基礎から学ぶ生化学改訂第4版

監修 | : 山田和彦 |
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編集 | : 福島亜紀子/叶内宏明 |
ISBN | : 978-4-524-20762-6 |
発行年月 | : 2025年3月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 292 |
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

管理栄養士・栄養士養成課程の学生に必要十分な知識をまとめた生化学のテキスト.食事から摂取する栄養素や食品成分の体内動態を生化学的立場で捉え,物質と生命活動との関連を中心に構成している.化学反応における中間代謝物や代謝経路については主要なものに限定し,初学者が全体像を把握しやすいように工夫されている.今改訂では令和4年度管理栄養士国家試験出題基準に準拠したほか,「時間栄養学」を新設した.
1.生化学を学ぶために
A.生化学とは
B.人体の化学組成
1 人体はどんな元素からできているか
2 人体はどんな成分から構成されているか
C.身体の構成成分と食事成分
D.なぜいろいろな食品を組み合わせて食べなければならないか
E.生物の基本的な単位──細胞
1 細胞の微細構造と細胞小器官の役割
2 細胞内小器官の分画(分画の手順)
練習問題
2.なぜ食物を摂らなければならないのか
A.食物成分の生体への取り込みとゆくえ
1 食物は生体内でどのように利用されるか
2 消化器官の役割とその特徴
3 管腔内消化と膜消化
4 糖質の消化・吸収と発酵・吸収の概要
5 脂質の消化・吸収の概要
6 タンパク質の消化・吸収の概要
7 ビタミン・ミネラルの吸収
練習問題
B.エネルギーはどのように産生され,利用されているか
1 人間の活動とエネルギーの消費
2 どの栄養素からどれくらいエネルギーは産生されるか
3 エネルギーはどのように作られ,使われているか
4 ATPと生命活動
5 エネルギーの貯蔵と利用
6 栄養素酸化のエネルギー論
練習問題
3.食物成分は生体内においてどのように代謝されているか
A.代謝とは何か──代謝の全体像
1 代謝とは
2 分子は相互に変換される
3 時間的・空間的に代謝の変化を捉える
4 代謝物は酵素活性を調節する
B.糖質は生体内でどのように代謝されているか
1 糖質の特徴
2 糖質の働き
3 酸素がなくてもエネルギー産生できるのは糖質
4 酸素があればエネルギー産生に無駄がない
5 糖質の貯蔵物質──グリコーゲン
6 糖質が生まれ変われば
7 血糖と生体機能とのかかわり
8 難消化吸収性のオリゴ糖や糖アルコールは生体内でどのように利用され,機能を発現するか
練習問題
C.脂質は生体内でどのように代謝されているか
1 脂質とは何か
2 脂質の種類と機能
3 脂質は生体内でどのような代謝物に変換するか
4 リン脂質もエネルギーを産生する
5 コレステロールの合成とゆくすえ
6 ケトン体はどんなときにどのようにして作られるか
7 脂肪酸由来の生理活性物質──エイコサノイドの種類と機能
8 脂質は体内で生合成される
9 脂肪組織は合成と分解が繰り返されている
10 血液のリポタンパク質はどのように代謝され機能しているか
練習問題
D.タンパク質は生体内でどのように代謝されているか
1 タンパク質とは何か
2 タンパク質の分類
3 アミノ酸という構成単位
4 タンパク質はどのような構造をしているか
5 タンパク質はどのように分解されるか
6 アミノ酸の役割は何か
7 アンモニアの処理
8 神経伝達物質
9 アミノ酸代謝異常症
10 アミノ酸・タンパク質の栄養価
練習問題
E.遺伝情報はどのようなメカニズムによって伝達されているか
1 核酸代謝
2 遺伝情報が受け継がれるしくみ
3 アミノ酸配列情報とタンパク質の生合成
4 遺伝子発現の調節
5 遺伝子操作
6 ヒトゲノムと栄養学
練習問題
4.生体の機能を調節しているものは何か
A.酵素・ホルモン・ビタミンの違い
B.酵素は生体内でどのような働きをしているか
1 酵素とは何か
2 反応の形式と酵素の分類
3 酵素はどのような構造をしているか
4 酵素にはどのような特性があるか
5 酵素作用は調節を受けている
6 酵素の反応速度
7 酵素欠損による先天性代謝異常
練習問題
C.ホルモンは生体内でどのような働きをしているか
1 ホルモンとは何か
2 ホルモンはどのように働きかけるか
3 ホルモンおよびその関連物質
4 ホルモン異常と疾病
練習問題
D.ビタミンは生体内でどのような働きをしているか
1 ビタミンとは何か
2 ビタミンの種類と主な性質
3 水溶性ビタミン
4 脂溶性ビタミン
練習問題
E.ミネラル(無機質)は生体内でどのような働きをしているか
1 ミネラル(無機質)とは何か
2 ミネラル(無機質)の分類
3 ミネラル(無機質)の生理的意義
4 各種ミネラル(無機質)の機能と生理作用
練習問題
F.水は生体内でどのような働きをしているか
1 水の特性と機能
2 水の出納
3 細胞内液と細胞外液
4 水の代謝
練習問題
5.生体の恒常性維持における血液と尿の役割と働き
A.血液の役割と働き
1 血液の組成と一般的性質
2 血液の機能
3 赤血球
4 白血球
5 血小板
6 血漿に含まれる成分
B.尿の役割と働き
1 尿の生成と排泄
2 尿の性状と成分
C.血液と尿による恒常性の維持
1 体液浸透圧
2 電解質と酸塩基平衡(pH)調節機構
3 アシドーシスとアルカローシス
練習問題
D.時間栄養学
1 概日リズム,日周リズムと時間栄養学
2 概日リズムのメカニズム
3 中枢の時計と末梢の時計
4 何をどのタイミングで摂取するか
練習問題
6.外敵から生体をどのように守るか
A.免疫とワクチン
1 免疫とは何か
2 ワクチンの歴史
B.感染防御機構
1 自然免疫系
2 獲得免疫系
C.細胞性免疫
1 移植免疫
2 腫瘍免疫
3 母児免疫
D.液性免疫
1 抗体の基本構造
2 抗体の種類と特徴
3 抗体の機能
E.粘膜免疫
F.アレルギー
1 T型アレルギー
2 U型アレルギー
3 V型アレルギー
4 W型アレルギー
5 X型アレルギー
練習問題
略語
参考文献
練習問題解答
索引
改訂第4版の序文
本書『基礎から学ぶ生化学』は,栄養学を学び,将来,管理栄養士・栄養士や保健科学の専門家になろうとしている人を意識して構成している.2008 年の初版より今回4 度目の改訂となり,編者2 名も交代した.執筆については大学で栄養学や健康科学の教育に携わり,食事から摂取する栄養素や食品成分の体内動態を,基礎生化学的な位置づけとして理解している方々に依頼し,執筆者も一部交代をした.当然,「管理栄養士国家試験出題基準」の「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち」の生化学領域の内容を網羅し,「日本人の食事摂取基準(2025 年版)」に対応している.
多くの生化学の教科書は栄養素の化学構造から始まるのに対して,本書は生体を動的なものとして位置づけ,まず食べることを生化学的立場からとらえて,その物質と生命活動との関連を理解できるように構成している.今改訂では,読者からの指摘や要望を取り入れ,一部,図表の入れ替えも行った.また,代謝反応が理解しやすいように酵素名の初出箇所は和名とカタカナ名を併記した.たとえば,本書の初出箇所には乳酸脱水素酵素(乳酸デヒドロゲナーゼ)と記し,それ以降は乳酸脱水素酵素とした.「乳酸が乳酸脱水素酵素によって,脱水素されピルビン酸になる」と反応をイメージしながら理解してほしい.近年,化学構造式を用いず,物質名だけで説明をしている生化学の教科書も増えているが,物質名および代謝の理解には化学構造式が重要であると考え,本書では重要なものを厳選し化学構造式を示し,理解しやすいように工夫している.本書においては,栄養素共通のエネルギー産生反応である「TCA サイクル」「電子伝達系」を「CHAPTER 2 なぜ食物を摂らなければならないのか」で扱い,「TCA サイクル」は再度,糖質代謝の項で詳しく解説している.しかし,これらの反応系はアミノ酸,脂肪酸からエネルギー産生する際にも使われる反応系である.そのため,代謝系の全体像が見渡せるよう,見返しに代謝マップを掲載している.代謝マップには本文の記述対応頁も示しているので,全体像の理解に活用してほしい.
本書は,栄養学・保健科学を学ぶ人が基礎科学としての生化学に親しみをもち,効果的に学修できるように配慮している.本書が栄養学を理解する上で最善の教科書となり,本書を大いに活用していただければ大きな喜びである.
本書改訂にあたって,多大なご尽力をいただいた(株)南江堂の諸氏に,心より感謝申し上げる.
2025 年2 月
監修者,編者を代表して
女子栄養大学
福島亜紀子
【初版の序文】
栄養・健康科学シリーズの『生化学』が刊行されて16 年が経過した.その間,栄養士法の改正に伴って管理栄養士養成カリキュラムが大幅に変更され,3 回の改訂を行なって対応してきた.好評を得て,多くの方々に利用していただき,また海外においても翻訳本が刊行された.
栄養士法の改正によって,従来の生化学や解剖生理学などの科目名がなくなり,『人体の構造と機能および疾病の成り立ち』という大きな枠の中に取り込まれることとなった.しかし,1 人の担当者がこの大枠のすべてを講義するわけではなく,従来の生化学,解剖生理学,病理学,疾病論などに分けて担当しているのが現状である.今回の『基礎から学ぶ生化学』は,栄養・健康科学シリーズから分離・独立した生化学テキストとして再構築したもので,その目指す方向は旧版の『生化学』の流れを受けた構成になっている.したがって,本書は栄養学や健康科学に携わる人々が必要とする生化学的知識を獲得するために十分対応できる内容となっている.また,新しいカリキュラムに基づく管理栄養士国家試験ガイドラインの生化学領域の内容を網羅してある.さらに,執筆者は一部交替して栄養の専門家を養成している研究者・教育者が中心である.
本書は,栄養学や健康科学に携わる人々に対して,せめてこれだけは知っていてほしいと考えられる項目に搾り込んで,生化学テキストとして構成してみた.それゆえ,内容はあまり欲張らずに基本的なことや必要な事項が親しみをもって学習できるように配慮した.化学構造式は重要なものを厳選し,しかも1 つひとつの構造式について,できるだけ理解しやすいように工夫してある.また,化学反応における中間代謝物や代謝経路については,主なものに限定し,全体像を把握できるようにした.したがって,生化学の成書に比べると物足りなく感じる読者諸氏もあるものと考える.
これを一部補う意味で巻末に代謝経路図を添付した.より詳しく学習したい読者は巻末に掲げてある参考書を参照されたい.本書のもう1 つの特徴は,生化学に親しみをもってもらうために,内容の構成を既存の生化学の教科書と大きく変えたことである.つまり,化学物質から学習が始まるのに対して,本書では生体を動的なものとして位置づけ,まず食べることを生化学的立場から捉えて,その物質と生命活動との関連を中心に構成した.
本書は,栄養学・健康科学を学ぶ者が基礎科学としての生化学に親しみをもち,効率よく学習できるように配慮した.随所にその情熱と新しい試みがみられるはずである.本書が,栄養学・健康科学を志す諸賢の座右の書となり,わが国の栄養学領域の学問の発展に寄与することを念じ,また活用をお願いする次第である.
2008 年10 月
奥 恒行
