胆道がん・膵がん・膵NET薬物療法クリニカルガイド
| 編集 | : 奥坂拓志/池田公史/上野誠 |
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| ISBN | : 978-4-524-21483-9 |
| 発行年月 | : 2025年10月 |
| 判型 | : A5判 |
| ページ数 | : 152 |
在庫
定価4,730円(本体4,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

胆道がん・膵がん・膵NET(神経内分泌腫瘍)における薬物療法は,日々新たな展開を見せている.新薬の登場により治療選択肢は広がったが,薬剤の使い分けや副作用対策など,臨床現場では複雑な判断が求められる.本書は,最新薬剤の特徴と適応,副作用への対応はもちろんのこと支持療法,精神・栄養管理にも言及し,現場での実践に直結する知識を提供する.治療に迷う医療者にとって,信頼できる指針となる一冊.
T 胆道がん
胆道がんの薬物療法総論
一次治療
1免疫チェックポイント阻害薬が適応となる患者と,適応とならない患者とは?
22剤併用療法,単剤治療を考慮すべき患者とは?
3GCD療法,GCP療法,GCS療法の使い分けは?
4多剤併用療法はいつまで続ける?
二次治療
[レジメン選択のポイント(druggable alterationがない場合)]
1一次治療でGCD療法,GCP療法を選択した場合,および6ヵ月以上の維持療法施行中に再燃した場合の二次治療はどうする?
2一次治療でGCS療法を選択した場合の二次治療はどうする?
[druggable alterationに対する検査と治療のポイント]
1がん遺伝子パネル検査とは?
2FGFR阻害薬の適応とマネジメントは?
3今後臨床導入が期待される薬剤は?
術後補助療法
1S-1による補助療法を開始すべきタイミングと治療期間は?
2術後補助療法の注意点は?
U 膵がん
膵がんの薬物療法総論
一次治療
1GnP療法とFOLFIRINOX療法の使い分けは?
2単剤治療を考慮すべき患者とは?
3局所進行膵がんに対する化学放射線療法と全身化学療法の使い分けは?
4BRCA変異検査のタイミングおよび陽性者への治療はどうする?
二次治療
1GnP療法後の二次治療はどうする?
2FOLFIRINOX療法後の二次治療はどうする?
3局所進行膵がんに対する化学放射線療法後の治療はどうする?
術前補助療法
1切除可能膵がんの術前補助療法の治療選択は?
2切除可能境界膵がんの術前補助療法の治療選択は?
3術前補助療法が有害事象で継続できない場合はどうする?
術後補助療法
1S-1による補助療法を開始するタイミングと治療期間は?
2術後補助療法の注意点は?
V 膵神経内分泌腫瘍
膵神経内分泌腫瘍の薬物治療総論
膵神経内分泌腫瘍
[薬物治療]
1治療レジメン選択のポイントは?
2機能性膵NENのマネジメントのポイントは?
[ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)]
1PRRTが適応となる患者とは?
2有害事象対策のためのマネジメントはどうする?
膵神経内分泌がん
1治療レジメン選択のポイントは?
2マネジメントのポイントは?
W 合併症対策
胆道がん・膵がん
1閉塞性黄疸を有する胆道がん・膵がんの治療開始のタイミングとレジメンは?
2腎機能低下者への治療選択および治療時の注意点は?
3間質性肺炎合併患者への治療選択は?
4高齢患者への治療選択は?
膵神経内分泌腫瘍
1腎機能低下者への治療選択および治療時の注意点は?
2間質性肺炎合併患者への治療選択は?
3高齢患者への治療選択は?
4糖尿病合併患者での注意点は?
X 薬物療法中に遭遇しやすい有害事象への対応と症状緩和
1免疫関連有害事象(irAE)
2悪心・嘔吐
3末梢神経障害
4下痢
5がん悪液質
6静脈血栓塞栓症
7患者・家族への精神・心理サポート
付録 レジメン一覧
胆道がん
1) GCD療法(GEM+CDDP+デュルバルマブ)
2) GCP療法(GEM+CDDP+ペムブロリズマブ)
3) GCS療法(GEM+CDDP+S-1)
4) GC療法(GEM+CDDP)
5) GS療法(GEM+S-1)
6) S-1療法
7) ペミガチニブ療法
8) フチバチニブ療法
膵がん
1) GnP療法(GEM+nab-PTX)
2) mFOLFIRINOX療法
3) GEM+S-1療法
4) Nal-IRI+5-FU/LV療法
5) GEM療法
6) S-1療法
7) オラパリブ療法
膵神経内分泌腫瘍
1) エベロリムス療法
2) スニチニブ療法
3) ランレオチド療法
4) ストレプトゾシン療法
5) CDDP+エトポシド療法
6) CDDP+イリノテカン療法
7) カルボプラチン+エトポシド療法
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)によると,わが国の膵がん・胆道がんの罹患数(2021年)は45,819人および21,617人,死亡数(2023年)は40,175人および17,239人であり,これらの疾患に罹患した大部分の患者が完治することなく原疾患により死亡しています.5年相対死亡率は膵がん8.5%,胆道がん24.5%で,いずれの疾患も依然としてきわめて予後不良であり,今なお難治がんの代表疾患とされています.その主な理由は,早期がんの発見が難しく診断時に多くの例で切除不能であることと,再発例および非切除例に対する治療法が乏しく有効な薬物療法が長く確立してこなかったことによります.また,膵NET(神経内分泌腫瘍)は比較的予後良好ではあるものの,最近まで保険適用の得られた標準的な薬物療法がきわめて少ない疾患でした.しかし近年,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬,多剤併用療法などの開発が精力的に進められ,これらのいずれのがん種においても有効な薬物療法が複数導入され,患者の予後が改善されつつあります.私たちの臨床現場において薬物療法の果たす役割はますます大きくなり,また適切な治療実施に対するニーズは臨床的にも社会的にも非常に高くなってきているといえるでしょう.
本書は,患者の状況に応じた薬剤の選び方や使用上の注意点を解説し,臨床現場で最適な治療を提供するための指針となることを目指して作成されました.各章の最初に膵がん・胆道がん・膵NETの治療の変遷や治療アルゴリズムなどの概要を俯瞰できる「総論」を設け,わかりやすく解説しています.続く各項目では,臨床現場で遭遇しやすい疑問点や問題点をとり上げ,それらに適切に対処するための指針を詳細かつ丁寧に示しています.項目冒頭の「ここがポイント」では各レジメンの選択や投与方法など,それぞれの項目におけるエッセンスが簡潔にまとめられています.また,随所に「Specialist’s Note」をちりばめて臨床上の要点や今後の展望に言及し,さらに後半の2つの章では薬物療法を導入するにあたって問題となることの多い合併症への対応方法,薬物療法を導入した後に遭遇しやすい有害事象への対策および症状緩和の方法について解説しています.執筆者の皆様はこれらの臨床現場における悩ましい課題に日ごろから果敢に挑戦し続けておられる,この分野における新進気鋭の先生方です.しかし,そうした方々でさえもなかには回答に苦慮する疑問点や問題点もあったであろうと思われます.丁寧に執筆いただいた先生方にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます.
本書が,依然として予後不良な厳しい膵がん・胆道がん,そして膵NETに対峙する先生方の診療に少しでも役に立ち,患者さんの治療成績の向上や生活の質の改善に貢献することができれば,作成に携わった者として望外の喜びです.
最後に,本書を手に取ってくださった皆様のさらなるご発展を祈念するとともに,本書の企画・制作を担当していただいた南江堂編集部の諸氏にこころより感謝申し上げます.
2025年9月
奥坂拓志
池田公史
上野 誠

