新 心臓血管外科管理ハンドブック改訂第3版
ハートチーム編

編集 | : 国立循環器病研究センター心臓血管部門 |
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ISBN | : 978-4-524-20374-1 |
発行年月 | : 2025年5月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 368 |
定価12,100円(本体11,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

わが国の循環器疾患対策の中枢である国立循環器病研究センターで修練を積んだスタッフが,術前・術中・術後の患者管理に関する豊富な経験を心臓血管外科医・麻酔科医双方の観点から集大成した実際書.今改訂では、「看護のポイント」など新たにハートチームに関する内容を加えたほか,全体の目次構成・内容も大幅に刷新,要所にコラムを設け,図表を多用してビジュアルな紙面とした.若手心臓血管外科医・研修医はもちろん,循環器疾患に関わるすべてのメディカルスタッフ必携の一冊.
総論T 術前管理─スクリーニングと準備
1 術前検査
a.問診
b.身体所見
c.血液検査
d.感染症スクリーニング
e.胸部単純X線写真
f.12誘導心電図
g.経胸壁/経食道心エコー検査
h.呼吸機能検査
i.末梢動脈疾患の評価
j.頭部CT検査,頭部MRI検査
k.胸腹部CT検査
l.冠動脈評価
m.歯科受診
n.麻酔科受診
o.その他の検査
2 輸血準備と患者血液管理(PBM)
a.心臓血管外科における輸血
b.術前の血球評価と輸血
c.同種輸血における血液型検査と交差適合試験
d.輸血合併症
e.自己血輸血
3 服用薬剤の術中・術後への影響および中止時期
a.抗凝固薬
b.抗血小板薬
c.RAA系阻害薬
d.β遮断薬
4 術前合併症と考え方
a.脳神経系合併症
b.呼吸器合併症
c.腎合併症
d.肝合併症
e.血液疾患
f.内分泌疾患
g.悪性腫瘍
h.う歯
i.皮膚
5 緊急手術の術前準備
a.急性冠症候群
b.Stanford A型急性大動脈解離
c.StanfordB型急性大動脈解離
d.感染性心内膜炎,人工弁心内膜炎
e.急性肺血栓塞栓症
f.急性動脈閉塞症
g.劇症型心筋炎,急性心不全
看護のポイント 緊急手術の準備と対応
総論U 術中管理─人工心肺,各種モニタと経食道心エコー
1 人工心肺,モニタリング
a.人工心肺(体外循環)
b.心筋保護液
c.各症例における人工心肺の要点
2 術中経食道心エコー
a.使用するエコー装置とプローブ
総論V デバイスの適応と管理
1 IABP
a.IABP
b.IABP管理
2 ECMO(V-A,V-V,V-AV)
a.ECMO
b.ECMOの使い分け
看護のポイント ECMOでのインシデントを防ぐためのチェックリスト
3 Impella
a.Impella
b.Impellaの管理
看護のポイント 看護師からみたImpellaの注意点
4 体外式VAD
a.体外式VAD
b.体外式VAD管理
看護のポイント 体外式VADの看護ポイント
総論W 術後管理
1 感染症対策
a.抗菌薬投与方針
看護のポイント ルートの扱い方のポイント
b.COVID-19,ウイルス感染,真菌感染
c.消毒,ガウン操作,MRSA
2 褥瘡管理
a.褥瘡対策
b.褥瘡分類・治療
c.局所陰圧閉鎖療法(NPWT)
3 輸血・輸液
a.心臓手術における凝固異常
b.輸血
c.輸液
看護のポイント 輸血における看護師の視点
4 薬剤
a.カテコラミンおよびその他強心・昇圧作用のある薬剤
b.血管拡張薬
c.吸入薬としてのNO
d.利尿薬
e.抗不整脈薬
f.抗凝固薬
看護のポイント 希釈の注意点
看護のポイント オーバーラップのさせ方
5 栄養管理
a.総論
b.経腸栄養
c.経静脈栄養
看護のポイント 経口投与時の観察のポイント
6 不整脈
a.総論
b.各論
c.治療
看護のポイント 看護師は不整脈をどう察知するか
7 モニタリング
a.循環
b.呼吸
8 鎮静・鎮痛
a.鎮静
看護のポイント 鎮静の観察評価
b.鎮痛
看護のポイント 鎮痛の観察評価
9 腎不全
a.予防と治療
b.腎代替療法(RRT)
看護のポイント CHDF中のポイント
10 肝不全
a.低酸素性肝障害/b.薬剤性肝肝障害/c.高カロリー輸液
11 血糖管理
a.血糖管理の実際
b.血糖測定方法
看護のポイント インスリン管理のポイント
12 腸管虚血
a.主要原因と腸管虚血部位/b.診断
c.治療
看護のポイント 重症患者の搬送における注意点・確認ポイント
13 脳脊髄虚血
a.治療方針,モニタリング
b.スパイナルドレナージ
c.外減圧,脳室ドレナージ
看護のポイント スパイナルドレナージ,脳質ドレナージの管理
14 呼吸管理
a.人工呼吸器
b.酸素療法
c.High flow nasal cannula(HFNC)
d.Non-invasive ventilation(NIV)
e.ダブルルーメンチューブ/f.気管切開
看護のポイント 人工呼吸中のケア,体位変換のポイント
各論T 先天性心疾患
1 術前管理
a.新生児
看護のポイント 新生児期に手術を受ける患者の看護のポイント
b.乳児期以降
c.重症心不全
2 術中管理
a.麻酔
b.人工心肺
3 術後管理:総論
a.術後の低心拍量出症候群
b.腹膜透析(PD)
c.ECMO
d.ステロイド療法/e.抗凝固療法,抗血小板療法
4 術後管理:各論
a.Blalock-Taussig shunt手術
b.大動脈縮窄・離断症(合併心奇形を伴わない)
c.肺動脈絞扼術(PAB)
d.完全大血管転位(d-TGA)
看護のポイント 動脈スイッチ術後の看護のポイント
e.総肺静脈還流異常(TAPVC)
f.Truncus repair
g.IAA/CoA complex repair
h.HLHS Norwood
i.両方向性Glenn手術
j.Fontan型手術
看護のポイント Fontan術後の看護のポイント
k.Isomerism heartの修復手術
l.心房中隔欠損(ASD)
m.心室中隔欠損(VSD)
n.Ebstein病(Ebstein's disease)
o.房室中核欠損(AVSD)
看護のポイント 房室中核欠損修復術後の看護のポイント
p.Fallot四徴症(TOF)
q.肺動脈統合術(uniforcalization)
r.ccTGA,解剖学的修復術
s.肺動脈弁置換(PVR)
t.EXCOR® Pediatric
看護のポイント EXCOR®(小児体外式LVAD特有の看護のポイント)
u.小児の心臓移植
各論U 血管外科疾患
1 大動脈疾患
a.術前管理
看護のポイント 術前患者への看護師からの指導
b.標準手術手技
c.術中・術後管理
看護のポイント 疼痛看護について
看護のポイント 術後管理における看護の視点@
看護のポイント 術後管理における看護の視点A
コラム 大動脈炎症候群
2 末梢動脈疾患
a.術前管理
b.標準手術手技と術中・術後管理
看護のポイント 下肢動脈閉塞術後
看護のポイント 末梢動脈疾患術後
3 末梢静脈疾患
a.下肢静脈瘤
b.深部静脈血栓症
4 肺動脈血栓塞栓症:急性肺動脈閉塞症
a.術前管理
b.標準手術手技と術中・術後管理
5 肺動脈血栓塞栓症:慢性肺動脈閉塞症
a.術前管理,手術適応/b.標準手術手技と術中・術後管理
各論V 成人疾患
1 虚血性心疾患
a.人工心肺装置を使用しない冠動脈バイパス術(OPCAB)
b.低心機能に対する冠動脈バイパス術
c.急性心筋梗塞における機械的合併症
2 弁膜症
a.僧帽弁
b.大動脈弁
c.三尖弁
d.MICS,ロボット手術
看護のポイント 低侵襲手術だからこそ合併症予防が必要(重要)
3 弁膜症のカテーテル治療
a.TAVR
b.MitraClip®
c.その他の弁
4 不整脈,心房細動の外科治療
a.心房細動に対する外科治療の適応
b.心房細動に対する外科治療の種類
c.術後管理
5 重症心不全
a.LVAD治療,心臓移植,再生医療
b.左室補助装置術後管理
6 感染性心内膜炎
a.術前管理
b.手術と術中管理
c.術後管理
7 その他:収縮性心膜炎と心臓腫瘍
a.収縮性心膜炎
b.心臓腫瘍
巻頭言
心臓血管外科領域においては,普遍的な要素と大きく変化している要素が混在しています.普遍的な要素とは,構造的な破綻をきたしている循環器疾患に対して手術による修復が必要であるという点です.一方で,変化している要素としては,デバイスや治療法の進歩による治療のアップデートが挙げられます.大きな変化が起こる際には「パラダイムシフト」と呼ばれることがあります.最近では,ハートチームの確立やTAVI(transcatheter aortic valve implantation)がその例です.私たち循環器疾患に携わるすべての職種に求められるのは,循環器疾患の本質を理解し,その上で次々と報じられるエビデンスを基に最新で最良の治療を知ることです.
本書は,国立循環器病研究センターの日常診療の中で生まれた治療指針をまとめたものです.国立循環器病研究センターは循環器領域において唯一のナショナルセンターであり,急性期疾患から希少疾患まで,あらゆる循環器疾患の患者さんが紹介され,治療にあたっています.成人心臓外科,血管外科,小児心臓外科の3 つの外科分野が互いに協力しながらも独立して手術を行っています.良好な成績を得るためには手術が重要であることは明白です
が,それ以上に,より良い術前管理や術後管理が必要です.循環器内科,麻酔科,集中治療科,臨床工学技士,看護師との協力は欠かせません.疾患の基礎知識や併存症に対する考え方,合併症を起こさない管理方法など,知っておくべきことは多岐にわたります.
本書に記載されている内容は理想論ではなく,国立循環器病研究センターでの現在の考えのもと,実際に行われている治療です.可能な限り広い範囲の疾患や治療に対する私たちの考える標準治療を示し,若い医療従事者からエキスパートの方々まで楽しんで読んでいただける内容を目指しました.また,総論と各論に分けて構成しており,辞書代わりに活用していただけるよう工夫しています.
本書の完成にあたり,多くの方々のご支援とご協力を賜りましたことに,心より感謝申し上げます.まず,本書の執筆に携わってくださった共著者の皆様に深く感謝いたします.それぞれの専門分野における豊富な知識と経験を惜しみなく共有していただき,内容の充実に大きく貢献していただきました.その情熱と献身的な努力がなければ,本書の完成は成し得なかったことでしょう.また,本書の出版にあたり,多大なご尽力をいただいた出版社の編集チームの皆様にも,心より感謝申し上げます.企画段階から編集,校正,デザインに至るまで,細部にわたりご配慮いただき,質の高い一冊に仕上げていただきました.そのプロフェッショナリズムと献身的なサポートに深く感謝いたします.
最後に,本書が医療従事者の皆様にとって有益な参考書となり,患者さんの治療に少しでも貢献できることを願っております.
2025年4月
東京科学大学心臓血管外科
藤田 知之
