今夜からもう困らない!夜の症状緩和
編集 | : 平山貴敏/五十嵐江美/佐々木千幸/田上恵太 |
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ISBN | : 978-4-524-20476-2 |
発行年月 | : 2024年6月 |
判型 | : A5判 |
ページ数 | : 216 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

夜間の一般病棟における終末期患者の精神症状,身体症状等の問題を取り上げ,日中とは異なる環境でどのように対応するかといった「夜間の症状緩和」について解説.人手がなくてもこのように/ここまでは対応するという“朝までの乗り切り方”や,夜間帯ならではの治療・ケアのコツを示し,随所に症例提示やコラムを散りばめ,読み飽きない構成とした.“患者をただ眠らせればよい”では済ませない個々の患者背景を踏まえた対応ができるようになる一冊.
はじめに―夜の症状緩和の極意
note 病棟での当直の心得10箇条
Chapter 1 夜間にこんな症状に出会ったら…
1 どうしても眠れません(不眠)
2 心配で落ち着きません…(不安)
3 イライラして怒っています(不穏)
4 もう死んでしまいたい…(希死念慮)
column 家族への説明・対応(家族とのコミュニケーション)
5 ひどく痛くて眠れません!(痛み)
6 息が苦しくてつらいです(呼吸困難)
column 病棟スタッフとのコミュニケーションのコツ
7 けいれんを起こしています!(けいれん)
Chapter 2 さあ,朝までどう乗り切るか…
1 不眠
column インシデントが起きた時の対応・スタッフ間でのケア
2 うつ病
3 せん妄
note 身体科病棟での身体拘束
4 認知症
5 パニック発作
6 アルコール離脱・ウェルニッケ脳症
note 患者・家族からの圧力・暴言・暴力への対応
7 痛み
note 在宅のセッティングでどう対応するか
8 呼吸困難
9 けいれん
10 スピリチュアルペインへの対応
note 当直で心が折れそうになったら…(医療従事者のセルフケア)
11 小児への対応
夜になると,なぜこんなに症状が悪化してしまうのだろう…
僕が緩和ケアチーム専門研修を開始した約12年前に毎日感じていた大きな悩みです.日中指導医と回診した時は穏やかだったのに,なぜ夜になると“つらく”なってしまうのか.うまく“夜の症状緩和”を遂行することができず,安心して夜休むことができない患者さんやご家族にまず申し訳なく,そして主治医・病棟看護師・チーム
メンバーに合わせる顔がなく,毎日が針のむしろでした.
なぜ日中と夜間で様子が異なるのか?
この企画が立ち上がるきっかけとなったクリニカルクエスチョンであります.この疑問を解決するには「症状の病態」や「症状に二次的に関連する因子」を鑑みたうえ
で,薬物療法で用いる場合は「薬剤の作用機序」,そして「非薬物療法と薬物療法のどちらがメリットがあるか(効果と副作用)」を鑑みていくと,絡まった糸が少しず
つほどけていくように“夜に悪化するつらさ”の問題が解決されていきます.その工程はまるで状況証拠を集め,問題を推理する探偵のような作業でもあります.
今夜からもう困らない! 夜の症状緩和の方法,教えます
がんをはじめとした命に関わる病と闘っている方の多くは全身状態が万全ではないため,安易な症状緩和の薬物療法や眠気の誘発は“危険”を生み出します.本書では
各症状において,根拠・論理を基にした詳細なアセスメント(Chapter 1)とともに,症例を通じて対処の方法を具体的に示すように工夫(Chapter 2)されています.ま
たコラムを通して「かゆい所に手が届く」ように工夫し,魅力的に展開します.
夜の症状緩和に悩むことがなくなるのではなく,マネジメントできるようになる本書を通して,医師や看護師さん,薬剤師さんをはじめ“夜に関わる”医療従事者
のお役に立てることを期しております.EBMを基にマネジメントできるようになることで,読者の皆様が一緒になって持続的に成長と発展(SDGs)を成し遂げること
を編者一同の目標にして参りました.南江堂の編集部の皆様には本書の趣旨を鑑みながら,書籍の企画から編集まで多くのご尽力いただきました.編集者として中心に
なって推し進めていただいた平山貴敏先生,五十嵐江美先生,佐々木千幸先生,そして魂が込められた熱い文章をご寄稿いただいた著者の皆様のおかげで出版までたどり
着きました.この場を借りて御礼申し上げます.
そして,重い病と闘う患者さんたちが安心して夜を過ごせるだけではなく,翌朝以降の生活や治療のためにも“体力や気力を回復できる夜”を提供できる現場が増えることを願ってやみません.
2024年4月
在宅医療オンコール中のAM2:00 編集者を代表し,田上恵太
最初この本を見た印象ですが,表紙に「夜の症状緩和」「朝までの乗り切り方,教えます」とあり,「これは,とても期待できる自信のある本だ」と思いました.また,ほかの書籍と異なり,本書では堅苦しい表現を避けカジュアルな表現で説明されているため,読者にとって身近に感じられるかと思います.このような工夫には,著者の先生方の臨床現場にいる夜勤スタッフに対する応援の気持ちが込められていると思いました.
私は,私は看護師ですので,タイトルを見て,「現場で患者への対応に迷う多くの夜勤看護師への手引書だ」と思いました.というのも,夜になると日中は安定していた患者の状況からは想像できないことが多々起こるからです.患者さんも安心して治療や療養して,ぐっすり休みたいところです.本書のタイトルから,病気を抱える患者さんとかかわる中で,夜間になると過活動型せん妄の症状が現れる患者のケアを行う場面を想像すると思います.しかし,この書籍に記載している症状はせん妄だけではありません.また,臨床現場では,いろいろな疾患の患者がいますよね.医学的に治癒がむずかしい,苦痛症状が出現する,身体が動かない病態,先行きがみえず気持ちがつらく心配や不安が大きい状況,けいれん,パニック発作,アルコール離脱の問題,自殺など,本当に現場では困って
います.そういった症状の特徴やアセスメント・鑑別のポイント,対処法などの解説が載ってるところがすごく魅力的な書籍です.
各症状について,病棟や医療の場で患者さんが実際にお話をするような,たとえば「そうしても眠れません」「イライラして怒ってしまいます」などのような言葉でわかりやすく書かれています.症状の機序や出典など根拠もしっかり書いてあるので,納得しながら読み進められます.どの医療現場でも役立つ書籍ですので,勤務先に1 冊置くことを勧めさせてください.
がん看護30巻2号(2025年3-4月号)より転載
評者●林 ゑり子(横浜市立大学医学部看護学科)
緩和ケア専門チームが,夜間業務に携わるすべての医師に送るメッセージ集
16世紀のフランスの外科医Paré の言葉とされる格言「to cure sometimes, to relieve often, to comfort always〜時に癒し,しばしば和らげ,常に慰む」は,今なお医療現場に身を置く者にとって金言である.1996 年のHastings Center が発表した「Goals of Medicine(医療の目標)」でも,最重要事項として痛みなどの症状や「つらさ」の緩
和があげられている.緩和医学の知識や技術は,緩和ケア専門医のためだけでなく,すべての医師が基本的素養として身につけるべき普遍的なものといえるだろう.
本書は,国内の緩和ケアスタッフによる,すべての医師に向けた症状緩和のメッセージ集である.「夜の」というコンテキストを限定していることに編集者たちの深いセンスを感じる.当直や待機業務にあたる医師にとって,普段あまり慣れていない症状に対応し,単独で判断・ケアをする機会は実際には夜間が多いからだ.
緩和医療に日常的に携わっていない医師にとって,不安,不穏,せん妄,希死念慮,そしてスピリチュアルペインなどに対して系統的にアセスメントし,翌朝まで乗り切れるよう適切に対処することは容易ではない.本書では,こうした「困りやすい」症状について具体的事例を通じた解説が非常に読みやすく展開され,実践的なアドバイスが豊富に記述されている点が高く評価できる.
評者が個人的に印象的なのは呼吸困難と小児への対応の項目であり,呼吸困難を精神心理社会実存的側面からアセスメントすることの重要性を再確認できたこと,そして小児のせん妄事例の分析は新たな気づきをもたらしてくれた.
本書は症状緩和に関する基本的な考え方から具体的な対応まで,夜間の緊急時に必要な情報をコンパクトにまとめており,日常診療のなかで遭遇する頻度の高い症状への対応も丁寧に解説されている.Chapter 2の各項目の冒頭に置かれた「対応のPOINT」は,忙しい臨床現場で即座に役立つ実践的な要点が簡潔にまとめられており,急な対応が必要な場面での羅針盤となるだろう.
本書は緩和ケアの専門スタッフにより執筆されたものだが,そのコアメッセージはすべての医師,とくに当直や待機業務に就く必要のある医師に向けられている.また,病棟業務や訪問看護に携わる看護師たちにも,チーム医療の質向上のための勉強会などでの活用を強く推奨したい.緩和ケアの本質を学び,患者の「つらさ」に寄り添うための貴重な一冊である.
臨床雑誌内科136巻3号(2025年9月増大号)より転載
評者●藤沼康樹(医療福祉生協連家庭医療学開発センター センター長)
