眼科医のための手術解剖
編集 | : 林篤志/三木篤也 |
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ISBN | : 978-4-524-20435-9 |
発行年月 | : 2024年7月 |
判型 | : A4判 |
ページ数 | : 336 |
在庫
定価19,800円(本体18,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
眼科手術全般において,低侵襲あるいは無駄のない合理的な手術を実現するためには「局所解剖の熟知」が必須である.本書は各専門領域のトップサージャンの視点から,手術解剖を究めるために必要な写真と数百枚に及ぶリアルな解剖図で満たした最高の指南書である.基本的なアプローチに加え,術野をみやすくする一工夫も掲載され,手術前に読むだけで自信をもたらしてくれる一冊.
第1章 白内障・屈折矯正手術
1 角膜,強膜切開術に必要な手術解剖
2 虹彩処理に必要な手術解剖
3 白内障手術に必要な水晶体,水晶体嚢の解剖
4 白内障手術に必要な毛様体,毛様小帯の解剖
5 屈折矯正手術に必要な角膜の解剖
6 屈折矯正手術に必要な前房・後房の解剖
第2章 角結膜手術
1 結膜下異物除去術に必要な手術解剖
2 結膜囊形成術に必要な手術解剖
3 翼状片手術に必要な手術解剖
4 角結膜腫瘍手術に必要な手術解剖
5 強角膜外傷の手術に必要な手術解剖
6 角膜潰瘍,結膜被覆術に必要な手術解剖
7 角膜切除術に必要な手術解剖
8 角膜移植術(DMEK,DSAEK)に必要な手術解剖
9 角膜移植術(DALK,PKP,その他)に必要な手術解剖
10 培養上皮移植術に必要な手術解剖
11 強膜移植術に必要な手術解剖
12 羊膜移植術(角膜上皮形成術を含む)に必要な手術解剖
第3章 緑内障手術
1 濾過手術
A 濾過手術に必要な結膜の解剖
B 濾過手術に必要な強角膜の解剖
C 濾過手術に必要な前眼部血管の解剖
2 流出路手術(眼外法)
A 流出路手術に必要な房水流出路の解剖
3 閉塞隅角緑内障手術
A 閉塞隅角緑内障手術に必要な手術解剖
B 虹彩切開術,虹彩切除術に必要な手術解剖
4 チューブシャント手術(プレートのあるもの)
A チューブシャント手術に必要な手術解剖
B 血管新生緑内障およびチューブシャント手術に必要な手術解剖
5 低侵襲緑内障手術,レーザー線維柱帯形成術に必要な手術解剖
6 毛様体光凝固術に必要な手術解剖
第4章 脈絡膜・網膜硝子体・強膜手術
1 腫瘍切除に必要な手術解剖
2 前房内異物除去術に必要な手術解剖
3 眼内異物除去術に必要な手術解剖
4 強膜開窓術に必要な手術解剖
5 ぶどう膜炎に伴う硝子体牽引,網膜剥離に必要な手術解剖
6 上脈絡膜血腫除去術に必要な手術解剖
7 網膜手術に必要な検眼鏡所見の基本
8 レーザー手術に必要な網膜の解剖
9 強膜バックリング手術(輪状締結術を含む)に必要な手術解剖(強膜から見た血管解剖を含む)
10 硝子体手術に必要な手術解剖
11 アトピー性白内障同時硝子体手術に必要な手術解剖
12 硝子体手術時の眼内充填剤および補助剤の知識
13 硝子体内注射,硝子体置換術に必要な手術解剖
14 眼内レンズ強膜内固定術に必要な手術解剖
15 黄斑手術(網膜上膜,黄斑円孔),硝子体網膜界面病変の手術に必要な手術解剖
16 近視性牽引黄斑症の手術に必要な手術解剖
17 黄斑下血腫除去術に必要な手術解剖
18 自家網膜移植術に必要な手術解剖
19 RPE細胞移植術に必要な手術解剖
20 網膜血管内手術に必要な手術解剖
21 硝子体生検,網膜生検に必要な手術解剖
第5章 小児眼科・斜視手術
1 小児網膜疾患の手術に必要な手術解剖
2 小児緑内障手術に必要な手術解剖
3 斜視手術
A 直筋の作用と斜視手術に必要な手術解剖
B 斜筋の作用と斜視手術に必要な手術解剖
C 眼窩プリーの解剖と斜視
D Tenon囊と結膜の手術に必要な手術解剖
第6章 眼形成・眼窩・涙道手術
1 眼瞼手術
A 霰粒腫手術に必要な手術解剖
B 眼瞼下垂手術に必要な手術解剖
C 睫毛内反症・睫毛乱生症手術に必要な手術解剖
2 眼窩手術
A ブローアウト骨折整復術に必要な手術解剖
B 眼窩減圧術に必要な手術解剖
C 眼窩腫瘍切除術に必要な手術解剖
3 涙道手術に必要な手術解剖
4 眼球内容除去術・眼球摘出術に必要な手術解剖
第7章 麻 酔
1 眼球周囲神経の解剖学総論
2 経結膜的麻酔に必要な解剖
3 球後麻酔に必要な解剖
4 眼形成手術の麻酔に必要な解剖
序 文
近年の眼科手術手技や機器の開発・改良は目覚ましく,手術を安全かつ低侵襲に行うことが今まで以上に眼科医に要求されるようになっている.安全な手術には解剖学的知識が不可欠である.このたび,「解剖の熟知」の達成を目的として本書『眼科医のための手術解剖』を刊行した.
デジタル技術の進歩に伴い,昨今ではモニターや動画を通してエキスパートの手術を見ることが可能になった.そのため,初学者が標準的な手術手技を学ぶことは,従来よりも容易になったと思われる.しかし,解剖学的に理にかなっている手術こそ安全,効率的な手術なのであり,現在の標準術式の確立には解剖学的知識が不可欠な基盤となっている.このような手術解剖学の基礎は「見よう見まね」の手術学習のみでは理解できず,解剖の基礎知識があってこそ非定型的な症例や偶発的な合併症に対応できる応用力が養われる.
そこで本書では,代表的な眼科手術および麻酔法について,手術の目的と解剖学的意義,解剖学的な観点から見た各術式の注意点,および術野を見やすくするための工夫を中心に,手術医に必要な解剖学的知識を各分野の経験豊富な術者に解説していただいた.解説にあたっては,手術写真とそれに対応する解剖図を数多く掲載し,視覚的にわかりやすくするようお願いした.解剖図はなるべく術者自身の手描きのものをイラストに起こし,術者自身が持つイメージを鮮明に読者に伝えられるよう工夫したつもりである.
対象とする術式は,診療報酬点数表に掲載されている眼科領域の手術を中心としたが,屈折矯正手術などについては診療報酬にこだわらず,眼科領域で数多く行われている手術は網羅するよう心がけた.
必ずしもすべての読者がすべての領域の手術を行うわけではないので,通読せずとも各章,あるいは各項目のみを読んでいただいても理解に問題がないよう編集を行った.本書をご覧になられて,類似した解剖図が複数掲載されていると感じられるかもしれないが,これはそれぞれの術式で解説すべき内容が完結するようにという編集方針のためである.手術の前に必要な項目について頭から順に目を通していただければよい構成となっており,実用的な配慮とご理解いただければ幸いである.また,術者によって参照した文献が異なることから,一部図中の数値に不統一がある点についてご容赦いただきたい.
本書に目を通していただければ,各分野のエキスパート術者の華麗な手技の基礎には,解剖学的知識の裏付けがあることが理解いただけることと思う.本書をご活用いただき,正確な解剖学的知識に基づく安全で低侵襲な手術に役立てていただければ幸いである.
2024年6月
林 篤志
三木 篤也