書籍

がん最新の薬物療法2025-2026

監修 : 石岡千加史
編集 : 関根郁夫/安藤雄一/伊豆津宏二
ISBN : 978-4-524-21145-6
発行年月 : 2025年3月
判型 : B5判
ページ数 : 280

定価9,350円(本体8,500円 + 税)

  • 近刊

発売予定日:2025年3月13日 全国の書店で予約受付中

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

2年ごとの改訂で,進歩の著しいがん薬物療法について最新の情報を提供.巻頭トピックスでは,がん遺伝子パネル検査の進歩,新しい標的分子,ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスなど,話題性の高いテーマを取り上げた.各論では新たに承認された薬剤,治療の進歩が大きいがん種や臓器横断的薬物療法,副作用対策における新知見について解説.がん治療医,一般臨床医,研修医にとって,本領域の動向把握に役立つ一冊である.

巻頭トピックス
1 次世代シークエンサーを用いたRNAパネルの臨床応用
2 造血器腫瘍に対するがん遺伝子パネル検査
3 がん細胞における代謝経路調節
4 新しい標的分子
5 抗体薬物複合体(ADC)の展開
6 改変T細胞療法(CAR-T細胞ほか)
7 がん領域のDCT(decentralizedclinicaltrial)治験
8 希少がん・希少フラクションに対する薬剤開発
9 ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの現状と対策
10 がん薬物療法とリハビリテーション

T章 近年承認された抗がん薬
1 トレメリムマブ(イジュド®)
2 ソトラシブ(ルマケラス®)
3 セルメチニブ(コセルゴ®)
4 フチバチニブ(リトゴビ®)
5 ピミテスピブ(ジェセリ®)
6 セミプリマブ(リブタヨ®)
7 エンホルツマブベドチン(パドセブ®)
8 エプコリタマブ(エプキンリ®)
9 ペグアスパルガーゼ(オンキャスパー®)
10 ロペグインターフェロンアルファ-2b(ベスレミ®)
11 クリサンタスパーゼ(アーウィナーゼ®)
12 バレメトスタット(エザルミア®)
13 ダリナパルシン(ダルビアス®)
14 アシミニブ(セムブリックス®)

U章 近年進歩の大きい臓器別がんの薬物療法
1 頭頸部がん
2 非小細胞肺がん
 A.ドライバー遺伝子変異あり
 B.ドライバー遺伝子変異なし
3 乳がん
 A.HER2陽性乳がん
 B.トリプルネガティブ乳がん(TNBC)
 C.ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がん
4 食道がん
5 胃がん
6 大腸がん
7 神経内分泌腫瘍
8 肝細胞がん
9 胆道がん(肝内胆管がん含む)
10 膵がん
11 腎細胞がん
12 膀胱がん・上部尿路上皮がん
13 前立腺がん
14 子宮頸がん
15 子宮体がん(子宮肉腫・絨毛がん含む)
16 卵巣がん・卵管がん・原発性腹膜がん
17 悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)
18 皮膚がん(メラノーマ)
19 中枢神経系腫瘍
20 甲状腺がん
21 原発不明がん
22 非Hodgkinリンパ腫(NHL)
23 Hodgkinリンパ腫(HL)
24 多発性骨髄腫(MM)と類縁疾患
25 急性骨髄性白血病

V章 臓器横断的ながんの薬物療法
1 RET融合遺伝子陽性固形がん
2 FGFR2融合遺伝子陽性固形がん
3 BRAF遺伝子変異陽性腫瘍
4 HER2遺伝子変異陽性固形がん

W章 注目すべき副作用とその対策
1 サイトカイン放出症候群(CRS)
2 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)
3 まれだが重篤なirAE(免疫チェックポイント阻害薬による有害事象):心筋炎

監修の序

 がんの薬物療法は,幅広い医療分野の中で最も発展が目覚ましい分野の1つである.この10年間に内外で開発された分子標的治療薬の多くは抗がん薬である.また,ゲノム情報に基づく治療が真っ先に日常診療に取り入れられたのはがんの薬物療法である.このため,日常診療でがん治療を担う専門医や,臨床研究開発を担当する製薬企業やアカデミアの研究者が,この急速に発展する最近の薬物療法を俯瞰できるテキストを切望するようになった.

 本書は,このようなニーズに応える最適の1冊として2023年に初版を発刊してから2年がたち,今回,最新情報を盛り込みアップデートを行った.今回は,76人の国内のエキスパートに「巻頭トピックス」「T章.近年承認された抗がん薬」「U章.近年進歩の大きい臓器別がんの薬物療法」「V章.臓器横断的ながんの薬物療法」,および「W章.注目すべき副作用とその対策」の5章59項目を割り当て,教科書的情報は最少に,最新情報を中心にまとめてもらった.「巻頭トピックス」には,RNA情報のパネルや造血器腫瘍専用のパネル検査,改変T細胞療法などの最新の診断薬や治療薬のトピックスを,「T章」には14種類の国内で承認された新薬情報を,「U章」には新薬導入やガイドライン改訂による標準治療の変化を,「V章」には4種類の遺伝子変異陽性固形がんを,そして「W章」には,新薬登場により注意が必要な3つの有害事象とその対策をまとめた.

 本書が目指すのは,専門医や研究開発者が最新のがんの薬物療法に関する情報を漏らさず短時間に把握し,またそれを俯瞰することである.このため,エキスパートらは最新のエビデンスを凝縮し,標準治療の総論を割愛したコンパクトな内容にまとめた.本書が専門医や研究者の皆さんの知識のアップデートや,日常診療と臨床研究の事典代わりとしてお役に立てれば幸いである.

2025年2月
石岡千加史


序 文

 日本における新規抗がん薬の薬事承認数は年々多くなっており(図),それに後れを取らないよう本書は2年ごとの改訂としています.『がん最新の薬物療法2025-2026』では前版の編集方針と同様に,がん治療の標準的教科書である『新臨床腫瘍学』(日本臨床腫瘍学会編集)で扱いきれない,がん薬物療法を取り巻く最近の状況と注目を集めている薬剤を中心とした内容といたしました.

 本書の特徴である「巻頭トピックス」では,保険適用となって5年が経過した包括的がんゲノムプロファイリング検査の現状,新しい標的分子とそれに対する治療薬開発の動向,新薬の臨床開発・薬事承認にまつわる話題を取り上げました.ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスは特に抗悪性腫瘍薬で大幅な増加が認められ,2016〜2020年にFDAで認められた抗悪性腫瘍薬の68%が日本未承認であると指摘されています(医薬産業政策研究所 2023).さらに,今後の運動腫瘍学(exerciseoncology)の発展を見据えて,がん患者のリハビリテーションにもページを割きました.

 がんに対する分子標的治療薬の標的といえば,従来はキナーゼ活性を有するタンパクが主でしたが,最近はシャペロンタンパク,接着分子やクロマチン構造制御因子のサブユニットなど,様々な分子が標的となっています.そのため,作用機序をみても見当がつかない,今までに経験したことのないような有害事象が報告されています.したがって,それらの対処法に医療従事者が精通することに加えて,予防法と初期対応を患者さんに十分に説明しなければなりません.「T章.近年承認された抗がん薬」では14剤を取り上げ,適応,禁忌,副作用,相互作用など,実践的な内容も多く記載しています.

 U章で取り上げた「臓器別がんの薬物療法」は,がん遺伝子変異のコンパニオン診断や新しい抗体医薬などを取り入れた近年進歩の著しい分野です.臨床試験に基づくエビデンスも豊富にありますので,一部図表を取り入れて結果を比較しやすいように視覚化するとともに,その解釈については専門家としての高度な考察とともに記載してもらいました.

 がんの種類や体内のどこで発生したかに関係なく,がんの遺伝的・分子的特徴に基づいて薬剤を選択する,いわゆるtissueagonisticapproachも,近年行われてきたバスケット試験の結果が薬事承認に結びつくようになり,現実的になってきました.「V章.臓器横断的ながんの薬物療法」では,RET,FGFR2,BRAF,HER2遺伝子変化を有するがんに対する薬物療法を取り上げました.
 
 「W章.注目すべき副作用とその対策」では,発生頻度は比較的低いものの重篤な有害事象を取り上げました.これらは致死的になった報告も多数あるため,当初からそのような有害事象を想起し,様々な分野の専門家からなるチームで対応するのが肝要に思います.

 最後に,大変お忙しい中,編集者からの度重なる意見に対しても快く対応してくださった多数の執筆者の先生方と,きめ細かなサポートをいただきました南江堂のスタッフの皆様に,編集者一同感謝申し上げます.がん実地診療の第一線で活躍している医師の皆様に本書を役立てていただければ幸いに存じます.

2025年2月
編集者一同

9784524211456