みんなで取り組む 社会的緩和ケア
お金がない・身寄りがない・介護できない患者を支えるための本

編集 | : 鳥崎哲平/福村雄一/柏木秀行 |
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ISBN | : 978-4-524-21552-2 |
発行年月 | : 2025年7月 |
判型 | : A5判 |
ページ数 | : 224 |
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

お金や仕事,介護,身寄りに関する社会的問題は,患者・家族にとって時に身体や病状のことよりも悩みの種となる.本書はそのような社会的苦痛に対する緩和ケア(略して「社会的緩和ケア」)を,医療者が現場で実践するための本である.医療者以外の様々な専門職も執筆陣に迎え,1章では実践のための基礎知識,2章では各専門職によるサポート内容,3章ではケースファイルを掲載.社会的緩和ケアの実際を知り,適切な介入と幅広い支援・ケアに繋げられるようになる一冊.
1章 社会的緩和ケア 総論
1 医療・介護に関わる社会的問題
2 医療者は社会的問題にどこまで関わればよいか?
3-1 お金に関する支援
3-2 お金に関する社会制度
3-3 治療と仕事の両立支援
4-1 介護に関する支援
4-2 介護保険制度
5-1 身寄りがない患者の療養支援
5-2 身寄りがない患者が亡くなった後の対応
6 社会的緩和ケアの担い手
2章 社会的緩和ケアに関わる仲間を知ろう
1 医療ソーシャルワーカー 〜患者と医療者を社会につなぐ専門家〜
2 ケアマネジャー 〜介護の専門家〜
3 社会保険労務士 〜仕事の専門家〜
4 生命保険の担当者 〜お金の専門家〜
5 司法書士 〜法律の専門家〜
6 僧侶 〜宗教の専門家〜
7 葬儀業者 〜葬祭の専門家〜
8 社会福祉協議会 〜地域福祉の専門家〜
9-1 NPOによる支援@ 〜LINEを使った単身者見守りサービス〜
9-2 NPOによる支援A 〜居住支援,終活・相続支援〜
3章 社会的緩和ケア ケースファイル
事例1 緩和ケア外来でのケース 〜お金がないから苦痛は我慢!?〜
事例2 緩和ケア病棟でのケース 〜介護できないので退院は無理です!〜
事例3 がん治療中の患者のケース 〜仕事とアピアランスがケアの鍵に〜
事例4 非がん疾患患者のケース 〜「SDH+人生の最終段階=社会的緩和ケアニーズ」〜
事例5 病院で身寄りがない人の看取りを行ったケース 〜財産管理や死後の事務処理をどうするか?〜
事例6 在宅医療でのケース 〜creative capacityを支えるという視点〜
事例7 救急医療でのケース 〜身寄りがない患者の救命医療をどこまで行うか?〜
索引
【はじめに】(序文)
たとえ「患者」になったとしても,人は社会の中で生きている
緩和ケアの臨床に携わっていると,患者やその家族から,お金のこと,仕事のこと,介護のこと,死後の手続きのことなどの悩みや気がかりを打ち明けられることがよくあります.患者は病人である以前に,社会の一員として生きてきた一人の人間なのですから,ときには社会的な問題がどんな身体的・精神的な症状よりも患者を悩ませることもあると思います.医療者の立場からしても,金銭的理由による受診控えや医療費の未払い,介護力不足による入院の長期化など,診療行為自体にも大きな影響を与えかねない社会的な問題は軽視できるものではありません.
しかし,医師や看護師らが社会的問題やその対応について十分な知識を持っていることは稀で,実臨床においては医療ソーシャルワーカー(MSW)などの専門職に対応を任せきりにしてしまいがちなのではないかと思います.ですがMSWもまた,患者の抱える社会的な問題にどう取り組めば良いのか,どこまで踏み込んで良いのか,何をすれば良いのか……そのように悩みながら手探りで対応しているというのが実状ではないでしょうか.
そのため本書では,多岐にわたる社会的な問題の中でも,医療者が特に経験することが多いと思われる「お金の問題」,「“身寄りがない”という問題」,「介護の問題」の3 つのテーマに絞り,知っておくと役立つ知識や実践例をまとめました.
まず1 章では,医療者として身につけておきたい社会的緩和ケア(※「社会的苦痛に対する緩和ケア」の略)の基礎知識を解説しています.
さらに2 章では,医療の枠内だけでは社会的緩和ケアを十分に語ることができないと考え,医療者だけでなく,病院外で働く様々な専門職の皆様にも執筆をお願いしました.
3 章では,がん治療や救急・集中治療,在宅医療など様々なシチュエーションの症例を通して,社会的緩和ケアの実践をより具体的にイメージできるように,実際の症例をもとにした仮想事例を提示・解説しました.
医師・看護師・MSW をはじめとした医療者の皆様が社会的緩和ケアに取り組む上で,本書が少しでもお役に立つことを,著者・編者一同,心から祈っております.
2025年6月
編者一同
