教科書

健康・栄養科学シリーズ

臨床栄養学改訂第4版

監修 : 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
編集 : 中村丁次/川島由起子/外山健二/片桐義範
ISBN : 978-4-524-20419-9
発行年月 : 2025年3月
判型 : B5判
ページ数 : 484

在庫あり

定価4,400円(本体4,000円 + 税)

  • 新刊

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

主要な疾患の病態と,患者に対する適切な栄養アセスメント・栄養ケアについて詳細に解説したテキスト.総論で栄養マネジメントの流れ,食事療法・栄養補給法の基礎,薬との相互作用などを総合的に理解し,各論で各疾患の栄養マネジメントの実際を発展的に学べるよう構成.「令和4年度管理栄養士国家試験出題基準」の「臨床栄養学」に相当する項目を網羅し,各種疾患ガイドラインの変更にも対応.

第1章 臨床栄養学の基礎
 A 意義と目的
 B 疾患と栄養
  @疾病の成因としての栄養
  A非感染性疾患(生活習慣病)
  Bリスクマネジメント
  C疾患の結果としての栄養不良
  D栄養不良の二重負荷
 C 医療・介護制度の基本
  @医療保険制度
  A介護保険制度
 D 医療と臨床栄養
  @治療における栄養マネジメントの意義
  Aクリニカル・パスと栄養管理
  Bチーム医療,チームケア,栄養サポートチーム,他職種との連携
  C管理栄養士の役割とリーダーシップ
  D医の倫理,生命倫理,守秘義務
  E患者・障害者の権利・心理
  Fインフォームド・コンセント
 E 福祉・介護と臨床栄養
  練習問題

第2章 チーム医療
 A チーム医療とは
  @チーム医療
  A管理栄養士の役割
 B 各種チーム医療の実際
  @栄養サポートチーム
  A褥瘡対策チーム
  B摂食・嚥下チーム
  練習問題

第3章 栄養ケア・マネジメント
 A 栄養ケアとマネジメントとは
  @栄養ケア・マネジメントの定義と構造
  Aマネジメント・サイクル
 B 栄養ケア・マネジメントと制度
  @医療保険制度
  A診療報酬における栄養ケア・マネジメント
  B介護保険制度における栄養ケア・マネジメント
  C栄養情報提供書
 C クリニカル・パス
  練習問題

第4章 栄養アセスメント
 A 意義と目的
 B 栄養スクリーニングとアセスメント
  @栄養スクリーニングの意義
  A栄養スクリーニングの方法
 C 臨床診査
  @自・他覚症状の観察
  A既往歴,現病歴,家族歴
 D 臨床検査
  @栄養状態と病態の評価指標
 E 身体計測
  @測定項目
 F 食事調査
 G 栄養必要量の算定
  @エネルギー必要量の算定
  Aたんぱく質必要量の決定方法
  B脂質必要量の決定方法
  C糖質必要量の決定方法
  Dビタミン・ミネラル必要量の決定方法
 H エネルギーおよび栄養素のアセスメント
  @エネルギーのアセスメント
  Aたんぱく質のアセスメント
  B脂質のアセスメント
  C糖質のアセスメント
  Dビタミン・ミネラルのアセスメント
  E水のアセスメント
  F総合的な栄養アセスメント
  練習問題

第5章 栄養ケア計画
 A 栄養ケア計画とは
 B 栄養ケア計画作成の手順
  @栄養ケア計画の作成
  Aカンファレンスの開催
 C 栄養ケア計画の実施
  練習問題

第6章 栄養・食事療法,栄養補給の方法
 A 栄養・食事療法と栄養補給法
  @栄養・食事療法と栄養補給法の歴史
  A栄養・食事療法と栄養補給法の特徴
  B栄養補給法の選択
 B 経口栄養補給法(栄養・食事療法)
  @治療食と介護食
  A治療食の種類
  B治療食の疾病別分類と主成分別分類
  C食種
  D食品選択と献立作成
 C 経腸栄養補給法
  @目的
  A適応と禁忌
  B投与ルート
  C経腸栄養剤・製品の種類と成分
  D投与方法
  E栄養補給法に必要な用具,機械
  Fモニタリングと再評価
  G経腸栄養法の合併症と対応
  H在宅経腸栄養サポート
 D 静脈栄養補給法
  @目的
  A適応
  B末梢静脈栄養法と中心静脈栄養法
  C輸液の種類と成分
  D栄養補給量の算定方法
  E栄養補給法に必要な用具,機械
  Fモニタリングと再評価
  G静脈栄養法の合併症と対応
  H在宅静脈栄養サポート
  練習問題

第7章 栄養教育
 A 傷病者の栄養教育
  @意義と目的
  A必要な技術
  B時期と特徴
 B 診療報酬制度での栄養教育
  @栄養食事指導
  A栄養管理
 C 要支援者・要介護者の栄養教育
  @意義と目的
  A対象者とサービス体系
  B時期と特徴
 D 介護報酬制度での栄養教育
 E 栄養教育の運用システムと記録
  @運用システム
  A栄養食事指導記録
 F 栄養教育のマンパワー
  @多医療職種
  A家族
  B患者会
  練習問題

第8章 栄養ケアの実施と栄養モニタリング
 A 栄養モニタリング
 B 評価
  @成果(結果)の評価
  A経過(過程)の評価
  B構造の評価
  練習問題

第9章 栄養管理の記録
 A 栄養管理記録の意義
  @栄養管理記録の意義
 B 問題志向型システム(POS)の活用
  @POSの理念と構造
  APOSの概念
  B問題志向型診療録(POMR)の作成
  練習問題

第10章 栄養管理プロセス
 A 栄養管理プロセスとは
 B 栄養管理プロセスの実践
  @栄養スクリーニング
  A栄養評価(栄養アセスメント)
  B栄養診断(PES)
  C栄養介入計画
  D栄養モニタリング
  E栄養管理記録
  F栄養管理プロセスと多職種連携
  練習問題

第11章 薬と栄養・食物の相互作用
 A 医薬品が栄養・食事に及ぼす影響
  @栄養素摂取量の減少・増加
  A栄養素の吸収の減少
  B栄養素の吸収・必要量の増加
  C栄養素排泄の変化
 B 医薬品による電解質の変化
  @ナトリウム(Na)
  Aカリウム(K)
  Bリン(P)
  Cマグネシウム(Mg)
  Dカルシウム(Ca)
 C 栄養・食品が医薬品に及ぼす影響
  @薬の吸収
  A薬の生物学的有効性
  B薬による生体内変化
  C薬の排泄
  D薬により起こる栄養素の腸管吸収障害
  E薬の作用に影響を及ぼす食品,栄養素
  練習問題

第12章 栄養障害
 A たんぱく質・エネルギー栄養障害(PEM),栄養失調症
 B ビタミン欠乏症・過剰症
 C ミネラル欠乏症・過剰症
  練習問題

第13章 肥満と代謝疾患
 A 肥満,メタボリックシンドローム1
 B 糖尿病
 C 脂質異常症
 D 高尿酸血症,痛風
  練習問題

第14章 消化器疾患
 A 口内炎,舌炎
 B 胃食道逆流症
 C 胃潰瘍,十二指腸潰瘍
 D 蛋白漏出性胃腸症
 E 炎症性腸疾患
  E-1 クローン病
  E-2 潰瘍性大腸炎
 F 過敏性腸症候群
 G 下痢,便秘
  G-1 慢性下痢
  G-2 慢性便秘
 H 肝炎
 I 肝硬変
 J 脂肪肝,NAFLD・NASH
 K 胆石症,胆囊炎
 L 膵炎
  練習問題

第15章 循環器疾患
 A 高血圧症
 B 動脈硬化症
 C 狭心症,心筋梗塞
 D 心不全
 E 不整脈;心房細動,心室細動,心室頻拍
 F 脳出血,脳梗塞,クモ膜下出血
  練習問題

第16章 腎・尿路疾患
 A 糸球体腎炎
 B ネフローゼ症候群
 C 糖尿病性腎臓病
 D 急性腎障害
 E 慢性腎障害・腎臓病
 F 血液透析,腹膜透析
 G 尿路結石症
  練習問題

第17章 内分泌疾患
 A 甲状腺機能亢進症・低下症
 B クッシング病・症候群
  練習問題

第18章 神経疾患
 A 認知症
 B パーキンソン病・症候群
  練習問題

第19章 摂食障害
 A 神経性やせ症
 B 神経性過食症
 C むちゃ食い障害
  練習問題

第20章 呼吸器疾患
 A COPD(慢性閉塞性肺疾患)
 B 気管支喘息
 C 肺炎
  練習問題

第21章 血液系の疾患・病態
 A 貧血
  A-1 鉄欠乏性貧血
  A-2 巨赤芽球性貧血
  A-3 溶血性貧血
  A-4 再生不良性貧血
  A-5 腎性貧血
 B 出血性疾患
  練習問題

第22章 筋・骨格疾患
 A 骨粗鬆症
 B 骨軟化症,くる病
 C 変形性関節症
 D サルコペニア
 E ロコモティブシンドローム(運動器症候群)
  練習問題

第23章 免疫・アレルギー疾患
 A 食物アレルギー
 B 膠原病,自己免疫疾患
 C 免疫不全
  練習問題

第24章 感染症
 A 食中毒
 B 敗血症
 C 院内感染症
  練習問題

第25章 がん
 A 消化管のがん
  A-1 食道がん
  A-2 胃がん
  A-3 大腸がん(結腸がん・直腸がん)
 B 消化管以外のがん
  B-1 肺がん
  B-2 肝がん
  B-3 膵がん
  B-4 白血病
 C 化学療法,放射線療法,緩和ケア
  C-1 化学療法
  C-2 放射線療法
  C-3 緩和ケア
 D 終末期医療(ターミナルケア)
  練習問題

第26章 手術・周術期
 A 手術・周術期の栄養ケア・マネジメント
 B 消化管の術前・術後
  B-1 食道切除
  B-2 胃切除
  B-3 小腸切除
  B-4 大腸切除
 C 消化管以外の術前・術後
  練習問題

第27章 クリティカル・ケア
 A 集中治療
 B 外傷
 C 熱傷
  練習問題

第28章 摂食機能の障害
 A 咀嚼・嚥下障害
 B 口腔・食道障害
 C 消化管通過障害
  練習問題

第29章 要介護,身体・知的障害
 A 身体障害
 B 知的障害(精神遅滞)
 C 精神障害
  練習問題

第30章 乳幼児・小児疾患
 A 消化不良症(乳児下痢症)
 B 周期性嘔吐症
 C アレルギー疾患
 D 小児肥満
 E 先天性代謝異常
  E-1 フェニルケトン尿症
  E-2 メープルシロップ尿症
  E-3 ガラクトース血症
  E-4 糖原病
  E-5 ホモシスチン尿症
 F 糖尿病
  F-1 1型糖尿病
  F-2 2型糖尿病
 G 腎疾患
  G-1 ネフローゼ症候群
  G-2 急性糸球体腎炎
  練習問題

第31章 妊産婦・授乳婦疾患
 A 肥満,低体重(やせ)
  A-1 肥満
  A-2 低体重(やせ)
 B 鉄欠乏性貧血
 C 妊娠糖尿病,糖尿病合併妊娠
  C-1 妊娠糖尿病
  C-2 糖尿病合併妊娠
 D 妊娠高血圧症候群
  練習問題

第32章 老年症候群
 A 誤嚥,転倒,失禁,褥瘡
  A-1 誤嚥
  A-2 転倒
  A-3 失禁
  A-4 褥瘡
 B フレイル
 C 多疾患併存を考慮した栄養ケア
  練習問題

参考図書
練習問題解答
索引

コラム
  GLIM基準による栄養管理
  栄養教育
  栄養教育と多職種連携
  多職種連携
  膵性糖尿病
  摂食障害に対する認知行動療法「CBT–E」
  摂食障害患者の必要エネルギー
  COPDの認知度
  喫煙の害
  貧血とピロリ菌
  鉄欠乏性貧血と“氷かじり”
  貧血とお茶
  貧血とプルーン
  胃全摘後の貧血
  なぜピロリ菌に感染すると胃がんになりやすいのか?
  ERASⓇプロトコール
  脳性麻痺患者の食事の注意:無理をするとチャンスを失う?
  精神運動発達遅滞患者の食事の注意
  動作能力以外の要因とは?
  鉄の補給を食事だけで行うと
  妊娠高血圧症候群の浮腫には水分制限が必要?
  多数の疾患を有する高齢者の推定エネルギー必要量の計算

健康・栄養科学シリーズ〞監修のことば
 国民栄養に関する指導の統一と徹底を図ることを目的とし,栄養士の身分とその業務が国家的に定められたのは,1945(昭和20)年の栄養士規則と私立栄養士養成所指定規則公布に遡る.当時の養成施設は14校であり,卒業生は全員栄養士として認められた.その後1947(昭和22)年の栄養士法公布を経て,管理栄養士制度が1962(昭和37)年に設けられた.そして,2000(平成12)年4月の栄養士法改正で,管理栄養士は医療専門職の国家資格として定められた.管理栄養士とは,厚生労働大臣の免許を受けて,傷病者に対する療養のために必要な栄養指導,個人の身体の状況,栄養状態等に応じた健康の保持増進のための栄養指導,並びに特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況,栄養状態,利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理,及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等を行うことを業とする者と定義されている.栄養士制度の開始当初と異なり,国民の健康課題も食糧不足による低栄養から,2型糖尿病や脂質異常症をはじめとした生活習慣病へと移行した.また少子高齢社会による様々な社会的課題が生じており,管理栄養士に求められる知識や技術の高度化が必須である.

 本“健康・栄養科学シリーズ”は,このような背景に沿い,国立健康・栄養研究所の監修として,元理事長 田中平三先生のもとに立ち上げられた.そして国家試験出題基準準拠の教科書として,管理栄養士養成教育に大きな役割を果たし,好評と信頼に応え改訂を重ねてきた.

 管理栄養士国家試験出題基準は2023(令和5)年1月,学術の進歩やこの間の法制度の改正と導入に対応し,「管理栄養士としての第一歩を踏み出し,その職務を果たすのに必要な基本的知識及び技能」を問うものとして内容を精査した改定がなされた.そこで本シリーズもこれまでの改訂に重ねて改定国家試験出題基準準拠を継続するかたちで順次改訂しているところである.各科目の重要事項を押さえた教科書,国家試験受験対策書,さらに免許取得後の座右の書として最良の図書であると確信し,推奨する.尚,本シリーズの特徴である,@出題基準の大項目,中項目,小項目のすべてを網羅する,A最適の編集者と執筆者を厳選する,B出題基準項目のうち重要事項は充実させる,C最新情報に即応する,という従来の編集方針は,引き続き踏襲した.

 管理栄養士を目指す皆さんが,本シリーズを活用して管理栄養士国家資格を取得し,実践現場における様々な栄養ニーズに応えるべく研鑽を積み,保健・医療専門職としての知識を生かし,国民のQOL(生活の質,人生の質)の保持増進に貢献することを祈念する.

2024年2月
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
理事 瀧本 秀美



改訂第4版の序
 近年,臨床栄養学は著しく進歩している.2019 年に刊行された本書の改訂第3 版では,各種栄養補給,栄養管理システム,さらに疾患ごとの栄養・食事療法等の進歩に従って,新たな知見を盛り込んだ.その後,医学・栄養学の進歩以外に,対象となる傷病者の高齢化や医療・介護制度等の変化を背景として,臨床栄養学で習得すべき専門的な知識や技術も変化しつつある.

 例えば,栄養との関連性が強い糖尿病,脂質異常症,高血圧,腎臓病,がん等の非感染性疾患(NCDs),いわゆる生活習慣病に対しては,改善すべき栄養や食事の在り方が科学的に明らかになってきた.近年の医療の進歩もあり,NCDs の患者は長寿となり,高度の医療を受けながらも健常人と同様に生活できるようになった.しかし,高齢患者の病態と栄養状態は多様で,複雑で,複数の疾患が合併していることも多く,従来のような特定の疾患に対する特定の栄養・食事療法は効果を発揮しにくくなっている.

高齢患者は,完治することのない慢性疾患と死ぬまで付き合い,複数の疾患が互いに関連しながら増悪する中で,栄養・食事療法を進めていくことになる.

 また,糖尿病や腎臓病の高齢患者において,やせ,貧血,サルコペニア,低タンパク質血症,骨粗鬆症,骨折などの低栄養疾患が出現しつつある.薬物療法や外科療法の副作用による味覚や食欲の低下により低栄養になるリスクは増大する.しかも疾病や加齢により,栄養素の合成・分解能力が低下して,回復にも時間を要すために栄養素の必要量が増大することも要因となっている.さらに栄養・食事療法は,栄養バランスの取れた健康な食事と比べると,いわゆるアンバランス食になっているので,長期に実施すれば栄養障害を起こす危険性もある.

 高齢患者が病気の治療と同時に快適に生命を全うできる栄養・食事療法は,どのように行われるべきなのか? 臨床栄養学が新たな時代の課題に対応できるように今回の改訂作業を実施した.

 管理栄養士を目指し,臨床栄養学を学ぶ人々が,臨床栄養に関する基礎事項を学ぶと同時に最新の知識と技術を習得するために,本書を活用されることを心から願っている.

2025 年2 月吉日
編集者を代表して
中村丁次



初版の序
日常の食事や食品と病気との関係を科学的に解明したのは,18 世紀後半,ヨーロッパで発展した栄養学である.栄養学は食事に含まれるエネルギーと各種栄養素の作用を明らかにし,その知識をもとにさまざまな疾患に対する食事による予防法や治療法が完成した.

 近年,とくに問題になっているのが生活習慣病である.生活習慣病とは,不適正な生活習慣がリスクファクターとなり発症する疾病群をいい,その対策には,健常者やハイリスク者への一次予防(保健),発症後の増悪化防止を目的とした二次予防(医療),さらに発症後に起こる各種身体障害を予防する三次 予防(介護)があり,食生活の改善や食事療法が重要な役割を果たす.

 また,欧米では1970 年代,Hospital Malnutrition が大きな注目を浴びた.病院の入院患者や福祉施設の入所者の約半数が栄養失調状態にあり,このような状態を放置しておくと,手術や薬物療法の治療効果の低下,入院・入所日数の増加,QOL の低下を招来する.この結果,医療費や介護費が増大し, 栄養状態の改善が重要であることが明らかにされてきた.

 傷病者への栄養問題は,疾病の予防や治療としての食事療法と同時に,適正な栄養状態を維持,改善することが重要であり,その実施には,より複雑で高度な知識と技術が必要とされる.傷病者の病態と栄養状態を総合的に評価,判定し,もっとも重要な改善目標を設定し,食事療法と各種栄養補給法を総合的に検討することが必要となったからである.使用する食品も,日常の食品のみではなく病者用特別用途食品,保健機能食品(特別保健機能食品,栄養機能食品)などがあり,カテーテルを用いた経腸栄養や経静脈栄養にも各種経腸栄養食品,栄養剤がある.

 以上のことから,適正な栄養管理を行うために栄養ケア・マネジメントの概念と方法が導入され,2003(平成15)年,厚生労働省は,管理栄養士養成のために新たなカリキュラムと管理栄養士国家試験のガイドラインを示した.「臨床栄養学」では,傷病者の病態や栄養状態に基づいた総合的な栄養管理 を理解し,栄養状態の評価・判定,栄養補給,栄養教育,食品と医薬品の相互作用について修得し,医療・介護制度や医療チームにおける栄養管理や管理栄養士の役割を理解することが求められている.

 本書は,このような新しい管理栄養士養成教育にふさわしい教科書として編集したので,多くの教育機関で教科書や参考書として活用されることを希望するとともに,読者諸兄姉の忌憚のないご批判,ご叱正をいただき,よりよい教科書となっていくことを願っている.

 最後に,原稿をいただきながら,長時間を要したにもかかわらず,また多くの制約の中でご執筆いただいた執筆者諸先生方に深甚な謝意を表する次第である.

2008 年5 月
編集者を代表して
中村丁次

9784524204199