理学療法士のための学校における運動器疾患・障害予防教育マニュアル
認定スクールトレーナーの活動の手引き
監修 | : 公益財団法人 運動器の健康・日本協会 |
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協力 | : 公益社団法人 日本理学療法士協会 |
編集 | : 武藤芳照/内尾祐司/稲垣克記/高橋敏明/吉井智晴/大工谷新一 |
ISBN | : 978-4-524-21087-9 |
発行年月 | : 2024年7月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 254 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
運動器の健康・日本協会による新たな認定資格「スクールトレーナー」(ScT)制度のもと,理学療法士が学校保健の一翼を担って運動器の健康増進と疾患・障害の予防活動に携わるための手引書.医師,教職員,保護者や部活動指導者等と連携して教育・啓発・実技指導に取り組むノウハウを解説する.学校という場や子どもに特徴的な健康課題への対応例を解説し,先行するモデル事例を豊富に紹介.教育現場の実情や制度面なども理解して,ScTとして活動するために必要な実践知が詰まった一冊.
C H A P T E R T
学校保健と学校健診の現状と課題
01 学校健診における運動器検診導入の経緯と意義・目的
02 学校保健の組織・体制と現状の課題
03 学校医とは,その役割と課題
COLUMN 01 学校の「三師」とは
04 児童生徒等の運動器疾患・障害の実態と予防の必要性
COLUMN 02 健診と検診
C H A P T E R U
児童生徒等の運動器の健康課題
01 学校医から見た児童生徒等の運動器の健康課題
02 保健室から見た児童生徒等の運動器の健康課題
03 弁護士から見た児童生徒等の運動器の健康課題
COLUMN 03 運動器と運動器具
04 世界との比較から見た日本の児童生徒等の運動器の健康課題
05 子どもの身体活動促進に関する世界の動向と日本の現状
COLUMN 04 略称のScT
06 児童生徒等の骨折の実態
C H A P T E R V
学校健診における運動器検診の現状と課題
01 学校健診の方法・内容と課題―学校医の立場から
02 学校健診の方法・内容と課題―養護教諭の立場から
COLUMN 05 学校健診時の衣服
03 学校健診における運動器検診の事後措置と予防教育
COLUMN 06 疲労骨折の心理的背景
04 運動器検診の質を高めるために―上肢・下肢の異常
05 運動器検診の質を高めるために―脊柱の異常
C H A P T E R W
児童生徒等によく見られる主な運動器疾患・障害の診断・治療と予防のポイント
01 児童生徒等のスポーツ外傷・障害の動向と予防
COLUMN 07 知っておきたい「スポーツ基本法」
02 スポーツ外傷・障害の予防―上肢
03 スポーツ外傷・障害の予防―体幹
04 スポーツ外傷・障害の予防―下肢
05 いわゆる「運動器機能不全」
COLUMN 08 知っておきたい「こども基本法」
C H A P T E R X
理学療法士による学校での児童生徒等への運動器疾患・障害の予防教育の実践
01 理学療法士の現状と社会的使命
COLUMN 09 理学療法士と作業療法士
02 日本理学療法士協会における学校保健への参画のとりくみの現状と課題
03 理学療法士による児童生徒等へのスポーツ外傷・障害の予防教育の基本
COLUMN 10 学習指導要領
04 学校保健・特別支援教育における理学療法士による支援のポイント
COLUMN 11 専門用語を多用しないように気をつける
COLUMN 12 運動中に水を飲むな!
05 学校での児童生徒等への教育方法のポイント(すべきこと,してはいけないこと,使ってはいけない言葉,教材作成のコツ等)
COLUMN 13 スポーツ指導者の暴言・体罰例
06 学校運動部活動におけるスポーツ・コンプライアンス教育のポイント
07 予防教育の実践のモデル事例
@東京都豊島区の事例
A東京都港区の事例
B -1 東京都中野区の事例1
B -2 東京都中野区の事例2
C神奈川県横浜市の事例
D長野県東御市の事例
COLUMN 14 公立学校の教員の義務
E京都府京都市の事例
F兵庫県西宮市の事例
G島根県飯石郡,出雲市,隠岐の島町,大田市の事例
H島根県雲南市の事例
I愛媛県西条市の事例
J佐賀県神埼市の事例
巻末資料
01 ストレッチングの方法
02 アイシングの方法
03 学校で役立つ簡易なテーピング
04 RICE の原則(あ・れ・やった?)
05 歩行指導のポイント
06 椅子の座り方・姿勢指導のポイント
07 ランドセルの背負い方指導のポイント
08 予防アプローチその他の方法
09 学校保健安全法,同施行令,同施行規則
10 スクールトレーナー商標登録証と内閣府の認定書
11 Q&A
監修の言葉
少子高齢化が急速に進行するわが国においては,すべての世代の国民が運動器の健康を維持しながら自ら動き,社会参加をすることが社会の活力を維持するためにも極めて重要です.公益財団法人 運動器の健康・日本協会はその前身の「骨と関節の10年」日本委員会として2000年に発足して以来,運動器の健康・日本賞などの顕彰事業,季刊誌「Moving」発刊などの広報事業,成長期のスポーツ外傷予防啓発,脆弱性骨折予防・運動器外傷の救急医療,運動器疼痛対策など,全世代の国民の運動器の健康増進に資するさまざまな取り組みを行ってきました.
2014年に学校保健安全法施行規則の一部改正があり,2016年4月から学校での運動器検診が開始されました.児童生徒等の運動器には,運動不足に伴う運動能力の低下と,運動過多によるスポーツ外傷・障害という二極化した問題があります.児童生徒等のこれらの運動器の問題を,運動器検診などを通じて早期に発見し,運動器の専門家による適切な予防・治療につなげ,ひいては将来の社会を支える子どもの運動器の健康向上に資する取り組みを進める必要があります.
当協会は運動器医療・リハビリテーションに携わる理学療法士が学校現場で,学校医や整形外科医とも連携・協力をしながら地域一体となって児童生徒等の運動器に関する予防教育活動に従事する「認定スクールトレーナー制度」の構築を進めてきました.本制度は2023年には全国でモデル事業が行われ,2024年には内閣府公益認定等委員会において公益事業と認定され,同年に第1回目の養成講習会および認定試験を計画するなど,制度として本格的に始動することになりました.
理学療法士の方々が認定スクールトレーナーとして学校や地域の現場で活動するために役立てていただく手引きとして本書を刊行いたします.学校保健・学校健診,児童生徒等の運動器の健康,運動器検診,運動器疾患と障害の予防・診断・治療,理学療法士による学校保健における取り組みの5つの大項目を掲げ,それぞれ細項目を網羅的に設けて,各項目の現状と課題などを,医療,教育,法曹など各分野のエキスパートの方々が図表も用いながらわかりやすく解説する大変有意義な内容になっています.理学療法士をはじめとする小児の運動器の健康に携わるすべての方々に是非お読みいただければと思います.
本書を制作・刊行するにあたり,企画・編集に多大なるご尽力そしてご協力をいただいた当協会の皆様,公益社団法人 日本理学療法士協会をはじめとする関係各領域の皆様,編集作業を丁寧に進めていただいた株式会社南江堂の皆様に心より感謝を申し上げます.
令和6(2024)年5月
公益財団法人 運動器の健康・日本協会 理事長/慶應義塾大学病院 病院長
松本守雄
発刊に寄せて
公益財団法人 運動器の健康・日本協会(松本守雄理事長)監修による『理学療法士のための学校における運動器疾患・障害 予防教育マニュアル―認定スクールトレーナーの活動の手引き』の発刊について,公益社団法人 日本理学療法士協会を代表してお祝い申し上げます.また,私ども日本理学療法士協会が協力する機会をいただきましたこと御礼を申し上げます.
本書籍は,今年からはじまる「認定スクールトレーナー養成講習会」の参考書として活用されることが大いに期待されます.この講習会は,20年の年月をかけて運動器の健康・日本協会で構築された「認定スクールトレーナー制度」の肝になるものと理解しています.「認定スクールトレーナー制度」は,児童生徒等の運動器の健康増進と健全な成長・発達に寄与する担い手となる理学療法士の育成が目的であり,将来,全国の幼稚園,小学校,中学校,高等学校,特別支援学校4万6千あまりにスクールトレーナー®として理学療法士を配置し,約1,400万人の児童生徒等の運動器の健康を推進,心身の健全育成を図る事業を実践すると聞いています.本会としても,学校保健や予防の観点での理学療法士の社会実学・実装モデルと位置づけ,本制度に積極的に参画することをお約束しているところです.また,モデル事業を担った都道府県理学療法士会や会員から寄せられる声も日に日に増しているところです.
そうした機運の高まる中,本書籍の発刊はまさに機をとらえたものであります.5つの章(CHAPTER)と巻末資料で構成され,各章は,「T.学校保健と学校健診の現状と課題」,「U.児童生徒等の運動器の健康課題」,「V.学校健診における運動器検診の現状と課題」,「W.児童生徒等によく見られる主な運動器疾患・障害の診断・治療と予防のポイント」,「X.理学療法士による学校での児童生徒等への運動器疾患・障害の予防教育の実践」という内容で,それぞれ4項目,6項目,5項目,5項目,7項目で構成されています.「X.理学療法士による学校での児童生徒等への運動器疾患・障害の予防教育の実践」には11の予防教育の実践モデル事例が掲載されています.また14のコラムが織り交ぜられ,11の巻末資料が収載されています.今を彩る53名の執筆者による,約250ページのテキストの編集にあたられた6名の先生に敬意を表したいと思います.
最後に,児童生徒等の運動器の健康増進と運動器疾患・障害の予防に関わる教育・啓発や保健指導の支援・協力を行い,児童生徒等の心身の健全な成長・発達に寄与する担い手としての理学療法士のキャリアを形成する上で必携の1冊として,また,形式知と経験知で構成された「手引き書」が多くの理学療法士の手元に届くことを期待したいと思います.
むすびに,今回の発刊が児童生徒等の明るい未来につながることを祈念して,発刊に寄せた言葉を終わります.
令和6(2024)年5月
公益社団法人日本理学療法士協会 会長
斉藤秀之
序 文
「運動器の10年」日本委員会(公益財団法人 運動器の健康・日本協会の前身)が,杉岡洋一委員長(当時)の下,「国の規則の1行を変えよう!」とのスローガンを掲げて,総力を挙げて取り組んだのが,日本委員会の3つの目標の1つ「運動器疾患・障害の早期発見と予防体制の確立」に関わり,「小児の運動機能障害,スポーツ障害」(世界運動の重点項目の1つ)であった.全国10地域(北海道,京都府,徳島県,島根県,新潟県,宮崎県,愛媛県,埼玉県,熊本県,大分県)での10年に及ぶ調査研究成果を基盤に,国の関係各所にさまざまな働きかけを積み重ね,2014年4月30日,「学校保健安全法施行規則の一部改正等について(通知)」(文部科学省/久保公人スポーツ・青少年局長)が,各都道府県知事等に発出された.
その切所は,2012年11月19日の文部科学省「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」(有識者会議)であった.武藤芳照(東京大学教授,当時)と内尾祐司(島根大学教授)が,参考人として招かれ,学校健康診断における運動器検診の必要性とその期待される効果等について説明すると共に,各委員からの数多くの質問に対応した.その質疑応答の中で,児童生徒等への予防教育の一環として,当協会が「スクールトレーナー」の構想を有していることを,はじめて学校保健の関係者に披歴した.
そして,時は流れ,実際に「認定スクールトレーナー制度」が構築され,2024年8月に初の養成講習会が開催される運びとなり,それに先んじて本書が上梓されることになったのは,誠に喜ばしいと感じている.
大きな事業の成功には,「天地人」が大切とされる.すなわち,天の時,地の利,人の和が重なって,初めて計画したことが,うまく形を成す.「スクールトレーナー」の名称が特許庁の登録商標として認定されたのは,2013年3月.その後,いろいろ紆余曲折があったが,歴代の委員長・理事長(2000年より,初代:黒川秀氏,第2代:杉岡洋一氏,第3代:山本博司氏,第4代:河合伸也氏,第5代:岩本幸英氏,第6代:丸毛啓史氏,第7代・現在:松本守雄氏)以下関係者の熱意とたゆまぬ尽力とにより,今,その名称が形をなし機能を発揮することができる時を迎えたように思う.
少子高齢化がますます進展する日本であるが,いつの時代も,「子どもは国の宝」である.その子どもたちが,「動く喜び 動ける幸せ」を,生涯にわたって体感・実践できる社会となるように,本書が役立てば幸いである.
最後に,この事業に長年献身的に支援し続けていただいた田名部和裕事務局長他,事務局の方々,そして本書刊行に当たって緻密な作業を丁寧にこなしていただいた(株)南江堂の編集部・制作部の皆様他,ご協力いただいたすべての関係者に,厚く御礼申し上げます.
令和6(2024)年5月
編集代表 武藤芳照,内尾祐司