新臨床腫瘍学改訂第7版
編集 | : 日本臨床腫瘍学会 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-20426-7 |
発行年月 | : 2024年2月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 816 |
在庫
定価17,600円(本体16,000円 + 税)
正誤表
-
2024年03月21日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
がん薬物療法を行う上で知っておくべき知識を網羅した,日本臨床腫瘍学会編集による専門医テキストの改訂第7版.各がん種・薬剤の要点を掲載し,基礎から実践までを幅広く解説.がん種別の標準治療のアップデートや新規薬剤の追加のほか,コンパニオン診断,ゲノム薬理学,CAR-T,患者-医療者コミュニケーションの項目を新設するなど,この3年で確立した知見を盛り込んだ.専門医を目指す人だけでなく,がん診療に携わる全ての医療者必携の書.
■序 章
1)日本のがんの動向と腫瘍内科
2)日本のがん対策の動向
3)日本の保険診療体系とがんの医療経済学
T がんの分子生物学
1.がんの発生と進展機構
1)遺伝子異常と多段階発がん
2)染色体・ゲノム異常
3)シグナル伝達系
4)細胞周期
5)細胞死および細胞老化
6)エピジェネティクス
7)ノンコーディングRNA
8)浸潤と転移
9)血管新生
10)がん幹細胞
11)感染と発がん
12)がんと代謝
2.臨床検査,分子生物学的解析法
1)ゲノム解析法・遺伝子変異検査(包括的ゲノムプロファイリングを含む)
2)トランスクリプトーム解析
3)遺伝子増幅法
4)プロテオーム解析
5)タンパク質発現解析法
6)バイオインフォマティクス
U 臨床腫瘍学の総論
3.がんの疫学と予防
1)がんの病因
2)がんの疫学・統計
3)がんの予防
4)がんのスクリーニング・検診
4.医薬品の開発と臨床試験
1)がんの臨床試験概論
2)薬物の開発(発見,スクリーニング,非臨床試験まで)
3)有効性と安全性の評価
4)臨床試験・臨床研究をめぐる知的財産権
5)日本の医薬品開発をめぐる規制
5.がんの診断
1)画像診断(CT,MRI,PET・核医学,超音波)
2)病理診断
3)TNM分類
4)腫瘍マーカー
5)コンパニオン診断と包括的がん遺伝子プロファイリング検査
6.外科療法
7.放射線治療
8.インターベンショナル・ラジオロジー(IVR)
9.インターベンショナル・エンドスコピー(IVE)
10.薬物療法
1)薬物療法の理論
2)薬物動態学・薬力学・ゲノム薬理学
3)特別な配慮を要する患者の治療
4)生殖細胞系列遺伝子バリアントに基づくゲノム薬理学
5)抗体複合体・ナノ粒子
6)薬剤耐性
11.造血・免疫細胞療法
1)造血幹細胞移植
2)CAR-T
12.がん免疫療法
1)がんと免疫
2)がん免疫療法概論
13.AYA世代のがん
14.老年腫瘍学
15.遺伝性腫瘍と遺伝カウンセリング
1)遺伝性腫瘍
2)遺伝カウンセリング
16.サバイバーシップ
17.がん医療における倫理的原則
18.患者-医療者コミュニケーション
19.補完代替医療
V 各種抗がん薬
20.細胞障害性(殺細胞性)抗がん薬
1)アルキル化薬,抗生物質
2)プラチナ製剤
3)代謝拮抗薬
4)トポイソメラーゼ阻害薬
5)微小管阻害薬
21.内分泌療法薬
22.分子標的治療薬
1)分子標的治療薬概論
2)EGFR阻害薬
3)HER2阻害薬
A.小分子化合物
B.抗体薬
4)血管新生阻害薬,多標的阻害薬
A.小分子化合物
B.抗体薬
5)BCR/ABL阻害薬,KIT阻害薬
6)mTOR阻害薬
7)ALK阻害薬
8)PI3K阻害薬,AKT阻害薬
9)BRAF阻害薬,MEK阻害薬
10)プロテアソーム阻害薬
11)エピジェネティック標的薬
12)CDK阻害薬,PARP阻害薬
13)NTRK阻害薬
14)RET阻害薬
15)KRAS阻害薬
16)FGFR阻害薬
17)MET阻害薬
18)FLT3阻害薬
19)JAK阻害薬
20)細胞表面抗原に対する抗体薬
23.免疫チェックポイント阻害薬
24.その他の抗がん薬
W 臨床腫瘍学の各論
25.頭頸部がん
26.肺がん
1)小細胞肺がん
2)非小細胞肺がん
27.胸膜中皮腫
28.縦隔腫瘍
29.乳がん
30.食道がん
31.胃がん
32.大腸がん
33.消化管間質腫瘍
34.神経内分泌腫瘍
35.肝細胞がん
36.胆道がん
37.膵がん
38.腎細胞がん
39.膀胱がん,腎盂・尿管がん
A.膀胱がん
B.腎盂・尿管がん
40.前立腺がん
41.胚細胞腫瘍(精巣・後腹膜・縦隔原発)
42.子宮頸がん
A.子宮頸がん
B.外陰がん,腟がん
43.子宮体がん
A.子宮体がん
B.子宮肉腫
C.絨毛性疾患
44.卵巣がん,卵管がん,腹膜がん
A.卵巣がん(上皮性悪性腫瘍)
B.胚細胞腫瘍(卵巣)
45.骨・軟部腫瘍
1)悪性骨腫瘍
2)悪性軟部腫瘍
A.手術適応のある肉腫
B.進行・再発肉腫
46.皮膚がん
A.悪性黒色腫
B.基底細胞がん,有棘細胞がん,乳房外Paget病
47.中枢神経系腫瘍
48.内分泌がん
A.甲状腺がん
B.副腎皮質がん
C.褐色細胞腫
49.原発不明がん
50.小児がん
1)小児がんとは
2)神経芽腫
3)横紋筋肉腫
4)白血病/リンパ腫
A.急性リンパ性白血病
B.非Hodgkinリンパ腫
51.造血・リンパ組織の腫瘍
1)WHO分類
2)白血病
A.急性骨髄性白血病(AML)
B.急性リンパ性白血病(ALL)
C.慢性骨髄性白血病(CML),骨髄増殖性腫瘍
@慢性骨髄性白血病(CML)
A真性赤血球増加症(PV)
B本態性血小板血症(ET)
C原発性骨髄線維症(PMF)
D慢性好酸球性白血病・非特定型(CEL-NOS)
E慢性好中球性白血病(CNL)
D.慢性リンパ性白血病(CLL)と類縁疾患
E.骨髄異形成症候群(MDS)
3)リンパ腫
A.非Hodgkinリンパ腫(NHL)
B.Hodgkinリンパ腫(HL)
C.成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)
4)多発性骨髄腫(MM)と類縁疾患
5)HIV関連悪性腫瘍
52.MSI-H・TMB-H固形がん
53.その他のがん・希少がん
54.副作用対策と支持療法
1)オンコロジックエマージェンシー
A.悪性胸水・心液・腹水
B.上大静脈症候群,気道狭窄
C.電解質異常(高カルシウム血症,低ナトリウム血症)
D.脊髄圧迫
E.泌尿器科的エマージェンシー
2)がんの症状マネジメント・緩和医療
A.疼 痛
B.骨転移
C.脳転移
D.消化器症状
E.呼吸器症状(呼吸困難)
F.胆道閉塞
G.がん悪液質
H.播種性血管内凝固(DIC)
I.腫瘍随伴症候群(PNS)
J.栄養サポート
K.リハビリテーション
L.輸血療法
M.サイコオンコロジー
N.終末期医療
3)副作用のマネジメント
A.好中球減少・発熱性好中球減少症(FN)
B.腫瘍崩壊症候群(TLS)
C.消化器症状(悪心・嘔吐)
D.下痢,便秘,消化管穿孔
E.神経毒性
F.肝障害
G.腎障害
H.脱毛・皮膚障害・血管外漏出
I.アレルギー反応・インフュージョンリアクション
J.肺障害
K.貧 血
L.血小板減少
M.口内炎・口腔内のトラブル
N.その他の副作用
O.B型肝炎ウイルスの再活性化とその対策
P.性腺機能障害と妊孕性温存
Q.腫瘍循環器学
4)免疫関連有害事象(irAE)
略語一覧
改訂第7版 序
最近の臨床腫瘍学の進歩は目を見張るものがある.その根幹のひとつを成すがん薬物療法はこの20 年で大きく進歩し,多くの進行がんの生存期間が延長した.特に最近5年間の変化は目覚ましい.1)免疫チェックポイント阻害薬,2)遺伝子異常に基づいた臓器横断的がん分子標的治療,3)がんゲノム医療の開発と臨床導入は,臨床腫瘍学の歴史のなかでも特筆に値しよう.このため,がん薬物療法には一段と高度な専門性が求められるようになってきた.さらに,最近では従来の外科学,放射線腫瘍学および緩和医療学との集学的治療に加え,循環器学や老年医学など他の内科領域(いわゆるがん関連学際領域)との連携が重要になってきた.このような背景から,がんゲノム医療を含む臓器横断的診療を専門とし,全身疾患としての進行がんを内科専門医として診療する腫瘍内科医の必要性がこれまで以上に増している.日本臨床腫瘍学会は,1993年に前身である日本臨床腫瘍研究会が創設された後,2003年に学会へと移行した.現在,研究会設立からおよそ30年,学会移行から20年ほどが経過した.この間,わが国では臨床腫瘍学,とりわけがん薬物療法を主体とする腫瘍内科学の学術領域の確立に長年貢献してきたが,当学会
の社会的要請は今後ますます高まるであろう.
がん薬物療法を含むがん医療の均てん化をひとつの目標に2006年に制定されたがん対策基本法のもとで,17年間にわたり1〜4期のがん対策推進基本計画が策定され,国や都道府県ごとのがん対策により罹患率や死亡率の低下が明らかになってきた.しかし,第3期の中間報告では,本学会が認定するがん薬物療法専門医を含む医療提供体制(医療機関の整備とがん専門医療従事者の配置)について格差が拡大していることが指摘され,2023年4月にスタートした第4期がん対策推進基本計画の全体目標は「誰一人取り残さないがん対策を推進し,全ての国民とがんの克服を目指す」とされた.この計画においても1次予防(喫煙やワクチン対策等)や2次予防(がん検診)に加え,がん医療提供体制は今もがん対策上の重要な課題である.そして,医療提供体制の基盤となるがん専門医療従事者の養成には質の高い最新の教科書が必要である.日本臨床腫瘍学会は,研究会時代の『臨床腫瘍学』(1996年から3版刊行)から学会移行後に新たに『新臨床腫瘍学』(2006年初版)として発刊し,改訂を重ね,主にがん薬物療法専門医の教科書として高く評価され愛読されてきた.今回の改訂第7版では,最新の臨床試験情報に基づくがん種別の標準治療のアップデートに加え,第4期がん対策推進基本計画や薬剤開発の進歩を考慮して,「患者-医療者コミュニケーション」と「がん悪液質」を新たに項目追加したほか,「コンパニオン診断と包括的がん遺伝子プロファイリング検査」,「特別な配慮を要する患者の治療」,「CAR-T」,「補完代替医療」,「分子標的治療薬」のなかに「RET阻害薬」を含む6阻害薬をそれぞれ改訂第6版から変更し独立した項目とし,また「副作用のマネジメント」のなかに「消化器症状(悪心・嘔吐)」を含む12項目を小項目として独立,「AYA世代のがん」,「サバイバーシップ」および「がん医療における倫理的原則」を大項目へ格上げした.
本書が日常のがん診療に活用されると同時に,がん専門医療人の養成によるわが国のがん医療提供体制の整備に寄与し,がん患者の治療成績の向上に少しでも役立つことを切望する.
2024年2月
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
理事長 石岡千加史
急速に増大する臨床腫瘍学の情報を漏れなく,コンパクトに記載した素晴らしい教科書
このたび日本臨床腫瘍学会編集の『新臨床腫瘍学(改訂第7版)』が刊行された.日本臨床腫瘍学会では,研究会時代の1996年から臨床腫瘍学の教科書を定期的に刊行してきた.『新臨床腫瘍学』は,第3版まで出された前身の『臨床腫瘍学』の後を受けて2006年に初版が刊行され,それ以降,臨床腫瘍学の急速な進歩に遅れをとらないよう3年に1回の改訂を継続して,今回,改訂第7版の刊行に至った.歴代の編集委員や多くの執筆者および南江堂の関係者の方々に,心より敬意を表したいと思う.前版の刊行とともに次版の編集に着手するという非常にタイトなスケジュールであったのではないかと想像する.
『新臨床腫瘍学』は,がん薬物療法専門医に必要とされる臨床腫瘍学に関するすべての知識を総論・各論ともに非常にコンパクトに記述していることが特徴である.臨床腫瘍学の進歩に伴って記載すべき事項が膨大となることが懸念されるが,内容を取捨選択することによって,新しい知見を漏らさず掲載しているにもかかわらず,頁数は初版から改訂第7版まで同程度を維持している.
改訂第7版では,序章として「日本のがんの動向と腫瘍内科」「日本のがん対策の動向」「日本の保険診療体系とがんの医療経済学」の項目が新たに設けられた.また,がんの診断の項目では新たに「コンパニオン診断と包括的がん遺伝子プロファイリング検査」が追加され,さらには「AYA世代のがん」「サバイバーシップ」「がん医療における倫理的原則」「患者—医療者コミュニケーション」「補完代替医療」などの項目が新設され,第4期がん対策推進基本計画に即した内容となっている.
前版発行後の約3年間で,多くの薬剤が新たに登場あるいは新たな適応を取得するに至っている.また,各論では治療体系がさらに細分化されるとともに,周術期の治療に免疫チェックポイント阻害薬が導入されるなど,治療に大きな変化があったがん種も少なくない.本書は,このように急速に増大する情報を漏れなく,コンパクトに記載した素晴らしい臨床腫瘍学の教科書となっている.紙幅の制約があるにもかかわらず,「副作用対策と支持療法」の項目が大幅に拡充されていることには驚かされ,臨床に重きを置いた編集方針に大きな感銘を受けた.
本書が多くの腫瘍内科医,がん薬物療法専門医に教科書として使用され,日常のがん患者の診療に貢献することを期待している.
臨床雑誌内科134巻4号(2024年10月号)より転載
評者●大江裕一郎(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科長/副院長)