柔道[web動画付]
監修 | : 公益社団法人全国柔道整復学校協会/鮫島元成 |
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ISBN | : 978-4-524-20376-5 |
発行年月 | : 2024年3月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 128 |
在庫
定価3,960円(本体3,600円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
本書では,柔道の歴史や柔道と柔道整復師の関係,また認定実技審査で求められる技や礼法,審判規定などを解説する.また,技や形などについては豊富なWeb動画を用意した.
第1章 日本伝講道館柔道
A嘉納治五郎とは
1学問と柔術の修行
2教育・文化への道
3オリンピックへの道
B柔道とは何か
1柔道の創始─柔術から柔道へ─
2柔道の意義・目的
第2章 柔道衣と着用方法
■柔道衣について
■柔道衣の着方
■柔道衣の取り扱いについて
■柔道衣の畳み方
第3章 礼法
■礼法の趣旨
■立礼
■坐礼
■拝礼
■「投の形」の礼法
■「試合」の礼法(個人試合)
第4章 柔道の動き
■すり足(継ぎ足・歩み足)
■自然体と自護体
■組み方(右組み・左組み)
■体さばき
■八方の崩し
第5章 受身
■後ろ受身
■横受身
■前回り受身
■前受身
第6章 形
■浮落(うきおとし)
■背負投(せおいなげ)
■肩車(かたぐるま)
■浮腰(うきごし)
■払腰(はらいごし)
■釣込腰(つりこみごし)
■送足払(おくりあしはらい)
■支釣込足(ささえつりこみあし)
■内股(うちまた)
第7章 柔道の技術
A投技 68
■手技
■腰技
■足技
B固技 74
■抑込技
■絞技
■関節技
第8章 試合
A国際柔道連盟試合審判規定2018年〜2020年(抜粋)
1第9条 試合の開始
2第13条 試合の終了
3第14条 「一本」
4第15条 「技あり」
5第16条 「技あり,合わせて一本」
6第17条 「抑え込み」
7第18条 「禁止事項と罰則」
8第19条 「不戦勝ち」および「棄権勝ち」
9第20条 負傷,疾病,事故
10第21条 規定に定められていない事態
B試合場
■国際柔道連盟試合審判規定の場合
■講道館柔道試合審判規定の場合
第9章 柔道で発生する事故
A傷害発生部位
B事故が起こる場面
1頸髄損傷
2膝前十字靱帯(ACL)損傷
3外傷性肘関節脱臼
4鎖骨骨折
C脳振盪(脳震盪)
D柔道の練習・試合で発生しやすい傷害
1膝前十字靱帯(ACL)損傷
2外傷性肘関節脱臼
3鎖骨骨折
4腰椎分離症
5変形性肘関節症
第10章 柔道と柔道整復師
A柔道は心身最有効使用道
B柔道整復師
1竹岡宇三郎
2施術例
参考文献
索引
柔道修行の本来の目的は,修行を通しての「己の完成と,世の補益」である.
私は学校の体育教師として長い期間,授業や部活動で若い人たちと一緒に活動することができた.授業には柔道や,ラグビーも教材として導入した.身体が発達途上の生徒の動きは激しく,時にはけがが発生する.いくら教師が教材研究をし,細心の注意を払って指導をしてもけがは発生する.幸い,学校の近くに接骨院があった.けがをした生徒をつれていくと,「よし俺に任せとけ,心配するな」の老先生のこの言葉から診察が始まる.その一言で,生徒も,教師もどれだけ安心できたか.何人の生徒がお世話になったか,生徒だけではなく,私自身も診察時間の終了後治療をしてもらった.「教師は生徒が帰ってからここに来ればいい,学校にいるときは生徒の世話をしなさい」の言葉も忘れない.柔道六段の立派な柔道整復師の先生であった.
現在も存続されているところはあるが,しばらく前の多くの接骨院には診察室の隣室に柔道場が設置されおり,地域の子供たちや大人の柔道愛好者たちが集まり,柔道修行を行っていた.その指導者は柔道整復師であった.接骨院は地域のコミュニケーションの場所であり,また,教育の場所でもあった.
時代が変わり,そのような設備を兼ね備えることは難しい.しかし,柔道整復師を志す者が持つことができる精神は,柔道の創始者嘉納治五郎の唱えた,「精力善用・自他共栄」である.巻末114ページに「患者への対応は,礼,間合い,姿勢,呼吸,冷静沈着の態度から患者に安心を与えることから始まり,施術には……」という表現がある.まさしくこの言葉は,人にたいする柔道整復師の「精力善用」の精神であり,このことができて初めて患者への施術が始まるのである.そして結果として「自他共栄」が成り立つ.
施術の技術を獲得することは,そんなにたやすいものではない.柔道に置き換えると,例えば,背負い投げで防御している相手を投げることができるまで何年かかるであろうか.私は小学生時に柔道を始めたが,講道館の投げ技68本ある中で自信を持って指導できる技はいくつもない,まだ修行中である.
「修行を継続することで修業ができる,つまり『業(わざ)』を獲得することができる」のである.柔道整復師の技術も同様である.修行は強い心がなければ続かない.
この度,柔道整復師を目指す人たちのために,多くの先生方のご尽力で本書『柔道』が完成した.この本の内容が柔道のすべてではないが,「柔道は人生を工夫することである」の考えで,自分の人生に役立て,そして患者の心と痛みを和らげてほしい.立派な柔道整復師になっていただけることをお願いし,序文とする.
2024年1月
公益財団法人 講道館
鮫島元成