入門組織学改訂第2版
著 | : 牛木辰男 |
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ISBN | : 978-4-524-21617-8 |
発行年月 | : 2013年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 396 |
在庫
定価5,500円(本体5,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
初版から20年以上、医学部・コメディカル学生に採用、支持されている初学者向け組織学の教科書。定評のある美しい図版とわかりやすい文章で解説する編集方針を踏襲し、この間の学問領域の進展による新しい知見を盛り込む改訂を行った。また巻末に標本作製法と顕微鏡についての章を設け、より深い知識を得られる充実した一冊となっている。
第1章 細胞学と組織学
第2章 細胞
1 細胞の構造
A.細胞膜
B.細胞小器官
1.ミトコンドリア
2.リボゾーム
3.小胞体
4.ゴルジ装置
5.ライソゾーム(リソゾーム)
6.ペルオキシゾーム
7.細胞内の線維成分─細胞骨格
C.核
2 細胞の活動
A.取り込み─食作用と飲作用─
B.分泌活動
C.運動
3 細胞の一生
A.細胞の分裂
1.体細胞にみられる有糸分裂
2.減数分裂
B.細胞の寿命
C.細胞死
第3章 上皮組織
1 上皮組織の一般的な特徴
1.細胞間の接着装置
2.基底膜
3.細胞頂上部の特殊な構造
2 上皮組織の分類
1.扁平上皮
2.円柱上皮
3.移行上皮
3 腺
A.外分泌腺の一般構造
1.終末部の構造
2.腺細胞の構造
3.分泌の様式
B.内分泌腺の一般構造
第4章 支持組織
1 結合組織
A.結合組織の構成要素
1.細胞要素
2.細胞間質
B.結合組織の種類
1.線維性結合組織
2.脂肪組織
3.弾性組織
4.細網組織
5.膠様組織
2 軟骨組織
1.ガラス軟骨
2.線維軟骨
3.弾性軟骨
3 骨組織
A.器官としての骨の構造
1.緻密骨の構造
2.海綿骨の構造
B.骨組織の微細構造
1.骨細胞と骨基質
2.骨芽細胞
3.破骨細胞
C.骨の改築
D.骨の発生
1.膜性骨化
2.軟骨性骨化
第5章 筋組織
1 骨格筋組織
A.骨格筋線維の構造
B.器官としての骨格筋の構造
C.骨格筋の神経支配
2 心筋組織
A.心筋線維の構造
3 平滑筋組織
A.平滑筋線維の構造
第6章 神経組織
1 神経細胞
A.神経細胞の分類
B.神経細胞の構造
2 神経線維の構造
A.有髄神経線維
B.無髄神経線維
C.末梢の神経線維の生理学的な分類
3 シナプス
4 中枢神経系の支持細胞─神経膠細胞
1.星状膠細胞(アストログリア)
2.希突起膠細胞(オリゴデンドログリア)
3.小膠細胞(ミクログリア)
4.上衣細胞
5 末梢神経系の支持細胞
1.外套細胞
2.シュワン細胞
6 末梢神経の構造
7 末梢神経の終末装置
1.遠心性神経終末
2.求心性神経終末
8 神経の変性と再生
第7章 脈管系
1 血管
1.動脈
2.毛細血管
3.静脈
4.動脈と静脈の吻合
2 心臓
A.心臓の壁の構造
1.心内膜
2.心筋層
3.心外膜
B.刺激伝導系─特殊な心筋組織
1.洞房結節(キース-フラックの結節)
2.房室結節(田原の結節)
3.ヒス束とプルキンエ線維
C.心膜
3 リンパ管系
第8章 血液と骨髄
1 血液
A.赤血球
B.白血球
1.好中球
2.好酸球
3.好塩基球
4.リンパ球
5.単球
C.血小板
D.血漿
2 骨髄
A.赤血球の生成
B.果粒白血球の生成
C.血小板の形成
D.リンパ球の形成
E.単球の形成
第9章 リンパ性器官
1 中枢リンパ性器官
A.胸腺
2 末梢リンパ性器官
A.リンパ節
B.扁桃
C.脾臓
1.脾臓の血管系
第10章 消化器系
1 消化管の一般的な構造
2 口腔
A.口唇
B.舌
C.唾液腺
1.耳下腺
2.顎下腺
3.舌下腺
3 歯と歯周組織
A.象牙質
B.エナメル質
C.セメント質
D.歯の発生
4 咽頭
5 食道
6 胃
A.胃の粘膜
1.胃底腺
2.幽門腺
3.噴門腺
B.胃の筋層と漿膜
7 小腸
A.粘膜
1.腸絨毛
2.腸陰窩または腸腺
3.リンパ小節
4.粘膜下組織と十二指腸腺
B.筋層と漿膜
C.小腸からの栄養の吸収
8 大腸
A.粘膜
B.筋層
C.漿膜
D.虫垂
E.直腸と肛門の移行部
9 肝臓と胆路
A.肝小葉
B.洞様毛細血管とディッセ腔
C.肝細胞とその機能
1.代謝機能
2.胆汁の分泌
3.解毒機能
D.胆道系と胆嚢
10 膵臓
A.外分泌部
1.腺房と腺房細胞
2.介在部と導管
3.膵外分泌の調節
B.ランゲルハンス島
第11章 呼吸器系
1 鼻腔と副鼻腔
2 咽頭
3 喉頭
4 気管と主気管支
5 肺
A.葉気管支から区域気管支の枝まで
B.細気管支とその枝
C.肺胞の構造
D.肺の血管系
第12章 泌尿器系
第13章 男性生殖器
1 腎臓
A.腎小体
B.尿細管
1.近位尿細管
2.中間尿細管とヘンレのループ
3.遠位尿細管
C.集合管
D.糸球体傍装置
E.腎臓の血管系
2 腎杯、腎盤、尿管、膀胱
A.尿管
B.膀胱
3 尿道
1 精巣
A.曲精細管
1.セルトリ細胞
2.精子発生細胞と精子発生
3.精子形成
4.精子とその構造
5.精上皮の周期的変化
B.間質とライディッヒ細胞
2 精巣上体と精管
A.精巣上体
B.精管
3 付属性腺と精液
A.精嚢
B.前立腺
C.尿道球腺
D.精液
4 陰茎
第14章 女性生殖器
1 卵巣
A.卵胞とその発育
B.排卵と卵子の成熟
C.黄体
1.月経黄体
2.妊娠黄体
D.卵胞の閉鎖
E.卵巣の周期的変化
2 卵管
A.卵管の構造
B.卵子の輸送
3 子宮
A.子宮体の構造
B.月経と子宮内膜の周期的変化
1.増殖期
2.分泌期
3.月経期
C.子宮頚の構造
4 腟
5 外陰部
6 胎盤
A.絨毛の構造
B.脱落膜の構造
第15章 内分泌系
1 内分泌腺の一般的な構造
A.ペプチド-アミン分泌系
B.ステロイド分泌系
2 下垂体
A.腺性下垂体
1.前葉ホルモンと前葉細胞
2.下垂体門脈系と調節ホルモン
B.神経性下垂体
3 松果体
4 甲状腺
A.濾胞上皮細胞と甲状腺ホルモン
B.傍濾胞細胞とカルシトニン
5 上皮小体(副甲状腺)
6 副腎
A.副腎皮質
B.副腎髄質
7 消化管の内分泌と胃腸膵内分泌系
1.EC細胞
2.ガストリン分泌細胞(G細胞)
3.ソマトスタチン分泌細胞(D細胞)
4.セクレチン分泌細胞(S細胞)
5.コレシストキニン-パンクレオザイミン(CCK-PZ)分泌細胞
第16章 皮膚
1 表皮
A.表皮の一般的な構造
1.基底層
2.有棘層
3.果粒層
4.淡明層
5.角質層
B.表皮を構成する細胞
1.ケラチノサイト
2.メラノサイト
3.ランゲルハンス細胞
4.メルケル細胞
2 真皮
3 皮下組織
4 角質器─毛と爪
A.毛
1.毛の構造
2.毛包の構造
3.毛の成長と生えかわり
4.毛の付属器官
B.爪
5 皮膚腺
A.脂腺(皮脂腺)
B.汗腺
1.エックリン汗腺
2.アポクリン汗腺
C.乳腺
6 皮膚の知覚装置
A.マイスナーの触覚小体
B.ファーター-パチニの層板小体
C.メルケル細胞
D.毛の柵状神経終末
第17章 感覚器系
1 視覚器
A.眼球とその壁
1.眼球線維膜
2.眼球血管膜
3.眼球内膜(網膜)〈網膜視部の特殊な部位〉
B.眼球の内容物
1.眼房水
2.水晶体
3.硝子体
C.眼球の付属器
1.眼瞼と結膜
2.涙器
2 平衡聴覚器
A.外耳
B.中耳
1.鼓膜
2.鼓室
3.耳管
C.内耳
1.前庭と卵形嚢・球形嚢
2.骨半規管と半規管
3.蝸牛と蝸牛管
D.音の伝達と感受のまとめ
3 味覚器
4 嗅覚器
付1 光学顕微鏡のための組織標本の作り方
1 一般染色標本
1.固定
2.薄切
3.染色
4.永久標本と封入
2 組織化学と免疫組織化学
1.組織化学
2.免疫組織化学
3 in situハイブリダイゼーション法
付2 組織学に利用される顕微鏡の種類と特徴
1 光学顕微鏡
1.試料とレンズの位置による分類
2.照明法や光学系の違いによる分類
2 共焦点レーザー顕微鏡
3 電子顕微鏡
索引
本書の初版が1989 年に出版されてから、幸いなことに多くの方々に本書を活用していただいてきた。執筆当初の目的は、医学の基礎としての組織学を、おもにコメディカル領域の学生に紹介することにあったが、予想をはるかに超えて、医学生、歯学生の知識の整理のためのコアテキストとして、さらにバイオテクノロジー分野における人体組織学の入門書として、幅広い分野に受け入れられてきたことは、大変うれしいことだった。また、もともと本書の内容が組織学の基礎を解説することにあったために、年月がたってもそれほど古臭さを感じさせずに、これまで改訂することもなく長く利用していただけたことも、ありがたいことである。
とはいえ、10年ほど前より、著者としては本書を改訂したい気持ちが強く頭をもたげてきていた。また、出版元の南江堂からもそのような依頼があり、何度かその試みをしてきた。しかし、もとのコンサイスな体裁を留めたまま、多様な分野からの要望を上手に集約し、より広く受け入れられるようにするための改訂の方針が定まらず、いたずらに月日が過ぎてしまった。ようやく懸案の改訂第2 版の出版までたどり着くことができ、ほっと胸をなでおろしている。
このように時間がかかってしまったが、最終的には、初版の簡明さをそのまま踏襲しながら、医学の基礎としての組織学の入門書として、医学、歯学、薬学、コメディカルなど医療系の各分野の初学者に役立つことを念頭に、全面的な改訂をおこなうことができたのではないかと思う。その改訂の骨子を整理すると以下のようになる。
まず、本文を全面的に見直し、簡潔さを保ちながらもアップデートな内容に改めた。とくに細胞についての記述は、近年の細胞生物学の進歩を加味しながら、新たな知見を必要に応じて追加し、組織学の総論にあたる部分もこれに関連して大きく加筆した。また、各章において、関連する疾患や、アドバンスな話題を小さい活字で盛り込むことで、本書の内容にふくらみを持たせるようにした。さらに、巻末に組織標本の作り方と、顕微鏡の基礎知識に触れた章を追加した。
つぎに、内容をより理解しやすくするために、新たに150枚ほどの図を追加した。これらは、写真を除けば、初版と同様にすべて私の手描きによる模式図とスケッチからなる。とくにこの版では、組織の構造を三次元的に理解することを主眼にし、実際の光学顕微鏡標本や電子顕微鏡写真を参考にしながら、私なりに再構築した模式図を多く盛り込んだ。組織切片は二次元的でとかく初心者にはわかりにくいものだが、こうした模式図を加えることで、各組織の構造の理解が容易になったのではないかと思う。また、組織学の各論にあたる各章においては、取り扱う器官系の肉眼解剖(マクロ)的な模式図を追加し、からだのどのような部位の構造を学んでいるのかがすぐに実感できるような工夫をほどこした。
このような作業の結果、初版に比べると全体で100ページほど厚みが増したが、おそらく実際にご覧いただくと、内容は初版よりもずっと明快になっていることが、おわかりいただけるのではないかと思う。
最後に、私の恩師であった藤田恒夫先生(新潟大学名誉教授)が、初版の序に書いてくださった次の言葉を、あえて引用したい。
─「一匹の細胞」を飼う人も、細胞の「部品」をしらべる人も、それがどのような生体の組織から由来しているかを、折にふれて勉強することを忘れてはならない─
最後になったが、この本を手にしてくださった人たち、とりわけ未来の医学やバイオを担う若い世代の方々が、医学の基礎としての組織学の面白さをこの本より感じ取ってくださり、また、本書が組織学の入門書としてさらに多様な分野で広く活用されることを願う。
平成25年1月
新潟にて
牛木辰男