医療-福祉-介護をつなぐ 心不全療養支援ポケットガイド
編集 | : 日本循環器協会・日本心不全学会 |
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ISBN | : 978-4-524-21067-1 |
発行年月 | : 2024年3月 |
判型 | : 新書判 |
ページ数 | : 208 |
在庫
定価2,420円(本体2,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 書評
日本循環器協会・日本心不全学会の共編による,心不全患者の療養指導に従事するすべての医療専門職に役立つ一冊.心不全の基本的事項から日常生活の管理,介護制度まで,多数のイラストを用いてわかりやすく解説.病院に限らず在宅・地域医療などにおいて広く心不全の発症・増悪・再入院予防,生活の質(QOL)改善のためにできることをポケットサイズにまとめた.
第T章 心不全の基本
1. 心不全療養支援の基本
2. 心臓の機能と働き
3. 心不全とは
4. 心不全の検査
5. 心不全の治療
@主な心不全の治療
A心不全に対する薬物療法
6. 心不全の悪化を防ぐために必要な管理
第U章 心不全に必要な管理と方法
1. 日常生活の管理方法
@バイタルサインの測定
A心不全患者に必要な食事の管理
B買い物の仕方・食品の選び方
C食品ラベルの見方
D塩分の少ない食事の調理方法
E減塩ができない患者への支援方法
F買い物ができない患者に利用できるサービス
G低栄養の患者の食事
H嚥下困難がある患者の食事
I水分の管理
J薬の管理
K運動や活動の管理
L入浴の管理
M便の管理
N尿の管理
Oたばこの管理
Pお酒の管理
Q感染の管理
Rこころに対する支援
S特別な治療を行っている患者の管理
㉑季節に応じた管理
㉒旅行時の管理
2. 心不全症状とその管理
@心不全の症状
A体重の測定方法
B症状の観察方法
C心不全手帳の活用方法
3. 緊急の相談・受診の目安
第V章 災害時の対応
第W章 介護者への支援
第X章 認知機能が低下した患者への対応
第Y章 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の重要性
第Z章 活用できる社会資源
1. 活用できる医療・福祉・介護などの社会資源
@訪問診療
A訪問看護
B介護保険制度
2. ケアプラン
3. 医療費や経済的課題を支える
@難病医療
A身体障害者手帳,障害年金
B高額療養費・高額介護サービス費
C生活保護制度
4. 本人の意思決定を支える
5. キーパーソン不在の患者を支える
6. 長期療養・生活の場を考える
7. 疾患管理を支える
8. 多職種連携の重要性
100年時代の心不全管理はどうすればいい?
心不全患者の増加が著しく,心不全パンデミックとよばれる時代が到来しつつある.とくに,高齢者の心不全発症率が高く,社会的な問題となっている.高齢心不全患者の増加によって,循環器専門医だけでの対応が困難となりつつあり,非循環器専門医にも心不全管理を行うことが求められるようになってきている.高齢心不全患者の管理においては,生命予後の改善だけでなく,QOLの改善や医療コストの削減も考慮する必要がある.欧米では,高齢心不全患者が増加してすでに社会的な問題となっており,医療経済的な治療の有効性を示す論文が増えている.最近の心不全治療薬は単価が高いものの,使用することにより数年単位で医療コストが下がる傾向にある.なぜなら,薬価よりも入院費用が医療コストを押し上げるからである.入院を回避するためには,標準治療の徹底,心不全併存症の管理,患者教育が重要である.
わが国では,心不全患者の60%以上が左室駆出率が保たれた心不全であり,標準治療がまだ確立されていない.このため,患者のセルフモニタリングを含む患者教育とともに,多職種連携のシステム構築が必要である.多職種連携においては,医師だけでなく,看護師,薬剤師,栄養士,理学療法士などの関係するメディカルスタッフが連携しながら患者管理にあたることが重要であり,これにより医師の負担も軽減される.多職種連携で最も重要なのは,共通の言語を共有することである.たとえば,「心不全」という言葉を聞いて,ベッドで息切れしている患者を想像するスタッフと,日常生活を普通に送っている患者を想像するスタッフとでは話がかみ合わない.したがって,簡潔な言語を使用して,同じ患者像を共有し,リスクを把握することが重要である.これらの理由から,日本循環器学会では心不全療養指導士制度を導入しており,心不全診療における多職種連携の中核を担う人材を育成している.
『医療—福祉—介護をつなぐ 心不全療養支援ポケットガイド』は,医師ではなくメディカルスタッフが中心となって執筆し,心不全の療養支援について解説している.心不全に関する基本的事項や管理方法を中心に,具体的な実践法が紹介されており,心不全の病態や検査の重要性,治療薬などについて,メディカルスタッフ向けに簡潔でわかりやすく記載されている.さらに,さまざまな状況を想定した栄養管理に関する記述も具体的でわかりやすく,患者への説明にも役立つ実践的な内容であり,私自身も明日の外来で担当患者に早く説明したくなるほどである.また,一般的な書籍ではあまり扱われないが,心不全管理においてきわめて重要である医療資源の適切な活用方法も詳細に記載されており,メディカルスタッフだけでなく,かかりつけ医や循環器専門医にも一読をお勧めしたい内容である.本書は,医療,福祉,介護に携わるすべての人にとって,心不全の共通言語となるだろう.
臨床雑誌内科135巻1号(2025年1月号)より転載
評者●大西勝也(大西内科ハートクリニック 院長)