教科書

看護学テキストNiCE

看護関係法規改訂第2版

看護職の責任と法的根拠を学ぶ

編集 : 田中幸子/野村陽子
ISBN : 978-4-524-20773-2
発行年月 : 2024年2月
判型 : B5判
ページ数 : 342

在庫あり

定価2,860円(本体2,600円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

看護師免許をもつ教員らによる,“看護師に必要な関係法規”を看護の立場から解説したテキストの改訂版.法や制度の成立過程やその意義,看護職や看護実践にどのように関わるのかを解説した,これまでにない構成が特徴.今改訂ではここ数年で新たに施行された法・制度について項目を新設し,情報をアップデート.

目次

第T章 看護関係法規を学ぶにあたって
1 なぜ看護に関する法規を学ぶのか
 A どのようなことが法令で決められているのか
 B 看護関係法規を概観してみよう
 C 制度はどのように変わるのか
 D 看護関係法規を楽しく学ぶ
2 法および関連する規範の概念
 A 社会生活と法
 B 法の種類
 C 法の分類
 D 制定法の効力
3 社会の基盤にある法・制度
 A 少子化社会対策基本法
 B 高齢社会対策基本法
 C 共生社会の実現を推進するための認知症基本法(認知症基本法)
 D こども基本法
コラム こども家庭庁
 E ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律(ユニバーサル社会実現推進法)
 F 障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)
 G 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
 H 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法) 
 I 個人情報の保護に関する法律
コラム 個人情報の保護に関する用語の定義

第U章 医療提供体制の基本となる法・制度を理解する
1 医療提供体制に関する法・制度を理解する
 A 医療法と医療提供体制の変遷
 B 医療法
2 医療従事者の身分・業務に関する法・制度を理解する
A 保健師助産師看護師法の制定までの経緯
B 保健師助産師看護師法
コラム 相対的欠格と行政処分
コラム 新人看護師の臨床研修制度
コラム 特定行為研修を組み込んだ新たな認定看護師の養成
コラム なぜ保健師助産師看護師法には看護記録は義務づけられていないのか?
 C その他の医療職・関連職種の身分法
1.その他の医療職・関連職種の概要
2.医師法
コラム 応招義務(医師・歯科医師の応招義務に関する医政局長通知(2019年12月25日)の要約のポイント)
3.歯科医師法
4.薬剤師法
5.臨床検査技師等に関する法律
6.理学療法士及び作業療法士法
7.言語聴覚士法
8.臨床工学技士法
9.診療放射線技師法
10.救急救命士法
11.公認心理師法
12.精神保健福祉士法
13.社会福祉士及び介護福祉士法
コラム 国家資格以外の医療関連職種
 D 看護師等の人材確保の促進に関する法律
コラム ニッパチ闘争とは
3 社会保険制度に関する法・制度を理解する
 A 医療保険制度
 B 診療報酬制度
 C 健康保険法
 D 国民健康保険法
 E 高齢者の医療の確保に関する法律(旧老人保健法)
4 臓器移植法および人の死に関する法・制度を理解する
 A 臓器の移植に関する法律
コラム 公益社団法人日本臓器移植ネットワーク(JOT)
コラム 国内初6歳未満の脳死下臓器提供(2012年6月15日)ドナーとレシピエントの両親の言葉
コラム 臓器移植コーディネーター
コラム ドナー家族とレシピエントの交流
 B 死体解剖保存法
コラム 献体法

第V章 薬剤に関する法・制度を理解する
1 医薬品の取り扱いに関する法・制度を理解する
 A 医薬品医療機器等法
 B 麻薬及び向精神薬取締法
 C 覚醒剤取締法
 D 大麻取締法
 E あへん法
 F 毒物及び劇物取締法
 G 看護師が医薬品を取り扱うにあたって
コラム 医薬品とDX
2 薬害被害者の救済に関する法・制度を理解する
 A 薬害と被害者の救済
 B 健康被害救済制度

第W章 地域で看護を提供する際に必要な法・制度を理解する
1 訪問看護に関する法・制度を理解する
 A 訪問看護制度
コラム 介護保険制度における区分支給限度基準額(支給限度額)について
 B 介護保険制度
 C 訪問看護に関連する看護職以外の資格制度
2 健康の保持・増進に関する法・制度を理解する
 A 保健とは
 B 地域保健法
 C 母子保健法
 D 母体保護法
コラム 優生思想と強制断種
 E 健康増進法
 F 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
コラム ハンセン病問題の解決の促進に関する法律
 G 新型インフルエンザ等対策特別措置法
コラム 国立健康危機管理研究機構
 H 予防接種法
 I 学校保健安全法
 J 自殺対策基本法
 K アルコール健康障害対策基本法
 L ギャンブル等依存症対策基本法
3 疾病対策に関する法・制度を理解する
 A がん対策基本法
 B 肝炎対策基本法
コラム ゲノム医療推進法
 C 難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
コラム 難病情報センター
 D アレルギー疾患対策基本法
 E 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)
4 社会保障・社会福祉制度を理解する
 A 社会保障の成立と展開
 B 社会福祉に関する法・制度の概要
 C 障害者福祉に関する法・制度
1.障害者福祉に関する法・制度の変遷
2.障害者基本法
3.障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)
4.障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)
5.障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)
コラム 障害者権利条約
6.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)
7.身体障害者福祉法・知的障害者福祉法
8.精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)
9.発達障害者支援法
 D 子ども・家庭の福祉に関する法・制度
1.児童福祉法
2.児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)
3.障害児および小児慢性疾患患児に関する法・制度
4.医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)
5.子ども・子育て支援新制度
6.母子及び父子並びに寡婦福祉法
7.成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(成育基本法)
8.育児に関する施策としての手当
 E 女性の福祉に関する法・制度
1.売春防止法
2.配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)
3.婦人保護事業
4.困難な問題を抱える女性への支援に関する法律
 F 公的扶助(生活保護)
 G 高齢者に関する法・制度
1.老人福祉法
2.高齢者の医療の確保に関する法律
3.主な高齢者福祉サービス
4.高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)
5.成年後見制度
5 災害時の医療に関する法・制度を理解する
 A 災害対策基本法
 B 防災基本計画

第X章 労働者として労働に関する法・制度を理解する
はじめに 労働法はなぜ必要か?
 A 労働基準法
コラム 看護婦 労働の歴史 〜院内保育所の設置へ〜
コラム 退職した准看護婦に対する奨学資金の返還請求の可否
コラム 労働組合
コラム 賃金の額は?
 B 労働契約法
 C 労働安全衛生法
 D 労働者災害補償保険法
 E 雇用保険法
 F 育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)
 G 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)
コラム マタハラ賠償命じる 東京地裁判決 雇止めも無効
 H 職場におけるハラスメント
 I 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)
コラム 看護師の過労死事件
第Y章 看護の臨床業務と法・制度のかかわりを知る
1 看護の臨床業務に関係する法規を理解する
 A はじめに
コラム 六法
 B 刑事上の責任
コラム 因果関係
 C 民事上の責任
コラム 「患者は金目当て」なのか?
コラム 診療契約の当事者
コラム 新人の過失
 D 行政上の責任
コラム 看護師等に対する行政処分の状況
 E 医療過誤と裁判
コラム 裁判外での紛争の解決とADR
2 臨床で重要となる法判断―判例を通して考える
 A 医療における自己決定と患者の同意
 B チーム医療と「信頼の原則」
コラム 「看護師だけ有罪」と看護師の専門性
 C 「医療水準」による注意義務違反の判断枠組み
コラム 医療機関ごとの看護水準
 D 一般医療施設における身体拘束の是非
コラム 身体拘束(抑制)と「ケアの質」

第Z章 政策と立法を理解する
 A 政策とはなにか
 B 政策過程
 C 立法過程
 D 政策へのさまざまなレベルでの参画
コラム 良き市民(Effective citizenship)

付録 看護関係法令集
 保健師助産師看護師法
 保健師助産師看護師法施行令
 保健師助産師看護師法施行規則
 保健師助産師看護師学校養成所指定規則
 看護師等の人材確保の促進に関する法律

はじめに

 2020 年に初版が発行されてから,4 年近くが経過した.この間,コロナ禍により多くの医療機関は大勢の感染者の対応に追われてきた.コロナ禍では毎日のように行政機関等から感染症についてのニュースが出され,感染拡大の状況に応じてその都度,感染対策も変更されてきた.2023 年5 月に,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は5 類感染症に移行され,ようやく様々な制限が緩和され感染前の日常に近づきつつある.

 看護師になりたいと思っている人には,感染症の発生要因・予防等の知識だけでなく感染症に関する法・制度の知識も必要となる.“ 患者や地域住民を護りたい” のであれば,法・制度を理解し,感染者への対応にあたっては,いかに制限を少なくして治療や制限のストレスを緩和し,できるだけその人の日常の生活に近づけるよう考えることが重要であろう.本書の感染症法の項目でも解説されているように,過去には感染症患者への差別や偏見があったことを受け止め,常に人権尊重の視点を看護実践に取り入れていくことが重要である.医療に携わる看護師は患者・地域住民の立場から法・制度をチェックし,課題とその解決法を提言していくことが求められると考える.

 さて,本書は,看護職が中心となり法学・薬学の専門家らと協働して作成した看護に関係する法規のテキスト(以下,看護関係法規)の第2 版である.初版と同様,法や制度を事実のみならず,その社会背景や成立過程,看護業務に与えた影響・意義等を解説し,看護職者としてその法・制度を学ぶ意義や,看護業務との関わりを理解しながら看護関係法規を学べる内容としている.さらに初版では掲載しなかった法・制度や,ここ数年で施行・交付された法・制度について解説を追加し,以下のような構成・内容としている.

 第T章では,看護関係法規と現実の臨床看護との関わりを解説し,さらにLGBT 理解推進法や性同一障害者の取り扱いの特例に関する法律などを新たに追加した.第U章は,医療提供体制の基本となる医療法改正とかかりつけ医機能の追記を行った.第V章は,医薬品等に関する法律を解説し,電子処方箋など医薬品に関するDX を加筆した.第W章では,地域で看護を提供する際に必要な法・制度を説明し,新たに新型インフルエンザ等対策特別措置法,医療的ケア児支援法などを追記した.第X章は,医師の働き方改革やタスクシフト・シェアを追記し,これから社会人となる看護学生が,労働者としての自分の権利と義務を自覚し,活き活きと働き続けられるよう労働法について解説した.第Y章では,チーム医療における医療過誤事件に遭遇した場合の法的責任から看護師としての行動を学習できるようにした.最後に第Z章では患者の代弁者・アドボケーターとしての看護師の政策的な思考の重要性を解説した.

 本書の活用によって,看護に関する法・制度に一層関心を深めていただくことを期待したい.

2023 年12月
田中 幸子
野村 陽子

9784524207732