造血幹細胞移植の看護改訂第3版
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監修 | : 河野文夫/日道弘 |
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編集 | : 河北敏郎/押川妃二美/日優子 |
ISBN | : 978-4-524-20377-2 |
発行年月 | : 2025年2月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 284 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
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造血幹細胞移植を学びたい看護師の最初の一冊としても,中堅看護師の基礎固めにも最適な,移植看護が“わかる・できる”ための必携書.最新の情報を網羅し,診断,治療,退院後のフォローアップまでを時系列で追いながら,患者に提供する移植医療・ケアをていねいに解説.随所に掲載の対話形式コラム「移植看護あるある」で,入門者が抱きがちな疑問の解決に向けた知識やノウハウをわかりやすく解説した.
イントロダクション―この本で学ぶあなたへ
A 造血幹細胞移植と移植看護師―移植医から移植看護師へのメッセージ
1 移植看護師と移植医の関係性
2 移植医というおかしな生きもの
3 移植看護師のジレンマ
4 移植患者と移植看護師と移植医
B 造血幹細胞移植の歴史
1 同種造血幹細胞移植の開発
2 わが国の歩み
第1章 造血幹細胞移植の基礎知識
1 造血幹細胞移植の目的
A 血液疾患の根治
1 移植前処置
2 GVHDとGVL効果(GVT効果)
3 多くの手段で腫瘍細胞を攻撃
B もとの生活に戻る,社会復帰
2 造血幹細胞移植の種類
A ドナー(提供者)とレシピエント(患者)の関係による分類
1 自家(自己)移植
2 同系移植
3 同種移植
B 造血幹細胞の起源による分類
1 骨髄移植
2 末梢血幹細胞移植
3 臍帯血幹細胞移植
C その他の分類法や特殊な移植法
1 前処置強度による分類(フル移植とミニ移植)
2 ハプロ移植とPTCY
3 ドナーリンパ球輸注
3 移植ドナーの選択と調整
A HLAと移植
1 HLAとは
2 移植とHLA
B ドナーの選択肢とそれぞれの特徴
1 血縁者間移植
2 非血縁骨髄・末梢血幹細胞移植(骨髄バンク)
3 臍帯血移植
C ドナーの優先順位
D 骨髄移植と末梢血幹細胞移植の違い
1 患者側からみた相違点
2 ドナー側からみた相違点
E ドナー調整の留意点
1 ドナー候補のHLA検査
2 HLA情報
3 ドナーの医学的評価
4 骨髄バンクドナー
4 移植適応と患者説明
A 年齢による移植適応
B 疾患別の移植適応とタイミング
1 急性骨髄性白血病(急性前骨髄球性白血病を除く)
2 急性前骨髄球性白血病
3 急性リンパ性白血病
4 骨髄異形成症候群
5 慢性骨髄性白血病
6 悪性リンパ腫
7 成人T細胞白血病・リンパ腫
8 多発性骨髄腫
9 再生不良性貧血
C 移植医による移植判断の時期
D 患者・家族への病状説明と移植決断の時期
1 診断確定後の早期
2 初回化学療法後の退院前後
3 その後の治療中
4 第一寛解期では移植を行わない場合
5 患者の移植前評価
1 疾患・治療歴の評価
2 ドナーの評価
3 患者・家族へのインフォームド・コンセント
4 移植後の評価に向けた準備
5 臓器機能のスクリーニング
6 造血幹細胞移植の前処置
A 移植前処置の目的
B 前処置の種類
C 同種移植でよく使われる前処置
1 骨髄破壊的前処置
2 強度減弱前処置
3 再生不良性貧血の前処置
D 前処置で使われる薬剤の副作用とその看護
1 シクロホスファミド(エンドキサン〇R)
2 ブスルファン(ブスルフェクス〇R)
3 フルダラビン(フルダラ〇R)
4 メルファラン(アルケラン〇R)
5 シタラビン(キロサイド〇R)
6 エトポシド(ベプシド〇R,ラステット〇R)
7 抗胸腺細胞グロブリン(サイモグロブリン〇R)
E 全身放射線照射とその看護
1 TBIの目的と副作用
2 当院におけるTBIの実際と看護
3 主な副作用に対する看護
4 放射線照射を受ける患者の精神的ケア
7 GVHD予防のための免疫抑制薬の投与
A カルシニューリン阻害薬
1 シクロスポリン(サンディミュン〇R,ネオーラル〇R)
2 タクロリムス(プログラフ〇R)
B メトトレキサート(メソトレキセート〇R)
C その他
1 ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト〇R)
2 抗胸腺細胞グロブリン(サイモグロブリン〇R)
3 シクロホスファミド(エンドキサン〇R)
8 造血幹細胞の採取と処理
A 骨髄採取の実際と看護
1 目的・概要
2 看護の実際
B 末梢血幹細胞採取の実際と看護
1 目的・概要
2 看護の実際
C 採取されるドナー側のリスク
1 血縁ドナーの問題点
2 ドナーの身体的リスク
9 輸 血
A 移植と血液型
B 輸血の種類と移植時の輸血基準
C 輸血の副作用
D 輸血時の看護
1 同意を得る
2 輸血の準備
3 輸血投与
第2章 移植経過における看護師の役割
1 移植過程における身体的な看護ケア
A 移植準備期
1 インフォームド・コンセントと意思決定支援,家族支援
2 移植前のアセスメントと支援
3 移植と妊孕性
4 ADLの維持とセルフケアの確立
5 移植前オリエンテーション(当院の例)
6 クリーンルームの準備(当院の例)
7 クリーンルーム入室の看護
8 中心静脈カテーテル管理
9 輸液ルート
B 前処置期
1 前処置の準備と実際
2 面会制限と食事制限
3 セルフケア維持へのかかわり
4 移植に伴う定期検査
5 免疫抑制薬
C 移植当日(造血幹細胞の輸注)
1 移植の種類と輸注方法
2 輸注後の有害事象に対するアセスメントと対応
3 メトトレキサート投与確認,血液型変更の確認
D 骨髄抑制期〜生着期
1 発熱時の対応
2 清潔の保持
3 口腔ケア
4 内服管理
5 リハビリテーション
6 栄養管理
7 転倒予防・外傷予防
E 回復期
1 クリーンルーム管理の解除の基準と対応
2 ADL拡大とセルフケアの向上
3 経口摂取の促進
4 免疫反応と急性GVHDのアセスメント
5 免疫抑制薬の管理(点滴から内服へ)
6 退院前オリエンテーション
2 移植過程における精神的な看護ケア
A 時期別の心理的変化と問題点
B 精神的問題に対する課題と支援
C 当院での精神支援への取り組み(気持ちと記憶のスクリーニング)
第3章 移植合併症と看護
1 感染症
A 移植時期別の感染症の予防と治療
1 移植早期(前処置から生着まで)
2 移植中期(生着から100日前後まで)
3 移植後100日以降(移植後期)
B その他の感染症予防対策
1 環境対策(防護環境)
2 標準予防策
3 薬剤の内服,口腔ケア,免疫グロブリン補充
C 看 護
1 基本的事項
2 症状の観察とケアの判断
3 医療者の健康管理
2 急性GVHD
A GVHDとは
B 急性GVHDのリスク因子
1 HLAの一致度
2 造血幹細胞の由来
3 前処置
4 その他の要因
C 急性GVHDの症状
1 皮膚
2 消化管
3 肝臓
D 急性GVHDの診断と重症度
1 皮膚
2 消化管
3 肝臓
E 急性GVHDの予防と治療
1 予防
2 治療
F 看 護
1 皮膚
2 消化管
3 GVHD以外の早期免疫反応(生着症候群など)
A 生着症候群
1 生着症候群とは
2 症状
3 検査・診断
4 予防・治療
B 生着前免疫反応
C ハプロ移植直後の発熱
D 看 護
1 症状の観察
2 看護の実際
4 生着不全
A 生着不全とは
B 症 状
C 検査・診断
D 予 防
E 治 療
1 再移植
2 再移植以外の治療
F 看 護
5 類洞閉塞症候群(肝中心静脈閉塞症)
A 類洞閉塞症候群とは
B 発症要因
C 症 状
D 検 査
E 診 断
F 予 防
G 治 療
H 予 後
I 看 護
6 血栓性微小血管症
A 血栓性微小血管症とは
B 症状と検査
1 症状
2 臨床検査
C 診 断
D 予防・治療
E 看 護
7 出血性膀胱炎
A 出血性膀胱炎の原因
1 薬剤性出血性膀胱炎
2 ウイルス性出血性膀胱炎
B 症 状
C 検査・診断
D 予防・治療
1 予防
2 保存的治療
3 外科的治療
4 抗ウイルス療法
E 看 護
1 症状観察
2 看護の実際
8 呼吸器合併症
A 閉塞性細気管支炎
B 特発性器質化肺炎
C 看 護
1 症状の観察
2 看護の実際
9 慢性GVHD
A 慢性GVHDとは
1 定義・分類・頻度
B 症状・診断・検査
C 各臓器の病変と診断
1 皮膚病変
2 口腔病変
3 肝病変
4 肺病変
5 眼病変
D 重症度分類
E 予防・治療
1 軽症例(局所療法・支持療法)
2 中等度以上(全身治療を実施)
F 予 後
G 看護の実際
1 皮膚病変
2 口腔病変
3 肺病変
4 眼病変
5 筋・骨格系病変
10 再 発
A 白血病細胞と寛解,微小残存病変
B モニタリング・診断
C 再発予防
D 治 療
1 免疫抑制薬の減量・中止
2 ドナーリンパ球輸注
3 化学療法
4 再移植
5 CAR-T細胞療法
E 再発時の看護
11 晩期障害
A 晩期障害とは
B 二次がん
1 移植後リンパ増殖性疾患
2 治療関連骨髄性腫瘍
3 固形腫瘍
C 甲状腺機能障害
D 性腺機能障害
E 看護の実際
1 二次がんに対する対策
2 性機能障害に対する対策
第4章 よくみられる症状と看護
1 口腔有害事象
A 移植時の口腔有害事象とは
1 口腔粘膜炎
2 口腔乾燥
3 味覚障害
4 口腔粘膜浮腫
5 咽頭粘膜炎
6 歯肉出血
B 症状観察とアセスメント
1 患者自己チェック表への記載
2 看護師による口腔内観察
3 歯科専門職への診察依頼
C 看護の実際
2 悪心・嘔吐
A 移植時の悪心・嘔吐
1 化学療法後の嘔吐の分類
2 移植後の時期による嘔気の原因と対策
B 移植後の悪心・嘔吐における観察のポイント
1 悪心・嘔吐のサインをとらえる
2 悪心・嘔吐の経過を評価する
C 看護の実際
3 下 痢
A 移植後の時期による下痢の原因と対策
1 前処置〜骨髄抑制期
2 生着後早期
3 退院後の下痢
B 下痢でアセスメントすべき症状と所見
C 看護の実際
4 便 秘
A 移植時の便秘とは
1 一般的な便秘の分類
2 移植患者の便秘
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
5 皮膚障害(皮疹,びらん,潰瘍など)
A 皮膚障害とは
B 症状観察とアセスメント
1 皮疹
2 びらん・潰瘍
C 看護の実際
6 脱 毛
A 移植における脱毛
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
7 疼 痛
A 移植時の疼痛とは
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
8 貧 血
A 移植における貧血
1 移植後の赤芽球癆
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
9 出 血
A 移植後の出血
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
10 浮腫・体重増加
A 移植時の浮腫・体重増加の原因
1 腎機能障害
2 心機能障害
3 肝機能障害
4 免疫反応
5 腫瘍崩壊症候群
6 低アルブミン血症
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
11 腎臓の障害
A 移植時の腎機能障害
1 腎臓の機能
2 移植時の腎機能障害の原因
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
12 肝臓の障害
A 移植後の肝障害
1 類洞閉塞症候群/肝中心静脈閉塞症
2 急性GVHD
3 前処置を含む薬剤性肝障害
4 ウイルス肝炎
5 慢性GVHD
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
13 心臓の障害
A 移植後の心臓の障害
1 移植前のリスク因子
2 前処置
3 電解質異常
4 貧血
5 その他の原因
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
14 脳・神経の障害
A 移植後の脳・神経障害
1 頭蓋内出血(脳出血)
2 HHV-6脳炎
3 可逆性後頭葉白質脳症
4 血栓性微小血管症
5 前処置抗がん薬による毒性
6 代謝異常
7 治療関連白質脳症
8 基礎疾患
9 精神症状との鑑別
B 症状観察とアセスメント
1 記憶障害
2 意識障害
3 末梢神経障害・感覚異常
4 振戦
5 けいれん
C 看護の実際
15 代謝・内分泌異常
A 移植後の代謝・内分泌異常
1 高血糖・糖尿病
2 低血糖
3 甲状腺機能異常
4 脂質代謝異常
5 性腺機能障害
6 成長障害
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
16 眼の障害
A 眼の障害とは
1 眼の構造と機能
2 移植後の眼の障害
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
17 精神症状
A 精神症状とは
B 症状観察とアセスメント
C 看護の実際
第5章 退院支援,LTFU外来
1 退院支援
A 退院の準備と指導のタイミング
2 退院前パンフレット
A 感染予防
1 食事
2 含嗽(うがい),手洗い,マスク着用
3 外出
4 清潔ケア
5 その他
B 出血予防
C 慢性GVHD
D 性生活
E 日常生活
1 活動
2 睡眠
3 社会復帰(復職・復学)
4 体調管理
5 受診と服薬管理の継続
3 LTFU外来
A LTFU外来活動とその効果
B LTFU外来の目的
C LTFU外来活動
1 方法
2 外来の流れ
3 患者の反応や意見
4 外来記録
5 移植を予定している患者とのかかわり
第6章 移植看護におけるチーム医療
1 移植におけるチーム医療とは
2 移植にかかわる医療スタッフ
A 歯科衛生士
B 薬剤師(病棟薬剤師としての活動)
C 管理栄養士
1 腸管を使用することの意義
2 栄養評価
3 栄養投与量の設定
4 衛生管理
5 副作用に対する食事・栄養管理
6 管理栄養士として移植看護師に求めるもの,ケアのポイント
D 理学療法士
1 移植におけるリハビリテーション
2 移植患者とかかわるうえで理学療法士として意識していること
E 皮膚・排泄ケア認定看護師
1 予防的スキンケアの重要性
2 疼痛軽減のスキンケア(便失禁管理システム)
3 患者自身が行う予防的スキンケア
F 臨床心理士・公認心理師
1 移植にかかわる臨床心理士・公認心理師の専門性
2 臨床心理士・公認心理師として移植看護師に期待すること
3 心理面の支援のポイント
G 医療ソーシャルワーカー
1 医療ソーシャルワーカーの役割と業務内容
2 医療ソーシャルワーカーへの相談内容
3 患者相談支援の流れ
H 造血細胞移植コーディネーター
3 多職種による移植カンファレンス
4 移植看護師としての移植医や医療スタッフとのかかわり
1 移植医とのかかわり
2 医療スタッフとのかかわり
第7章 移植看護師の教育と支援
1 移植看護を担う看護師の現状と問題点
1 当院の移植看護師の現状
2 移植看護師が抱える問題点における対策
2 移植に携わる看護師への教育と支援
1 移植看護教育ラダーの作成
2 移植看護に必要な勉強会
3 クリーンエリア研修
4 指導体制
5 看護師のモチベーション維持への支援
付 録
移植前〜移植後クリティカルパス,オーバービュー
1 患者参画型パス
2 オーバービュー形式パス
3 移植ロングパス
索 引
コラム
・当院でのクライオセラピー
・毛細血管漏出症候群
・キメリズム検査
・抗HLA抗体
・重篤な下痢のある患者の対処の例
・HHV-6脳炎による短期記憶障害に対する対応例
・当院の移植ロングパス
・造血幹細胞移植後のワクチン接種
・患者が内服困難なとき
・TDM,ピーク値,トラフ値
・移植患者の精神症状と精神疾患の違いとは
・せん妄/抑うつと自殺企図
【改訂第3版の序】
本書『造血幹細胞移植の看護』は当院(国立病院機構熊本医療センター)で使用されている看護手順,資料,クリティカルパスなどをまとめた移植チーム看護マニュアルとして2004年に初版(編集:河野文夫・岡野千代美)が,そして,2014 年に第2 版(監修:河野文夫,編集:日道弘・高尾珠江)が出版された.諸先輩方によって受け継がれてきた本書を第3版として改訂させていただくこととなった.臨床の現場で活躍する看護師さんたちに20 年近くにわたって活用いただいたことに感謝しながら,移植の現状に合った内容にするため全体の構成を含めて大幅に刷新した.改訂に伴い同種移植の内容が増加したため,自家移植に関する記述は省かせていただいた.
この20 年間で移植の合併症による死亡率は大きく減少し,臍帯血や移植後シクロホスファミド(PTCY)を用いたハプロ移植が一般化することで,ドナーが得られない例がほとんどなくなった.移植年齢上限は70 歳代まで上昇し,以前はあきらめるしかなかった患者さんに対しても,移植という生きる権利を提供できるようになった.一方で,長期生存者が増加して命だけでなく長期的な生活の質(QOL)まで考えた移植が求められている.また,患者年齢,ドナー選択肢,前処置,移植片対宿主病(GVHD)予防,感染管理が多様化したことにより,医師や看護師として把握すべき情報が増加し日々学ぶべきことが尽きない.
移植に関連した出版物の多くは医師による医師のための本である.本書は「看護師の看護師による看護師のための本」をコンセプトに,ほとんどすべての項を看護師が主体となって執筆した.当院では1991 年に開始した同種移植症例は2024 年10 月末で1,004 例に達した.これまでに培ってきたノウハウをもとに,医師,看護師,医療スタッフの“移植チーム”の総力をあげて,患者さんや医師を支える若手から中堅の移植看護師さんのための一冊を仕上げたつもりである.日々の診療で疑問が生じた際などに気軽に手に取っていただければと願っている.
初版と第2 版の著者の方々,この10 年間病棟を指導いただいた佐藤美穂師長,城芳恵師長,藤戸邦子師長,福田純子師長,そして改訂に際してすべての過程で丁寧に対応くださった南江堂スタッフの方々に心より感謝申し上げます.
令和6 年12 月
編集を代表して 河北 敏郎
【改訂第2版の序】
『造血幹細胞移植の看護』の初版が平成16 年に出版され,すでに10 年の歳月が流れた.本書は筆者の施設で使用されている看護手順,資料,クリティカルパスなどをまとめた移植チーム看護マニュアルとして刊行された.造血幹細胞移植を成功に導くには,これを熟知した看護スタッフの力が必要不可欠であることは言うまでもない.ただ,看護スタッフは医師に比べ比較的短期間で入れ替わるため,貴重な移植看護の経験がともすれば途切れがちである.本書はこのような一地方施設の悩みから生まれた試みであったかもしれないが,幸い多くの医療関係者の手に渡り支持を得た.
この間,移植医療は時代の移り変わりとともに進歩し,初版の記載が現状にそぐわなくなった部分も多くなった.移植領域で使用できる薬剤の種類が増え,無菌管理の考え方も変わり,臍帯血移植が日常移植として行われるようになった.移植後慢性期外来も一般的なものとなりつつあり,筆者の施設ではクリティカルパスが電子カルテ対応のものとなった.チーム医療はますますその重要性を増し,栄養管理,リハビリテーションなど総合的に診療を進めることが必須のこととなっている.結果として移植合併症は10 年前と比べ少なくなっているとされるが,基本的なところは同じであり,直面する問題も本質的には変わらない.このような背景から,初版を基礎として時代に応じた修正および見直しを行った.
初版の編者である河野文夫現院長,岡野千代美看護師長から改訂版の編集の大役を仰せつかった.コンセプトは「新人として移植病棟に配属された若手看護師さんにもわかりやすい記載を」とし,より見やすいように図や表を多用し,移植後に発症する様々な合併症,症状について移植経過に沿って記載するよう努めたつもりである.すべての施設に普遍化できるものばかりではないが,実臨床の場で参考にしていただくことを心より願っている.
初版の執筆をしていただいた方々,貴重な意見をいただいた現6 階南病棟の佐藤美穂看護師長,高木幸子副師長,方尾志津がん看護専門看護師,すべての過程において丁寧にかかわってくださった南江堂スタッフの方々に心より感謝いたします.
平成26 年1 月
編集を代表して 日 道弘
【初版の序】
国立熊本病院内科で県内初の同種骨髄移植を開始したのは平成3 年2 月21 日である.それから,本年で12 年目を迎えたが,今年1 月からの移植数は,10 月31 日現在で同種幹細胞移植33 例(骨髄9 例,末梢血20 例,臍帯血4 例),自己末梢血幹細胞移植13 例と,年間総移植数が50 例をこえる予定である.一般病院の血液内科として移植数は国内でも屈指の移植施設に成長したように思う.これまでになれたのは,血液内科自身の努力もさることながら,それ以上に病院幹部をはじめとして他部門の職員の方々の理解と援助,さらに熊本県内の血液疾患専門施設のご協力のおかげであり感謝の念に耐えない.
最近の高度医療は,すべての領域でそうであるが,医師だけでは何も行うことはできず,チーム医療の重要性が強調されている.そしてまさに造血幹細胞移植こそチーム医療なくしては成り立たない.他施設をみても,うまく機能している移植チームは,医師,看護師およびコメディカルの協力体制が際立っているのが特徴である.当院の移植チームも例外でありえない.良質で,安全かつ効率よい移植医療を行うために,われわれの移植チームも常に学習と反省を繰り返し,移植医療および看護の改善を図ってきた.しかし,比較的異動の少ない医師に対して,看護師は異動が多く,それに伴う看護の習熟にはいつも悩まされてきている.そこで移植医療に伴う看護手順,説明資料などは常にマニュアル化し,いつでも容易に学習し,すぐ実用化できるようにしてきた.さらに,近年,医療の質および効率化のツールとして必須とされているクリティカルパスの導入を図り,すでに実用化している.
今回,いままでの移植チームの蓄積したこれらの看護手順,資料などを見直し,さらに現在使用している当院のクリティカルパスなども含めて,移植チーム看護マニュアルとしてまとめてみたのが本書である.本来,移植の状況は,各病院によりハード,ソフトともに異なるため,各病院ごとに独自の移植看護マニュアルが必要と思われる.この本は,独自の移植看護マニュアル作成やこれから移植医療を行われる施設のスタッフに少しでもお役に立てるなら望外の幸せである.
多忙な勤務のなか,分担執筆していただいたスタッフの方々,資料およびクリティカルパスの改訂でお世話いただいた当院の野村一俊整形外科医長,血液内科同僚の長倉祥一医師,稲田知久医師,中重敬子副看護部長,現在の西1 病棟の猪俣千代子看護師長,河野敬子副師長,編集作業に尽力いただいた林田晶子さん,いつも叱咤激励していただいた南江堂スタッフの方々に心より感謝いたします.
平成15 年11 月
編集を代表して 河野 文夫
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