書籍

NTT東日本関東病院流 外来がん薬物療法を支えるチーム医療

各職種・部門の取り組みから多職種連携の実際まで

編集 : NTT東日本関東病院 外来化学療法センター,メディカルオンコロジーセンター
ISBN : 978-4-524-20477-9
発行年月 : 2024年2月
判型 : B5判
ページ数 : 168

在庫あり

定価3,960円(本体3,600円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

NTT東日本関東病院で実践している,外来がん薬物療法における多職種チーム医療が丸ごと学べる一冊!患者・家族に必要な各職種のアプローチを解説したうえで,代表的な有害事象に対して多職種が実際にどのように連携していくか,症例を挙げてチャートで提示.外来がん薬物療法を支える具体的な対応が実感をもって身につく.地域連携や社会支援制度にも触れ,がん薬物療法に関わる全医療スタッフ必携の一冊となっている.

第1章 外来がん薬物療法の流れ
1.外来がん薬物療法における多職種チーム医療の重要性
2.初回診察時の流れ
3.外来がん薬物療法継続時の流れ
 a.非高齢者,家族支援あり
 b.高齢者のみの世帯/高齢独居
 c.AYA世代
 Column:がん診療連携拠点病院の位置づけと当院の役割

第2章 外来がん薬物療法を支える各職種のアプローチ
A.多職種カンファレンスの実際
1.多職種カンファレンスの実際
 a.多職種カンファレンスの意義
 b.多職種カンファレンスの実際
 c.多職種カンファレンスの課題
 d.症例
B.各職種によるアプローチの実際
1.がん看護外来
 a.がん看護外来での支援
 b.ACP(人生会議)
2.薬剤師外来・薬薬連携
 a.薬剤師外来での支援
 b.薬薬連携を通じた支援
 Column:連携充実加算
3.栄養指導
 a.がん患者における栄養管理―総論
 b.栄養指導の実際
 c.市販の栄養食品など
 Column:栄養ケアプロセスとは?
4.がんリハビリテーション
 a.がんとリハビリテーション
 Column:似たようなことば;廃用症候群,サルコペニア
 b.がんリハビリテーションの実際
 c.自宅でできるリハビリテーション(レクチャー)
5.がんゲノム外来・遺伝性腫瘍外来
 a.がんゲノム,遺伝性腫瘍外来とは―総論
 b.遺伝相談室での支援の実際(家系図作成方法)
6.緩和ケア
 a.外来診療におけるかかわり
 Column:基本的緩和ケアと専門的緩和ケア
 Column:外来緩和ケア管理料
7.がん相談支援センター
 a.がん相談支援センター―総論
 b.がん相談支援の実際
8.他科との連携,併存疾患の管理
 a.腫瘍循環器
 Column:腫瘍循環器外来の実際
 b.がんと糖尿病
 c.高齢患者と認知機能障害
 d.骨転移(整形外科を含めた骨転移カンファレンス)
 e.薬剤関連顎骨壊死(骨吸収抑制薬導入前,導入後の歯科・口腔外科との連携)
9.ストーマ外来
 a.日常的なケア評価と生活指導
 b.トラブルの予防と発生時の対応
 Column:装具の公費助成について
 c.継続看護と他部門との連携
10.アピアランスケア
 a.外見への支援
 b.心理面への支援
 c.社会面への支援
 
第3章 代表的有害事象に多職種で取り組む
 Case 1:免疫関連有害事象(皮膚症状・甲状腺機能障害・筋炎・間質性肺疾患)
 Case 2:悪心・口腔粘膜炎・発熱性好中球減少症
 Case 3:CVポート管理・下痢・便秘
 Case 4:血管外漏出・末梢神経障害
 Case 5:手足症候群・高血圧・蛋白尿
 Case 6:味覚障害・急性末梢神経障害(寒冷刺激)・内服管理・アレルギー
 
第4章 外来がん薬物療法を支える各種支援
1.医療費等の支援制度
 a.高額療養費・限度額適用認定証制度(70歳未満)
 b.高齢受給者証・後期高齢者医療制度
 c.傷病手当金制度
 d.障害年金
 e.身体障害者手帳とは
 Column:国のがん対策の方向性
 Column:外来腫瘍化学療法診療料について
2.社会資源制度
 a.介護保険,その他のサービス
3.地域医療・在宅医療との連携
 a.地域医療連携の概要
 b.訪問診療
 c.訪問看護
 d.薬剤師の在宅訪問
4.保険調剤薬局での支援
 a.薬薬連携のあり方に関する合同ワーキンググループの結成と活動
 b.薬局における症状評価の実際とTRの運用
5.AYA世代がん患者への支援
 a.AYA世代とは
 b.就労支援
 c.妊孕性温存
6.患者会

 書店に足を運ぶと,医学書コーナーには年々外来がん薬物療法に関する書籍,とくにレジメンや有害事象管理に着眼した書籍の並びが多くなってきたと感じる.そのような書籍から得る知識や知恵というものが臨床現場の大きな力となり,本書の主旨であるチーム医療を進める基盤のひとつとなっているのは間違いない.一方で,患者一人一人の視点からみた“がん薬物療法自体がどのように進んでいくのか”,あるいは“医療者一人一人がどのように治療や診療全体を構成しているのか”が俯瞰的視点で書かれた外来がん薬物療法の書籍は意外と多くないとも感じる.
 日常,総合病院で診療している者として実感しているのは,患者の高齢化による諸問題や多彩な併存疾患への評価対応の重要性であり,また多様な患者背景を考慮しながら,各医療制度を適切に利活用しながら,地域医療機関との絶妙な連携を行い,治療全体を進めていく必要性が高まってきているとも感じる.このような因子をきちんと把握し対応できれば治療がうまく完遂していくことを切に実感する.質の高い外来がん薬物療法を提供するには,さらに個々に応じた支持療法や副作用管理,必要な緩和ケアをそのうえに実践する必要が求められ,外来がん薬物療法の現場はまさに多職種多診療科によるチーム医療が発揮されるべき臨床現場のひとつと考える.
 しかしながら,職種間の目的の共有や相互理解の方法,そのための“共通言語や相互知識”はまだまだ十分確立されたものではなく,個々人や個々の施設の努力によるところが大きい.幸いにも当院では外来化学療法センターとメディカルオンコロジーセンターにて多職種連携を推進していく環境が恵まれ,その体系化を進めているところで,自分たちの臨床実践を内外に発信し,更なる推進のための契機にしたい意欲があり,本書の発刊につながった.
 本書は,外来がん薬物療法の書籍として従来の最新のエビデンスに基づくレジメンや支持療法の詳記ではなく,個々の患者ごとになされる職種ごとの様々な視点からの対応,それを支える医療制度活用のための情報や,地域医療連携に必要な知識などを搭載した,外来がん薬物療法診療にまつわる情報を網羅した内容で構成され,まさに“俯瞰的視点で書かれた書籍”である.
 本書はがん薬物療法診療に携わる医療従事者を対象として,当院外来化学療法センター,メディカルオンコロジーセンターのスタッフを中心に,関連部署・部門の先生方,そして日頃ご指導をいただいている方々にも執筆いただいた.第1章では外来がん薬物療法の診療概要,つまり“全体の流れ”を把握できるようにし,第2章では,個々の患者の問題点を評価,共有する多職種カンファレンスから,各職種によるアプローチの実際まで,より具体的に記載した.また,併存疾患や合併症,苦痛症状の管理に関しては他科との連携も重要となるため循環器内科医,整形外科医,歯科口腔外科医,緩和ケア医からも執筆いただいた.第3章では,多職種連携による有害事象への取り組みの実際を6つのケースを通して職種ごとの視点を主軸に記載した.そして,第4章では主に医療制度や地域医療の実際,AYA世代がん患者への支援など,外来がん薬物療法を支える各種支援について記載した.また,全体を通じて関連施策などの情報もページが許せる範囲でコラムとして掲載している.最初から全体を通して読むも良し,関連事項を読み紡いでも良しの構成になるよう編集者で何度も話し合い工夫した.外来がん薬物療法にかかわる方々の日常診療の一助になれば望外の喜びである.
 最後に書籍発刊に関して幾度となく協議を重ねていただき,発刊に多大な尽力をいただいた植野紗希氏をはじめ南江堂の皆さま,執筆いただいた当院スタッフをはじめ多くの皆さまに心より感謝申し上げます.

2024年2月
内野 慶太

がん薬物療法におけるチーム医療の仕組みを理解し,どのように関わるかを考える一冊

 進行がんのために薬物療法を受けるがん患者の数は増加している.安全で有効な薬物療法を,患者の生活の質を保ちながら行い,患者が豊かな人生を送る助けになることが強く求められている.
 近年,急速に進歩し,適応も拡大しているがん薬物療法を実施するには,最新の情報を正確に把握して,個々の患者にあった薬剤を選択し,適切な支持療法と緩和医療を行うことが必要である.それを実現するためには,多職種によるチーム医療が必須であることは言を俟たない.とくに多くのがん薬物療法が外来診療で実施されるようになり,短時間で患者の状態を把握して介入するためには,多職種による連携がさらに重要となってきている.
 がん薬物療法のチーム医療を行うには,一人ひとりの医療者が自分以外の職種の業務の内容を知り,その役割と意義に対して深い理解をもつことが基本と思われる.しかし,チーム医療を成功させるには,個人の理解や努力だけではなく,その関係性を医療機関内外に拡大し,そして維持していく仕組みがあることが重要である.日本中でがん医療を担っている各分野の専門家は,それぞれが築いてきた多職種間の協力のネットワークをもっているが,それらを比較したり評価したりすることは容易ではない.
 本書は,NTT東日本関東病院の腫瘍内科を中心とした外来がん薬物療法を実施するチームが実際にどのようなメンバーで,どのような体制で,そしてどのようなやり方で治療を進めているのかが具体的に紹介されている.それは外来がん薬物療法の長い経験のなかで続けられてきた,患者に対する詳しい観察と深い洞察の蓄積に基づくものである.
 本書によって,外来がん薬物療法を巡るチーム医療の仕組みの全体像を明確に理解することができる.同時に,「各分野の専門家である読者」がチーム医療にどのように関わっていくことが望ましいかを理解する視点も用意されている.
 本書は,今から新たな医療機関で外来がん薬物療法を始めようとする方々に,またすでに多くの患者の薬物療法を行いながらさらに強力なチーム医療を作り上げたいと願う方々に,そして充実したメンバーによるチーム医療体制を有しているなかでも新たな視座を模索している方々にとって,かけがえのない一冊となるはずである.
 都心の第一線のがん医療現場で,丁寧に着実に,チーム医療に基づいたがん薬物療法を実践してこられた同院のチームの皆様に心からの敬意を表するとともに,その果実ともいえる貴重な情報を余すところなく本書に紹介してくださったことに感謝申し上げる.

臨床雑誌内科134巻2号(2024年8月号)より転載
評者●馬場英司(九州大学大学院医学研究院連携腫瘍学分野 教授)


9784524204779