
  A.比較文化論からみた東アジア文化圏
  B.東アジア文化圏の共存共同体
  C.家族の中の「役割」と個人の人格形成
  D.国際看護の基本は自文化を知ること
 3 コンパッション−思いやりの心
  A.患者からみた看護師の心
  B.コンパッション
  C.コンパッションの2つの側面
  D.思いやりの心をもち続ける
 4 共感
  A.看護師がもつ共感
  B.看護師の共感についての誤解
  C.共感的関係性の要素
 5 道徳的感受性と道徳的レジリエンス
  A.道徳的感受性
  B.道徳的レジリエンス
 6 専門職
  A.専門職とは
  B.看護は専門職か?
  C.看護師の職業意識と倫理
  D.看護師個人の信条と専門職としての義務
  E.専門職の義務とケアに伴うリスク
 7 対象者を中心とした看護
  A.対象者を中心とした看護と生活モデル
  B.対象者を中心とした看護の働き
  C.看護教育
  D.日常の実践での対象者中心の看護の点検
 8 患者の尊厳
  A.看護・ケアにおける尊厳
  B.患者の尊厳を構成する要素
  C.尊厳の評価尺度
 9 看護アドボカシー
  A.アドボカシーとは
  B.看護アドボカシーの必要性
  C.看護アドボカシーを理解するモデル
  D.看護アドボカシーの実践に向け
 10 協力と協働
  A.協力と協働の意味
  B.医療現場における協働
  C.地域における協働
 11 パターナリズム
  A.パターナリズムとは
  B.医療におけるパターナリズム
  C.弱いパターナリズムと看護
  D.医療状況の変化におけるパターナリズムの新たな課題と医療者の役割
 12 個人の権利
  A.権利の意味と意義
  B.権利と義務の関係
  C.権利の性格
  D.医療・看護における権利の意義
 13 看護職の責任−倫理的責任と法的責任
  A.責任とは
  B.レスポンシビリティとアカウンタビリティ
  C.倫理的責任と法的責任
  D.看護教育の高度化と倫理的な責任
  E.医療事故と法的責任
 14 インフォームド・コンセント
  A.インフォームド・コンセントの生まれた背景
  B.インフォームド・コンセントの構成要件
  C.日本におけるインフォームド・コンセント
  D.インフォームド・コンセントにおける看護師の役割
 15 情報プライバシーと守秘義務
  A.守秘義務
  B.プライバシー
  C.個人情報保護法
 16 災害におけるトリアージ
  A.災害
  B.トリアージの倫理
  C.対象者を「ふるい分ける」という難しい課題
  D.COVID-19の世界的流行
第IV章 倫理的意思決定のステップと事例検討
  A.看護師の立場と倫理的な気がかり
  B.看護師のつらい体験や問題状況を表す言葉
  C.意思決定のための4ステップモデル
  D.演習
  E.事例検討の意義と注意
第V章 さまざまな看護活動と倫理
 1 人生の最後を生きる人々への看護と倫理
  A.ケア提供の場
  B.死にゆく患者に対する「治療」とは
  C.「苦痛を和らげよ」と「死を早めるな」−医療者の2つの使命と倫理
  D.安楽死,事前指示,アドバンス・ケア・プランニング,DNR
  E.終末期医療にかかわる法令,指針
  F.事例検討
 2 地域看護と倫理
  A.地域看護の特徴
  B.地域看護の倫理的問題
  C.地域の看護職自身の倫理的問題
  D.倫理的問題に対応するために−4ステップモデルやナラティヴ・アプローチの活用
 3 小児看護と倫理
  A.子どもの権利と親の養育責任
  B.小児看護の倫理に関する条約・勧告等
  C.臓器移植を必要とする子どもの生きる権利
  D.医療的ケアを必要とする子どもの教育を受ける権利
  E.日常のケア場面で生じる倫理的問題
 4 精神科看護と倫理
  A.基本的人権と尊厳
  B.地域で暮らす権利
  C.自己決定を支援される権利
 5 性と生殖をめぐる看護と倫理
  A.性に関する言葉
  B.性と生殖をめぐる健康問題の特徴
  C.性と生殖をめぐる健康問題を抱えた人のために
 6 遺伝看護と倫理
  A.遺伝看護とは
  B.遺伝看護を必要としている人々と出会う場は?
  C.遺伝看護を必要としている人々の状況とは
  D.遺伝にかかわる問題に対する看護師の倫理的葛藤とは
  E.ケアのプロとして
 7 異文化間の看護と倫理
  A.文化と倫理
  B.在日外国人の看護と倫理
  C.途上国における看護支援と倫理
  D.文化背景の異なる看護師との協働
第VI章 社会的要配慮者の看護と倫理
はじめに
 1 認知症
  A.意思決定への支援
  B.認知症高齢者の行動抑制に関する問題
  C.家族介護者をめぐる課題と支援
 2 難病−筋萎縮性側索硬化症(ALS)を中心に
  A.筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは
  B.倫理的意思決定を行う支援に向けて
 3 貧困
  A.貧困とは
  B.貧困状態にある対象の看護
 4 家庭内で起こる虐待
  A.虐待とはどういうことか
  B.虐待問題と看護
 5 受刑者
  A.受刑者を知るために
  B.受刑者に対する医療と看護
  C.受刑者の看護と倫理
 6 障害者
  A.障害者とは
  B.障害者への配慮
第VII章 その他の看護活動と倫理
 1 看護管理者の役割と倫理
  A.看護管理者の役割
  B.看護管理者が経験する倫理的課題
  C.管理者の倫理的意思決定
 2 看護部倫理委員会
  A.倫理の制度化と看護部倫理委員会
  B.看護部倫理委員会の実践−水戸赤十字病院の試み
第VIII章 看護研究における倫理
  A.看護と研究
  B.看護研究にかかわる主な指針等
  C.看護研究における倫理的配慮
付録
 付録1 ICN看護師の倫理綱領(2012年版)
 付録2 看護者の倫理綱領(2003年)
 付録3 障害者の権利に関する条約(抜粋)
索引

はじめに

 「看護学テキストNiCE看護倫理−よい看護・よい看護師への道しるべ」の改訂第3版をお送りいたします。2007年に本書を刊行した頃は、国内に看護倫理の教科書はなく、欧米の知識に頼っていました。著者一同は、日本の社会と医療に即した看護倫理の枠組みと諸概念を自分たちで伝えたいと考え、本書を著したのでした。以来、事例やコラムを多用した、身近で具体的な看護倫理の書として広く愛読されております。
 学生として初版を読まれた方々は、今は中堅ですね。実践者として今感じている看護倫理は、授業で学んでいた頃の看護倫理と何か違うところがありますか、それはどんなことですか。同様に、よい看護・よい看護師についてのあなたの考えに何らかの変化はあったでしょうか。
 2014年の改訂第2版に続く今回の改訂では、初版以来の構成を維持しつつ、看護・医療・社会の状況に鑑み、項目の新設、タイトルの変更、および全般的に内容のアップデートをはかっています。主なものを挙げます。
 新設した項目は以下のとおりです。
 ・「ケアの倫理」、「共感」、「道徳的感受性と道徳的レジリエンス」、「患者の尊厳」、「性と生殖をめぐる看護と倫理」、「異文化間の看護と倫理」、「社会的要配慮者の看護と倫理」(認知症、難病[ALS]、貧困、虐待、受刑者、障害者)次の3つについて、タイトルを変更し、内容を更新しました。
 ・人生の最終段階の看護と倫理を、「人生の最後を生きる人々への看護と倫理」へ。
 ・臨床倫理委員会を、「看護部倫理委員会」へ。
 ・災害状況におけるトリアージを、「災害におけるトリアージ」とし、内容にCOVID-19の世界的流行を含めました。

 多数の看護研究・教育者や看護実践家が本書を執筆しています。編集者・執筆者として、私はすべての原稿の一字一句に注目し、執筆者とのコミュニケーションを重ねさせていただきました。本書には「協力と協働」という項目がありますが、長期にわたる本書作成の過程はまさに協力と協働であり、そこから、「1+1」が2になる以上の成果を生むことができました。執筆者各位に心から感謝いたします。
 同じ感謝を、南江堂編集部の皆さまにお伝えしたいと思います。とくに、山口慶子さんの、執筆者・編集者への敬意のこもった態度と丁寧なコメントがあってこそ、本書を立派に仕上げることができました。本当にありがとうございました。

2020年12月
小西恵美子

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