書籍

PV loopマニュアル【Web動画付】

心不全を絵解きする

編著 : 循環動態アカデミー
ISBN : 978-4-524-20447-2
発行年月 : 2025年4月
判型 : B5判
ページ数 : 184

定価4,950円(本体4,500円 + 税)

  • 近刊

発売予定日:2025年4月3日 全国の書店で予約受付中

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

循環動態アカデミーが満を持して贈る「心室圧容積関係( Pressure-Volume loop: PV loop)」に焦点をあてた,これまでにないマニュアル書が登場! 心臓の力学や 循環動態を理解する最初の⼀歩であるものの,難しいイメージを持たれているPV loopについて,基本的理解とその知識を実臨床で活かすヒントを含めて多数の図版,動画を⽤いながら徹底解説.PV loopの理解を通して,⼼臓のしくみ・はたらきから,⼼不全の病態理解,治療戦略までを捉えられるようになる, 初学者はもちろんのこと 全ての循環器スタッフや循環器研究者 におすすめの1冊.

Case Discussion PV loopで症例を絵解きしよう!

T章 PV loop を描く‐PV loop で捉える心臓のしくみ・はたらき
 01 心機能研究の歴史‐巨人の肩,眼下に広がる世界
 02 心構造と心周期‐ドクンドクンの成り立ち
 03 収縮性‐心臓は硬さが変わる袋
 04 拡張性‐硬い心臓には血液が還ってこない!?
 05 後負荷‐心室と血管のおしくらまんじゅう
 06 心拍数‐心拍数の「深さ」の本質
 07 弛緩性‐頻脈による不完全な弛緩
 08 前負荷‐すべての要素が前負荷を決める
 Column ワインと実効動脈エラスタンス

U章 PV loop で診る‐PV loop で病気がみえる
 01 左室収縮能が保たれた心不全‐PV loopで定義するHFpEF
 02 虚血性心疾患‐虚血が引き起こすダイナミックな心機能変化
 03 弁膜症‐弁膜症はなぜ心臓にわるいのか?
 04 機械的補助循環‐循環維持と酸素消費マネジメント
 05 心エコー指標とPV loop‐心臓の形態と心内圧を可視化する
 06 循環指標とPV loop‐循環モニターからイメージするPV loop
 Column PV loopを日常臨床でどう活用するか?

V章 PV loop を深掘る‐PV loop マイスターへの道
 01 心室間相互作用‐心室同士のおしくらまんじゅう
 02 一心拍推定法‐心室圧を用いた収縮性の計り方
 03 心臓エナジェティクス‐PV loopでわかる心臓の仕事
 04 右心のPV loop‐左室にはない右室の事情
 05 自律神経調節‐脳が決める循環の機能
 06 PV loop測定法‐ダイレクト測定法の世界
 Column 佐川研究室の思い出

私が初めてPV loopに出会ったのは学生時代でしたが,本当に向き合ったのは大学院に入ってからです.私の師匠は砂川賢二先生(the father of Ea)で,大学院時代,毎週木曜日と金曜日に開催される研究カンファレンスでは,両手でバッテンの形(Ees とEa の関係や心拍出量曲線と静脈還流の関係)をつくりながら,実験データのPV loopや循環平衡を解説してくれました.
私の大学院時代の心力学のバイブルは,「Cardiac Contraction and the Pressure-Volume Relationship(佐川喜一先生,Lowell Maughan先生,菅弘之先生,砂川賢二先生)」という青いカバーの教科書で,研究室ではBlue bookと呼んでいました.砂川研究室で3周以上は輪読したBluebookですが,実は今も自分の研究室の若手メンバーと砂川先生で同書を用いた勉強会をしています.PV loopという非常に単純化されたコンセプトの端々が,先人たちの想像を絶する深い疑問,気づき,考察に基づいていたのだということをあらためて知り,思わず感嘆の声をあげることが今でもあります.
Blue bookの重要な部分を,“専門家でない読者でも通読できる読みものにつくり変え,臨床に活かしてもらう”ことが本書の真のコンセプトです.T章ではPV loopを構成する要素について,U章では心疾患時や治療時のPV loopについて,V章ではややアドバンスな心血管機能をPV loopを用いて解説しています.本書は,難しい部分はやはり難しいこととして,簡単にではなく丁寧に解説することを心がけました.定義を明確にした本質的理解のうえで,思考を繰り返すことがこの知を臨床に活かす近道なのではないか,と考えているからです.それぞれの執筆者において表現方法が若干異なる場合がありますが(EDVとVedなど),各人のパッションを最優先にしつつ,T章は歴史的に用いられてきた表現方法(前述の例であればVed)に揃えるように意識しました.
本書の編集は,循環動態アカデミーです.この研究会は循環動態の正しい知識を伝え,臨床に活かすという目標のもと,幹事メンバーの講演スライドの共有をメインとし,年に数回の研究会などを行ってきました.この原稿を書いている2025年2月の時点で会員は4,193名です.設立時(2019 年3 月)に「5 年間で教科書を出版する」という目標を立てましたが,気づけば丸6年が経ってしまいました.
読者の皆様,大変長らくお待たせしました.現代における最も丁寧かつ詳細な心力学解説書,『PV loopマニュアル』です.まずは2周ほど通読してみてください.循環動態データを読んでいるときにふと,大きく変わった自分を実感できると思います.

循環動態アカデミー
国立循環器病研究センター研究所循環動態制御部
朔 啓太

9784524204472