病態・治療論[2] 呼吸器疾患改訂第2版
編集 | : 石原英樹/竹川幸恵 |
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ISBN | : 978-4-524-20479-3 |
発行年月 | : 2024年2月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 260 |
在庫
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
専門基礎分野において疾病の病態・診断・治療を学ぶためのテキストシリーズ(全14冊)の呼吸器疾患編.医師と看護師の共同編集により,看護学生に必要な知識を網羅.さまざまな症状を理解できる,診断の進め方・考え方がわかる,臨床看護に結びつく知識が得られる,の3点を重視して構成している.今改訂では呼吸器疾患の患者への看護を概説する項目を新設したほか,各種情報を更新した.
目次
序章 なぜ呼吸器疾患について学ぶのか
1 医師の立場から
2 看護師の立場から
第T章 呼吸器の機能と障害
1 呼吸器の構造と機能
1 呼吸器の構造と機能
A.肺の構造
B.気道系
C.気管・気管支の組織
D.肺胞
臨床で役立つ知識 新生児のサーファクタント
E.胸郭
F.縦隔
G.横隔膜
H.血管系─肺動静脈系と気管支動静脈系
もう少しくわしく 生理学的シャント
I.リンパ系
J.神経系
K.代謝機能
2 呼吸の生理
A.呼吸の調節
B.化学受容器
臨床で役立つ知識 CO2ナルコーシスが生じる仕組み
C.呼吸の仕組み
D.肺コンプライアンスと気道抵抗
E.ガス交換
もう少しくわしく PaO2の基準値はなぜ100 Torrなのか
F.換気と解剖学的死腔
G.酸塩基平衡
2 呼吸器の障害と症状
1 酸素化障害と呼吸困難
A.呼吸不全の病態
B.酸素化障害
もう少しくわしく 拡散障害と二酸化炭素
2 痰・喀痰
A.発生機序
B.痰の性状
C.喀痰への対応
3 血痰・喀血
A.血痰・喀血の原因
B.血痰・喀血への対応
C.吐血との鑑別
4 咳嗽
A.発生機序
B.咳嗽と気道炎症
C.咳嗽の持続期間
D.乾性咳嗽と湿性咳嗽
E.咳嗽への対応
5 気道の障害と喘鳴
A.障害の原因による違い
臨床で役立つ知識 喘鳴が聴取されなくなったら注意
B.狭窄部位による違い
6 横隔膜の障害
6-1 横隔膜ヘルニア
6-2 しゃっくり(吃逆)
6-3 横隔膜麻痺
7 胸膜の障害
7-1 胸膜炎と胸水
A.胸膜炎の原因
B.胸膜炎への対応
7-2 気胸
7-3 胸膜の障害と石綿(アスベスト)
A.胸膜プラーク
B.悪性胸膜中皮腫
8 肺循環障害
A.肺循環障害の原因
B.肺循環障害への対応
コラム 喫煙と呼吸器障害
第U章 呼吸器疾患の診断・治療
1 呼吸器症状からの診断過程
1 呼吸困難
A.具体的な症状
B.考えられる原因・疾患
C.鑑別・絞り込みの方法
D.対応方法・治療方針
2 咳嗽
A.具体的な症状
B.考えられる原因・疾患
C.鑑別・絞り込み方法
D.治療方針
3 喘鳴
A.具体的な症状
B.考えられる原因・疾患
C.鑑別・絞り込みの方法
D.治療方針
4 胸痛
A.具体的な症状
B.考えられる原因・疾患
C.鑑別・絞り込みの方法
D.対応方法・治療方針
5 喀血・血痰
A.具体的な症状
B.考えられる原因・疾患
C.鑑別・絞り込みの方法
D.対応方法・治療方針
6 発熱
A.発熱とは
B.考えられる原因・疾患
C.鑑別・絞り込みの方法
D.対応方法・治療方針
2 呼吸器の検査
1 喀痰検査
A.喀痰とは
B.喀痰の種類
C.喀痰検査の目的
D.喀痰検査の時期
E.喀痰検査の準備
F.喀痰の観察
G.喀痰の保存と輸送
H.喀痰細菌検査
I.喀痰細胞診
J.迅速核酸同定法(抗酸菌)
2 X線検査
A.胸部単純X線
B.胸部CT
C.肺血流シンチグラフィ
D.血管造影
3 気管支鏡検査
A.概要・目的
B.気管支鏡検査前の安全対策
C.気管支鏡施行時の注意
D.気管支鏡検査での合併症
4 呼吸機能検査
A.概要・目的
B.方法
C.みかた・考えかた(異常を含む)
D.侵襲性・副作用・リスク・注意点
5 血液ガス検査
A.概要・目的
B.方法
C.みかた・考えかた(異常を含む)
もう少しくわしく アシデミアとアシドーシス
D.侵襲性・副作用・リスク・注意点
6 胸腔穿刺検査(胸水検査)
A.概要・目的
B.方法
C.胸水の基準値・異常値,異常の原因
D.侵襲性・副作用・リスク・注意点
7 胸腔鏡検査
A.概要・目的
B.方法
C.侵襲性・副作用・リスク・注意点
3 呼吸器疾患の特異的治療
1 薬物療法
A.薬物療法とは
B.目的・適応
C.吸入療法の実際
D.副作用・リスク・注意点
2 酸素療法
A.酸素療法とは
B.目的・適応
C.酸素療法の実際
D.副作用・リスク・注意点
E.在宅(長期)酸素療法(HOT, LTOT)
3 NPPV
A.NPPVとは
B.目的・適応
C.NPPVの実際
D.侵襲性・副作用・リスク・注意点
4 IPPV
A.IPPVとは
B.目的・適応
C.NPPVとIPPVの違い
D.IPPVの実際
E.侵襲性・リスク・注意点
臨床で役立つ知識 看護師によるVAP予防
5 呼吸リハビリテーション
A.呼吸リハビリテーションとは
B.目的・適応・禁忌
C.呼吸リハビリテーションの実際・進め方
D.リスク・注意点
6 手術療法
6-1 肺切除術
A.肺切除術とは
B.目的・適応
C.肺切除術の実際
D.侵襲性・副作用・リスク・注意点
6-2 肺移植
A.肺移植とは
B.目的・適応
C.肺移植の実際
D.肺移植術後の注意点
4 呼吸器疾患の患者の看護
1 呼吸機能障害の患者への看護
A.閉塞性換気障害の患者への看護
B.拘束性換気障害の患者への看護
C.肺を切除した患者の看護
2 呼吸器感染症の看護
A.感染対策
B.看護ケアや処置時の感染予防
3 呼吸器疾患に関する看護専門外来
A.看護師の心の持ちよう
B.支援の方法
C.呼吸器看護専門外来の支援項目と内容
第V章 呼吸器疾患 各論
1 感染性呼吸器疾患
1 かぜ症候群(感冒)・急性気管支炎
コラム 咳エチケット
2 インフルエンザ
コラム 解熱鎮痛薬の代わりに:インフルエンザと漢方薬
3 新型コロナウイルス感染症
4 肺炎
コラム 人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防
5 肺結核
臨床で役立つ知識 N95マスク
6 非結核性抗酸菌症 (非定型抗酸菌症)
7 肺の日和見感染症
7-1 ニューモシスチス肺炎
7-2 サイトメガロウイルス肺炎
8 肺真菌症
2 気道閉塞性疾患
1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
2 びまん性汎細気管支炎
3 アレルギー性肺疾患
1 気管支喘息
2 過敏性肺炎
3 薬剤性肺炎
4 好酸球性肺炎
5 多発血管炎性肉芽腫症
4 間質性肺疾患
1 特発性間質性肺炎
1-1 特発性肺線維症(IPF)
もう少しくわしく 間質性肺炎における社会福祉
1-2 他の特発性間質性肺炎
2 膠原病肺
3 放射線性肺炎
もう少しくわしく 例外的な特徴を持った放射線性肺炎
臨床で役立つ知識 早期発見のためのポイント
4 サルコイドーシス
5 腫瘍性肺疾患
1 肺がん
蜷」隆文
もう少しくわしく TNM分類
コラム 免疫チェックポイント阻害薬
2 転移性肺腫瘍
6 肺血管性病変
1 肺血栓塞栓症
コラム 肺血栓塞栓症で胸痛がでるの?
臨床で役立つ知識 生物由来製剤の投与に注意!
2 肺性心・肺高血圧症
3 肺水腫
7 胸膜・縦隔疾患
1 胸膜炎
2 気胸
3 膿胸
4 胸膜腫瘍
4-1 悪性胸膜中皮腫
4-2 孤立性線維性腫瘍
5 縦隔腫瘍
6 縦隔気腫
8 呼吸不全
1 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
9 胸部外傷
1 胸郭損傷
1-1 肋骨骨折
1-2 胸郭動揺(フレイルチェスト)
2 外傷性血胸
3 肺挫傷
10 その他の肺疾患
1 気管支拡張症
もう少しくわしく 気管支拡張は治るのか?
2 リンパ脈管筋腫症
3 じん肺症・アスベスト(石綿)肺
3-1 じん肺症
コラム じん肺法に基づく健康管理
3-2 アスベスト(石綿)肺
臨床で役立つ知識 社会問題としてのアスベスト
コラム 身近にあるアスベスト問題
4 過換気症候群
5 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
6 肺胞タンパク症
7 無気肺
はじめに
今回,『看護学テキスト NiCE 病態・治療論[2]呼吸器疾患』を改訂することになった.ここ数年は,呼吸器領域に留まらない大きな出来事として,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のことが一番のトピックスとして挙げられる.呼吸管理領域において,1990 年代後半からの非侵襲的陽圧換気療法(NPPV),2010 年代後半からのハイフローセラピーなどの非侵襲的呼吸管理の普及により劇的な変化がもたらされた.さらに2009年の新型インフルエンザの流行時より,体外式膜型人工肺(ECMO)療法の見直しと普及が進み,呼吸管理の世界が多様化の時代を迎えるようになった.しかしCOVID-19 の流行は,当初この呼吸管理の多様化に逆行をもたらした.すなわち,NPPV・ハイフローセラピーなどの非侵襲的呼吸管理がほぼ禁忌とされ,酸素療法で改善が認められない症例は,非侵襲的呼吸管理を経ることなく,侵襲的呼吸管理の適応となり,数十年前の呼吸管理の世界に逆戻りをしたような感覚を覚えた.その後,学会などによる各方面の働きかけによって,COVID-19 の患者にも非侵襲的呼吸管理の適応が可能となり,ようやく通常の呼吸管理の世界が戻ってきたと実感している.未知の一つの感染症が,このように呼吸の世界にも大きな変革をもたらしたことに驚きを隠せないと同時に,様々な問題を徐々にではあるが,克服してきた医療の進歩という点も見逃せないと考えている.
本書の改訂が,これからの未来につながる呼吸器疾患やその患者の理解の一助になれば幸いである.
2023 年11 月
石原 英樹
竹川 幸恵