看護学テキストNiCE
病態・治療論[3] 循環器疾患改訂第2版
編集 | : 八尾厚史/落合亮太 |
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ISBN | : 978-4-524-21023-7 |
発行年月 | : 2024年12月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 352 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
専門基礎分野において疾病の病態・診断・治療を学ぶためのテキストシリーズ(全14冊)の循環器疾患編.医師と看護師の共同編集により,看護学生に必要な知識を網羅.さまざまな症状を理解できる,診断の進め方・考え方がわかる,臨床看護に結びつく知識が得られる,の3点を重視して構成している.今改訂では循環器疾患の患者への看護を概説する項目を新設したほか,各種情報を更新した.
目次
循環器領域の主な略語一覧
序 章 なぜ循環器疾患について学ぶのか
1 医師の立場から
2 看護師の立場から
第T章 循環器の機能と障害
1 循環器の構造と機能
1 循環器とは
2 心臓の構造
3 ポンプとしての心臓の収縮・弛緩
4 心臓を制御する神経・体液性因子
5 心室筋細胞の収縮・弛緩機能
6 心筋の刺激伝導系と収縮・弛緩
2 循環の障害と症状
1 心臓の各部位の機能障害から生じるKey となる症状
2 心臓の虚血によって生じる症状
3 不整脈の症状
第U章 循環器疾患の診断・治療
1 循環器疾患の診断
1 診察の進め方
2 循環器関連の主な症状から病態診断への道筋
2-1 緊急性の有無を同定する
2-2 遭遇頻度の高い重要な症状からの病態の鑑別法
2 循環器疾患の検査
1 胸部X 線検査
2 胸部CT・心臓MRI
2-1 胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査
2-2 心臓MRI(核磁気共鳴画像)検査
3 心エコー検査(心臓超音波検査)
4 心臓カテーテル検査
4-1 スワンガンツカテーテル検査
4-2 冠動脈造影検査(CAG)
5 心臓核医学検査
6 安静時心電図
7 24 時間心電図(ホルター心電図)
8 運動負荷試験
9 脈波検査
10 動脈血液ガス分析
3 循環器疾患の治療
1 処置・治療法
1-1 観血的動脈圧測定
1-2 中心静脈穿刺・中心静脈カテーテル挿入
1-3 胸腔穿刺・胸腔ドレナージ
1-4 心囊穿刺・心囊ドレナージ
1-5 電気的除細動・電気的カルディオバージョン・直流通電
1-6 大動脈内バルーンパンピング(IABP)
1-7 経皮的心肺補助装置(PCPS)
2 心臓カテーテルインターベンション
2-1 PCI
2-2 カテーテルアブレーション
2-3 ペースメーカ植込み術
2-4 植込み型除細動器
2-5 弁膜症治療
2-6 シャント閉鎖術
3 薬物療法
4 手術療法
4-1 冠動脈バイパス術(CABG)
4-2 弁膜症に対する手術
4-3 大動脈に対する手術
4-4 重症心不全に対する手術
5 心臓リハビリテーションとは
4 循環器疾患の患者への看護
1 心機能の低下の予防および心機能が低下した患者への看護
2 虚血性心疾患の患者への緊急対応における看護
第V章 循環器疾患 各論
1 高血圧,血圧調節異常
1 基礎知識
2 血圧異常を生じる病態
2-1 高血圧緊急症
2-2 本態性高血圧
2-3 二次性高血圧
2-4 低血圧症,起立性低血圧症
2 大動脈疾患,末梢動脈疾患
1 大動脈疾患
1-1 胸部大動脈瘤
1-2 胸腹部大動脈瘤
1-3 腹部大動脈瘤
1-4 急性大動脈解離
2 末梢動脈疾患
2-1 閉塞性動脈硬化症
2-2 バージャー病(閉塞性血栓血管炎)
2-3 レイノー病・レイノー症候群
3 冠動脈疾患(虚血性心疾患)
1 急性心筋梗塞
2 狭心症
3 冠攣縮性狭心症(異型狭心症)
4 弁膜性疾患
1 大動脈弁狭窄症
2 大動脈弁逆流症(大動脈弁閉鎖不全症)
3 僧帽弁狭窄症
4 僧帽弁逆流症(僧帽弁閉鎖不全症)
5 三尖弁狭窄症
6 三尖弁閉鎖不全症
7 肺動脈弁狭窄症
8 肺動脈弁逆流症
5 心不全,心筋疾患
1 左心不全と右心不全
2 心筋症
2-1 拡張型心筋症
2-2 肥大型心筋症
2-3 その他の心筋症
6 心膜・心囊疾患,心臓腫瘍
1 収縮性心膜炎
2 心タンポナーデ
3 心臓粘液腫
7 伝導系疾患・不整脈
1 頻脈性不整脈
1-1 期外収縮
1-2 洞頻脈
1-3 心房細動(AF)
1-4 心房粗動(AFL)
1-5 上室頻拍・心房頻拍
1-6 心室頻拍(VT)
1-7 心室細動(VF)
2 徐脈性不整脈
2-1 洞機能不全
2-2 房室ブロック
2-3 心室内伝導障害
8 肺循環疾患(肺高血圧症)
1 肺高血圧症の概要
1-1 肺循環の特徴
1-2 肺高血圧症の病態
1-3 肺高血圧症の疾患分類(ニース分類)
1-4 肺高血圧症の治療薬(PAH 治療薬)
2 肺高血圧症の診断と治療各論
2-1 1 群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)
2-2 2 群:左心疾患に伴う肺高血圧症
2-3 3 群:肺疾患・低酸素血症に伴う肺高血圧症
2-4 4 群:肺動脈閉塞に伴う肺高血圧症
2-5 5 群:機序不明な肺高血圧症
3 包括的アプローチとチーム医療
9 静脈性疾患
1 下肢静脈瘤
2 深部静脈血栓症
3 肺塞栓症
4 血栓性静脈炎(表在静脈血栓症)
5 リンパ浮腫
6 リンパ管炎/リンパ節炎
10 心血管系の感染症/心血管系の炎症性疾患・自己免疫疾患
1 感染性心内膜炎
2 心筋炎
3 心膜炎
4 大動脈炎症候群
5 川崎病
6 梅毒性大動脈炎
7 心臓移植後冠動脈病変
11 成人先天性心疾患
1 心房中隔欠損症
2 心室中隔欠損症
3 ファロー四徴症
はじめに
初版が刊行された2019 年から時代は進み,evidence-based medicine(EBM)の概念の浸透から人工知能(AI)による診療支援導入に突入する段階に来ている.これから急速に進むであろうAI 診療時代へ向けての準備が問われる.AI は24 時間ネットワークを利用しEBM はリアルタイムに更新される.この部分はどのAI でも差が出ないが,ここで医療従事者にはAI を適切かつ有効に利用する能力が必要となる.AI 利用はAI をdeep learningさせることにもつながり,ここで同じAI を使ったとしても差が生じて来る.
例を挙げると,将棋で前人未到の八冠を達成した藤井聡太氏に鍛えられたAI はとてつもなく強い将棋AI になっているはずである.つまり,医療従事者の重要な仕事として,AI を適切に利用しAI を鍛えていく能力を習得することが加わるのである.
さて循環器は,知識自体もさることながらその知識を(とくに緊急時に)タイムリーに活用することが鍵となる分野である.本書は初版から一貫して,知識を単に暗記対象として提供するのではなく,その正しい利用を無意識に(反射的に)しかし論理的裏付けの下に施行できることを念頭に書いてきた.この理念は第2 版でも一貫して保持し,これが将来的には医療支援AIを適切に利用できる医療従事者を育成することにつながると考えている.
具体的な本書の構成として,第T章では基礎医学的側面を踏まえ心臓・血管系の生理機能・反応を臨床に結び付けて解説した.第U章では,第T章の知識活用として,実際によく遭遇する循環器疾患の症状からどう疾患へ結び付けていくかの思考過程を説明した.次に,鑑別診断に必要な循環器系の主要検査を紹介し,治療薬・治療機器・外科的手技といった治療に必要な事項を解説した.第V章には疾患各論を記し,各疾患の病態と治療法の解説を理解しやすいように記載した.知識の確認のため,振り返り学習できるように参照ページを載せるようにした.また,第2 版では初版からの情報の最新化をとくに注意して記載することに努めた.なかでも,小児慢性疾患患者が成人期に移行する際の成人移行支援・移行(期)医療について第V章第11 節「成人先天性心疾患」で,また,緩和ケアから一歩進んだACP(advance careplanning)に関して同第5 節「心不全,心筋疾患」で,その概念・現状の解説のコラムを新たに加えた.そして,第U章第4 節で「循環器疾患の患者への看護」を加え,心不全と虚血性心疾患を取り上げ,臨床の看護師に看護の概要を解説いただいた.循環器看護の特徴をつかんでもらいたい.
紙面の体裁は初版同様で,重要語句は赤字で示し,最低限必須な内容には下線が引かれている.見出しの語句,赤字語句,下線部の文章を追って復習することで,看護師として必要な知識の簡易的復習ができる.また,よく現場で使う俗称・略称は積極的にもとの語句に関連して記してある.略語にはフルスペルを側注に記しつつ,まとめて復習できるように冒頭にABC 順の「略語一覧」を掲載した.さらに,多少難しいけれども深く理解が必要な内容を「もう少しくわしく」として,実際の臨床の看護に役立つ知識を「臨床で役立つ知識」として,コラム化した.これらの内容は,その分野の第一線で活躍している医師達に担当していただいており,さらに詳しい最新の内容になっている.
改訂第2版を近未来の医療をイメージして使用していただき,循環器看護が時代に沿ってさらに充実することを切に願うものである.
2024 年11 月
八尾 厚史
落合 亮太