書籍

生成AIを超えろ! これからの医療者のためのAI学術活用術

共著 : 楠瀬賢也/野村章洋
ISBN : 978-4-524-21523-2
発行年月 : 2025年1月
判型 : B5判
ページ数 : 272

在庫あり

定価3,740円(本体3,400円 + 税)

  • 新刊

サポート情報

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

抄録作成,学会発表,論文執筆には「コツ」があり,これを理解すると迷いが消え,学術活動は飛躍的に進捗する.本書は,著者ふたりが自らの経験に基づいた「学術のコツ」をふんだんに盛り込み,さらにそうした学術の文脈で生成AIをどのように活用するかを解説した一冊.研究をより効果的に表現し,高品質な成果を発表できる「学術のコツ×生成AI」の力を養う実践ガイド.

第1章 生成AI って何
 1.AI とは
  ■ AI とは何か,聞いてみた
 2.生成AI( generative AI) とは
  ■ 生成AI に聞いてみた
  ■ 自然言語処理とは
 3.生成AI の特徴
  ■ 生成AI は医師の業務の何を解決するのか
 4.生成AI を使うときの注意点
  ■ ハルシネーション
  ■ オプトアウトを確認しておこう
 5.研究領域における生成AI のルール
  ■ 医学系英文誌におけるAI 利用の規定
 Column GPT は医師国家試験に合格できるか

第2章 コンセプトシートを使って研究計画を立てよう
 1.コンセプトシート
  ■ 論文作成の羅針盤を作成しよう
  ■ 生成AI 活用術 ― コンセプトシートブラッシュアップ

第3章 英語抄録作成に生成AI を使ってみよう
 1.学会発表は研究者の第一歩
  ■ 研究者よ,学会を目指せ
 2.英語抄録を勧めるワケ
  ■ 多くの学会が英語の抄録を求めている
  ■ 英語で得もするし,損もする
  ■ とりあえず生成AI に頼ればいいじゃないか
 3.海外学会は研究者のフェス
  ■ どうせなら海外に行こう
  ■ 世界の大御所があなたの発表を聞いてくれる
  ■ コネクションも実力のうち
 4.発表助成金を狙おう
  ■ トラベルグラントを狙え
 5.英語抄録の実際
  ■ 英語抄録のお作法とは
 6.タイトル
  ■ タイトルは抄録採択の明暗を分ける
  ■ 生成AI 活用術 ― タイトル案を考えてもらおう
  ■ 生成AIは「盛る」
  ■ タイトルのスタイル
 7.目的 (Objectives)
  ■ 抄録は4つか5つのまとまりに分ける
  ■ Conclusions との関係を意識する
 8.背景 (Background)
  ■ 背景に書くのは4つ
  ■ 生成AI活用術 ― 4行,60 words で書いてもらおう
 9.背景 (Background):生成AI を最初から使う場合
  ■ 生成AI 活用術 ― オンラインの情報に合わせて文章を生成してもらおう
  ■ Coherence を意識せよ
 10.方法 (Methods)
  ■ 再現性を担保する7つの記載
  ■ 生成AI 活用術 ― 6行,100words で書いてもらおう
 Column 健気な生成AI
 11.結果 (Results)
  ■ 結果は最も情報量多く,丁寧に
  ■ 方法に書いてない項目を結果に記載しない
  ■ 主要評価項目は解析方法も書く
  ■ 生成AI活用術 ― 4〜8行,150words で書いてもらおう
 12.結論 (Conclusions)
  ■ Objectives を意識して書く
  ■ 生成AI 活用術 ― 2行,30words で書いてもらおう
 13.字数・単語数の調節と抄録の完成
  ■ 一番字数を調整しやすいのはBackground
  ■ 生成AI 活用術 ― 字数の調整はまかせろ
 14.図表の要否
  ■ ずばり図表はあったほうがよい
 15.添削と推敲
  ■ 徹底的に見直し
  ■ 剽窃の可能性を確認

第4章 英語口頭発表の準備に生成AIを使う
 1.英語講演のハードル
  ■ ポスター作成と当日の発表は別物
 2.英語講演と海外学会参加の準備
  ■ 英語講演は日本にいるときに始まっている
  ■ 海外学会への参加は自己投資
 3.渡航前の準備は早めに行う
 4.海外学会ではネットワーキングを楽しむ
  ■ コミュニケーションを積極的に
 5.チェックシート
 6.英語講演のスライド作成の第一歩
  ■ まずは形式から入る
  ■ スライドはあなたの味方であり,武器である
 Column AIを活用した発表練習の新しい形:LoRA を使った方法
 7.タイトルページ
 8.利益相反 (COI)
  ■ 基準を確認して正直に記載
  ■ 生成AI活用術 ― 英語にしてもらおう
 9.背景 (Background)
  ■ この研究がいかにすばらしいかを語る
  ■ 生成AI 活用術 ― スライドに記載するテキストを作ってもらおう
 10.方法 (Methods)
  ■ 再現性のある研究であることをわかりやすく提示
  ■ 生成AI 活用術 ― 取捨選択してもらおう
 11.結果 (Results)
  ■ わかりやすいことが重要.視覚的に訴えよう
  ■ 生成AI 活用術 ― 使うべき図の種類も提案してもらおう
 12.考察・結論 (Discussion/Conclusions)
  ■ 過去の研究と比較する
  ■ 研究結果のメカニズムや理由を説明する
  ■ 生成AI 活用術 ― 研究の新規性や意義を再検討してもらおう
 13.読み原稿の重要性
  ■ プレゼンテーションには読み原稿を絶.対.に.用意する
  ■ 生成AI活用術 ― 読み原稿はもちろん,質問と回答まで作ってもらおう
 14.原稿作成と実践的な練習
  ■ AIの英語は難し過ぎる!?
  ■ 声に出して練習しよう
  ■ 生成AI活用術 ― 自分にとって読みやすく,聴衆にとっても聞きやすい原稿を作ってもらおう
 15.英語の聞き取り練習をいかにして行うか
  ■ 海外発表が決まったら 「英語耳」 を作ろう
 Column 海外発表時の現地でのすごし方

第5章 論文執筆に生成AIを使いつくす
 1.論文の必要性
  ■ なぜわざわざ論文を書くのか
  ■ 生成AIを超えろ
 2.日本語論文も大事だが…
  ■ 英語論文作成に生成AI利用を躊躇しない
 3.論文は学術界の名刺である
  ■ 論文を書くと,学会場で話しかけられる
 4.生成AI があれば指導者はもう要らないのか
  ■ 査読者も読者も人間
  ■ 生成AI は指導者も使える
 5.その抄録は論文にできるのか
  ■ その研究は真に重要か? 科学的か?
  ■ 生成AI 活用術 ― 論文化する際のハードルとは…
 6.足りないものを探す
  ■ 教授,准教授,生成AI
  ■ 生成AI 活用術 ― 無難すぎるコメントをもらわないために
 7.タイトルページは思い立ったその日に作る
  ■ タイトルページはすぐ作る
  ■ タイトルはシンプルに
  ■ 著者名はとりあえず自分と指導者だけでよい
  ■ 生成AI 活用術 ― 参考例を示して,タイトル案をいくつか出してもらおう
 8.論文の書き始めをどうするか
  ■「 結果のまとめ」 が最初にして最重要
 9.美しい図を作成するヒント
  ■ 図表で論文の最も重要なメッセージを伝えろ
  ■ 図は見た目が9割
  ■ 生成AI活用術 ― どのような図を作ればよいか相談する
 10.セントラルイラストレーション
  ■ セントラルイラストレーションを作ってみよう
 11.表の作成は注意
  ■ なにより大事なのは論文の信頼性
 12.指導者と相談するタイミング
  ■ Point of no return の見極め
  ■ 図表ができたら指導者に相談
  ■ 生成AI 活用術 ― 現時点までの原稿で意見をもらおう
 13.背景 (Background)
  ■ 背景の出来により結果の意義がより明確になる
  ■ 生成AI活用術 ― 初稿原稿を作ってもらおう
  ■ 記述の責任は著者であるあなたにある
 14.方法 (Methods)
  ■ Methods に個性は必要ない.型にはまろう
  ■ 生成AI 活用術 ― 統計手法を聞いてみる
 15.結果 (Results)
  ■ Results のお作法とは
  ■ 生成AI 活用術 ― ぎこちない英文を修正してもらおう
 16.考察 (Discussion) その@
  ■「 結果のサマリー」 に生成AIは使える
  ■ Limitations は過不足なく書く
  ■ Conclusions は自分の言葉で書こう
  ■ 生成AI 活用術 ― Limitations を相談してみよう
 17.考察 (Discussion) そのA
  ■ 研究の新規性,価値,意義を伝える
  ■ 生成AI 活用術 ― 自分の研究の意義を聞いてみよう
 18.引用文献
  ■ 引用する文献は必ず読む:基本中の基本
  ■ 引用文献管理ツールを使おう
  ■ AI を用いた主な論文検索ツール
 19.論文の最後に書くべきポイント
  ■ Acknowledgement,著者の役割,資金の情報,COI
  ■ 記載例
 20.Figure の説明
  ■ 生成AI による医療画像の解釈にはまだ制限がある
  ■ データや結果の説明文は生成できる
  ■ 生成AI 活用術 ― 画像をアップロードして聞いてみる
 21.音読のススメ
  ■ 必ず音読しよう
 22.英語校正サービスと剽窃チェック
  ■ 人が行う英語校正サービスの併用は文章の質を上げる
  ■ 生成AI を利用したなら剽窃チェックは必須
 23.カバーレター
  ■ カバーレターは最初のつかみ.核心を簡潔に
  ■ 生成AI 活用術 ― カバーレターが論文の運命を決めるのか
 24.投稿誌の決め方
  ■ 遠慮せずに 「ワンチャレンジ」
 25.リジェクトのときにどうするか
  ■「 お祈りメール」 は2種類ある
  ■ Editorial kick
  ■ 査読には回ったがリジェクト
 26.リバイスは大チャンス
  ■ リバイスは 「掲載を検討しますよ」 というメッセージ
  ■ 査読者のコメントを正確に理解しよう
 27.トランスファーとは
  ■ 別の雑誌もいいかもしれない
 28.レスポンスレターは丁寧に
  ■ 返答を書く前にコメントをよく吟味
  ■ 査読者がレスポンスレターだけで採否がつけられるように
  ■ 査読者には丁寧な表現を
  ■ いざとなったら反論することもできる
 29.アクセプト後のお話 (オープン化など)
  ■ アクセプトされたらみんなで喜ぼう
  ■ 掲載費,オープンアクセス,著作権,APCs:論文は誰のものなのか
  ■ ハゲタカジャーナルに気をつけろ
  ■ オープンアクセスにしたほうが論文は引用されるのか
 30.論文のその先へ
  ■ 私たちの戦いはこれからだ!

序文

 43 歳の夏に幸運にも国立大学医学部の教授の任を拝することとなった私にとって,大きなターニングポイントとなったのは,米国クリーブランドクリニックでの研究生活である.異国の地での挑戦に不安もあったが,世界トップレベルの臨床研究者の方々から直接指導を受け,抄録作成・口頭発表・論文執筆といった研究の基礎から応用までを実践的に学べたことは,何物にも代えがたい経験となった.その過程で強く実感したのは,「学術のコツ」 を深く理解することの重要性である.コツを確実に押さえることで迷いが減り,研究の進捗は著しく向上していった.
 帰国後,この貴重な経験を後進に伝えたいと考えたが,適切な教材や参考書が見当たらず,徒弟制度のような形でしか伝えられないのではないかと,諦めにも似た気持ちを感じていた.そんな中で出会ったのが「 生成AI」 である.文章作成やデータ分析を効率的に行えるこのツールは,従来の仕事の速度を数倍に加速させ,もはやその存在なしには仕事を考えられないほどの可能性を秘めていた.しかし,学術領域で生成AI を効果的に活用するためには,やはり学術分野の基本的な「 コツ」 を理解していることが不可欠だと気づいた.そしてそのようなコツは,研究者それぞれの経験により得る部分が大きく,生成AIはまだまだ教えてくれない.そこで,学術のコツと生成AI 活用法を組み合わせた書籍があれば,多くの医療従事者が学術分野での不安を減らし,より効率的に研究を進められるのではないかと考えるようになった.そのような折に,南江堂から声をかけていただき,本書の執筆が実現した.
 生成AI は確かに画期的なツールであるが,その基盤となるデータや知識は,私たち人類が長年にわたって蓄積してきたものである.学術研究は新たな発見や創造を生み出す人間ならではの営みであり,それは生成AI の能力をも超えるものだと確信している.本書のタイトル「 生成AIを超えろ!」 には,生成AIに対する人間としての矜持と挑戦の意志を込めた.
 この本が,読者の皆様にとって「 学術のコツ」 への理解を深め,生成AIを効果的に活用しながら,さらにそれを超える創造性を発揮するための一助となれば幸いである.私たちはまだまだ,AI に仕事を譲り渡すわけにはいかない.
2024年12月
楠瀬 賢也


はじめに
 いつからだろうか,自分の使用するウェブブラウザに文章生成AI が常駐するようになったのは.他愛のない会話も,通常は聞きにくい質問も,専門家でも意見が分かれる難問も,丁寧に,そして詳細に回答を返してくれる.携帯電話がそうであったように,インターネットがそうであったように,今回は生成AI が,いつのまにか私たちの生活のすべてを大きく変えようとしている.
 この「 はじめに」 の文章も,これからはすべてを自分で書くことはないかもしれない.だからこそ,「昔は自分の頭だけでも文章を書けたんだよ」 ということを留めておくために,今回は自分の言葉のみで書き上げた序文を残しておきたい.私たちはもう生成AI がなかった時代には戻れない.戻れないのであれば,少しでも生成AI を自分の武器として磨き上げることに頭をシフトすることを,真剣に考えるタイミングに来ている.
 本書は,生成AI の存在が当たり前の時代を迎えるにあたり,生成AI がなかった時代にまがりなりにもアカデミック・ライティングの薫陶を受けた筆者らが,若干の私見を織り交ぜながら,そして今だからこそ残せる,最後の医学系抄録・発表・論文作成指南書である.本書は通読もよいが,読者のみなさんがそれぞれ現在取り組まれている研究内容にあわせて,必要な章をピックアップして細切れに読んでいただいてもよいと思う.本書が生成AI を自分の武器として,文章作成業務に活用するきっかけとなるのであれば幸いである.
 あなたが生成AI という新しい武器を身に着けた先には,あなただけでも,そして生成AI だけでも辿り着けない世界が待っているでしょう.自ら辿り着いたその先で,新しい世界を存分に堪能してほしい.
2024 年12 月
野村 章洋

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