小児心身医学会ガイドライン集改訂第3版
日常診療に活かす7つのガイドライン

編集 | : 日本小児心身医学会 |
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ISBN | : 978-4-524-20472-4 |
発行年月 | : 2025年10月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 320 |
定価5,280円(本体4,800円 + 税)
- 商品説明
- 序文

日本小児心身医学会で作成した7つのガイドライン(「小児科医のための心身医療ガイドライン」「小児起立性調節障害診療ガイドライン」「小児科医のための不登校診療ガイドライン」「小児摂食障害診療ガイドライン」「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」「くり返す子どもの頭痛診療ガイドライン」「小児機能性消化管疾患ガイドライン」)を収載.前版から10年が経過しこの間の進歩を盛り込み大幅改訂を行った.小児診療に携わるすべての人が読んでおきたい一冊.
改訂第3版序文
今般,日本小児心身医学会編集によるガイドライン集の改訂第3版を上梓することになりました.このガイドライン集は2009年に『小児心身医学会ガイドライン集:日常生活に活かす4つのガイドライン』として出発し,初版には「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」,「不登校診療ガイドライン」,「小児の神経性無食欲症診療ガイドライン」,「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」の4つが収められていました.コンテンツは小児心身症の専門家だけではなく,一般小児科医や小児科研修医など幅広い読者を想定し,病態,診断,患者や家族,教育関係者への説明と指導内容などが丁寧に解説された画期的な一冊でした.続いて2015年,小児心身症の総論,心身症の子どもに対する際の心得ともいうべき「小児科医のための心身医療ガイドライン」を加えた「日常生活に活かす5つのガイドライン」として,改訂第2版が公刊されました.
そして,改訂第2版から10年が経ち,今回は第2回目の改訂となり,第2版の5つに加えて「くり返す子どもの頭痛診療ガイドライン」,「小児機能性消化管疾患ガイドライン」を加えた7つのガイドラインからなる「日常生活に活かす7つのガイドライン」となります.これは,今までとは異なる新しい疾患が2つ増えたのではありません.初版,改訂第2版では「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」のなかに「総論編」,「頭痛編」,「腹痛編」がありましたが,頭痛と腹痛とが独立したのです.実は,初版作成当時の日本小児心身医学会では,先行して起立性調節障害のガイドラインが作成され,不登校,摂食障害と続いていましたが,診療現場でしばしば遭遇する痛みの訴えをどうまとめるかは学会内で定まっていませんでした.その結果,
心身医療の現場でみられる痛みの訴えを全部まとめて「くり返す子どもの痛み」のなかに入れるという荒業になったのです.しかし,初版から15年の間に学術研究は進歩し,診断基準も変遷しています.その学術研究の流れに沿って内容を充実させ,頭痛と機能性消化管疾患というあるべき姿にまとめたのが改訂第3版の特徴です.
また,その他のガイドラインも,第2版のときとは異なり,各所に大きな改訂が行われています.それは,この間の子どもを取り巻く環境の変化に基づく疾患概念の変化を反映していたり,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」の作成プロセスに沿うようにというガイドライン作成委員の努力によるものであったりします.しかしながら,今回の改訂はまだ進化の途中です.今後,読者の皆様のご意見をフィードバックいただき,皆様とともに成長するガイドライン集を目指したいと願っています.子どものこころを支え育てていくために.
2025年5月5日 子どもの日に
日本小児心身医学会理事長
石ア優子
小児心身医学会ガイドライン集改訂にあたって
このたび,『小児心身医学会ガイドライン集』は,各疾患ワーキンググループ(WG)の総力により大幅な改訂が行われ,10年ぶりとなる改訂第3版を刊行する運びとなりました.
本ガイドライン集の初版は,小児心身症・精神疾患の診療に携わる専門医の不足が社会問題として顕在化するなか,一般小児科医の診療支援を目的として研修委員会が担当となり,2009年に刊行されました.「起立性調節障害」,「摂食障害」,「不登校」,「くり返す痛み(総論・頭痛・腹痛)」といった日常臨床で遭遇する頻度の高いテーマについて,エキスパートが集結してガイドライン作成にあたりました.これらの成果は多くの支持を得て,2015年には各疾患ガイドラインを支える基盤となる「小児心身医療総論」が新たに加わった改訂第2版が刊行され,さらに広くご活用いただくことができました.
第3版の改訂にあたっては,2020年に永光信一郎前理事長により新設されたガイドライン統括委員会を中心に,各WGによる大規模な改訂が行われました.引き続き一般小児科医を主な対象としつつ,メディカルスタッフ,家族会,教育委員会など,子どもに関わる多様な領域の方々から貴重なご意見をいただき,内容の充実に活かしました.
本改訂では,臨床現場での利便性を高めるためにCQ(Clinical Question)形式を新たに導入し,また日本と海外との文化や体質の違いを考慮したうえで,エビデンスに基づいた文献検索を行い,より幅広く,かつ実践的な知見の提示に努めました.さらに,心身症の背景として注目されている神経発達症の併存症例への対応についても新たに章を設け,内容の充実を図っています.特筆すべき点として,これまで一括して取り扱われていた「くり返す痛み(総論・頭痛・腹痛)」に関する診療ガイドラインを,「くり返す痛み」,「くり返す頭痛」,「機能性消化管疾患」として,それぞれ独立した3つの診療ガイドラインへと刷新し,より実践的かつ深みのある構成としました.
完成した診療ガイドラインはWGの熱意と新たな知見にあふれた大作となり,紙面の都合上,本ガイドライン集への掲載を割愛した箇所もあります.フルバージョンは日本小児心身医学会の会員専用ウェブサイトにてご覧いただけますので,ぜひ併せてご参照ください.
ここ数年,不登校の小中学生は年におよそ5万人というペースで増え続け,2023年度にはついに34.6万人に達しました.今,私たちの目の前で子どもたちの世界にかつてない変化の波が押し寄せています.しかし,残念ながら専門医はまだまだ不足しています.本ガイドライン集が少しでも皆様の診療のお役に立ち,子どもたちが心身ともに健康で笑顔あふれる社会になるよう,心から願っております.
2025年5月
日本小児心身医学会ガイドライン統括委員会委員長
吉田誠司
