放射線安全管理学[電子版付]
監修 | : 高橋康幸 |
---|---|
編集 | : 杉野雅人/細田正洋 |
ISBN | : 978-4-524-20394-9 |
発行年月 | : 2023年11月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 276 |
在庫
定価5,720円(本体5,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
診療放射線技師に欠かすことのできない放射線管理の知識や技術,事故の予防・対策はもちろん事故が発生してしまった際の対応について解説する教科書.一般的な放射線安全管理の知識に加え,臨床現場での実例を取扱うことで,学生が現場をイメージしながら学ぶことができるように工夫した.巻末付録として第1種放射線取扱主任者試験問題と解説を掲載し,読者の知識の定着を確認することができる.
1放射線防護の基礎と基盤
A 放射線防護が目指すもの
1私たちと放射線との関係の理解
2放射線防護の目的と進化のプロセス
B 放射線防護の体系
1体系の整理と理解
2放射線防護の3原則
C 放射線防護の履行と実践に関係する国内外の機関・組織
1国際的な機関・組織
2国内の機関・組織
2放射線防護に用いられる量と単位
A 「放射線の量」と「放射線量」
B 物理量・防護量・実用量
1物理量
C 放射線防護に関係する線量
1防護量
2実用量
3放射線源からの被ばく
A 被ばくの形態
1外部被ばく
2内部被ばく
3全身被ばくと局所被ばく
4均等被ばくと不均等被ばく
5職業被ばく
6医療被ばく
7公衆被ばく
B 自然放射線源からの被ばくの実態
1宇宙線
2大地放射線
3ラドン
4食品による内部被ばく
C 人工放射線源からの被ばくの実態
1医療放射線
2原子力発電所
3核実験フォールアウト
4放射線の被ばく影響とリスク
A 放射線被ばくの分類
1細胞生物学の概要
2組織反応と確率的影響
3早期障害と後期障害
B 放射線被ばくによる組織反応
1個体レベルにおける組織反応としきい線量
2胚・胎生期における影響
3個体死
4組織反応・個体影響を修飾する因子
C 放射線被ばくによる確率的影響
1発がんの概要
2白血病と固形がん
3遺伝性影響
D 放射線被ばくに伴う健康へのリスク
1放射線のリスクとその指標
2放射線被ばくに伴うがんリスクの推定
3放射線のがんリスクを修飾する因子
4遺伝性影響のリスク
5放射線源の安全取り扱い
A 種々の放射線源
1放射性同位元素線源
2放射線発生装置
B 各種線源の安全取り扱い
1放射線の安全取り扱いの基本
2密封放射線源の安全取り扱い
3非密封放射線源の安全取り扱い
4医療施設における診療用放射線に係る
安全取り扱い
C 放射線の遮へいと遮へい用具
1重荷電粒子線の遮へい
2電子線の遮へい
3光子(電磁放射線)の遮へい
4中性子線の遮へい
D 施設の遮へい計算
E 放射性同位元素の運搬
1事業所内運搬
2事業所外運搬
6環境の管理
A 管理区域の設定
1放射線施設の設置計画
2管理区域の基準
3管理区域の構成と構造
B 空間線量率の測定
1測定場所の選定
2測定頻度
3測定・評価方法
4測定器の選択
5記録と保存
6測定器の点検・校正とトレーサビリティ
C 表面密度の測定
1表面汚染の形態
2直接測定法と間接測定法
3測定器の選択
4サーベイメータの走査方法と測定
5ハンド・フット・クロスモニタ(HFC)
6除染の効果
7除去できない汚染の対策
8評価と記録
D 空気中放射性同位元素の測定
1管理区域内の空気の管理
2作業場所の空気中RI濃度の測定と評価
3排気中RI濃度の測定と評価
E 水中放射性同位元素の測定
1排水中放射能測定
2排水中放射能濃度の検出限界
3排水施設
4排水濃度の管理
5評価と記録
7個人の管理
A 個人被ばく線量管理の目的
1個人被ばく線量管理とは
2個人被ばく管理に用いられる実用量
3外部被ばく線量測定のための個人線量計の種類
4個人線量計の装着位置と測定に用いる実用量
5個人の外部被ばく線量の算定
6個人線量の記録および保存
7緊急作業時の個人線量管理
B 内部被ばくの管理
1体内摂取量の算定方法
2内部被ばく線量算定方法
3個人用防護具
C 健康診断
1健康診断の目的
2放射線業務従事者の健康診断項目
3健康診断の記録の保存
8放射性廃棄物の処理
A 放射性廃棄物の分類(気体,液体,固体)
1気体廃棄物
2液体廃棄物
3固体廃棄物
B 放射性廃棄物の処理(気体,液体,固体)
1気体廃棄物の処理
2液体廃棄物の処理
3固体廃棄物の処理
C 放射化物の安全取り扱い
9放射線事故
A 放射線事故/原子力災害
1放射線事故/原子力災害の定義
2海外での放射線事故事例
3国内での放射線事故事例
B 放射線事故/原子力災害時の対応
1小規模事例
2大規模事例(被ばく・汚染への対応)
3放射線リスクコミュニケーション
4福島第一原子力発電所事故における規制の例(食品中の放射性物質に対する対応)
C 被ばく医療
1被ばく医療とは
2日本の被ばく医療体制に関する歴史の変遷
3現行の被ばく医療体制
4原子力災害時の放射線防護に係る基準
10関係法規
A 診療放射線技師法
1目的
2業務
3業務上の制限
B 医療法
1目的
2届出
3管理者の義務
C 放射性同位元素等の規制に関する法律(RI等規制法)
1目的
2定義
3管理区域
4許可届出使用者
D 電離放射線障害防止規則
1基本原則
2定義
3管理
11医療施設における放射線取扱主任者の役割
A 個人の管理
B 管理区域および場所の測定
C 放射性廃棄物などの処理
D 線源の管理
E 放射線機器
F その他
12診療用放射線における放射線安全管理の実際
A 診断参考レベル
1診断参考レベル(DRL)の制定経緯
2DRLs 2020の問題点
3DRL運用上の注意点
B 各種モダリティにおける放射線防護
1一般X線撮影・ポータブル撮影・歯科用検査
2X線透視,血管撮影
3X線CT
4核医学検査
5放射線治療
6核医学治療
付録 第1種放射線取扱主任者試験問題・解説
参考文献
索 引
国際放射線防護委員会(ICRP)では,人の被ばく状況について,計画的に管理できる平常時(@計画被ばく状況),事故や核テロなどの非常事態(A緊急時被ばく状況),事故後の回復や復旧の時期など(B現存被ばく状況)の3つの状況に分類し線量や防護の基準を定めている.まず@計画被ばく状況では,身体的障害を起こす可能性のある被ばくがないように放射線や放射性物質を扱う場所を管理し,将来のがんのリスクの増加もできるだけ低く抑えるため一般公衆の線量限度を年間1 mSv以下に定めている.次にA緊急時被ばく状況では,計画被ばく状況で起こりえない身体的障害の可能性があり,重大な身体的障害を防ぐ対策を優先し,一般公衆の線量限度は適用せず年間20〜100 mSvの参考レベルを設けている.なお,この状況においては,テロ行為が起こることを防止するために「放射線源の安全とセキュリティに関する行動規範」や「放射線源の輸出入規制ガイダンス」などや,テロ行為があった時に避難や復旧活動を行う対策として「放射線攻撃事態における放射線被ばくからの公衆の防護」など文書が公表されている点は注目すべきである.話を戻しB現存被ばく状況では,緊急時被ばく状況の参考レベルより低く計画被ばく状況の線量限度より高い年間1〜20 mSvが設定されている.
これらの背景から近年,放射線安全管理に関し,医療法,放射性同位元素等の規制に関する法律や電離放射線障害防止規則など多くの法規が改正されており,その基盤を学習する診療放射線技師は,養成所指定規則にて放射線安全管理学を専門分野の1つとして位置づけている.その教育目標は法改正に伴い以前の「放射線などの安全な取扱いとその関係法規及び保健医療領域における安全管理の知識や技術を学習し,問題解決能力を養う」から「放射線防護の基本理念を理解し,放射線計測及び放射線管理の知識・技術を身につける.事故の対策,発生時の対応等,問題解決能力を養う.放射線の安全管理に関わる関係法規について学習する」として大幅に拡大されている.
本書は,放射線安全管理について,関係法規や放射線防護のあり方などを,国際組織による報告書などをふまえ,医療のみならず放射線取扱主任者に関する事項も網羅し,放射線管理の幅広い知識を身につけられるよう配慮した.ぜひ各放射線管理部門で活用いただきたい.
2023年10月
高橋康幸
動画
ご案内