肝生検ガイダンス
編集 | : 日本肝臓学会 |
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ISBN | : 978-4-524-20454-0 |
発行年月 | : 2024年5月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 88 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
臨床現場で肝生検を行う際の指針となるようまとめた,日本肝臓学会編集の公式テキスト.肝生検を安全に行うための基本手技から,各種肝疾患における肝生検を用いた診断,病期分類,治療効果の判定,予後予測の判断を解説.肝生検だけではなくその他の非侵襲的検査法の有用性についても触れ,各種検査を肝疾患の診療にどのように活かせばよいかがわかる一冊.
概要
A.肝生検を行う意義の概要
B.肝生検手技の安全性の概要
C.各種疾患における肝生検の適応の概要
1.肝生検を行う意義
A.肝生検の必要性
B.肝生検に代わる非侵襲的評価法
2.肝生検の安全性
A.適応と禁忌
B.手技(エコー下,腹腔鏡下,経静脈的)
C.病理学的な必要条件
D.合併症と対策
3.びまん性肝疾患における各論
A.C 型肝炎
B.B 型肝炎
C.MASLD/MASH(NAFLD/NASH)
D.自己免疫性肝疾患
1.自己免疫性肝炎(AIH)
2.原発性胆汁性胆管炎(PBC),原発性硬化性胆管炎(PSC)
E.アルコール性肝障害
F.薬物性肝障害
G.原因不明肝障害
H.小児肝疾患
4.肝腫瘍生検
刊行にあたって
肝生検は肝疾患の臨床的な診断を確定するために行われます.ときには,肝生検により臨床的な診断が変更されることもあります.肝疾患の診療を行ううえで,極めて重要な手技そして最終的な診断法といえます.
肝臓の一部を細い針を用いて採取し,それを病理学的な診断に供すること,これは歴史的には1883 年にドイツのポール・エーリッヒが糖原病の診断のために行ったのが最初だといわれています.20世紀初頭には,致死的でない(したがって病理解剖ができない) ウイルス肝炎が戦場で蔓延し,その診断を行うために肝生検が急速に普及しました.当時はもちろん肝炎ウイルスの診断法はありませんし,ALTなどの測定法すらありませんでした.その後,肝疾患領域においても,様々な血液検査・画像検査法が導入され,多くの疾患が必ずしも肝生検という方法を用いなくても診断できるようになりました.しかし,今でも病理学的な診断を必要とする場合は,必須の手技になっています.
一方,肝生検にはある一定の侵襲性を伴いますから,施行にあたってはコストとベネフィットを考える必要があります.診断における必要性を十分に吟味すること,そして安全性に留意することです.本書は,日本肝臓学会が「肝生検」について,その概要,意義,安全性,そして疾患における各論についてコンパクトにまとめたものです.古くからある診断法であるにもかかわらず現代的な視点からこれを解説した類書がなかったことから,2020年に学会としてのガイドを作成することを決定しました.黒崎雅之委員長のもと「日本肝臓学会 肝生検指針作成ワーキンググループ」を立ち上げ,4年の歳月をかけて完成したのが本書です.ぜひみなさんに手にとっていただき,肝生検に対する理解を深めていただくとともに,日々の臨床に活用していただければと思います.どうぞよろしくお願いいたします.
2024年4月
一般社団法人 日本肝臓学会 理事長
竹原 徹郎
日常診療で肝生検の必要性が頭によぎったときの必携書
日本肝臓学会編集の『肝生検ガイダンス』は,肝生検に関する包括的かつ実践的なガイドとして,肝臓病学のみならず医療安全の観点からもきわめて重要であり,実地臨床上で非常に役立つ書籍となっている.本書は,肝生検に関する基本的な内容だけでなく,肝生検に代わりうることが期待されている各種非侵襲的検査の有用性についても記述されており,各疾患に応じた肝生検の活用方法をコンパクトながらも深く掘り下げている.
本書の第1章では,肝生検の意義について解説されている.肝生検は,肝臓の組織を直接観察することで,診断精度を高めるための重要な手段である.一方で,肝生検は侵襲的検査であり,出血のリスクなども伴うため,現在は非侵襲的検査が増加している.本書では,有効性とリスクの両面から肝生検の適応・意義について具体例を交えて説明されており,臨床現場での肝生検の適応判断に役立つ情報が記載されている.
第2章では,肝生検の安全性について詳細に論じている.技術的な手法の進化,適切な患者選択,事前の評価と準備が肝生検の安全性を確保するために重要であることなどが述べられ,また合併症の予防と管理に関する具体的なガイドラインも提示されている.さらには安全な手技の実践に不可欠な知識が簡潔にまとめられており,実際の肝生検施行に際して重要なポイントが示されている.
第3章では,肝生検が各種肝疾患に対してどのように有用であるかが詳述されている.慢性肝炎,肝硬変,脂肪肝,自己免疫性肝疾患,薬剤性肝障害などのさまざまな疾患に対する肝生検の診断的価値と有用性が説明されている.また,血液検査や画像検査などの非侵襲的検査法の導入による診断精度の向上についても言及されている.肝生検と非侵襲的検査をどのように組み合わせて実地臨床における診断と治療に生かすかという点について,実践的な指針が示されている.
第4章では,肝腫瘍に対する生検について記述されている.肝細胞がんや肝内胆管がん,転移性肝腫瘍などのさまざまな腫瘍性病変に対する生検の役割やその技術的側面が説明されている.腫瘍性病変の診断には高い精度と播種に対する予防措置が求められるため,本書では最新の技術と知見も紹介されている.また,腫瘍生検のリスクとその管理についても説明されており,実際の臨床場面での適用に役立つ内容となっている.
黒崎雅之委員長を中心に2020年に始動した日本肝臓学会のワーキンググループのメンバーが4年かけて十分に吟味しながら作成した本書は,肝生検に関するすべての側面をカバーした参考書であるといっても過言ではない.本書は肝臓病学の専門家のみならず,肝疾患の診療に携わるすべての医療従事者にとって必携の書といえる.
臨床雑誌内科134巻6号(2024年12月号)より転載
評者│吉治仁志(奈良県立医科大学消化器内科学講座 教授)