松島流 肛門疾患手術
なぜそうするのか?
監修 | : 松島誠/宮島伸宜 |
---|---|
編集 | : 松島小百合 |
ISBN | : 978-4-524-21178-4 |
発行年月 | : 2025年4月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 184 |
在庫
定価9,900円(本体9,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

世界有数の診療実績を誇る大腸・肛門疾患の専門病院である松島病院の,100年にわたる肛門疾患手術のエッセンスを言語化した手術書.肛門部の代表的な疾患に対し,手術写真とその要点を表した手術イラストを用いて「なぜそうするのか?」という治療コンセプトとともに手術手順をわかりやすく解説.確信をもって手術に臨み,判断が分かれる難しい症例にも的確に対応する力を身につけられる一冊.
第T章 序論
第U章 総論
A.手術に必要な解剖と用語
1.肛門管の上皮
2.肛門腺
3.肛門管周囲の筋
4.肛門の血管
5.肛門の神経
6.肛門管周囲の組織間隙
B.手術の考え方
1.痔核
2.直腸粘膜脱
3.裂肛
4.痔瘻,直腸肛門周囲膿瘍
5.直腸脱
6.膿皮症
7.毛巣洞
8.尖圭コンジローマ
C.肛門部手術の麻酔
1.外来手術(局所麻酔下処置)
2.手術室での肛門疾患全般の手術(腰椎麻酔,静脈麻酔)
3.手術室における全身麻酔手術
D.体位,セッティング
E.手術に必要な器具
1.準備しておく器具
2.使用する糸
F.術前検査で問題となる併存疾患
1.糖尿病
2.免疫抑制薬服用
3.放射線治療後
4.腎機能障害
5.肝機能障害
6.血小板異常,凝固異常,抗血栓薬服用
7.緑内障
8.炎症性腸疾患
第V章 各論
A.痔核の手術
1.待機手術:結紮切除術
2.嵌頓痔核の手術
3.難易度の高い手術
4.硬化療法
5.痔核結紮切除術中のpitfallと次の一手
6.術後合併症と対処方法
7.各治療法の特徴と利点・欠点
B.直腸粘膜脱の手術(MuRAL法)
1.MuRAL法の概要
2.手技の解説
3.MuRAL法と他の治療法との比較
C.裂肛の手術
1.肛門狭窄がある場合
2.肛門狭窄が軽度の場合
3.術後合併症と対処方法
D.痔瘻の手術
1.低位・高位筋間痔瘻(UL型・UH型)
2.V型痔瘻
3.W型痔瘻と複雑な痔瘻
4.術後合併症と対処方法
5.Crohn病の痔瘻に対する手術
E.直腸脱の手術
1.経会陰手術
2.経腹的手術
F.膿皮症の手術
1.膿瘍期と慢性期
2.手術創のデザイン
3.痔瘻を合併している場合
4.病変が広範囲の場合
5.術後合併症と対処方法
G.毛巣洞の手術
1.手術の概要
2.手術創のデザイン
3.一次縫合は可能か,一次縫合できない場合の処置
H.尖圭コンジローマの手術
1.コンジローマの切除方法
2.手術以外の治療法
3.術後合併症と対処方法
このたび,松島病院から最新の肛門疾患手術書「松島流 肛門疾患手術−なぜそうするのか?」を編纂・出版することになった.
本書は,1924(大正13)年に初代 松島善三の開院した「内科・外科・肛門科 松島醫院」から,一昨年2023(令和5)年に新病院として移転新築した現在の「松島病院 大腸肛門病センター」まで続く,肛門病診療の経験と研鑽を記録・研究し,その成果を臨床の場で繰り返し検証しながら具現化してきた松島病院 大腸肛門病センターにおける「今」の診療と手術について記載しているものである.
松島病院は,年間外来新規患者数8,673名,年間6,443例の入院手術と2,453例の外来手術を行うhigh volume centerであり(数値は2023年度),本書は当院に在籍する経験豊富な指導医・専門医によって監修・編集・執筆されている.単に手術術式・方法の一般的説明にとどまらず各手術における「コツ」や「ピットフォール」,さらには実際の手術室でどのような理由と目的でどこをどのように処置し手を進めるかを,第一助手として指導医が直接指導するがごとく著されている.
さらに,肛門疾患には同一病名であってもさまざまなバリエーションや複数の疾患が併存することもまれではなく,そのような症例の治療についても具体的に記載されている.また,症例ごとにすなわち患者一人一人で体質や知覚,皮膚・粘膜・筋層などの質の相違は千差万別であり,患者ごとに求めるものが医療者との間で相違することも少なくはないのが現状であり,これらの課題にも応えられるものとなっていると自負している.
以上のような点が本書の大きな特長であり,副題に「なぜそうするのか?」と名づけた理由でもあるが,「第T章 序論」に全体の見取り図を提示しているので,まずはそちらをご覧いただきたい.
現在の日本の肛門疾患の教育は卒前・卒後を通じてまだ十分とは言えない部分があり,肛門科の診療においては数多くの症例を経験できる専門施設での修練が必要である.一方,わが国のこの領域の医療水準は世界の中で極めて高いものであると認められているところではあるが,肛門科診療の将来を考え,国内だけの評価にとどまらない医療を進めるべきであると考える.
医学において,特に治療学は日進月歩であり,本書も刊行後またいずれ改訂することになると思うが,松島病院の100年間の経験・成果の結晶である本書が,肛門病に関する医学の未来の進歩発展にいささかでも貢献できるなら望外の喜びである.
2025年2月
松島 誠
