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変形性股関節症診療ガイドライン2024改訂第3版

監修 : 日本整形外科学会/日本股関節学会
編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,変形性股関節症診療ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-21377-1
発行年月 : 2024年5月
判型 : B5判
ページ数 : 176

在庫あり

定価4,400円(本体4,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

変形性股関節症は関節軟骨の変性や摩耗による関節の変形,骨棘形成などの骨増殖を特徴とする.股関節部の疼痛と可動域制限や跛行などの歩行障害を呈し,多くは進行性で長い時間をかけて病期は悪化していく.変形性股関節症の「疫学・自然経過」「病態」「診断」に関して,最新の知見とガイドライン作成指針に基づいて解説.また「保存療法」「関節温存術」「人工股関節全置換術(THA)」および「大腿骨寛骨臼インピンジメント」の各章では多様なclinical question(CQ)を設定し推奨度を示した.

前文

第1章 疫学・自然経過
  Background Question 1-1 わが国における変形性股関節症の有病率は
  Background Question 1-2 わが国における変形性股関節症の発症年齢は
  Background Question 1-3 変形性股関節症の有病率の諸外国との比較
  Background Question 1-4 変形性股関節症に遺伝の影響はあるか
  Background Question 1-5 変形性股関節症の発症の危険因子は
  Background Question 1-6 変形性股関節症の進行の予測因子は
  Background Question 1-7 変形性股関節症の自然経過は

第2章 病態
  Background Question 2-1 変形性股関節症に特徴的な骨形態は
  Background Question 2-2 変形性股関節症による疼痛に関連する因子は何か
  Background Question 2-3 変形性股関節症と関節唇損傷との関連はあるか
  Background Question 2-4 変形性股関節症と骨粗鬆症との関連はあるか
  Background Question 2-5 変形性股関節症と骨盤傾斜・脊椎アライメントとの関連はあるか
  Background Question 2-6 変形性股関節症と膝・足関節症・下肢アライメントとの関連はあるか
  Background Question 2-7 急速破壊型股関節症と変形性股関節症との関連はあるか
  Background Question 2-8 変形性股関節症と全身性変形性関節症との関連はあるか
  Background Question 2-9 二次性変形性股関節症の原因は

第3章 診断
  Background Question 3-1 変形性股関節症の診断基準は
  Background Question 3-2 変形性股関節症の臨床評価基準は
  Background Question 3-3 変形性股関節症に特徴的な患者背景は
  Background Question 3-4 変形性股関節症に特徴的な身体所見は
  Background Question 3-5 変形性股関節症における単純X線検査での画像所見は
  Background Question 3-6 変形性股関節症における単純X線検査以外の画像所見は
  Background Question 3-7 変形性股関節症の補助診断となる検査は
  Background Question 3-8 変形性股関節症の鑑別診断は
  Background Question 3-9 変形性股関節症とその他の疾患との鑑別方法は
  Background Question 3-10 人工知能(AI)を用いた変形性股関節症の診断精度は

第4章 保存療法
  Clinical Question 4-1 変形性股関節症に対する患者教育は推奨されるか
  Clinical Question 4-2 変形性股関節症に対する運動療法は推奨されるか
  Clinical Question 4-3 変形性股関節症に対する物理療法は推奨されるか
  Clinical Question 4-4 変形性股関節症に対する歩行補助具・装具は推奨されるか
  Clinical Question 4-5 変形性股関節症に対して内服薬物療法を行うことは推奨されるか
  Clinical Question 4-6 変形性股関節症に対してサプリメント内服を行うことは推奨されるか
  Clinical Question 4-7 変形性股関節症に対して関節内注入(ステロイド,ヒアルロン酸)を行うことは推奨されるか

  Future Research Question 4-8 変形性股関節症に対してPRP(platelet rich plasma)療法は推奨されるか

第5章 関節温存術

  関節温存術について

  Background Question 5-1 青・壮年期の前股関節症・初期変形性股関節症に対して関節温存術は推奨されるか
  Background Question 5-2 中年期の進行期・末期変形性股関節症に対して関節温存術は推奨されるか

  Clinical Question 5-3
       @青・壮年期の進行期・末期変形性股関節症に対して関節温存術は推奨されるか
       A中年期の前股関節症・初期変形性股関節症に対して関節温存術は推奨されるか

  Future Research Question 5-4 寛骨臼形成不全に対する関節温存術に関節内処置を加えることは推奨されるか

  Clinical Question 5-5
       @Borderline dysplasiaに対して寛骨臼回転骨切り術(寛骨臼移動術)は推奨されるか
       ABorderline dysplasiaに対して関節鏡下手術は推奨されるか
  Clinical Question 5-6 関節温存術は寛骨臼形成不全を有する患者のスポーツ参加に対して推奨されるか

第6章 人工股関節全置換術(THA)

  Background Question 6-1 変形性股関節症に対するTHAによる生活の質(QOL)の向上は
  Background Question 6-2 変形性股関節症患者に対するTHAの術後合併症(脱臼,感染,静脈血栓塞栓症,神経損傷,骨折)の頻度は

  Clinical Question 6-3
       @THA後の脱臼対策として,32mm骨頭は28mm骨頭に比べて推奨されるか
       ATHA後の脱臼対策として,dual mobility摺動部は推奨されるか
       BTHA後の脱臼対策として,カップ外方開角40±10°かつ前方開角15±10°の範囲内の設置は,その範囲外の設置に比べて奨されるか
  Clinical Question 6-4 変形性股関節症患者に対するセメント使用THAは,長期成績の観点から推奨されるか
  Clinical Question 6-5 変形性股関節症患者に対するセメント非使用THAは,長期成績の観点から推奨されるか
  Background Question 6-6 高度架橋ポリエチレンの使用の臨床成績は
  Clinical Question 6-7 セラミックオンセラミックの使用は推奨されるか
  Clinical Question 6-8 高位脱臼股に対する転子下短縮骨切り術を併用したTHAは,転子下短縮骨切り術を併用しないTHAと比べて推奨されるか
  Clinical Question 6-9 THA術前後の通院リハビリテーションは,患者教育単独,あるいは在宅運動療法と比べて推奨されるか
  Clinical Question 6-10 変形性股関節症患者に対するTHAにおいて各種進入法(@前方進入法 A側方進入法 B後方進入法)のうちいずれが推奨されるか
  Clinical Question 6-11(1)THAのカップ設置においてナビゲーションシステムはフリーハンドテクニックと比べて推奨されるか
  Clinical Question 6-11(2)Robotic arm-assisted THAのカップ設置は,フリーハンドテクニックによるTHAと比べて推奨されるか

  Future Research Question 6-12 認知症のある変形性股関節症患者に対するTHAは推奨されるか

第7章 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)
  Background Question 7-1 FAIの診断基準は
  Background Question 7-2 FAIに特徴的な骨形態の頻度は
  Background Question 7-3 FAIに特徴的な骨形態は関節症発生の危険因子か

  Clinical Question 7-4 FAIに対して保存療法を行うことは患者教育のみ行うことに比べて推奨されるか
  Clinical Question 7-5 保存療法で改善しないFAIに対して手術療法を行うことは推奨されるか

改訂第3 版の序

 2000 年代初頭から様々な領域で診療ガイドラインがつくられるようになり,日本整形外科学会においても2002 年に診療ガイドライン委員会がスタートし,11 疾患のガイドラインを作成することとなった.そのひとつが変形性股関節症で,2008 年に変形性股関節症診療ガイドラインの初版が出版された.初版では変形性股関節症(股関節症)を疫学・自然経過,病態,診断,保存療法,関節温存手術と関節固定術,人工股関節全置換術(THA)の6 つの章に分け,それぞれのresearch question に対して推奨文と解説を加えて,変形性股関節症のQ&A として読者の期待に応えてきた.

 その後,診療ガイドライン自身の方向性も大きく変化した.初版当時はRCT や観察研究などの研究デザインそのものをエビデンスレベルとするのが通常であったが,さらにシステマティックレビューを行い,それらを統合してエビデンスレベルおよび推奨を決める手法が取られるようになった.2016 年に出版された第2 版ではエビデンスを定性的または定量的にメタ解析することを基本とし,「益と害」の概念も重要視した.すなわち,治療の効果(益)のみを記述するのではなく,合併症の発生(害)なども考慮してバランスよく推奨を決定した.また,新しい疾患概念であった大腿骨寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement:FAI)をひとつの章として独立させ,その病態・診断・治療についての概説が追加された.

 改訂第3 版の作成方針は第2 版を基本的に踏襲したものであるが,「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2020」をもとにアップデートされた方法で作成された.「疫学・自然経過」,「病態」,「診断」は,要約・解説の形式に統一し,Background Question(BQ)として前版の内容に新知見を加えたものである.治療に関しても,すでに確立され,広く受け入れられている内容はBackground Question として記載した.Clinical Question(CQ)はより実臨床に即した内容に整理を行い,推奨文は「行うこと/ 行わないことを強く/ 弱く推奨する」という統一された形式で表現した.また,現在推奨を決められなくとも,今後の研究が期待される内容のquestion はFuture Research Question(FRQ)として取り上げた.

 最終的な推奨を決定するまでには多くの方にアドバイスをいただいた.特に日本医療機能評価機構(Minds)EBM 医療情報部の吉田雅博先生には毎回の委員会にご出席いただき,委員たちの直面した問題に都度適切な助言をいただいた.改めて厚く御礼を申し上げる.キックオフして約3 年間の時間が流れ,ここに変形性股関節症診療ガイドライン第3 版を上梓することができた.読者の皆様が,策定委員の労苦を汲み取っていただき,本ガイドラインが医師と患者の治療選択をより具体的にサポートできることを心より祈念する.

 改訂の機会をお許しいただいた日本整形外科学会前理事長・松本守雄先生,診療ガイドライン委員会前担当理事・齋藤貴徳先生,現理事・坂井孝司先生,前委員長・石橋恭之先生,現委員長・西井孝先生,そして多大なご支援を賜った日本股関節学会前理事長・杉山肇先生,現理事長・菅野伸彦先生に感謝を申し上げる.最後に本ガイドラインの改訂にご尽力いただいたすべての策定委員,膨大な実務とスケジュール管理をこなしていただいた国際医学情報センターの逸見麻理子氏,刊行を仕上げていただいた南江堂の枳穀智哉氏に深謝申し上げる.

2024 年5 月
日本整形外科学会・日本股関節学会
変形性股関節症診療ガイドライン策定委員会
委員長 中島 康晴





第2 版の序

 2008 年に変形性股関節症診療ガイドラインの初版が出版されて早や7 年が経過した.初版では変形性股関節症(股関節症)を疫学,病態,診断,保存療法,関節温存術,人工股関節全置換術の6 つの章に分け,51 題のclinical question(CQ)に対して推奨文と解説を加えた.検索された文献は3,000 余りに上り,股関節症のQ&A として読者の期待に応えてきたと思われる.しかしながら日進月歩の医学において,ガイドラインの寿命は5 年以内とも言われている.確かに股関節領域においても多くの新しい話題が注目されるようになった.その例として,大腿骨寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement:FAI)やメタルオンメタルTHA における副作用を挙げることができる.FAI の概念は,これまで原因不明で一次性股関節症と呼んでいた病態の一部を明らかにしたし,金属イオンの深刻な問題は私たちに新しい機種がもつ危険性を自覚させた.これらの諸問題をup date する目的で2013 年に策定委員会が組織された.

 一方,診療ガイドラインの方向性も大きな変化を遂げている.初版発刊当時はRCT やcase series などの研究デザインそのものを論文のエビデンスレベルとするのが通常であったが,最近ではさらにsystematic review を行い,それらを統合してエビデンスレベルを決める手法が取られるようになった.本ガイドラインにおいても,数多くのエビデンスを定性的または定量的にメタ解析を行うことを基本とした.また「益と害」の概念も重要視されている.すなわち,治療の効果(益)のみを記述するのではなく,合併症の発生やその医療にかかる費用(害)もバランスよく記載することが重要視されている.さらにはエビデンスの質ばかりでなく,患者の好みや希望も考慮して,ある状況下で医師と患者の治療選択をより具体的にサポートできるガイドラインを目指している.

 今回の改訂にあたり初版のCQ は抜本的に見直した.新しい話題をできるだけ取り入れて,実臨床に即したCQ に統廃合・整理した結果,計59 題のCQ となった.上記FAI を疾患として捉えるべきか,病態として考えるべきかは議論の分かれるところであるが,改訂版ではFAI を1 つの「章」として独立させ,その病態・診断・治療について概説している.今後の議論の土台になれば幸いである.

 最後に本ガイドライン改訂にご尽力された策定委員会の皆様に深謝を申し上げる.特にガイドライン作成方法論担当として参加をお願いした国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院人工透析・一般外科の吉田雅博先生にはエビデンスの統合から推奨の決め方まで惜しみない助言を頂いた.ここに改めて心よりお礼を申し上げる.

2016 年4 月
日本整形外科学会
変形性股関節症診療ガイドライン策定委員会
委員長 中島 康晴





変形性股関節症診療ガイドライン(初版)の序

 日本整形外科学会の診療ガイドラインは,日常診療において質の高い医療を提供するための拠り所として,また,医師と患者さんのインフォームドコンセント獲得および治療方針選択を助ける手引きとして,平成14 年から策定が始められた.

 まず,11 疾患に対する診療ガイドライン策定に着手し,平成17 年から19 年までに9 疾患の診療ガイドラインが完成した.平成19 年には新たに3 疾患の診療ガイドライン策定が決定し,2 疾患については,診療ガイドラインに基づいた患者さんのためのガイドラインを刊行した.当初計画した11 疾患については,平成20 年中にすべての診療ガイドラインが完成する予定である.

 診療ガイドラインの策定にあたっては,まず,国内外の科学論文を広範囲に収集し,その論文を科学的根拠に基づいて評価し,それぞれの疾患のエキスパートが厳密な査読を行ってエビデンスレベルを決定した.日常診療において直面する疑問(リサーチクエスチョン)を設定し,集積したエビデンスに基づいて,それぞれのリサーチクエスチョンに対する推奨内容および推奨度を示した.推奨内容と推奨度は,ガイドライン策定委員が慎重な討議を重ね,かつパブリックコメントでの客観的な評価を踏まえて示したものである.ただし,診療ガイドライン策定を行った時点で十分なエビデンスが確定していない内容の場合は,エキスパートオピニオンを踏まえ,策定委員が推奨度を設定した.

 診療ガイドラインはエビデンスの集約ではなく,エビデンスに基づいた診療の手引きである.また,60 〜 95%程度の患者さんについて,エビデンスに基づいた選択肢を提示したものである.したがって,すべての患者さんあるいはすべての臨床的局面に対応できる標準的な治療方針ではない.また,個々の医師の決定権を制限するものでもない.この点を十分念頭に置いた上で診療ガイドラインを活用していただきたい.

 診療ガイドライン策定に尽力された策定委員の先生方,パブリックコメントに建設的な意見を寄せていただいた会員の皆様,および委員会運営に力強い支援をくださった担当理事の先生方にお礼を申し上げたい.

2008 年5 月
日本整形外科学会
診療ガイドライン委員会委員長
久保 俊一

9784524213771