書籍

小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024

編・著 : 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会
ISBN : 978-4-524-20389-5
発行年月 : 2024年5月
判型 : B5判
ページ数 : 260

在庫あり

定価4,180円(本体3,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本糖尿病学会と日本小児内分泌学会による小児・思春期糖尿病に関するガイドラインの改訂版.今版では国際小児思春期糖尿病学会(ISPAD)のガイドラインや『糖尿病診療ガイドライン』との整合性を図りつつ,小児・思春期糖尿病の診断・治療,患児・家族支援や移植・再生医療,ケアについてCQ・Q形式で明確な指針をまとめた.小児科医,一般内科医および糖尿病に携わるメディカルスタッフに必携の一冊.

T.総論
1.定義と分類
  Q1:小児・思春期糖尿病の定義は何か?
  Q2:小児・思春期糖尿病はどのように分類されるか?
2.診断基準
  Q3:高血糖をどのように判定するか?
  Q4:糖尿病の診断をどのように行うか?
  Q5:小児に特有の糖尿病診断基準や1型糖尿病の病型別診断基準があるか?
3.疫学
  Q6:小児・思春期1型糖尿病のわが国の発症率は?
  Q7:小児・思春期1型糖尿病のわが国の発症率は上昇しているか?
  Q8:小児・思春期1型糖尿病の罹病期間と死因の関係は?
  Q9:小児・思春期2型糖尿病のわが国の発症率は上昇しているか?
  Q10:小児・思春期2型糖尿病のわが国における発症のリスク因子は?
4.検査法
  Q11:小児・思春期糖尿病の検査法にはどのようなものがあるか?
5.コントロール目標
  Q12:小児・思春期の血糖コントロールの目標はどのように設定すべきか?
  Q13:小児・思春期の血糖モニタリングはどのように行うか?
  Q14:小児・思春期の脂質・血圧のコントロールの目標はどのように設定すべきか?
6.合併症
  Q15:小児・思春期の合併症はどのように評価するか?(眼底検査,尿中アルブミンなど)
  Q16:小児・思春期の良好な血糖コントロールは将来の合併症の発症・進行を抑制するか?
  Q17:小児・思春期の血糖コントロール不良は成長障害を起こすか?
  Q18:小児・思春期の低血糖は認知機能や学習障害など精神疾患に関連するか?
7.学校検尿による尿糖スクリーニング
  Q19:学校検尿による尿糖スクリーニングはどのように行うか?
  Q20:学校検尿による尿糖スクリーニングの問題点,展望はどのようなものか?
8.小児の肥満症
  Q21:小児の肥満症をどのように診断するか?
 
U.1型糖尿病
1.病因と病態
  Q22:小児・思春期1型糖尿病の病型にはどのようなものがあるか?
  Q23:小児・思春期1型糖尿病の病因は何か?
2.治療のプランニング
  Q24:小児・思春期1型糖尿病をどのように治療するか?
3.糖尿病性ケトアシドーシス
  Q25:小児・思春期1型糖尿病の糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)の診断と治療はどのように行うか?
  Q26:小児・思春期1型糖尿病のDKAを治療・管理するうえで,留意すべき点は何か?
4.インスリン療法
  Q27:小児・思春期1型糖尿病のインスリン療法にはどのようなものがあるか?
  CQ28:小児・思春期1型糖尿病に強化療法(基礎追加インスリン療法)は必要か?
5.持続皮下インスリン注入療法
  CQ29:小児・思春期1型糖尿病での持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion:CSII)はインスリン頻回注射法(multiple daily injection:MDI)に比べて有効か?
  Q30:小児・思春期1型糖尿病で,SAP(sensor-augmented pump)療法やHCL(hybrid closed loop)療法は有効か?
6.血糖モニタリング
  Q31:小児・思春期1型糖尿病において血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose:SMBG)は血糖コントロールに有効か?
  Q32:小児・思春期1型糖尿病において持続血糖モニター(continuous glucose monitoring:CGM)は血糖コントロールに有効か?
7.食事療法
  Q33:小児・思春期1型糖尿病の食事療法はどのようなものか?
  CQ34:小児・思春期1型糖尿病にカーボカウントは有効か?
8.低血糖
  Q35:小児・思春期1型糖尿病における低血糖の症状にはどのようなものがあるか?
  Q36:小児・思春期1型糖尿病における低血糖の合併症にはどのようなものがあるか?
  Q37:小児・思春期1型糖尿病の低血糖の治療にはどのようなものがあるか?
9.シックデイ・外科手術への注意
  Q38:小児・思春期1型糖尿病におけるシックデイにはどう対応するか?
  Q39:小児・思春期1型糖尿病における外科手術にはどう対応するか?

V.2型糖尿病
1.病因と病態
  Q40:小児・思春期2型糖尿病の病態にはどのようなものがあるか?
  Q41:小児・思春期2型糖尿病の病因は何か?
2.治療のプランニング
  Q42:小児・思春期2型糖尿病をどのように治療するか?
3.食事療法
  Q43:小児・思春期2型糖尿病の管理に食事療法は有効か?
  Q44:小児・思春期2型糖尿病の管理において管理栄養士の指導は有効か?
4.運動療法
  Q45:小児・思春期2型糖尿病の運動療法にはどのようなものがあるか?
5.薬物療法
  Q46:小児・思春期2型糖尿病に使用できる血糖降下薬にはどのようなものがあるか?
  CQ47:小児・思春期2型糖尿病に血糖降下薬は有効か?
  Q48:小児・思春期2型糖尿病にインスリン治療は有効か?
6.シックデイ・外科手術への注意
  Q49:小児・思春期2型糖尿病におけるシックデイにはどう対応するか?
  Q50:小児・思春期2型糖尿病における外科手術にはどう対応するか?
W.その他の糖尿病
1.病因と病態
 1)単一遺伝子異常による糖尿病
  CQ51:単一遺伝子異常による糖尿病の診療に遺伝子診断は有効か?
  Q52:単一遺伝子異常による糖尿病(新生児糖尿病,MODY,その他の単一遺伝子異常による糖尿病)にはどのようなものがあるか?
  Q53:単一遺伝子異常による糖尿病(新生児糖尿病,MODY,その他の単一遺伝子異常による糖尿病)の治療にはどのようなものがあるか?
 2)その他の糖尿病
  Q54:その他特定の機序,疾患による小児・思春期の糖尿病と糖代謝異常をどのように診断するか?
X.患児・家族の支援
1.生活指導
 1)社会・日常生活
  Q55:小児・思春期糖尿病の幼少期における生活管理はどのように行うか?
  Q56:小児・思春期糖尿病の学童期における生活管理はどのように行うか?
  Q57:小児・思春期糖尿病の思春期以降における生活管理はどのように行うか?
 2)災害時・緊急時の対策
  Q58:小児・思春期糖尿病における災害時・緊急時の対策としてどのような支援が必要か?
2.心理的支援
  Q59:小児・思春期糖尿病において心理的支援は有効か?
3.患児・家族への支援
  Q60:小児・思春期糖尿病において患児・家族への支援をどのように行うか?
4.就職,結婚,妊娠,出産
  Q61:糖尿病患者の就職は問題がないか?
  Q62:妊娠前の糖尿病管理をどのように行うか?
  Q63:妊娠中の糖尿病管理をどのように行うか?
  Q64:分娩前後の糖尿病管理をどのように行うか?
5.糖尿病キャンプ
  Q65:糖尿病サマーキャンプはどのような効果があるか?
6.移行期医療
  Q66:糖尿病医療における移行期医療の基本的な考え方や課題は何か?
7.知的障害および発達障害を伴う糖尿病の管理
  Q67:知的障害および発達障害を伴う小児・思春期糖尿病のチーム医療はどうあるべきか?
  Q68:知的障害を伴う小児・思春期糖尿病はどのように管理すべきか?
  Q69:発達障害を伴う小児・思春期糖尿病はどのように管理すべきか?

Y.移植再生医療
1.移植
 1)膵臓移植
 2)膵島移植
2.再生医療
 1)膵β細胞再生研究の現状と展望
 2)細胞療法の観点から
Z.ケアのシステム化
1.チーム医療,病診連携
 1)チーム医療
 2)病診連携
2.医療制度
3.諸団体

付録
A.日本人の食事摂取基準(2020年版)
B.成長曲線と肥満度
C.主な食品・食材に含まれる炭水化物量一覧
D.全国の患者会連絡先一覧
E.小児科領域の糖尿病専門医について
F.1型糖尿病の発症予防

日本糖尿病学会 序文

 小児・思春期に糖尿病を発症して病気とともに生きる人たちは,長い期間にわたってライフステージ毎に異なる治療の目標や方法の設定が必要です.ことに小児・思春期の糖尿病治療においては,合併症の抑制のみならず,健全な心と体の発達を支援することも大切で,この時期の糖尿病のケアには特別な知識と技術に裏づけられた全人的対応が欠かせません.このような観点から,日本糖尿病学会と日本小児内分泌学会は2001年から『小児・思春期糖尿病管理の手びき』を3版にわたり出版し,2015年には糖尿病を持つ人たちの自立を支援するという立場をより明確にして『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン』として新たに刊行してきました.
 以降,現在までの間に糖尿病の病態や発症機構に関する新たな知見の集積,臨床研究によるエビデンスの蓄積,インスリン製剤や他の注射製剤・経口薬など様々な治療薬の開発と普及,持続血糖モニター(CGM)やインスリン自動投与制御システム(AID)などの先進機器による血糖コントロールの革新など,多くの進展がありました.そこで,今回両学会の合同委員会の先生方により多くの改訂をほどこした『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024』が刊行されることは,糖尿病とともに生きる方々とそのご家族,またそのケアにあたる医療従事者にとって大きな福音になるものと思います.今回の改訂においては,長谷川奉延理事長をはじめとする日本小児内分泌学会の先生方,また日本糖尿病学会の先生方に心より御礼申し上げます.
 このコンセンサス・ガイドラインが広く活用され,小児・思春期の糖尿病を持つ方々の糖尿病のマネジメントと健やかな成長に貢献することを願っております.

2024年4月
一般社団法人 日本糖尿病学会
理事長 植木 浩二郎


日本小児内分泌学会 序文

 このたび『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024』が刊行されました.「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン」を2015年に刊行して9年経ち,新しいエビデンスも蓄積され,小児・思春期糖尿病を持つ人たちの自立を支援する立場を堅持しつつ改訂されました.
 改めていうまでもないことですが,小児・思春期糖尿病を持つ人たちは生涯にわたって長期の療養生活を送ります.保育園・幼稚園,学校,進学あるいは受験,就職,結婚,妊娠・出産,子育て,さらに壮年期,老年期といったライフステージに応じた,かつその国独自の文化や社会環境も念頭に入れた支援が望まれます.そこで,日本糖尿病学会 小児糖尿病委員会と日本小児内分泌学会 糖代謝委員会が合同でコンセンサス・ガイドラインを作成しました.
 「ISPAD(International Society for Pediatric and Adolescent Diabetes:国際小児思春期糖尿病学会)Clinical Practice Consensus Guidelines 2018」,「ISPAD Clinical Practice Consensus Guidelines 2022」に準拠し,日本糖尿病学会編・著「糖尿病診療ガイドライン」も参考にし,わが国の小児・思春期糖尿病により即しています.
 『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024』の内容は包括的です.すなわち,単なる診療ガイドラインにはとどまりません.総論(定義と分類,診断基準,疫学など),1型糖尿病,2型糖尿病,その他の糖尿病,患児・家族の支援,移植再生医療,ケアのシステム化,という項目立てです.ガイドラインの策定においてはEvidence‑Based Medicineの手法を取り入れ,推奨グレードを問うCQ,および推奨グレードを付さないQ形式を各項目の冒頭に示し,偏りが入らないように工夫されています.
 本書は小児・思春期糖尿病の診療やケアにかかわる医師,看護師,心理療法士,薬剤師,臨床検査技師などのメディカルスタッフの日常診療に必ず役立つと確信しています.いわゆる教科書として総論から読み進める,はじめから知りたいCQあるいはQのページを開いて最新の知識やケアを整理する,診療チーム全員で輪読するなどなど,それぞれのご希望,お立場に合わせてご活用いただけると思います.また広く学校や社会への啓発にもご利用いただき,小児・思春期糖尿病を持つ人たちのスティグマの軽減,解消に役立てていただくことも期待しております.
 最後になりますが,ご多忙のなか改訂にご尽力いただいた植木浩二郎理事長をはじめとする日本糖尿病学会の先生方,ならびに日本小児内分泌学会の先生方に,日本小児内分泌学会を代表し,感謝いたします.ありがとうございました.

2024年4月
一般社団法人 日本小児内分泌学会
理事長 長谷川 奉延

小児・思春期糖尿病における科学的根拠に基づく最新の知識を網羅
 近年の糖尿病学の進歩は目覚ましく,小児・思春期糖尿病においても,国内外のエビデンスが積み重ねられている.前版刊行後9年を経て,時宜を得て刊行された本書は,小児から成人領域での糖尿病学のエキスパートが総力をあげて最新の知識を集大成した賜物と感銘を受けた.
 小児・思春期糖尿病をもつ方々は,生涯にわたって療養生活を送る.保育園・幼稚園,学校,進学・受験,就職,結婚,妊娠・出産,子育て,さらには壮年期,老年期といったライフステージに応じた自身の理解・自立と社会からの広い支援を必要とする.そのような背景を考慮した本書の構成は「総論」「1型糖尿病」「2型糖尿病」「その他の糖尿病」「患児・家族の支援」「移植再生医療」「ケアのシステム化」の全7章と付録からなっている.いずれの内容も小児・思春期糖尿病に関する教科書として,また必要に応じて参考書や辞書としても活用できる.現在,小児・思春期糖尿病の日常診療に関わっている医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師・心理療法士などのメディカルスタッフのみならず,小児・思春期糖尿病をもっていた成人の皆様に関わっている方々にも役立つ.当然ながら,小児・思春期糖病をもつ方自身,その保護者・家族,さらにキャンプなどにおけるボランティアスタッフへの正しい知識の提供・啓発にも重要な役割を果たす.
 上記のような観点から,本書の各章では臨床的疑問(CQあるいはQ)が示され,ステートメントあるいはポイント,具体的な解説,科学的根拠をもとにした豊富な引用文献,エビデンスレベルを伴わない場合の「参考とした資料」が記載されている.とくに推奨グレードを問う疑問はCQ項目として作成委員会が3段階で判定し,その合意率も記されている.
 取り上げられたCQ項目は以下のとおりである.
小児・思春期1型糖尿病に強化療法(基礎追加インスリン療法)は必要か?<推奨グレードA(合意率97%)>
小児・思春期1型糖尿病での持続皮下インスリン注入療法(CSII)はインスリン頻回注射法(MDI)に比べて有効か?<推奨グレードB(合意率97%)>
小児・思春期1型糖尿病にカーボカウントは有効か?<推奨グレードB(合意率94%)>
小児・思春期2型糖尿病に血糖降下薬は有効か?<推奨グレードA(合意率100%)>
単一遺伝子異常による糖尿病の診療に遺伝子診断は有効か?<新生児糖尿病,またはGCK—MODY,脂肪萎縮症が疑われる症例では推奨グレードA(合意率94%);GCK—MODY以外のMODY,およびその他の単一遺伝子異常による糖尿病が臨床的に疑われる症例では推奨グレードB(合意率92%)>
さらなるCQ項目の充実には,小児・思春期糖尿病における国内外からの新たなエビデンスの構築が求められる.
 最後にあらためて,小児・思春期糖尿病をもつ方々の健やかな成長と充実した人生に向けた自立を祈念して,本書を推薦する.

臨床雑誌内科134巻4号(2024年10月号)より転載
評者●雨宮 伸(埼玉医科大学病院小児科 客員教授)

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