看護学テキストNiCE
病態・治療論[13]産科婦人科疾患改訂第2版
編集 | : 百枝幹雄/山中美智子/森明子 |
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ISBN | : 978-4-524-21038-1 |
発行年月 | : 2025年1月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 456 |
在庫
定価3,630円(本体3,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
専門基礎分野において疾病の病態・診断・治療を学ぶためのテキストシリーズ(全14冊)の産科婦人科疾患編.医師と看護師の共同編集により,看護学生に必要な知識を網羅.さまざまな症状を理解できる,診断の進め方・考え方がわかる,臨床看護に結びつく知識が得られる,の3点を重視して構成している.今改訂では各種情報を更新したほか,婦人科疾患の診療を受ける患者への看護および妊産褥婦への看護を概説する項目,遺伝学的検査の項目を追加した.
目次
序章 なぜ産科婦人科疾患について学ぶのか
1 医師の立場から
2 看護師の立場から
1 婦人科疾患
第T章 女性生殖器の構造・機能と発達
1 女性生殖器の構造
A.卵巣
臨床で役立つ知識 子宮がない場合の卵巣機能の評価
B.卵管
C.子宮
もう少しくわしく 子宮の形状の表現法
D.腟
E.外性器(外陰)
F.乳房
G.子宮・卵管・腟の発生
もう少しくわしく 子宮の発生異常
コラム 子宮の異常と卵巣の異常
H.内性器(子宮・卵巣・腟)の支持組織
臨床で役立つ知識 骨盤臓器脱と支持のレベル
I.子宮・卵巣・腟の血管支配
2 生殖生理
A.視床下部-下垂体-卵巣におけるホルモン調節機構
B.卵胞発育,排卵の機序
C.受精,着床の機序
D.月経の機序
E.基礎体温の変化の機序
3 女性生殖器の年齢に伴う変化
A.思春期
コラム 思春期の妊娠
B.性成熟期
もう少しくわしく 消退出血と月経
コラム AMHと卵巣予備能
臨床で役立つ知識 卵子の加齢と,妊娠率の関係
C.更年期
D.老年期
コラム 卵巣での男性ホルモン合成と両側卵巣摘出
第U章 婦人科疾患の診断・治療
1 婦人科の検査
1 婦人科の一般検査
A.内診・直腸診
B.腟鏡診
C.細胞診・組織診
D.妊娠検査
E.超音波検査
F.頸管粘液検査
G.卵管疎通性検査
2 婦人科の遺伝学的検査
2-1 着床前遺伝学的検査
A.PGT-A
B.PGT-SR
C.PGT-M
2-2 遺伝性腫瘍の遺伝学的検査
3 乳腺外科の検査
A.視触診
B.画像検査
C.病理検査
2 婦人科症状からの診断過程
A.無月経
B.月経不順
C.不正性器出血
D.過多月経
E.月経前症候群(PMS)
F.月経困難症
G.下腹部痛
H.腹部膨隆
I.帯下
3 婦人科疾患の治療・処置
A.腟洗浄
B.腟タンポン
C.導尿
D.腹腔穿刺
E.ダグラス窩穿刺
F.ホルモン療法
G.避妊
もう少しくわしく レボノルゲストレルによる避妊とは
4 婦人科疾患の診療を受ける患者への看護
1 婦人科疾患を有する患者の特徴
A.婦人科を受診する患者の特徴
B.婦人科疾患を有する患者の特徴
2 婦人科の検査・処置時の看護
A.婦人科診察の特徴
B.婦人科診察における患者を尊重したケア
C.婦人科診察における安全の確保
3 遺伝にかかわる問題のある人への看護
A.産科婦人科領域での遺伝にかかわる問題
B.遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の患者への看護
C.リンチ(Lynch)症候群の患者への看護
D.遺伝性腫瘍の血縁者への看護とサバイバーズギルト
E.遺伝にかかわる問題のある人への専門的看護
4 婦人科疾患を有する患者への看護
A.月経異常のある患者への看護
B.不妊症・不育症の患者への看護
臨床で役立つ知識 産婦人科だけではない不妊症看護
C.更年期障害の患者への看護
D.女性泌尿器科疾患の患者への看護
E.性感染症の患者への看護
コラム スウェーデンのユースクリニック
F.女性生殖器がんの患者への看護
もう少しくわしく 妊孕性温存療法
第V章 婦人科疾患 各論
1 先天性疾患,発達に関する障害・疾患
1 性分化疾患
臨床で役立つ知識 性分化疾患は医学的・心理社会的救急疾患である
2 思春期発来異常
2 乳腺疾患
1 乳腺症
2 乳腺炎
3 乳がん
もう少しくわしく 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)
臨床で役立つ知識 乳房再建術
臨床で役立つ知識 緩和ケア
3 内分泌異常
1 無月経
臨床で役立つ知識 無月経と摂食障害
2 高プロラクチン血症
もう少しくわしく マクロプロラクチン血症
3 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
もう少しくわしく 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
4 良性腫瘍・類腫瘍
1 子宮筋腫
2 子宮内膜症
もう少しくわしく 子宮内膜逆流説
3 子宮腺筋症
4 良性卵巣腫瘍
5 悪性腫瘍
1 子宮頸がん
もう少しくわしく HPVワクチン
もう少しくわしく 子宮頸部細胞診で用いられるベセスダシステム分類
2 子宮体がん
3 卵巣がん
4 遺伝性腫瘍
4–1 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)
4–2 リンチ(Lynch)症候群
6 更年期・老年期の障害・疾患
1 更年期障害
2 萎縮性腟炎
3 閉経後骨粗鬆症
4 閉経後脂質異常症
5 下部尿路症状(過活動膀胱[OAB]・尿失禁)
6 骨盤臓器脱(POP)
7 婦人科の感染症
1 外陰腟炎
1–1 非特異的非感染性外陰炎
1–2 非特異的感染性外陰炎
1–3 外陰・腟カンジダ症
1–4 バルトリン腺炎・バルトリン腺膿瘍
1–5 細菌性腟症(BV)
1–6 細菌性腟炎
1–7 腟トリコモナス症
2 骨盤内炎症性疾患(PID)
3 性感染症(STD)
3–1 性器ヘルペス
3–2 尖圭コンジローマ
3–3 性器クラミジア感染症
3–4 淋菌感染症
3–5 梅毒
8 不妊症・不育症
1 不妊症
もう少しくわしく 生殖補助医療(ART)
2 不育症
2 産科疾患
第W章 妊娠・分娩・産褥の生理
1 妊 娠 兵藤博信
1 受胎・発生と胎児の生理
A.発生と分化
B.性の分化
もう少しくわしく 性別不合
C.心血管系
D.血液
E.呼吸
F.肺
G.腎・泌尿器系
H.消化器系
I.内分泌系
J.骨格系・感覚器・胎児運動
K.免疫系
L.付属物
2 妊娠と母体の生理
A.性器・乳房の変化
B.全身の変化
C.代謝・栄養の変化
D.循環の変化
E.呼吸の変化
F.腎機能の変化
G.消化器の変化
H.内分泌ホルモンの変化
I.血液の変化
J.免疫の変化
K.神経の変化
2 分 娩
A.分娩に関する用語
B.分娩の3要素とは
もう少しくわしく Position
C.正常分娩に伴う母体の生理的変化
D.正常分娩経過の把握と予測
3 産 褥
A.産褥とは
B.生殖器官の変化
C.乳房の変化
もう少しくわしく プロバイオティクス
D.全身の変化
E.精神的変化
F.退院後の育児支援
コラム 授乳性無月経法(LAM)
臨床で役立つ知識 産後入院,産後(マタニティ)ケア
臨床で役立つ知識 こども家庭センター
第X章 産科の診断・治療
1 産科の検査
1 妊婦健診
A.妊婦健診の目的
B.妊婦健診の内容・見方・考え方
2 検体検査
A.検体検査の目的
B.検体検査の内容,検査時期
C.検体検査の見方・考え方
3 超音波検査(超音波断層法)
A.超音波検査の概要・目的
B.通常超音波検査の方法
C.通常超音波検査の見方・考え方
D.超音波検査の侵襲性・副作用・リスク・注意点
4 胎児心拍数モニタリング
A.胎児心拍数モニタリングとは
B.CTGによる胎児の状態の判読
C.CTGを用いて行う胎児健康状態の評価と対応
5 出生前検査・着床前遺伝学的検査
A.出生前検査
B.着床前遺伝学的検査
C.意思決定の援助
2 妊娠期の健康管理と薬物療法
1 妊娠期の健康管理
A.体重
B.栄養
C.運動
D.喫煙
E.飲酒
F.身体の変化・易感染性
臨床で役立つ知識 就労妊産婦のための制度
2 妊娠期・授乳期の薬物療法
A.薬物療法の考え方
B.妊娠週数と薬剤
C.薬剤選択の基本
3 産科処置と産科手術
1 子宮内容除去術
A.子宮内容除去術とは
B.目的(適応)
もう少しくわしく 人工妊娠中絶とは
C.方法(実際)
D.副作用・リスク・注意点
臨床で役立つ知識 自然待機法
もう少しくわしく 薬剤による人工妊娠中絶
2 頸管縫縮術
A.頸管縫縮術とは
B.目的
C.方法
もう少しくわしく 予防的縫縮術の延長効果について
3 急速遂娩術(吸引分娩,鉗子分娩)
3–1 吸引分娩
A.吸引分娩とは
B.適応
C.吸引分娩の実際
D.母児への影響
3–2 鉗子分娩
A.鉗子分娩とは
B.実際の手技
C.母児への影響
4 帝王切開術
A.帝王切開術とは
B.適応
C.方法
臨床で役立つ知識 帝王切開には病名が必要
もう少しくわしく ポロー(Porro)手術
臨床で役立つ知識 TOLAC 一度帝王切開をしても経腟分娩は可能?
臨床で役立つ知識 インターベンショナルラジオロジー(IVR)
4 妊産褥婦への看護
A.妊産褥婦への看護とは
B.合併症を有する妊産褥婦への看護
C.出生前検査・着床前遺伝学的検査(PGT-M)を受ける女性・家族への看護
第Y章 妊娠期の異常 各論
1 妊娠悪阻
2 異所性妊娠(子宮外妊娠)
3 胞状奇胎
4 流産,切迫流産
4–1 流産
4–2 切迫流産
5 切迫早産
6 母子感染症
7 妊娠高血圧症候群(HDP)
臨床で役立つ知識 妊娠タンパク尿
もう少しくわしく 子癇とは
8 妊娠糖尿病(GDM)
もう少しくわしく 巨大児
9 前置胎盤・常位胎盤早期剥離
9–1 前置胎盤
もう少しくわしく 癒着胎盤,前置癒着胎盤
9–2 常位胎盤早期剥離
10 血液型不適合妊娠
11 双胎 佐治晴哉
11–1 多胎妊娠の母体合併症・胎児合併症
12 胎児発育不全(FGR)
13 羊水過多症,羊水過少症
13–1 羊水過多症
13–2 羊水過少症
14 合併症妊娠
14–1 婦人科疾患
14–2 心血管疾患
14–3 脳血管疾患
14–4 血液疾患
14–5 呼吸器疾患
14–6 甲状腺疾患
14–7 自己免疫疾患
14–8 消化器疾患
14–9 悪性腫瘍
もう少しくわしく 悪性腫瘍治療後の妊娠
14–10 精神疾患合併妊娠
14–11 腎疾患合併妊娠
第Z章 分娩期の異常 各論
1 分娩の3要素の異常
陣痛の異常
1–1 微弱陣痛
1–2 過強陣痛
1–3 遷延分娩
産道:軟産道の異常
1–4 子宮頸管熟化不全・軟産道強靱
1–5 腟,外陰の強靱,狭窄
産道:骨産道の異常
1–6 児頭骨盤不均衡(CPD)
2 前期破水(PROM) 361
3 産道裂傷,腟壁血腫,子宮破裂など
3–1 会陰裂傷
3–2 頸管裂傷
3–3 腟壁血腫
3–4 子宮破裂
4 産科出血,分娩時異常出血,産科ショック,羊水塞栓症,DIC
4–1 産科ショック
4–2 羊水塞栓症
4–3 産科DIC
5 胎児機能不全(NRFS)
6 胎位異常,回旋異常
胎位異常
6–1 骨盤位
もう少しくわしく 骨盤位の経腟分娩の介助法
6–2 横位
回旋異常
6–3 後方後頭位
6–4 高在縦定位
6–5 低在横定位
6–6 不正軸進入
第[章 産褥期の異常 各論
1 産後出血(産褥出血)
1–1 晩期異常出血
2 深部静脈血栓症,肺塞栓症,血栓性静脈炎
2–1 深部静脈血栓症(DVT)
2–2 肺塞栓症(PE)
2–3 血栓性静脈炎
3 子宮復古不全
4 乳腺炎
4–1 うっ滞性乳腺炎
4–2 化膿性(感染性)乳腺炎
5 産褥熱
6 産褥精神障害
6–1 マタニティブルーズ
6–2 産後うつ病
第\章 新生児の生理,異常と治療
1 新生児の生理
1 新生児の生理
A.呼吸循環生理
B.代謝・内分泌
C.神経
D.皮膚
2 新生児生理に基づく新生児観察の実際
A.アプガースコア
B.診療記録の作成
C.新生児の観察のポイント
2 新生児の異常と治療
A.低出生体重児,早産児
B.分娩損傷
C.新生児の適応障害
もう少しくわしく 人工サーファクタント補充療法
もう少しくわしく 光線療法の機器の進歩
D.神経学的な障害
臨床で役立つ知識 新生児フォローアップ外来
E.新生児の感染症
コラム DOHaD
F.皮膚の異常
G.先天異常・障害
3 新生児の蘇生
A.新生児蘇生法の手順
臨床で役立つ知識 新生児蘇生法ガイドライン(NCPR)講習会
はじめに
本書の初版が出版された5年前と比べて,母子保健領域で最も衝撃的な変化は少子化の進行でしょう.合計特殊出生率は2015年の1.45から8年連続で低下し,2023年は過去最低の1.20となりました.この間のコロナ禍も少子化に拍車をかけましたが,根本的な原因のひとつは女性のライフスタイルの変化です.2023年の生産年齢女性の就業率は73.3%と過去最高を記録し,女性の社会的活躍という点では好ましいことですが,それに伴う晩産化や女性特有の健康課題への対応が十分とは言えないことが問題です.
そこで,最近,プレコンセプションケアが注目されています.プレコンセプションケアの定義(WHO)は「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」であり,医療だけでなく教育や行政からのアプローチが必要ですが,そのための基本となるのが産婦人科の知識と技術です.したがって,医療現場や企業,学校,社会の中で教育,啓発を行う立場にある看護師にとって,最新の産婦人科の知識を習得することがますます重要になっています.
今回の改訂第2版では,各項目の内容を大幅に見直し,最新知識にアップデートしていることはもちろんですが,新たに以下の項目を追加しました.まず,看護学の教科書としては各疾患の診断と治療だけでなく,産婦人科特有の患者に対する看護についての知識が重要と考え,第U章第4節として「婦人科疾患の診療を受ける患者への看護」を,第X章第4節として「妊産褥婦への看護」を追加しました.また,初版出版後の産婦人科診療の大きな変化として,遺伝診療の普及があります.出生前検査としては非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)や着床前遺伝学的検査(PGT)は認定制度のもとで広く普及し,がんゲノム医療においてがん遺伝子パネル検査が保険診療として受けられるようになりました.そこで,第U章第1節「婦人科の検査」に「婦人科の遺伝学的検査」の項目を,第V章第5節「悪性腫瘍」に「遺伝性腫瘍」の項目を,また第X章第1節「産科の検査」に「出生前検査・着床前遺伝学的検査」の項目を追加しました.これらの技術は大変有用であるのは間違いありませんが,一方で遺伝カウンセリングや遺伝学的異常が明らかになった場合の看護は必要不可欠です.そのため,前述した「婦人科疾患の診療を受ける患者への看護」,「妊産褥婦への看護」にも遺伝診療にかかわる看護の項目を立てています.
初版から引き続き担当いただいた執筆者も,今回新たに加わっていただいた執筆者も,現在第一線で活躍する専門家であり,今回の改訂によりNiCE (New Integrated Creative Evidence-based)の名に恥じぬ最新の教科書に仕上がっていると自負しています.
2024年11月
百枝 幹雄
山中美智子
森 明子