免疫性神経疾患ハンドブック改訂第2版
| 編集 | : 楠進/海田賢一 |
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-21176-0 |
| 発行年月 | : 2025年5月 |
| 判型 | : B5判 |
| ページ数 | : 384 |
在庫
定価12,100円(本体11,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

多発性硬化症,Guillain-Barré症候群をはじめとした免疫性神経疾患に関する最新の臨床実績と研究成果を,第一人者たちが詳しく解説.幅広い疾患の疫学,病理・病態,神経学的所見,診断,治療を網羅.改訂ではこの間に解明された病態や新薬などの新知見を盛込み,ガイドラインの改訂にも対応.実践に即役立つエッセンス満載で,必読の一冊.
第T章 総 論
A 免疫性神経疾患と細胞性免疫
1.神経免疫学の発展
2.細胞性免疫の基礎
3.神経免疫学 -基礎から最近の動向まで
B 免疫性神経疾患と液性免疫
1.免疫性神経疾患と液性免疫の関わり
C 血液脳関門(BBB)と血液神経関門(BNB)
1.構造と機能
2.免疫性神経疾患とバリアの研究・臨床応用
D 免疫性神経疾患と幹細胞(iPS 細胞の活用を含む)
1.神経炎症と幹細胞
2.神経免疫疾患とiPSCs 研究
E 免疫性神経疾患と腸管免疫
1.腸内細菌が神経炎症を制御するメカニズム
2.腸内細菌叢研究の臨床応用
F 免疫性神経疾患の動物モデル
1.多発性硬化症/視神経脊髄炎スペクトラム障害
2.自己免疫性末梢神経炎(Guillain-Barre症候群,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー)
3.重症筋無力症
4.炎症性ミオパチー
G 免疫性神経疾患のバイオマーカー
1.髄液バイオマーカー
2.末梢血バイオマーカー
H 免疫性神経疾患治療概論(ステロイド,免疫抑制薬,分子標的薬)
1.急性期治療
2.慢性期治療
3.分子標的療法
4.感染症の再活性化
5.女性とライフイベント
6.今後の課題
第U章 免疫性中枢神経疾患
A 多発性硬化症(MS)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
B 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.治 療
C MOG 抗体関連疾患(MOGAD)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病態と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
D 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病因と病態
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
E 自己免疫介在性脳炎・脳症(AE)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見(検査所見を含む)
3.病理と発症機序
4.診 断
5.治療と予後
F 免疫性中枢神経疾患の鑑別診断
1.臨床経過や症状からの鑑別
2.検査の進め方
3.鑑別を要する非免疫性疾患
4.実際の診療における鑑別
第V章 免疫性末梢神経疾患
A Guillain-Barre 症候群(GBS)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
7.今後の展望
B Miller Fisher 症候群と関連疾患(Bickerstaff 脳幹脳炎を含む)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病態と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
C 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病態と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
D 多巣性運動ニューロパチー(MMN)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病因と病態
4.診断と鑑別診断
5.治療と予後
E IgM パラプロテイン血症を伴うニューロパチー(抗MAG ニューロパチーを含む)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
F 自己免疫性ノドパチー(AN)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病態と発生機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
G クロウ・深瀬(POEMS)症候群
1.臨床疫学
2.症状と神経学的・内科的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
第W章 免疫性筋疾患
A 重症筋無力症(MG)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病態と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
B Lambert-Eaton 筋無力症候群(LEMS)
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
C 炎症性ミオパチー
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.画像所見
5.検査所見
6.診 断
7.治療と予後
第X章 その他の免疫性神経疾患
A 神経Behcet病と神経Sweet
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.画像所見
5.検査所見
6.診 断
7.治療と予後
B 膠原病に伴う神経障害(血管炎症候群を含む)
1.膠原病と神経障害
2.血管炎症候群
3.Sjogren症候群
4.IgG4 関連疾患
C 橋本脳症
1.臨床疫学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
D 傍腫瘍性神経症候群(PNS)
1.臨床疫学
2.自己抗体
3.症状と神経学的所見
4.病理と発症機序
5.診 断
6.治療と予後
E Isaacs 症候群とMorvan 症候群
1.臨床医学
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
F stiff-person 症候群(SPS)
1.臨床疫学と病型
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
G 自己免疫性自律神経節障害(AAG)
1.臨床疫学と病型
2.症状と神経学的所見
3.病理と発症機序
4.検査所見
5.診 断
6.治療と予後
第Y章 神経変性疾患,脳血管障害における免疫の関わり
A 神経変性疾患と免疫
1.神経変性疾患におけるグリア細胞の活性化と神経炎症
2.「非細胞自律性神経細胞死」という新たな病態の概念
3.神経炎症におけるミクログリアの分子病態
4.神経炎症におけるアストロサイトの分子病態
5.神経変性疾患における獲得免疫の役割
6.神経変性疾患における自然免疫反応の役割
B 脳血管障害と免疫
1.脳梗塞急性期と自然免疫
2.脳梗塞慢性期と自然免疫
第Z章 トピックス
A 自己免疫性/傍腫瘍性小脳失調症に関連する新たな自己抗体
1.metabotropic glutamate receptor(mGluR)2抗体
2.glutamate kainate receptor subunit(GluK)2抗体
3.seizure-related 6 homolog like 2(Sez6l2)抗体
4.Neurochondrin抗体
5.adaptor protein-3B2(AP3B2)抗体
6.Septin5 抗体
7.regulatory of G-protein signaling(RSG)8抗体
8.Homer3抗体
B 抗Plexin D1抗体と神経障害
1.自己抗体介在性神経障害性疼痛
2.抗Plexin D1 抗体
免疫性神経疾患は,脳神経内科の守備範囲である大脳・小脳・脳幹・脊髄・末梢神経・神経筋接合部・筋における,免疫学的機序により引き起こされる疾患である.脳神経内科の疾患にはいわゆる難治性疾患が多いが,免疫性神経疾患は免疫機序をコントロールする治療によって目に見える効果が得られるものが多く,神経内科専門医にとって腕の見せどころとなる領域といっても過言ではないであろう.
そのような免疫性神経疾患の最先端の知識を,わかりやすく紹介することを目的として,2013年に免疫性神経疾患ハンドブックが刊行された.それから10年余りが経過したが,その間のこの分野の研究の進歩は目覚ましいものがあり,日常診療においても分子標的薬などの多くの新規薬剤が導入されてきた.また代表的な免疫性神経疾患である多発性硬化症,Guillain-Barré症候群,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP),重症筋無力症などについて,ガイドラインの改訂が行われた.そうした背景をふまえて,今回免疫性神経疾患ハンドブックの第2版が刊行されることとなった.
全体の構成は初版と同様に,総論とそれに続く各論という順番として,総論では最近の話題であり広く関心がもたれている幹細胞や腸管免疫を新たな項目として取り上げた.各論では中枢神経疾患において, 新しい疾患概念であるmyelin oligodendrocyteglycoprotein(MOG)抗体関連疾患(MOGAD)を加えた.末梢神経疾患では,従来はCIDPの中に含まれていた傍絞輪部蛋白に対する抗体陽性のニューロパチーを,自己免疫性ノドパチーとして新たに1 つの項目とした.また筋の免疫性疾患について初版では多発筋炎・皮膚筋炎・封入体筋炎としていたが,炎症性ミオパチーとしてまとめて近年の新しい考え方を紹介していただいた.さらにいわゆる免疫性疾患には分類されない神経変性疾患や脳血管障害の免疫との関連については,初版と同様に最近の進歩を記載いただくこととした.
免疫性神経疾患については,上記のようにさまざまな新規治療が導入され,さらに今も導入にむけての治験や臨床研究が行われている.またその基盤となる基礎研究も大きく進歩している.そのような免疫性神経疾患をとりまくワクワク感を,本書を通じて味わっていただければと考えている.
最後に改訂第2版の刊行にあたって,素晴らしい原稿を寄せていただいた多くの先生方,および大変なご尽力をいただいた南江堂編集部の方々に,ここで改めて御礼を申し上げたい.
2025年5月
楠 進,海田賢一

