緩和ケア 即戦力ノート
あなたにもできる、やさしい緩和ケア
著 | : 鳥崎哲平 |
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ISBN | : 978-4-524-20462-5 |
発行年月 | : 2023年10月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 176 |
在庫
定価2,970円(本体2,700円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
【@基本的緩和ケアに特化】
緩和ケアの専門家ではないけれど,苦痛を抱える患者のために緩和ケアのことを知りたい.そんな医療者のための実用的入門書!
【A必要なときにサッと見て、即使える知識が満載】
豊富な図表と処方例,要点を押さえた解説が,日常臨床でカンペのように役立ちます.
【BWebサイトと連携】
緩和ケア情報サイト「緩和ケア オンラインポータル(PCOP)」とリンクしており,本書の内容をスマホやタブレットでいつでもどこでも復習・確認できます.
1章 緩和ケア総論
1. 早期からの緩和ケア
2. 基本的緩和ケア
3. 専門的緩和ケア
4. 専門的緩和ケアにつなげる
5. がん/非がんの緩和ケア
WORK どこがNG? 緩和ケアについての説明
2章 全人的ケア
1. 全人的ケアと多職種連携
2. 社会的ケア
3. コミュニケーションスキル
4. スピリチュアルケア
WORK 仮想症例で総復習!
3章 意思決定支援
1. 意思決定支援
2. ACP(Advance Care Planning)
3. 臨床倫理
WORK 仮想症例で総復習!
4章 症状緩和
A 痛 み
1. 症状アセスメント
2. 鎮痛方法の選択
3. オピオイド以外の鎮痛薬
4. オピオイドを選択する
5. オピオイドを開始する
6. オピオイドを調整する
WORK 仮想症例で総復習!
B 呼吸器症状
1. 呼吸困難
2. 咳嗽・喀痰
3. 胸 水
4. 死前喘鳴
WORK クイズで総復習!
C 消化器症状
1. 悪心・嘔吐
2. 便 秘
3. 下 痢
4. 腹部膨満感(消化管閉塞,腹水)
5. 食事摂取量低下
6. がん悪液質
WORK クイズで総復習!
D その他の身体症状
1. ステロイド
2. 浮 腫
3. 倦怠感
4. 発 熱
5. 骨関連事象(SRE
6. 痒 み
7. 吃逆,喉のつかえ感
WORK クイズで総復習!
E 精神症状
1. せん妄
2. 不安・抑うつ
3. 不 眠
WORK クイズで総復習!
5章 終末期ケア
1. 苦痛緩和のための鎮静
2. 終末期の輸液(栄養)
3. 予後予測・看取り
はじめに
「一人でも多くの病気で苦しむ人々に,緩和ケアを提供したい」という願いは,緩和ケアに従事する医療者共通のものだと思います.そのため,早期からの緩和ケア,がん以外の疾患に対する緩和ケア,救急・集中治療領域での緩和ケアなど,緩和ケアという概念は近年様々な形での広がりを見せています.
しかし,そういった広がり続ける緩和ケアのニーズを満たせるほど「緩和ケアの専門家」と呼べる医療者は多いわけではない,というのが紛れもない現状です.疾患や病期,住む場所などに左右されず,苦痛を抱えるすべての患者さんが十分な緩和ケアを受けるには,「専門家」でなくても,患者と関わるすべての医療者が自分にできる範囲での緩和ケア(いわゆる基本的緩和ケア)を行っていくしかありません.
そのため本書は,基本的緩和ケアを担う医療者,つまり「緩和ケアの専門家ではないけれど,緩和ケアを必要とする患者と関わることがある」または「緩和ケアチームや緩和ケア病棟に患者を紹介することがある」という医療者の皆さんのために書きました.
日々の業務や専門領域の勉強で忙しく,緩和ケアを学ぶためにまとまった時間を確保できない,という方々にも使いやすいよう,本書は現場で「即戦力」として使える実践的な緩和ケアの知識やコツを,コンパクトに見やすくまとめました.
また,できるだけ図表を活用して,文章での説明は最小限に抑え,論文等のエビデンスの紹介や詳細な解説はあえて省きました.一方で,読者の皆様に活用していただける内容だと判断した場合は,自分の経験則でしかなくても「TIPS」や「Column」といった形で記載しています.
そのため単純化しすぎだと感じる方もいるかもしれませんし,主観的だというお叱りもあるかもしれません.ただあくまで本書は教科書でも総説でもなく,「緩和ケア病棟で働く医師の頭の中をシンプルにまとめたノート」というコンセプトであるとご理解いただけたら幸いです.
そして本書のもう一つの特徴は,著者が運営する『緩和ケア オンラインポータル(Palliative Care Online Portal:PCOP)』というWebサイトでも本書の内容を確認できるという点です(詳しくはp.viii参照).目次や各章の扉に記載されている二次元コードをスマホ等で読み込めば同じテーマのスライドを参照できますので,本書が手元になくても,外来で,病棟で,在宅で,業務の合間に必要な内容を確認することができます.
この一冊だけで緩和ケアの奥深さのすべてをお伝えすることはとてもできませんが,読者の皆さんが緩和ケアを必要とする患者さんと出会ったときに役立つ「便利なカンペ」を作りたくて,この本を書き上げました.良ければ是非手元に置いて,繰り返し読んで活用していただけたら嬉しいです.
2023年10月
鳥崎哲平
緩和ケアとは,全人的な苦痛に対応するための包括的なアプローチである.必要な知識も多岐にわたることなどから,むずかしいと感じている看護師もいるのではないだろうか.
本書は,“緩和ケアの専門家ではないけれど,緩和ケアを必要とする患者とかかわることがある医療者”を主な読者と想定して書かれている.緩和ケア総論,全人的ケア,意思決定支援,症状緩和,終末期ケアの5 章から構成されており,緩和ケアを網羅的に理解できるようになっているが,1 つの項目が2〜6 ページ以内でコンパクトに解説されていて,必要な箇所をパッと見るのにも適している.図や写真,会話例などが多く,臨床で困る事例が挙げられていたり,クイズ形式でその章を復習できたりと,むずかしく感じずに読み進められる工夫がされていて,サブタイトルである「あなたにもできる,やさしい緩和ケア」を意識した構成になっていると感じられた.
また,要点だけでなくエッセンスがきちんと収められているため,緩和ケアの専門家が,「症状緩和方法を確認したい」「自分たちのかかわりを見直したい」などというときにも役立つ内容となっている.たとえば,「コミュニケーションスキル」の項目はレベルごとに,「意思決定支援」の項目はステップ別に書かれており,私自身も,改めて自分の臨床実践を振り返ったり,今後の患者対応プランを段階的に考える際の参考にすることができた.
元々,著者が2020 年から開設している緩和ケアのオンライン学習サイトから生まれた書籍であるということで,QR コードを読み込むと,スライド資料など,オンライン学習サイトの内容も見ることができるようになっている.まさに「1 冊で2 倍おいしい本」といえるのではないだろうか.
本書により,病気で苦しむ人々が,早期に基本的緩和ケアを提供され,専門的緩和ケアに適切につながって,苦痛の緩和が広くなされるようになることを期待したい.
がん看護29巻6号(2024年11-12月号)より転載
評者●小澤桂子(国立がん研究センター がん対策研究所・中央病院/がん看護専門看護師)
がん医療に携わる一臨床医=著者のいうところの“基本的緩和ケアを担う医師”の一人としてたいへんありがたいというのが,本書を手に入れたときの率直な感想である.まず,なんといっても簡潔でわかりやすい.まさに私にとっての即戦力であり,カンペである.緩和ケアの専門家ではないけれど,緩和ケアを必要とする患者とかかわることがある医療者(基本的緩和ケアの担い手)のために執筆したと記してある.いいかえれば,つまるところ緩和ケアを必要とする患者さんにわれわれ一般の臨床医こそが,本書を参考に緩和医療の恩恵をしっかり届けて欲しい‼ との著者の熱い思いが記されている.
私は1988年に大学を卒業し,東京の市中病院の外科で研修を開始した.担当疾患の大部分は癌であり,手術,再発治療,終末期治療までわれわれ(外科)で行っていた.当時は癌の告知も一般的でない時代であり,ホスピスが数ヵ所に存在する程度であった.必然的にもっとも苦心したのは終末期患者さんへの対応,すなわち終末期医療であった.疼痛管理以外はまったくといってよいほど明確な指針がなく,いわゆる“緩和医療”の学問的・理論的な裏づけのないまま終末期患者さんと向き合わざるをえず,医師としてそして一人の人間として無力感に苛まされた.多かれ少なかれ,この時代の医師は同様の苦しみを味わったことであろう.
その後,1996年に第1回日本緩和医療学会が開催され,2002年に緩和ケア診療加算が新設された.本書にもあるように緩和医療の出発点は癌の終末期医療であったが,現在では疾患を抱える多様な患者さん・その家族の心身の問題に,診療の早期から積極的に介入していく医療に変貌している.このような,緩和ケアのドラスチックな発展過程で断片的・刹那的に緩和ケアを学んできた私であるからこそ,本書のような実践に即した系統的かつ簡略なガイド本のありがたさが身に沁みてわかる.
よくもここまでまとめてくださった‼ と著者の鳥崎哲平先生には心から御礼申し上げたい.ありがとうございます!
胸部外科77巻4号(2024年4月号)より転載
評者●帝京大学呼吸器外科教授・坂尾幸則
緩和ケアの専門家ではない医療者に向けた緩和ケアの「最強のカンペ」の登場である.著者は緩和ケア医として臨床を行いながらウェブサイト「緩和ケア オンラインポータル(palliative care online portal:PCOP)」を運営されており,同ウェブサイトと連動した内容となっている.本書を一読して感じるのは圧倒的な使いやすさである.読み物というより,臨床現場ですぐに使えるツールという性質が強いように感じる.第1章緩和ケア総論,第2章全人的ケア,第3章意思決定支援などの総論的な部分は臨床で緩和ケアを行うための考え方として必須であろうし,第4章の症状緩和の部分では各症状への対応が具体的にまとめられている.たとえばオピオイドの処方において,緩和ケアの専門医でない場合,今までに使い慣れている製剤を使用しがちであると思うが,患者の病態に応じたオピオイドの選択,初期使用量までが詳細に解説されており,臨床の現場で本書を使用することにより患者の病態,病状に応じた選択ができるようになるであろう.呼吸困難,咳嗽,便秘,食事摂取量低下といった終末期でよくみられる症状に対しては,アセスメント,対応がフローチャートで一目でわかるようになっていてこちらも使いやすい.第5章の終末期ケアでは鎮静,輸液,予後予測・看取りについて記載されており,臨床家は一度は目をとおしておくべき内容であると考える.
上記の本文の間に「POINT」,「NG!」,「TIPS」などが小さいコラムとして挾まれており,読み物としてもたいへん優れている.
現代の緩和ケアについて知りたい,実践する必要がある医療者にとって知識や実際の診療のレベルアップに結びつくと考えられ,医師かそうでないかにかかわらず必携の一冊である.豊富な図表とシンプルな説明,ウェブサイトとの連動など,使う人のニーズを考えた新時代の医学書の在り方といえるであろう.
臨床雑誌外科86巻6号(2024年5月号)より転載
評者●慈泉会相澤病院がん集学治療センター化学療法科統括医長・中村将人
実践までの最短コースを示した緩和ケア本
緩和ケアは大切だと思うが,実際に患者を受け持つ前に何をどの程度学んでおくべきなのだろうか.多くの学習者を見てきたが,真面目な方であればあるほど,「事前に学んでおきたい」と考えるものである.「習うより慣れよだ! とにかく患者を受け持って,実践しながら学ぶことが大事だぞ!」これはこれで一つの真理であるように思う.ただ,患者はわれわれの学びのために存在するわけではないし,そうせざるをえない状況を除いて,学習者もぶっつけ本番的な学び方は望んでいないだろう.このジレンマに対して,本書は実践までの最短コースを示すという役割を担っている.本書を読めば,仮に指導医がべったりと付いて指導してくれるような恵まれた研究環境でなくても,ひとまず実践するというところまで到達できるはずだ.
本書の特徴として,各項目の情報量と深さのバランスがあげられる.各項目がコンパクトにまとまっており,1項目であれば隙間時間にでも学べるボリュームだ.とはいってもマニュアル本のように,ただ単に個別具体の対応を示したものではない.緩和ケアの実践には個々の状況における最善を思考する能力が求められる.それには,どのような背景知識や議論があり,どのような思考プロセスを求められるのかを理解する必要がある.本書の最大の特徴は,これらを十分に理解してアウトプットにつなげられるように,ケーススタディやクイズを含んでいる点だ.つまりアウトプットをイメージしながらインプットできるのである.また,著者が運営するWebサイト「緩和ケア オンラインポータル(Palliative Care Online Portal:PCOP)」と併せて活用すれば,この学びが最大化されるというのもユニークである.
本書を紹介するうえで,著者の鳥崎先生について触れないわけにはいかない.鳥崎先生は麻酔科医としての経験を経て,緩和ケア医を志した.短期間であったが,私も同じ職場で働いたことがある.緩和ケア病棟,緩和ケアチーム,在宅緩和ケアとさまざまな場面での緩和ケアの実践を経験している.その時期に「教育資源に乏しい地域で頑張って診療している若手医師に緩和ケア教育を届けたい」という熱い思いを語っていたのを今でも思い出す.その際のディスカッションを通じて生まれたのが,先に述べたWebサイトである.アイデアを形にするのは大変だが,志を胸に一人で取り組み続けてきたことにただただ尊敬の念を抱くばかりである.
どの医療分野も奥が深い.緩和ケアにおいても,各症状やさまざまな論点について深く学べば学ぶほどわからないことだらけであることに気づく.ぜひそのような緩和ケアの深淵での議論も体験してもらいたいが,そのもっと手前の第一歩として,実践者としての経験を積むフェーズが必要だ.本書はその第一歩に最適であり,緩和ケアの初学者に広く薦められる一冊である.鳥崎先生の志の詰まった本書をぜひ手にとっていただきたい.
臨床雑誌内科133巻6号(2024年6月号)より転載
評者●柏木秀行(飯塚病院連携医療・緩和ケア科 部長)
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