書籍

ヘルニアの外科第2版

総編集 : 柵P信太郎/諏訪勝仁
編集 : 早川哲史/蜂須賀丈博/嶋田元/松原猛人
ISBN : 978-4-524-20429-8
発行年月 : 2024年10月
判型 : A4判
ページ数 : 592

在庫あり

定価24,200円(本体22,000円 + 税)

  • 新刊

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

好評を博している日本版“ヘルニア診療のバイブル”を大幅に拡充した待望の改訂版.鼠径部ヘルニア・腹壁ヘルニアの病因,解剖,手術手技から合併症対策までを1,000点を超える写真・イラストとともに解説.内視鏡外科手術・ロボット支援手術を中心に新たな術式を盛り込み,再発・術後疼痛を防ぐための戦略も提示.初めて執刀する若手医師からエキスパートまで,すべての外科医必携の一冊.

第T部 鼠径部ヘルニア
A 成人の鼠径部ヘルニア
序 章 鼠径部ヘルニアの歴史,解剖,分類と用語
 1.鼠径部ヘルニア手術の歴史
 2.鼠径部切開法のための解剖
 3.腹腔鏡下手術のための解剖
 4.分類と診療ガイドライン
 5.用 語
 
第1章 鼠径部ヘルニアにおける基礎医学
 1.疫 学
 2.鼠径ヘルニアの危険因子:前立腺全摘除術との関係を含めて
 3.生理学・生化学
 4.人工膜の歴史と進化
 
第2章 鼠径部ヘルニアの診断
 1.基本的な診断法と注意すべき鑑別疾患
 2.鼠径部痛症候群(groin pain syndrome)
 コラム 大腿骨寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement:FAI)
 
第3章 鼠径部ヘルニア(鼠径・大腿ヘルニア)手術
 1.手術適応(watchful waitingを含む)
 2.鼠径部ヘルニア手術の麻酔
 3.鼠径部切開法
  a.組織縫合法
  b.Lichtenstein法
  c.メッシュプラグ法
  d.Kugel法
  e.ONSTEP法
  f.transinguinal preperitoneal repair(TIPP)
  g.女性鼠径部ヘルニアに対する手術
  h.その他の術式
 4.腹腔鏡下手術
  a.反対側鞘状突起開存,不顕性ヘルニアの定義と手術適応
  b.TAPP法
 コラム 若手エキスパートのTAPP法(高位腹膜切開)
  c.TEP法
 コラム 若手エキスパートのTEP法
 5.ロボット支援手術
 6.周術期合併症
 
第4章 急性非還納性ヘルニア
 
第5章 鼠径ヘルニア術後慢性疼痛
 1.病因,症状,診断,治療
 2.ペインクリニック的アプローチ
 
B 小児の鼠径ヘルニア
第1章 小児鼠径ヘルニアの疫学・病態・手術適応
 
第2章 小児鼠径ヘルニア手術
 1.鼠径部切開法
 2.腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(LPEC法)
 
第U部 腹壁ヘルニア
A 正中腹壁瘢痕ヘルニア
第1章 腹壁再建のための解剖・分類・用語
 
第2章 腹壁瘢痕ヘルニアの原因・疫学・予防(創閉鎖法)
 
第3章 腹壁瘢痕ヘルニアの生理学
 
第4章 腹壁瘢痕ヘルニアの手術
 1.手術適応とpatient optimization
 2.腹壁切開法
  a.組織縫合法
  b.anterior component separation法
  c.Rives-Stoppa法
  d.transversus abdominis muscle release(TAR法)
  e.intraperitoneal onlay mesh repair(IPOM法)
  f.形成外科的再建
  g.救急領域における腹壁閉鎖
 3.腹腔鏡下手術
  a.standard IPOM,IPOM-Plus法
  b.enhanced TEP(e-TEP)法
 コラム 解剖のポイント
 コラム crossoverの工夫
 コラム TARがヘルニア門閉鎖に役立つ理由とは
 コラム これって腸管損傷?
 コラム どうしたら,より安全に効率的にe-TEP法を行えるか
  c.endoscopic anterior component separation法
 4.ロボット支援手術
  a.transabdominal transversalis fascial/preperitoneal法
  b.transabdominal rectorectus法
  c.e-TEP Rives-Stoppa/TAR法
  d.transabdominal TAR法
 5.ハイブリッド手術
  a.mini- or less-open sublay(MILOS)法/eMILOS法
  b.e-TEP法
  6.術中・術後合併症とその対処法
B 非正中および特殊な部位の瘢痕ヘルニア
 
C 傍ストーマヘルニア
 
D 腹壁ヘルニア
第1章 成人の腹壁ヘルニアおよび類似疾患
 1.臍ヘルニア
 2.上腹壁ヘルニア(白線ヘルニア)
 3.腰ヘルニア
 4.Spigelianヘルニア(半月線ヘルニア)
 5.腹直筋離開
 
第2章 小児の腹壁ヘルニア
 1.臍ヘルニア
 2.臍帯ヘルニア
 
E loss of domain
第1章 loss of domainの定義・疫学
 
第2章 loss of domainのマネジメント
 1.progressive preoperative pneumoperitoneum(PPP)
 2.ボツリヌス毒素注射法
 
F 食道裂孔ヘルニア・横隔膜ヘルニア
 
G その他のヘルニア
第1章 閉鎖孔ヘルニア
 
第2章 会陰ヘルニア
 
第3章 特殊な内ヘルニア
 1.子宮広間膜ヘルニア,Douglas窩腹膜欠損ヘルニア
 2.Petersenヘルニア
 3.傍十二指腸ヘルニア
 4.その他の内ヘルニア
 
Appendix ヘルニア診療・研究のトピックス
 1.日帰り手術
 2.精索脂肪腫の取り扱い
 3.ヘルニア手術の教育
 4.ヘルニア研究のための臨床疫学・統計学
 5.ヘルニア診療の評価に用いる調査票

改訂第2版序文

 『ヘルニアの外科』初版が発刊されてから,早いもので7 年が過ぎようとしている.この7年間で外科手術はますます低侵襲化に傾倒し,ロボット支援手術の割合が急増している.これは鼠径部ヘルニア手術においても然りであり,いまや米国では術式選択の議論が「オープン」か「ラパロ」かではなく,「オープン」か「ロボット」かに変わっていると聞く.また,ヘルニア診療における世界の方向性がまとめられ,2018 年にInternational guidelines が公表され,2023 年には早くもそのupdate がなされた.
 私事であるが,1976 年に大学を卒業後聖路加国際病院に入職し,ひたすら一般消化器外科特にヘルニア手術に心血を注いできたが,2018 年に第一線を退き後人にバトンを託した.しかし不思議なものである.聞かないようにしよう,見ないようにしようと思っても,日本のヘルニア手術の動向が気になって仕方がない.ラパロやロボット云々ではなく,ヘルニアに対する普遍的な基礎知識,Nyhus やCondon をはじめとするヘルニアのパイオニアらが熱弁してきた“ヘルニア囊に沿った剝離の基本”,“good stuff を用いた筋層修復”がないがしろにされてはいないかと心配になる.また,移りゆくヘルニア診療事情を垣間見て,この『ヘルニアの外科』がすでに時代遅れになってはいないだろうか,と憂慮していた.
 そんな時,南江堂から本書改訂の申し出を受けた.出版社も同じ思いを持っていたという.本書は絶版となった米国のヘルニアバイブル“Nyhus & Condon’s Hernia”を目標として,ヘルニア手術に携わるすべての外科医のために企画,製作された.Nyhus, Condon に恥じぬよう,各分野のスペシャリストに執筆いただき,押しも押されもせぬ日本のヘルニア学の高書になったものと自負している.この第2 版では,7 年の間に開発された新たな術式や刷新された分類,ガイドラインなどをすべて盛り込んでいる.また,特に話題になることの多い“術後慢性疼痛”や“ロボット支援手術”,そして“e-TEP 法”には大幅にボリュームを割いた.
 ヘルニアは一水四見な疾患である.多くは単純で,手術も簡単なことが多いが,時に複雑で治療には困難を極める.また,外科医の知識や技量が不足していると大きな事故を招くことがある.最たる良性疾患であるがゆえに,完璧な治療を求められる.我々はこれに対峙し,克服しなければならない.読者が本書を開いたとき,そこには知りたかった情報が必ず見つかり実臨床に活かせる,そんなバイブルになったらいい,と切に願う.

 今回の改訂にあたり,幾度もの編集作業を行った.最後まで協力いただいた南江堂の枳穀智哉氏,宮下直紀氏,毛利聡氏をはじめ,担当者の皆様に心より敬意と感謝の意を表します.

 最後に,今回の総編集に多大なる尽力をいただいた,諏訪勝仁先生に心から感謝するとともに,今後もわが国におけるヘルニア学の進歩に大きな貢献をしていかれることを強く信じている,と伝えたい.

令和6年8月
柵P 信太郎

9784524204298