みんなで学ぶ肛門外科診療
日帰り手術とプライマリケア
著 | : 大賀純一 |
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ISBN | : 978-4-524-21158-6 |
発行年月 | : 2025年4月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 160 |
在庫
定価5,500円(本体5,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

クリニックや肛門科での診療を一人で担う医師のために,診察から麻酔,注射療法をはじめとする処置と日帰り手術の実際を解説.成書には書かれていない麻酔のかけ方や手順,合併症を起こさないための周術期管理の要点に加え,修練方法や患者対応の勘どころもまとめている.さまざまな修練・経験を積んできた著者のホンネが満載の,肛門疾患診療のために知っておくべきことを学べる実践書である.
0.クリニックの診療と日帰り手術―本書の基本方針
T.クリニックで行う診察・診断
1. 肛門部外来診療の基本−日帰り手術も意識して
A.肛門診療における考え方
B.肛門診療に必要な解剖
C.肛門診療におけるデバイス
2. 肛門診察の基本的な流れ
A.問 診
B.視診・指診(ジギタール)
C.肛門鏡・直腸鏡診
D.怒責診
3. ベッドサイドにおける診察の実際
A.視診・指診
B.肛門鏡・直腸鏡による観察と撮影
4. 診断とカルテへの記載,患者さんへの説明
A.ジギタール
B.デジタル肛門・直腸鏡の所見
C.診断内容のカルテへの記載法
D.診断後の説明
U.肛門部の疾患・病態とプライマリケア
1. 常時脱出性疾患
A.Goligher分類W度脱出性内外痔核
B.直腸粘膜脱
C.直腸脱
D.見張りいぼ,皮垂などの余剰皮膚
E.直腸粘膜脱症候群
F.嵌頓痔核
G.血栓性外痔核
2. 怒責時脱出性疾患
A.脱出性肛門ポリープ
B.Goligher分類U,V度脱出性内痔核
C.直腸瘤
3. 疼痛性疾患
A.急性裂肛
B.慢性裂肛
C.嵌頓痔核・血栓性外痔核
D.肛門・直腸周囲膿瘍
E.肛門上皮びらん
F.硬性下疳,ヘルペスなどの疼痛を伴う性行為感染症(STD)
4. 粘液もしくは便漏出性疾患
A.便失禁
B.痔 瘻
C.直腸脱
5. 肛門周囲皮膚疾患
A.良性皮膚腫瘤
B.悪性皮膚腫瘍
C.肛門皮膚炎
6. その他の肛門部の疾患・症状
A.自己臭症,肛門神経症
B.神経因性骨盤臓器症候群
C.機能性直腸肛門痛
V.肛門部の治療―日帰り手術を中心に
1. 治療法の選択と保存的療法
A.治療法選択の基本的な考え方
B.保存的療法
B-1 全大腸内視鏡検査(TCS)と排便コントロール
B-2 痔疾用薬物治療
2. 半手術療法
A.ゴム輪結紮療法
B.硬化療法
B-1 5%フェノールアーモンドオイル(パオスクレー〇R)療法
B-2 ALTA(ジオン〇R注)療法
B-3 ポリドカノール
C.焼灼治療
3. 手術の術前準備と基本的な手技
A.術前シート
B.切開と縫合について
4. 主な術式
A.結紮切除術(LE)
B.血栓除去術(血栓性外痔核)
C.痔瘻根治術
D.肛門狭窄手術
E.直腸脱の手術
F.直腸粘膜脱形成手術
W.日帰り手術の術前検査と麻酔・術中管理
1. 肛門科における麻酔の基本
A.術前検査
B.肛門外科で実際に行うことの多い麻酔
C.向精神薬と自律神経作用薬:麻酔科の復習@
D.全身麻酔:麻酔科の復習A
E.術中管理
2. 術前処置と麻酔の説明
A.手術前日についての説明
B.前処置による副作用についての説明
C.手術当日についての説明
D.手術の同意を撤回する場合についての説明
E.麻酔についての説明
F.術前処置の省略法
3. 妊婦,授乳婦,小児,アスリートへの処方
A.妊 婦
B.授乳婦
C.乳児を含む小児
D.アスリート
X.日帰り手術後の肛門診察
1. 外科手術後
2. ALTA単独療法後
Y.日帰り手術後に気を付けるべきこと
1. 術後Q&A
2. 排便ケアと排便コントロール
A.腸内環境をよい状態に保つ
B.排便習慣をよい状態に保つ
C.適切な排便コントロール薬の内服を継続する
D.腸内環境と活性生菌製剤
3. 帰宅基準と万が一の備え
A.帰宅基準
B.万が一の備え
付録 よくある患者さんからの質問
コラム 私の肛門外科修行
@アメリカ人の巨大な嵌頓痔核!
A肛門科専門外来を担当―日帰り手術の発想
B肛門科クリニックを開業―こんなにわからないことが
C麻酔科の必要枠―クリニックでの手術の必須知識
D匠のワザを盗む―専門施設見学の極意
E専門施設を見学するには―電話でチャレンジも
F日帰り手術の環境づくり―信頼関係をつくるために
参考動画
@診察室配置とデジタル肛門鏡による診察の様子
A仙骨硬膜外麻酔(診察時の疼痛対策)
B挙筋不全の収縮時・怒責時
CALTA療法の注射
D炭酸ガスレーザーの使用
E肛門表面麻酔
F仙骨硬膜外麻酔(手術前,腹臥位)
まえがき 肛門外科へのいざないと日帰り手術
医師,患者さんともに「肛門外科はその特殊性がゆえに避けて通りたい診療科」であることは周知の事実でしょう.それゆえ肛門疾患の罹患率は高いが命に関わるものでもなく,「羞恥心」や「痛みへの恐怖心」から受診をひかえて我慢している人が多いといわれています.そもそも食事中にタブーとされる「肛門やうんち」を扱うような診療科に進みたいと考える医学生がどれくらいいるでしょうか.加えて肛門外科を教育科目にしている大学は非常に少ないのが現状です.
しかし,排泄行為というものは毎日行う食事のようなもので,人類には必須の行為なのです.そこにはたくさんの疾患が存在し,片手間で治療できるような疾患は多くありません.私自身,当初はバリバリのgeneral surgeonを目指していたので,肛門外科が「必要枠」であることに気づくまでに時間を要しました.よって肛門専門施設で働く機会にも恵まれませんでした.しかし,幸いなことに開業後に多くの高名な先生方の診療や手術を見学する機会に恵まれました.そこで肛門診療の歴史や確立した理論を学ぶことで,改めて肛門外科学の偉人が積み重ねてきたことは本当に素晴らしいものだと感じました.また肛門外科はとても奥が深く,父子秘伝みたいなところもあり,習得するにはかなりの努力が必要です.さらに肛門専門施設も数が限られているため,独学にならざるをえないこともあります.
しかしご心配には及びません.世の中には修行に行くことはできないが,肛門外科を習得しておきたいと考えている同志がたくさんいます.そのような先生方の目標への近道となるように本書を企画いたしました.
本書は,よく診る肛門疾患に対する一般的な診療のコツを解説しつつ,特に「日帰り手術」に重点をおいて全体を構成しました.これからクリニックにおける外来で,日帰り手術まで行っていきたいと考えている先生方が安心して診療に打ち込むことができるように,可能な限り「わかりやすい」に重点をおいて解説しています.また「今さら聞けないあんなことやこんなこと」や「学術的にも臨床的にも判然としないこと」がなくなるように工夫したつもりです.本書を読み終えた後には,きっと新たな肛門診療の扉が開かれていることでしょう.
どうぞ野心と誇りをもって前へ進んでください.そして,すでに肛門外科医となっている方だけでなく,肛門を診る機会のある先生やこれから肛門外科を専門としようとしている若いドクターまで幅広く肛門診療の理解を深めていただければ幸甚です.
最後になりますが,私の病院研修を快く受け入れてくださった黒川彰夫先生(黒川梅田診療所),岩垂純一先生(岩垂純一診療所),小村憲一先生(小村肛門科医院),松島誠先生(松島病院大腸肛門病センター),鈴木紳一郎先生(藤沢湘南台病院)をはじめ,これまでご指導くださった多くの先生方に心より感謝と敬意を表します.また,本書の企画を採用し,制作に至るまでご協力いただいた南江堂出版部の方々にも深く感謝申し上げます.
2025年2月
宮崎そらの内視鏡クリニック理事長
大賀純一
