立体視で理解する臨床心臓解剖アトラス[3Dメガネ付録つき]
共著 | : 森俊平/松本賢亮/西井達矢/伊澤有 |
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ISBN | : 978-4-524-20486-1 |
発行年月 | : 2024年10月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 304 |
在庫
定価24,200円(本体22,000円 + 税)
正誤表
-
2024年11月11日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
200枚を超える圧巻の三次元画像によって,心臓の解剖・形態に迫る唯一無二のアトラス書が登場!実心臓から得られたデータを用いて再構成された三次元画像のため,通常は把握できない”展開も変形もしていない状態の心臓”について,3Dメガネを通して奥行きを知覚しながら理解ができる. 心エコー図や冠動脈造影といった心臓画像検査との対比を含めた正常の心臓解剖から,弁膜症・構造的心疾患,先天性心疾患といった病態における構造・形態まで学べる一冊.
本書の使い方
用語一覧
T 正常心解剖
A.透視解剖(正面・背面)
胸部正面像@
胸部正面像A
胸部背面像
B.透視解剖(左右前斜位)
胸部右前斜位像
胸部左前斜位像
心臓右前斜位像(右心系透過)
心臓左前斜位像(右心系透過)
透視解剖(右前斜位)
透視解剖(左前斜位)
段階的仮想解剖(右前斜位)@
段階的仮想解剖(右前斜位)A
段階的仮想解剖(右前斜位)B
段階的仮想解剖(右前斜位)C
段階的仮想解剖(右前斜位)D
段階的仮想解剖(右前斜位)E
段階的仮想解剖(右前斜位)F
段階的仮想解剖(右前斜位)G
段階的仮想解剖(右前斜位)H
段階的仮想解剖(右前斜位)I
段階的仮想解剖(左前斜位)@
段階的仮想解剖(左前斜位)A
段階的仮想解剖(左前斜位)B
段階的仮想解剖(左前斜位)C
段階的仮想解剖(左前斜位)D
段階的仮想解剖(左前斜位)E
段階的仮想解剖(左前斜位)F
段階的仮想解剖(左前斜位)G
段階的仮想解剖(左前斜位)H
段階的仮想解剖(左前斜位)I
C.心電図解剖
標準肢誘導・単極肢誘導心電図(正面)
単極胸部誘導心電図(正面)
D.経胸壁心エコー図解剖
左室長軸像切断面(尾側左前斜位)
左室長軸像切断面(頭側右後斜位)
左室二腔像(左後斜位,A2C)
左室三腔像(頭側左後斜位,A3C)
左室四腔像(頭側,A4C)
左室五腔像(頭側,A5C)
左室二腔像展開解剖
左室三腔像展開解剖
左室四腔像展開解剖
左室短軸像(左室乳頭筋レベル)
左室短軸像(腱索レベル)
左室短軸像(僧帽弁レベル)
左室流出路短軸像
バルサルバ洞断面像
肺動脈幹長軸像
右室長軸像切断面
右室二腔像(A2C,RV)
右室三腔像(A3C,RV)
右室四腔像(A4C,RV)
E.経食道心エコー図解剖
僧帽弁・大動脈弁画像切断面
僧帽弁断面(中部食道四腔像,0°)
僧帽弁断面(中部食道僧帽弁交連部像,60°)
僧帽弁断面(中部食道二腔像,90°)
僧帽弁断面(中部食道長軸像,135°)
バルサルバ洞断面(中部食道大動脈弁短軸像,45°)
卵円窩画像切断面
卵円窩断面(0°)
卵円窩断面(45°)
卵円窩断面(80°)
卵円窩断面(90°)
卵円窩断面(120°)
F.心腔内心エコー図解剖
右房中部スキャン:Home view
右房中部からの360°スキャン
低位右室流出路スキャン:バルサルバ洞断面
低位右室流出路からの360°スキャン
G.心腔内構造解剖
G-1.大静脈洞
大静脈洞(心外膜面)
大静脈洞(心内膜面)
G-2.分界稜
分界稜(右側面)
分界稜(正面)
分界稜(左側面)
G-3.卵円窩
卵円窩(正面)
卵円窩(右側面)
G-4.冠静脈洞
冠静脈洞(右後斜位)
冠静脈洞(左前斜位)
G-5.右心耳
右心耳(右後斜位)
右心耳(左後斜位)
G-6.三尖弁下大静脈間峡部
三尖弁下大静脈間峡部(右前斜位)
三尖弁下大静脈間峡部(頭側)
G-7.膜性中隔
膜性中隔(右前斜位)@
膜性中隔(正面)
膜性中隔(右前斜位)A
G-8.刺激伝導系
膜性中隔と房室伝導路(右前斜位)@
膜性中隔と房室伝導路(右前斜位)A
膜性中隔と房室伝導路(右前斜位)B
房室刺激伝導系(左前斜位,乳頭筋基部レベル)
G-9.三尖弁
三尖弁(左前斜位)
三尖弁(右後斜位)
三尖弁(左後斜位)
G-10.室上稜
室上稜(正面)
室上稜(右後斜位)
G-11.右室肉柱・乳頭筋
右室肉柱・乳頭筋(右前斜位)
右室肉柱・乳頭筋(正面)
右室肉柱・乳頭筋(右後斜位)
右室肉柱・乳頭筋(尾側)
G-12.右室流出路,肺動脈弁
右室流出路,肺動脈弁(左前斜位)
肺動脈弁(頭側)
G-13.肺静脈
肺静脈(背面)
右肺静脈(左側面)
左肺静脈(尾側右前斜位)
G-14.左心耳
左心耳(右後斜位)
左心耳(左側面)
左心耳(右後斜位)
G-15.僧帽弁
僧帽弁(左前斜位)
僧帽弁(右後斜位)
G-16.左室オスティウム
左室オスティウム(右後斜位)@
左室オスティウム(右後斜位)A
大動脈基部僧帽弁複合体(左前斜位)
G-17.左室サミット
左室サミット(左前斜位)
左室サミット(背面)
左室サミット中隔側(右側面)
左室サミット大動脈弁側(正面)
左室サミット僧帽弁輪側(左後斜位)
左室サミット(頭側左前斜位)
G-18.左室乳頭筋
左室乳頭筋(右前斜位)
左室乳頭筋(右後斜位)
G-19.心尖部
両心室心尖部(右後斜位)
G-20.左室流出路,大動脈弁
左室流出路(尾側左前斜位)@
左室流出路(尾側左前斜位)A
大動脈弁(頭側右前斜位)@
大動脈弁(正面)
大動脈弁(頭側右前斜位)A
H.心膜腔解剖
心膜腔(右後斜位)
I.冠動脈解剖
冠動脈(正面)
I-1.左冠動脈尾側右前斜位像
左冠動脈(尾側右前斜位)@
左冠動脈(尾側右前斜位)A
I-2.左冠動脈尾側像
左冠動脈(尾側)@
左冠動脈(尾側)A
I-3.左冠動脈尾側左前斜位像
左冠動脈(尾側左前斜位)@
左冠動脈(尾側左前斜位)A
I-4.左冠動脈左側面像
左冠動脈(左側面)@
左冠動脈(左側面)A
I-5.左冠動脈頭側左前斜位像
左冠動脈(頭側左前斜位)@
左冠動脈(頭側左前斜位)A
I-6.左冠動脈頭側像
左冠動脈(頭側)@
左冠動脈(頭側)A
I-7.左冠動脈頭側右前斜位像
左冠動脈(頭側右前斜位)@
左冠動脈(頭側右前斜位)A
I-8.左冠動脈頭側右後斜位像
左冠動脈(頭側右後斜位)@
左冠動脈(頭側右後斜位)A
I-9.右冠動脈左前斜位像
右冠動脈(左前斜位)@
右冠動脈(左前斜位)A
I-10.右冠動脈左側面像
右冠動脈(左側面)@
右冠動脈(左側面)A
I-11.右冠動脈頭側像
右冠動脈(頭側)@
右冠動脈(頭側)A
I-12.右冠動脈右前斜位像
右冠動脈(右前斜位)@
右冠動脈(右前斜位)A
J.冠静脈解剖
冠静脈(右前斜位)@
冠静脈(右前斜位)A
冠静脈(左前斜位)@
冠静脈(左前斜位)A
K.肺動脈解剖
肺動脈(正面)@
肺動脈(正面)A
U 弁膜症・構造的心疾患
A.大動脈弁疾患
大動脈弁狭窄症(一尖弁)
大動脈弁狭窄症(二尖弁)
大動脈弁狭窄症(三尖弁)
大動脈弁逆流症(四尖弁)
大動脈弁逆流症(TypeT:バルサルバ洞,大動脈弁輪拡大)
大動脈弁逆流症(TypeU:右冠尖逸脱)@
大動脈弁逆流症(TypeU:右冠尖逸脱)A
大動脈弁逆流症(TypeV:リウマチ熱)
経カテーテル大動脈弁留置術後(Edwards社,Sapien弁留置後)
経カテーテル大動脈弁留置術後(Abbott社,Portico弁留置後)
B.僧帽弁疾患
僧帽弁逸脱症(Fibroelastic deficiency,頭側右後斜位)
僧帽弁逸脱症・僧帽弁穿孔(Fibroelastic deficiency,頭側右後斜位)
僧帽弁逸脱症(Barlow病,頭側右後斜位)
僧帽弁逸脱症(不完全型:Forme fruste,頭側右後斜位)
僧帽弁逆流症・僧帽弁裂隙(頭側右後斜位)
僧帽弁狭窄症(尾側左前斜位)
僧帽弁クリップ(尾側左前斜位)
C.左心耳閉鎖
左心耳閉鎖デバイス(右側面)
左心耳閉鎖デバイス(左側面)
V 先天性心疾患
A.心房中隔欠損・心房間交通
卵円孔開存(右後斜位)
卵円窩二次孔欠損(右前斜位)
静脈洞欠損・部分肺静脈還流異常(右前斜位)
冠静脈洞天井欠損(Unroofed coronary sinus,頭側)
冠静脈洞天井欠損(Unroofed coronary sinus,右前斜位)
心房中隔欠損閉鎖後(右前斜位,右房側)
心房中隔欠損閉鎖後(左後斜位,左房側)
B.心室中隔欠損
心室中隔欠損(頭側左後斜位)@
心室中隔欠損(頭側左後斜位)A
心室中隔欠損(右前斜位)
C.房室中隔欠損
房室中隔欠損(頭側左後斜位)
房室中隔欠損(右前斜位)
房室中隔欠損(尾側)
D.ファロー四徴症
ファロー四徴症(左側面)
ファロー四徴症(正面)
ファロー四徴症(尾側)
ファロー四徴症(背側)@
ファロー四徴症(背側)A
E.大血管転位
大血管転位(正面)
大血管転位Jatene術後(正面)
F.修正大血管転位
修正大血管転位(正面)@
修正大血管転位(正面)A
修正大血管転位(頭側左後斜位)
G.総肺静脈還流異常
総肺静脈還流異常(背側)@
総肺静脈還流異常(背側)A
H.大動脈縮窄
大動脈縮窄(右後斜位)
I.重複大動脈弓
重複大動脈弓(背側)
J.大動脈肺動脈窓
大動脈肺動脈窓(背側)
大動脈肺動脈窓(正面)@
大動脈肺動脈窓(正面)A
K.肺動脈閉鎖
肺動脈閉鎖(右前斜位)@
肺動脈閉鎖(右前斜位)A
L.両大血管右室起始
両大血管右室起始(左前斜位)@
両大血管右室起始(尾側)@
両大血管右室起始(左前斜位)A
両大血管右室起始(尾側)A
M.左室低形成症候群
左室低形成症候群(左前斜位)
N.房室弁交叉・十字心
房室弁交叉・十字心(左前斜位)
O.右室二腔症
右室二腔症(右前斜位)
挿絵:実心臓のアナグリフ
1.正面像
2.右前斜位像
3.右側面像
4.右後斜位像
5.背面像
6.左側面像
7.左前斜位像
8.心房側から見た房室弁
9.右前斜位から見た段階的解剖@
10.右前斜位から見た段階的解剖A
11.右前斜位から見た段階的解剖B
12.右前斜位から見た段階的解剖C
13.右前斜位から見た段階的解剖D
14.右前斜位から見た段階的解剖E
15.右前斜位から見た段階的解剖F
16.心室側から見た房室弁
異動するたびに感じることだが,どの土地に行っても,凄いな,かくありたいな,と思う人々との出会いが必ず待っている.そういう出会いを重ねると,普通なら居心地が良くなったと思う頃に,次の出会いを求めてむしろ落ち着かなくなる.振り返れば,大学入学で地元を離れてから,そのような経緯で各地を転々として,気づけば米国はロサンゼルスにいる.本書は,そんな流浪の旅の途中,神戸大学循環器内科の平田健一教授に師事した6 年間での出会いから生まれた.もとより神戸には縁もゆかりもない上,卒後10 年以上大学に所属したことはなく,医局という組織には,それこそ“白い巨塔”にも似た恐怖心を抱いていた.しかし,平田教授の薫陶のもと,神戸大学で過ごした月日は,学閥や権威主義とは無縁の,多くの尊敬できる人々に出会えた珠玉の6 年間であった.中でも松本賢亮先生,西井達矢先生,伊澤 有先生との出会いは宝物である.臨床・教育・研究に対する真摯な姿勢,豊富な専門的知識,飽くなき好奇心と探究心,研ぎ澄まされた観察眼,協調性やコミュニケーション能力,柔和で謙虚で忍耐強いお人柄など,それぞれの先生の持つ輝きに感服した.彼らとの出会いに心から感謝し,自分もまたかくありたいと思った.そのご縁を活かして,本書の話を頂戴した際に,各先生に共著を依頼し,ご快諾いただいた.知らない土地で偶然出会ったこの3 名の素晴らしい同僚と,10 年の時を経て,我々が愛する臨床心臓画像の教科書の共著出版に至ったことは万感の思いである.画像診断のみならず,循環器臨床の根幹を成す三次元臨床心臓解剖を深く知る喜び,それを読者の皆様と共有できれば幸甚である.
肉眼解剖学は歴史の深い分野である一方で,ともすれば時代遅れ,今さら新しい知見など得られるはずもないと考える向きもあるだろう.ナノ解剖学,分子形態学,遺伝子解析学などが解剖学の主流となり,さらに形態よりも機能評価を目的とする学問分野が時代の先端を牽引する一方で,伝統的な肉眼解剖学は時代というテーブルの片隅に追いやられつつあるように感じる.ましてや自分が魅せられたのは,たかだか心臓という臓器ひとつである.しかし,いざ循環器内科医として患者さんを診るとき,いかに自分が心臓解剖を知らないのかを日々思い知らされてきた.心臓生理学と並んで心臓解剖学は臨床循環器内科学の根幹であることを実感してきた.ところが,卒後心臓解剖を深く学び直す機会は極めて限られている.成書や論文は無数にあるが,循環器内科医が知りたい心臓解剖は,解剖学者の提示する解剖とは必ずしも一致しない.例えば,展開・変形した心臓を非臨床的な角度から見て説明される解剖は,展開も変形も不可能な生体心から得られる臨床画像に適用する上で限界がある.多くの臨床画像は,断層画像であれ,投影画像であれ,二次元的理解から入ることが多いことも問題だと思う.二次元解剖から三次元解剖を理解するという帰納的なアプローチは,正確な三次元的把握をする上で限界がある.心臓解剖は極めて複雑であるからこそ,臨床画像診断の習得過程においては,三次元解剖から二次元解剖を理解するという演繹的なアプローチを取るべきである.ところが,そのような三次元解剖を教えてくれる成書は少ない.美しく再構成された三次元画像でさえも二次元媒体上で表現されれば,やはり奥行き感のない二次元画像である.本書は,奥行き知覚を維持できるアナグリフ(立体視画像)を作成して,真の三次元画像を,展開も変形もない心臓を用いて提示した.再構成した全ての画像は,実心臓から得られたデータを用いており,人工的に補正追加した構造はない.胸部X 線写真や,心エコー図や,心臓CT や,冠動脈造影などで見ているものの背景にある三次元臨床心臓解剖の本態は何なのだろう? 臨床経験の中で蓄積したそんな疑問から生まれた本書は,日々の臨床に役立つ三次元臨床心臓解剖学の知見を多く含んでいる.
この20 年余りで,医用画像は劇的に進歩し,心臓インターベンションは急速に発展・複雑化してきた.この傾向は今後も続くであろう.我々の三次元臨床心臓解剖理解は,その進歩に追いついてきたのだろうか.それを極めたら,循環器診断学も循環器治療学も今より遥かに改善することができるのではないだろうか.今さらではなくて,今こそ,臨床医の視点で,心臓解剖を再訪すべき機会だと思う.“Function follows form”,形態の理解なくして機能の理解はなく,形態と機能の理解なくして,診断学にも治療学にも更なる革新はない.“Anatomy is never going to change”,人類の歴史が始まって以来,常にそこに変わらずあり続ける真実の心臓形態,それを見極めたいと思う.循環器画像診断に携わる我々4 人が総力を挙げて編集した200 枚を超えるバーチャル心臓解剖画像のアナグリフを掲載する本アトラス,臨床心臓画像を深く理解するための初学の書として,日々の臨床でふと生じた解剖学的疑問をその都度振り返って解決するための辞書として,次世代の循環器診断学・治療学を考案するための基礎となる参考書として,お役に立てていただきたいと願う.
2024 年9 月吉日
森 俊平