健康・栄養科学シリーズ
食べ物と健康 食品の安全改訂第3版

監修 | : 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 |
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編集 | : 有薗幸司/林一也 |
ISBN | : 978-4-524-20418-2 |
発行年月 | : 2025年3月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 316 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

食べ物を扱う上で正確な理解と対応が求められる食品衛生についてわかりやすく解説したテキスト.豊富な図表,写真を交えた解説で内容をイメージしながら理解できる点が特長.今版では,学習しやすいようにオールカラー化し,2023年改正の国家試験出題基準や関連の法改正に対応した.
第1章 食品の安全とは
A 食品の安全とは
B ゆらぐ食の安全とリスクコミュニケーション
C リスク回避のための食のリテラシー向上
D 地産地消と食の安全
第2章 食品衛生と法規
A 食品の安全性確保とリスクアナリシス
1 リスクアセスメント
2 リスクマネジメント
3 リスクコミュニケーション
B 食品安全基本法と食品衛生法
1 食品安全基本法
2 食品衛生法
C 食品衛生関連法規
1 生産段階における安全確保を図るための法律
2 食肉の安全確保を図るための法律
3 水の安全確保を図るための法律
4 食品衛生に関わる資格制度を定めた法律
D 食品衛生行政組織
1 食品安全委員会
2 厚生労働省
3 農林水産省
4 消費者庁
5 地方自治体
E 食品表示法
1 食品表示基準
F 食品の国際規格
1 コーデックス規格
2 ISO規格
● 練習問題
第3章 食品の変質
A 微生物
1 分類と命名法
2 真菌類
3 細菌類
4 ウイルス
B 食品の腐敗
1 食品における微生物の増殖
2 腐敗
3 微生物による食品の腐敗
4 主な腐敗微生物
C 油脂の酸敗
1 油脂の酸化
2 油脂の酸化の原因
3 油脂の酸化の判定
4 トランス型不飽和脂肪酸
D 食品の変質の防止法
1 冷蔵・冷凍法
2 乾燥法(脱水法)
3 塩蔵・砂糖漬
4 燻煙法
5 加熱法
6 紫外線
7 放射線
8 食品添加物
9 真空包装
E 鮮度・腐敗・酸敗の判定法
1 生菌数の測定
2 揮発性塩基窒素量の測定
3 K値
4 トリメチルアミン量
5 水素イオン濃度(pH)
● 練習問題
第4章 食中毒
A 食中毒とは
1 食中毒の定義
2 食中毒の病因物質
3 食中毒統計調査
4 食中毒の届出
B 食中毒の発生状況
1 食中毒統計作成
2 年次別発生状況
3 食中毒病因物質
4 月別発生状況
5 原因食品
6 原因施設
C 細菌性食中毒
1 サルモネラ属菌
2 腸炎ビブリオ
3 病原大腸菌
4 カンピロバクター
5 ナグビブリオ
6 エルシニア・エンテロコリチカ
7 ブドウ球菌
8 ボツリヌス菌
9 ウェルシュ菌
10 セレウス菌
11 プロビデンシア・アルカリファシエンス
12 その他の菌
D ウイルス性食中毒
1 ノロウイルス
2 肝炎ウイルス
3 ロタウイルス
4 サポウイルス
E 寄生虫による食中毒
1 アニサキス
2 クドア・セプテンプンクタータ
3 その他の寄生虫
F 自然毒食中毒
1 動物性自然毒
2 植物性自然毒
G 化学性食中毒
1 ヒスタミン(アレルギー様食中毒)
2 メチルアルコール(メタノール)
F 食物アレルギー
1 食物の摂取によるアレルギーとは
2 アレルギー物質を含む食品
● 練習問題
第5章 食品による感染症・寄生虫症
A 経口感染症
1 コレラ
2 細菌性赤痢
3 腸チフスならびにパラチフス
4 ロタウイルス感染症
5 サポウイルス感染症
6 腸管アデノウイルス感染症
7 急性灰白髄炎(ポリオ)
B 人畜共通感染症
1 ブルセラ症
2 炭疽
3 結核
4 リステリア症
5 仮性結核
6 野兎病
7 レプトスピラ症
8 プリオン病
C 食品から感染する寄生虫症
【原虫症】
1 アメーバ赤痢
2 ジアルジア症
3 クリプトスポリジウム症
4 サイクロスポーラ症
5 トキソプラズマ症
【蠕虫症:線虫によるもの】
1 回虫症
2 鉤虫症
3 顎口虫症
4 旋毛虫症(トリヒナ症)
【蠕虫症:吸虫によるもの】
1 肝吸虫症
2 横川吸虫症
3 肺吸虫症
4 肝蛭症
【蠕虫症:条虫によるもの】
1 裂頭条虫症
2 無鉤条虫症
3 有鉤条虫症(有鉤囊虫症)
● 練習問題
第6章 食品中の汚染物質
A カビ毒(マイコトキシン)
1 アフラトキシン
2 フザリウム系カビ毒
3 パツリン
4 オクラトキシンA
5 ステリグマトシスチン
6 黄変米毒
B 化学物質
1 化学物質の審査及び製造等に関する法律
2 POPs
3 農薬
4 動物用医薬品
5 ダイオキシン類
6 ポリ塩化ビフェニル(PCB)
7 内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)
C 有害元素・放射性物質
【有害元素】
1 カドミウム(Cd)
2 水銀(Hg)
3 鉛(Pb)
4 ヒ素(As)
5 スズ(Sn)
【放射性物質】
1 放射性物質とは
2 放射性物質による汚染
3 わが国における食品中の放射性物質の規制と現状
D 食品成分の変化により生ずる有害物質
1 ヒスタミン
2 N-ニトロソ化合物
3 過酸化脂質
4 ベンゾ[a]ピレン
5 ヘテロサイクリックアミン
6 アクリルアミド
7 トランス脂肪酸
E 混入異物
1 異物の定義と種類
2 異物混入と衛生
3 異物混入の原因とその防止
● 練習問題
第7章 食品添加物
A 食品添加物のメリットとデメリット
1 食品添加物のメリット
2 食品添加物のデメリット
B 安全性評価
1 毒性試験
2 最大無毒性量
3 一日摂取許容量
4 使用基準
C 食品衛生法による分類と表示
1 食品添加物の指定制度
2 食品添加物の規格および基準
3 食品添加物の表示
D 主な食品添加物の種類と用途
1 保存料
2 防カビ剤
3 殺菌料
4 酸化防止剤
5 着色料
6 発色剤
7 漂白剤
8 甘味料
9 調味料
10 香料
11 栄養強化剤
12 その他の食品添加物
● 練習問題
第8章 食品衛生管理
A HACCPに沿った衛生管理
1 食品安全の確保
2 HACCPとは
3 危害要因とは
4 HACCPに沿った衛生管理の制度化
5 HACCPによる衛生管理の基本構造
6 HACCP 7原則と12手順
B HACCPに基づく衛生管理の例
1 一般的な衛生管理に関する基準
2 HACCPに基づく衛生管理の構築
C ISO22000
1 ISOとは
2 ISO22000とは
D 家庭における衛生管理
1 清潔に保つ
2 生の食品と加熱済み食品とを分ける
3 よく加熱する
4 安全な温度に保つ
5 安全な水と原材料を使う
E 洗剤
1 界面活性剤
2 台所用洗剤
3 殺菌・消毒剤
F 衛生動物
1 衛生動物の影響
2 衛生動物の種類と特徴
● 練習問題
第9章 食品用器具および容器包装
A 器具・容器包装と法規制
B 材質の判別
C 器具・容器包装による食品汚染
1 缶詰におけるスズの溶出
2 ポリカーボネート食器や缶詰からのビスフェノールAの溶出
3 ポリ塩化ビニル製器具・容器包装および玩具からのフタル酸エステルの溶出
4 ポリ塩化ビニル製ラップフィルムからの溶出物
D 器具・容器包装に由来する環境問題とその対応
1 残留性有機汚染物質の低減化
2 材質や原材料の変化
3 器具・容器包装の再利用の推進
● 練習問題
第10章 食品の安全性問題
A 輸入食品
1 輸入食品の現状
2 監視体制
B 残留農薬のポジティブリスト制度
1 残留農薬に関するポジティブリスト制度の概要
2 農薬の残留基準策定の考え方
3 残留農薬の監視・指導
C 無(減)農薬栽培食品
1 有機JAS規格
2 特別栽培農産物
3 減農薬栽培食品および無農薬栽培食品の表示禁止
D 遺伝子組換え食品
1 遺伝子組換え食品とは
2 わが国における遺伝子組換え食品の安全性評価
3 遺伝子組換え食品の表示行政と制度
4 遺伝子組換え食品の義務表示
5 ゲノム編集食品
E 放射線照射食品
1 放射線照射食品とは
2 世界における放射線照射対象食品
3 わが国における放射線照射対象食品
4 放射線照射食品の検知法
5 最近の放射線照射の違反事例
● 練習問題
付録
参考図書
練習問題解答
索引
健康・栄養科学シリーズ〞監修のことば
国民栄養に関する指導の統一と徹底を図ることを目的とし,栄養士の身分とその業務が国家的に定められたのは,1945(昭和20)年の栄養士規則と私立栄養士養成所指定規則公布に遡る.当時の養成施設は14校であり,卒業生は全員栄養士として認められた.その後1947(昭和22)年の栄養士法公布を経て,管理栄養士制度が1962(昭和37)年に設けられた.そして,2000(平成12)年4月の栄養士法改正で,管理栄養士は医療専門職の国家資格として定められた.管理栄養士とは,厚生労働大臣の免許を受けて,傷病者に対する療養のために必要な栄養指導,個人の身体の状況,栄養状態等に応じた健康の保持増進のための栄養指導,並びに特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況,栄養状態,利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理,及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等を行うことを業とする者と定義されている.栄養士制度の開始当初と異なり,国民の健康課題も食糧不足による低栄養から,2型糖尿病や脂質異常症をはじめとした生活習慣病へと移行した.また少子高齢社会による様々な社会的課題が生じており,管理栄養士に求められる知識や技術の高度化が必須である.
本“健康・栄養科学シリーズ”は,このような背景に沿い,国立健康・栄養研究所の監修として,元理事長 田中平三先生のもとに立ち上げられた.そして国家試験出題基準準拠の教科書として,管理栄養士養成教育に大きな役割を果たし,好評と信頼に応え改訂を重ねてきた.
管理栄養士国家試験出題基準は2023(令和5)年1月,学術の進歩やこの間の法制度の改正と導入に対応し,「管理栄養士としての第一歩を踏み出し,その職務を果たすのに必要な基本的知識及び技能」を問うものとして内容を精査した改定がなされた.そこで本シリーズもこれまでの改訂に重ねて改定国家試験出題基準準拠を継続するかたちで順次改訂しているところである.各科目の重要事項を押さえた教科書,国家試験受験対策書,さらに免許取得後の座右の書として最良の図書であると確信し,推奨する.尚,本シリーズの特徴である,@出題基準の大項目,中項目,小項目のすべてを網羅する,A最適の編集者と執筆者を厳選する,B出題基準項目のうち重要事項は充実させる,C最新情報に即応する,という従来の編集方針は,引き続き踏襲した.
管理栄養士を目指す皆さんが,本シリーズを活用して管理栄養士国家資格を取得し,実践現場における様々な栄養ニーズに応えるべく研鑽を積み,保健・医療専門職としての知識を生かし,国民のQOL(生活の質,人生の質)の保持増進に貢献することを祈念する.
2024年2月
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
理事 瀧本 秀美
改訂第3版の序
管理栄養士国家試験出題基準に準拠した教科書として,本書『健康・栄養科学シリーズ 食べ物と健康 食品の安全』の改訂第2版が2018年12月に刊行され6年が経過した.また,管理栄養士国家試験出題基準も2023年2月に改定された.今改訂では新しい管理栄養士国家試験出題基準に準拠し,読者の声を参考にわかりやすい解説,見やすい構成を心がけた.併せて,コロナ禍で多岐にわたり改正された食品衛生法,健康増進法,JAS法,食品表示法等の食品衛生関連法規・制度・統計資料も最新データに更新した.一方で,最近のインターネットの充実に鑑み,必要に応じて情報源としてWebサイトのURLも記載した.さらに,世界保健機関(WHO),国連食糧農業機関(FAO),コーデックス委員会(CAC),国際標準化機構(ISO)等の国際機関との関連についても解説を追加した.
執筆者として気鋭の研究者にも追加参加していただき,できるだけ最新のデータ,情報を活用した解説をお願いした.ご協力いただいた各執筆者に深謝する.
本書がこれまで同様に管理栄養士を目指す学生の教材のみならず,食の安心・安全の最前線で実務活動されている管理栄養士・栄養士の事典・座右の書としても活用していただければ幸いである.
2025年1月
編集者を代表して
有薗 幸司
初版の序
食生活が豊かになる一方,食生活を取り巻く環境は近年大きく変化し,いくつかの食の安全を覆す事故や事件が起きたこともあり,食環境の科学的な研究成果とその内容を正しく理解したいといった,食に対する市民の関心が高まっている.こうした情勢の変化に的確に対応するため,食品安全基本法が制定され,新たな食品安全行政を担う食品安全委員会が2003年7月に内閣府に設置された.このような体制の整備により,食を取り巻く危害要因が人の健康に与える影響,食の安全とそのリスクの関係について科学的知見に基づいて評価することができ,その情報をもとに市民とリスクコミュニケーションする仕組みもできあがり,パブリックコメントも実施されている.一方で,食品安全委員会の調査によると,2003年から2008年の5年間で一般市民と行政や専門家の間で食の安全についての認識のギャップを感じる人が増えたという.ここに氾濫する食の安全の情報に飲み込まれ,食の安心を確信できない市民が増えている現実がある.この食の安全と安心の間の大きなギャップが埋められるか.この課題において,食品衛生を研鑽し,食の安全と食育推進も担う管理栄養士の役割は重要である.
2006年に刊行された『食べ物と健康V—食品の安全性』の意思を受け継ぎ,2010年12月に改定された管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)に準拠し,この度改訂新版として本書『食べ物と健康食品の安全』を刊行することになった.「食べ物と健康」の出題基準には,「食品素材の成り立ちを理解し,食品の生産から加工,流通,貯蔵,調理を経て人に摂取されるまでの過程における安全性の確保,栄養や嗜好性の変化についての理解を問う」ことが明記されている.本書においても,出題基準の大項目である「食品の安全性」に従って,中項目として「A.食品衛生と法規」,「B.食品の変質」,「C.食中毒」,「D.食品による感染症・寄生虫症」,「E.食品中の汚染物質」,「F.食品添加物」,「G.食品衛生管理」,さらにそれぞれの小項目を網羅し,これらの意義を正確かつ十分に理解できるように編纂を心掛けた.改訂新版を機に,気鋭の研究者に新らたに書き下ろし執筆をお願いしたため,関連類書に比べて,多様化する微生物由来(寄生虫性)食中毒や食品の放射線汚染等,食の安全をめぐる最新の情報が多数提供されている.これらは「コラム」や本文のサイドに「補足解説」として配置し,学習者が各項目の内容の理解をより深められるよう工夫した.
食の安全問題においては,市民にゼロリスクが存在しないということを認識させ,リスクトレードオフの概念も合わせて理解を進めていかなければならない.これらの背景を認識し,食の安全情報を適正に市民へコミュニケートしうるだけでなく,市民への食の安心感も増大させうる資質を持つ人材の育成が喫緊の課題となっている.本書がそのような食の安全・安心とそのリスク評価・管理,食育推進の担い手となりうる管理栄養士の育成の教材となれば幸いである.
最後に,編者の意を理解いただき,ご多忙にもかかわらず限られた時間でありながら多くのリクエストに対応してご執筆頂いた先生方,本書の発刊までご支援,ご尽力頂きました南江堂の諸氏に感謝の意を表したい.
2013年2月
編者
