循環器疾患最新の治療2024-2025
編集 | : 伊藤浩/山下武志 |
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ISBN | : 978-4-524-20442-7 |
発行年月 | : 2023年12月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 576 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
2年ごとの改訂で,年々進歩する循環器疾患における治療指針と最新の情報を簡潔に提供.巻頭トピックスでは,「心不全、腎不全患者における鉄欠乏:意義と治療」,「ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の臓器保護効果:機序と使い方」,「高齢患者の減薬(deprescribing): その理論と実践」,「Point of care ultrasound (POCUS)の活用」など、話題の12テーマを取り上げる.巻末付録には,日々の臨床に役立つ「循環器疾患の薬剤一覧表」を収載.循環器疾患診療に携わる医師,研修医にとって,最新の治療の知識をアップデートするのに欠かせない一冊.
巻頭トピックス
1.心不全患者の再入院予防のカギ:うっ血のコントロール
2.心不全,腎不全患者における鉄欠乏:意義と治療
3.SGLT2阻害薬の心腎保護効果を考える
4.ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の臓器保護効果:機序と使い方
5.心血管イベント抑制と低用量コルヒチン
6.低侵襲心臓手術の現状と将来展望
7.先天性心疾患患者の移行医療
8.高齢患者の減薬(deprescribing):その理論と実践
9.Point of care ultrasound(POCUS)の活用
10.デジタル循環器学とは何か?
11.循環器病診療におけるAIの現状と将来展望
12.脳卒中・循環器病対策基本法と5ヵ年計画
T 循環器疾患の基本的治療方針
U 心不全
1.急性心不全
2.HFrEF
3.HFmrEF
4.HFpEF(拡張不全)
5.新世代植込み型補助人工心臓
6.心不全に対する心臓リハビリテーション
7.心不全の在宅ケア
8.心不全の緩和ケア
9.心臓移植
V 不整脈
1.心臓突然死
2.徐脈性不整脈
3.期外収縮(上室性・心室性)
4.心房細動:心原性脳梗塞予防
5.心房細動:リズムコントロール
6.心房細動:レートコントロール
7.心房粗動
8.上室頻拍,WPW症候群
9.特発性心室頻拍
10.基礎心疾患に伴う心室頻拍・心室細動
11.不整脈治療薬の催不整脈作用
12.J波症候群(Brugada症候群,早期再分極症候群)
13.QT延長症候群
14.心臓ペースメーカの選択と植込み患者の管理
15.植込み型除細動器
W 冠動脈疾患
1.急性冠症候群
2.急性心筋梗塞に伴う機械的合併症
3.冠攣縮性狭心症
4.冠動脈の閉塞を伴わない心筋梗塞
5.PCI(バルーン,ステント,ロータブレータ)
6.PCIと抗血栓療法
7.冠動脈疾患の薬物療法
8.冠動脈バイパス術および術前・術後管理
9.川崎病
X 弁膜疾患
1.僧帽弁狭窄症
2.僧帽弁閉鎖不全症:一次性
3.僧帽弁閉鎖不全症:二次性
4.大動脈弁狭窄症
5.大動脈弁閉鎖不全症
6.感染性心内膜炎
7.生体弁,機械弁の選択と管理
Y 心筋疾患
1.急性心筋炎
2.拡張型心筋症
3.肥大型心筋症
4.拘束型心筋症
5.不整脈原性右室心筋症
6.心臓サルコイドーシス
7.周産期(産褥)心筋症
8.Fabry病
Z 心膜疾患,腫瘍
1.急性心膜炎
2.収縮性心膜炎
3.心膜液貯留,心タンポナーデ
4.心臓腫瘍
[ 先天性心疾患
1.心房中隔欠損
2.房室中隔欠損(心内膜床欠損)
3.心室中隔欠損
4.動脈管開存症
5.Ebstein病
6.Valsalva洞動脈瘤破裂
7.Fallot四徴症:術後の管理と問題点
8.修正大血管転位:管理と問題点
9.Fontan手術後の遠隔期管理と問題点
10.先天性心疾患と妊娠・出産
\ 肺循環
1.慢性血栓塞栓性肺高血圧症
2.肺動脈性肺高血圧症
3.膠原病に伴う肺高血圧症
] 大動脈疾患
1.Marfan症候群,大動脈弁輪拡張症
2.高安動脈炎(大動脈炎症候群)
3.急性大動脈解離
4.胸部大動脈瘤
5.腹部大動脈瘤
]T 末梢血管疾患
1.閉塞性動脈硬化症
2.腎動脈狭窄症
3.静脈血栓塞栓症
]U 高血圧症
1.本態性高血圧:ガイドラインに沿った治療戦略
2.白衣高血圧,仮面高血圧(早朝高血圧)
3.高齢者の高血圧
4.高血圧の生活習慣修正指導
5.二次性高血圧
]V 脳血管障害
1.脳梗塞
2.頭蓋内出血
3.脳動脈瘤
4.頸動脈狭窄症
]Wその他の病態と循環器診療のテーマ
1.動脈硬化のスクリーニング
2.血管機能不全の診断
3.脂質異常症(高脂血症)
4.起立性低血圧
5.失 神
6.甲状腺疾患と心臓
7.サルコぺニア・フレイルと心臓
8.心疾患患者における運動負荷試験と運動指導
9.心疾患患者に対する心身医学的アプローチ
10.心疾患患者における一般外科手術の術前・術後管理
11.多職種によるハートチーム
■循環器領域における最近の注目のエビデンス
1.冠動脈疾患のエビデンス
2.心不全のエビデンス
3.不整脈のエビデンス
4.脂質異常症のエビデンス
5.抗血栓療法のエビデンス
■心肺蘇生の実際とACLS
■循環器診療における医療安全
■循環器関連ガイドライン一覧
■付録 循環器疾患の薬剤一覧
超高齢社会になり,心血管疾患をもつ患者が増加しています.特に高齢者に多く発症する心不全や心房細動は,内科医であれば誰でも診療すべきcommon diseaseに位置付けられるようになりました.でも内科医あるいは総合診療医がこれらの疾患をどのように診療したらよいのでしょうか?
当然,ガイドラインは参考になります.循環器学はガイドラインが最も整備された領域であり,ガイドラインに準拠した診療が推奨されています.ただし,問題もあります.疾患ごとにガイドラインが作成されるため,その数は膨大なものです.さらに,毎年多くの新しいエビデンスが出てくることでガイドラインが改訂されます.多忙な臨床の中でこれらをすべてフォローすることは困難です.また,ガイドラインには診断や治療の推奨グレードは書いてあるものの,目の前の患者に対する具体的アプローチは記載されていません.そこで,疾患ベースに最新のガイドラインを踏まえつつ,エキスパートの経験を加えて診療に役立つ治療方針をまとめたのがこのテキストです.具体的な処方例も先生方の診療の参考になるでしょう.
循環器学の最前線を巻頭トピックスで取り上げています.これらはガイドラインの先を行くbeyond guidelinesと言えるものです.主なものを挙げると,
・心不全患者の再入院予防のカギ:うっ血のコントロール
・心不全,腎不全患者における鉄欠乏:意義と治療
・心血管イベント抑制と低用量コルヒチン
・先天性心疾患患者の移行医療
・高齢患者の減薬(deprescribing):その理論と実践
などです.特に,超高齢患者においてはガイドラインに準拠した足し算の医療によるポリファーマシーの問題が指摘されています.薬剤による副作用を軽減しつつ,QOLを向上させるための減薬法が求められています.本書がこれらトピックスに記載されたコンセプトを開始するきっかけになれば幸いです.
このテキストが読者の方々の日々の診療に役立つことができれば執筆者,編集者一同の大きな喜びです.
2023年11月
編集者
『循環器疾患最新の治療2024-2025』が発行された.本書は,巻頭12のトピックスから始まる.循環器内科のエキスパートが厳選したのであろう,新しいエビデンスに基づいた知見,知っておくべきワード,今後の展望などをつかむことができる.続いて,基本的治療方針,心不全,不整脈,冠動脈疾患など各論に続く構成となっている.どの領域も日本の第一人者の先生方が執筆しており,内容がフレッシュでありながら信頼性はガイドラインと同等であることは,読む前から疑いの余地はない.
自分の専門領域ではどのようなことが書かれているか,冠動脈のページを開いてみることにした.構成が新しい.心不全,不整脈に続いて,「冠動脈疾患」となっている.しばしばガイドラインのフローチャートが引用され,コンパクトな形で,急性期の検査や診断,対処法などがまとめられている.2年サイクルで改編されるメリットを生かし,新しいワードやテーマも果敢に盛り込んでいる.インターベンションに偏ることなく,内服薬や予防法にもページが割かれており,臨床に活かせるだけでなく読み応えもあり,循環器を学ぶ糸口として,若手医師やメディカルスタッフにはちょうどよいサイズとなっている.ほかの章も,ちょうどよいサイズでテーマ別に区切られており,読み疲れがない.内容としては,チーム医療の重要性の高まりを反映し,特に「先天性心疾患」では,いくつかの専門領域が異なる執筆者により構成されている.「不整脈」や「弁膜疾患」の内容も,日進月歩の進化をとらえてきわめて充実しているが,今後は心臓血管外科を含めた学際的な視点から編集,議論されていくことを期待したい.
専門でない領域についての知見を必要に応じてすぐに手に取れることも,こういった重厚な本のメリットである.通常,専門分野が定まってくるにつれて,ほかの領域の書籍を目にする機会は失われてきてしまう.そこで「脳血管障害」の章をみてみると,画像診断の基礎から内服薬や予防法などについて,ポイントがまとめられていた.専門外であれば頻繁に求められることはないものの,とはいえ必要な知識もある.忘れたことを見直す,久しぶりに学び直すには,これだけ押さえておけば十分で,コンサルトする前にチェックしておけば恥ずかしいこともないであろう.また,「その他の病態と循環器診療のテーマ」の章では,循環器疾患の患者さんに関わる全身の合併症など,“いまさら聞けない”ワードをアップデートすることができ,外来や慢性期の管理にも活かすことができる.さらに,学会発表や研究会前の理論武装の助けともなる「最近の注目のエビデンス」が最後に続いており,専門医も含めてさまざまな読者のニーズに応える本として完成している.本書のような質の高い日本語のレビューを読むと,好奇心が掻き立てられ,しばしば出典まで気になるものである.この点で,欲をいえば,スペースの許す範囲で参考・引用文献が増えると,気になる論文とのマッチングも増えるかもしれない.論文との出会いは一期一会である.
新しいトピックを取り込んだ最新版が出版されたときに本書は役割を終え,2年後には書店から姿を消すかもしれない.しかし,この短いサイクルでテーマを絞り込み,執筆担当を割り当て,原稿を磨き上げ,タイムリーに編集して出版されている本書には,多くの執筆の先生方,編集の先生方や関係者の熱意が,インクの匂いと紙の重さとなって集約されている.そう考えると,本書を読み終えたとき,頼れる相棒として,2年を過ぎても書棚の定位置におき続けたくなるであろう.
臨床雑誌胸部外科77巻5号(2024年5月号)より転載
評者●秋田大学心臓血管外科教授・中嶋博之
循環器疾患を診療するすべての医療者に,最適かつ最新の情報を簡潔に与えてくれる必読書
膨大な情報にあふれている現代社会で,とくに人の命に関わる医療業界に身を置く医師にとって,毎年出てくる新しい情報を収集し,理解して自分のものとし,それらを日々の診療に役立てていくことは至難のわざといってもいい.ましてや,多領域の患者を診療する必要のある実地医家の先生方であれば,なおさら各領域の膨大な資料に目を通すのは困難であろう.もちろん詳細な診療手順は各領域のガイドラインに掲載されているが,疾患や病態ごとに作成されるガイドラインは膨大な数に上り,しかも数百ページ単位で記載されているため,すべての情報をフォローするのは時間的にも制約があって難しい.よって日常臨床で最新の情報に基づいて実践するためには,比較的短時間で情報を取得し,かつ国内外の第一線の臨床家の間でコンセンサスの得られている診断法や治療法を知る必要がある.
このたび伊藤浩先生,山下武志先生の編集による『循環器疾患最新の治療2024—2025』が南江堂から出版された.『循環器疾患最新の治療』は約2年ごとに出版され,一般的なガイドラインよりも早い周期でエビデンスなどの情報がアップデートされており,ここ1〜2年の間に承認された新規治療薬や手術・デバイス治療なども網羅されている.もちろん伝統的かつ確立された診断・治療法も詳しく記載されている.まさに前述したような先生方の情報収集にはうってつけの本といっても過言ではない.
本書の興味深い点の一つは,「巻頭トピックス」として12項目の最新情報が掲載されていることである.この部分を読むだけでもここ2年間の循環器領域におけるトピックスを知ることができる.また,疾患ごとにエキスパートの先生方によるわかりやすい解説が記載されており,なかでも「処方例」の部分は実際の患者さんの治療にあたり大変参考になるのではないだろうか.2色刷で,各項目内の重要なポイントや「TOPICS」はピンク色で強調されており,見た目にもわかりやすい.さらに,ガイドラインのリストや循環器疾患に対する作動薬が一覧表として巻末に掲載されているのは,非常にありがたく,もう少し詳しく知りたい場合の情報の手引きとなる.
前版にも増して大変素晴らしい仕上がりになっており,実地医家の先生方はもとより,循環器専門医にとっても知識の整理や情報のアップデートに大変役立つ本であると考える.ぜひとも購入して,明日からの循環器診療に役立てていただきたい.
臨床雑誌内科134巻1号(2024年7月号)より転載
評者●室原豊明(名古屋大学大学院医学研究科循環器内科学 教授)