書籍

ここからはじめる輸液・電解質管理

「わかる」から「できる」へステップアップ

: 辻本哲郎
ISBN : 978-4-524-21068-8
発行年月 : 2024年7月
判型 : A5判
ページ数 : 298

在庫あり

定価3,960円(本体3,600円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

苦手意識を持っている医師が多い,輸液・電解質管理についてわかりやすく解説した実践書.輸液・電解質管理に関する最低限知っておくべき内容を図表やイラストを用いてコンパクトにまとめ,実際の医療現場で目の前の患者の状態から,どのように検査・治療を組み立てればよいかがわかり,実践できるようになる一冊.これから輸液・電解質管理を学ぶ人にはもちろんのこと,もう一度学び直したい人にもおすすめ.

T 輸液の基礎知識
 1 輸液は何で必要か?
 2 知っておきたい輸液製剤
 3 輸液を使用する際の器具
U 血清Na濃度の異常
 1 おさえておきたいNaの基本
 2 もしも低Na血症に出会ったら
 3 もしも高Na血症に出会ったら
V 血清K濃度の異常
 1 おさえておきたいKの基本
 2 もしも低K血症に出会ったら
 3 もしも高K血症に出会ったら
W 血清Ca濃度の異常
 1 おさえておきたいCaの基本
 2 もしも低Ca血症に出会ったら
 3 もしも高Ca血症に出会ったら
X 血清P濃度の異常
 1 おさえておきたいPの基本
 2 もしも低P血症に出会ったら
 3 もしも高P血症に出会ったら
Y 血清Mg濃度の異常
 1 おさえておきたいMgの基本
 2 もしも低Mg血症に出会ったら
 3 もしも高Mg血症に出会ったら
Z 知っておきたい脱水の評価
 1 脱水って何?
 2 脱水の評価
 3 脱水の治療
[ 酸塩基平衡のポイント
 1 血液ガスのどの項目をみる?
 2 pH
 3 PaCO2とHCO3−
 4 血液ガス評価の流れ
 5 病態や原因を考えよう
 6 酸塩基平衡の練習
 7 酸塩基平衡の治療は?
\ 血圧低下! どうする?
 1 これってショック?
 2 もしもショックに出会ったら
 3 ショック時の初期対応
 4 現場で臨機応変に
] 高血糖緊急症での輸液・電解質管理
 1 高血糖緊急症ってどんな症状・状態?
 2 高血糖緊急症を診るときのポイント
 3 高血糖が引き起こしている病態の管理
●付録
 1 輸液製剤一覧
 2 Na濃度別の輸液作成方法一覧
 3 本書に登場する主な計算式一覧

臨床医として働きはじめると,輸液管理が必要となる患者や電解質異常を認める患者に必ず遭遇します.はじめから輸液・電解質管理が得意な医師はほとんどいませんし,数年経てば当たり前のことでも,最初はすべてが手探りで不安を感じる場面も多いと思います.学生のときからいろいろな疾患を学んできていると思いますが,実際の医療現場で自分自身が電解質異常に遭遇した際に,どう考え,どう対応すればよいのかわからない医師は非常に多いです.また,輸液・電解質管理について多くの参考書があるものの,病態をより深く理解することに力を入れたものや,抽象的な記載にとどまるものが多く,実践的な内容から離れていることがしばしばあります.そのため参考書を何冊読んでも医療現場にいかせる知識が得られず,患者対応が十分にできないということもまれではありません.どちらかというと輸液・電解質管理に苦手意識を持ったまま経過する医師のほうが多いかもしれません.少しずつ経験を積むことで徐々に輸液・電解質管理に慣れてはきますが,より実践的な本があれば早い時期から多くの場面で活躍できるように思います.
本書はすべての研修医・専攻医が関わる輸液・電解質管理において,目の前の状態からどのように検査・治療を組み立てればよいか最低限知っておくべき内容を具体的にまとめました.若手医師にとって基本的な病態を知るだけでなく,実際の医療現場でしっかりと初期対応できることが何より重要です.多忙な研修生活を送るなかでも本書を通じて輸液・電解質管理を効率よく勉強することにより,日々の臨床能力が向上し,より適切な医療を提供できるようになれると信じています.また,研修医・専攻医だけでなく,今まで電解質管理などが苦手だった医師にとっても十分に参考にしていただける内容になっています.本書が皆様の臨床医としての成長に少しでも貢献できれば幸いです.
2024 年5 月
虎の門病院分院 糖尿病内分泌科 部長
辻本 哲郎

“できる”指導医の臨床力が落とし込まれた入門書
 臨床の経験を積んでくると,病棟管理で当たり前のようにやっていることでも,それを研修医や専攻医にうまく教えるのは実は難しかったりする.「自分が理解する→実践できる」から,それを「言語化する→研修医に伝える,教える→研修医ができるようになる」という一連のプロセスにおいて,参考になる教材は非常にありがたい.
 『ここからはじめる輸液・電解質管理』は,優秀な内科医である著者によって執筆された包括的かつ実践的な一冊である.電解質の生理学と臨床的な管理,さらには輸液の選択と管理に関する専門知識を網羅しており,研修医から専攻医まで,幅広い読者層に“刺さる”内容となっている.
 本書の特筆すべき点は二つある.一つ目は糖尿病代謝内分泌科のスペシャリストの目線から書かれた輸液・電解質の本であるということだ.日常の診療で必ず遭遇するであろう電解質管理に関して,エビデンスを押さえつつ,かつ具体的な対応が記載されているため,非常に使い勝手がよいと感じた.二つ目は多彩なコラムである.輸液にまつわる血管外漏出,三方活栓の使い方,皮下輸液からADH不適合分泌症候群(SIADH),尿崩症,アナフィラキシーショックまで,明日から使える内容は,実は経験を積んだ10年目以上の医師にとってもよい復習材料となるだろう.
 著者の辻本先生は,国立国際医療センター(現・国立国際医療研究センター)で初期研修を修了され,糖尿病代謝内分泌科に進まれたキャリアをおもちである.評者は,辻本先生とは研修医時代の同期で,医師になってからの最初の5年間を同じ病院で過ごした.辻本先生は研修医時代から臨床家として非常に優秀であっただけでなく,現在は研究者・教育者としても卓越したトップランナーとして,虎の門病院分院で部長として勤務されている.
 本書の内容が素晴らしいため,当科をローテートしてくれた研修医3名にそれぞれ1週間で読んでもらい,感想を聞いた.評者や辻本先生にとっては後輩にあたる先生方の生の感想なので貴重と考え,以下に列記する.
・こまめに「ここがポイント」や「まとめ」が用意されており,わかりやすい.コラムで発展的な内容についてもカバーされており,自分の興味や学習段階に応じて読み進めることができる(内科系研修医2年目・小林崇希先生)
・常識的な内容は適宜省き,難しい内容は専門書に譲る,といった塩梅がちょうどよく,ノンストレスで読んで内容がすっと入ってくる点が秀逸でした.生理学的な解説を散りばめつつ,より臨床において実践的な知識を提示してくれるのもありがたいと感じます(外科系研修医2年目・𠮷本岳瑠先生)
・研修医1年目で,急性膵炎の低K血症,低Ca血症,低Mg血症,低P血症の患者さんを担当しました.頭ではそれぞれの電解質を補正すればよいとわかっていましたが,どの輸液・薬剤をどの組成,どの程度の速度で投与したほうがよいのか,何時間ごとにフォローの採血をしたほうがよいのか,などに関して無知でした.もし本書を読んでいれば,ある程度の初期対応をできたはずであると今では思っております(救急系研修医2年目・神田正樹先生)
 以上のように,将来の専門科が内科・外科・救急と幅広い研修医に大変好評であった.評者が普段研修医に教えたい,伝えたいと思っている内容を今回辻本先生がうまく言語化して,教材としてくださったような気がしている.本書はキャリア形成期の医師が病態を理解する一助となる一方で,非常に優秀な教育・自主学習ツールでもあると考える.
臨床雑誌内科135巻4号(2025年4月増大号)より転載
評者●片桐大輔(国立国際医療研究センター病院腎臓内科/血液浄化療法室 医長)

9784524210688