血液専門医テキスト改訂第4版
編集 | : 日本血液学会 |
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ISBN | : 978-4-524-20371-0 |
発行年月 | : 2023年10月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 668 |
在庫
定価17,050円(本体15,500円 + 税)
正誤表
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2023年11月01日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
「血液専門医研修カリキュラム」に則った,日本血液学会編集による専門医テキストの改訂第4版.主要な徴候と検査値異常などの基礎的事項から,腫瘍性・非腫瘍性疾患の病因・病態・診断・治療,患者教育,形態学までの幅広い内容を網羅し解説.今改訂では,進歩の著しい血液領域の診療動向を反映し内容アップデートをはかったほか,細胞療法や免疫関連リンパ増殖性疾患,COVID-19関連の凝固系異常など新規項目も追加し内容を拡充.巻末付録には「血液専門医試験過去問−解答と解説」を収載.専門医を目指す医師必携の一冊.
第T章 造血システムと腫瘍化
1.造血幹細胞
2.血球産生と分化
3.骨髄性腫瘍の発症機構
4.リンパ系腫瘍の発症機構
第U章 止血機構
1.止血・抗血栓機序
第V章 主要な徴候と検査値異常
1.リンパ節腫大,扁桃腫大,肝脾腫の鑑別
2.貧血の鑑別
3.多血症の鑑別
4.白血球増加症・減少症の鑑別
5.血小板増加症・減少症の鑑別
6.出血傾向の鑑別
7.血栓傾向の鑑別
第W章 臨床検査・画像診断
1.骨髄穿刺/骨髄生検
2.細胞化学的検査
3.溶血に関する検査
4.血小板・凝固線溶に関する検査
5.表面形質検査(免疫表現型解析)
6.染色体検査
7.分子生物学的検査:サザンブロット・ハイブリダイゼーション法,点突然変異,PCR法
8.分子生物学的検査:クリニカルシークエンス
9.リンパ節生検時の検査
10.リンパ腫の病期診断・治療効果判定[FDG-PET(PET-CT)を含む]
第X章 治療法:薬剤,放射線,脾摘術
1.抗血栓薬(抗凝固薬,抗血小板薬,線溶薬)
2.抗がん薬の作用機序と副作用
3.分子標的治療薬の作用機序と副作用
4.放射線療法の適応と有害事象
5.腫瘍免疫療法
6.細胞療法(CAR-T,DLI,MSC)
7.脾 摘
第Y章 輸 血
1.血液型,交差適合試験,不規則抗体,HLA抗体
2.血液製剤と血漿分画製剤
3.輸血の適応
4.輸血の合併症
5.交換輸血,アフェレーシス
第Z章 造血幹細胞移植
1.同種造血幹細胞移植:適応疾患
2.同種造血幹細胞移植:HLA適合とドナーソース
3.同種造血幹細胞移植:移植前処置
4.同種造血幹細胞移植:GVHD,GVL効果
5.同種造血幹細胞移植:合併症(感染症,SOS)
6.自家造血幹細胞移植:適応,幹細胞動員,前処置
第[章 赤血球系疾患
1.鉄欠乏性貧血
2.先天性溶血性貧血
3.巨赤芽球性貧血
4.自己免疫性溶血性貧血:温式,冷式
5.発作性夜間ヘモグロビン尿症
6.成人特発性再生不良性貧血
7.小児特発性再生不良性貧血
8.遺伝性骨髄不全症候群
9.赤芽球癆
10.ACD(慢性疾患に伴う貧血)
11.腎性貧血
第\章 白血球系疾患:腫瘍性疾患
1.WHO分類:骨髄系腫瘍
2.WHO分類:リンパ系腫瘍
3.慢性骨髄性白血病
4.真性赤血球増加症/本態性血小板血症/原発性骨髄線維症
5.その他の骨髄増殖性疾患
6.骨髄異形成症候群
7.急性骨髄性白血病
8.急性前骨髄球性白血病
9.治療関連骨髄性腫瘍
10.急性リンパ性白血病(Ph染色体陽性急性リンパ性白血病を除く)
11.Ph染色体陽性急性リンパ性白血病
12.慢性リンパ性白血病とその類縁疾患
13.濾胞性リンパ腫
14.MALTリンパ腫
15.マントル細胞リンパ腫
16.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
17.Burkittリンパ腫
18.末梢性T細胞リンパ腫
19.NK/T細胞リンパ腫
20.成人T細胞白血病/リンパ腫
21.その他のリンパ性腫瘍疾患:菌状息肉症,Sézary症候群など
22.Hodgkinリンパ腫
23.原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫
24.多発性骨髄腫
25.多発性骨髄腫の類縁疾患(ALアミロイドーシス,POEMS症候群,Castleman病,TAFRO症候群)
26.免疫関連リンパ増殖性疾患
第]章 白血球系疾患:非腫瘍性疾患
1.顆粒球減少症
2.原発性免疫不全症
3.HIV感染症
4.伝染性単核症
5.血球貪食症候群
第]T章 血栓・止血疾患
1.血管障害による出血性疾患:血管性紫斑病
2.免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)
3.播種性血管内凝固
4.血栓性微小血管症/赤血球破砕症候群
5.heparin起因性血小板減少症
6.抗リン脂質抗体症候群
7.先天性血小板減少症・機能異常症
8.血友病
9.von Willebrand病
10.後天性血友病A
11.抗凝固因子欠乏症
12.COVID-19関連の凝固系異常
第]U章 小児の造血器悪性腫瘍
1.若年性骨髄単球性白血病
2.小児の骨髄異形成症候群
3.小児の急性骨髄性白血病
4.小児の急性リンパ性白血病
5.小児のリンパ腫
6.Epstein-Barrウイルス関連T/NKリンパ増殖性疾患
7.小児の血球貪食性リンパ組織球症(HLH)とLangerhans細胞組織球症(LCH)
第]V章 支持療法
1.化学療法時の支持療法
2.サイトカイン(EPO製剤を含む)
3.感染症の予防と治療
4.鉄キレート療法
第]W章 臨床腫瘍学
1.オンコロジー・エマージェンシー
2.がん性疼痛
3.サイコオンコロジー
4.長期的合併症と長期フォローアップ
5.妊孕性温存
第]X章 形態学
1.骨髄・末梢血スメア標本
2.骨髄生検像
3.リンパ節生検像
第]Y章 医学研究および研究における利益相反
1.医学研究と利益相反(COI)
2.統計学を含む臨床研究
3.遺伝カウンセリング
付録 血液専門医試験 過去問―解答と解説
改訂第4版序文
わが国の血液領域を専門とする臨床医が身近に利用できるテキストとして,また,血液専門医を目指す若手医師には研鑽のテキストとして利用されてきた『血液専門医テキスト』は,2011年の初版発刊から12年となる今年,改訂第4版を出版することとなった.2019年に出された改訂第3版から4年を経ているが,血液領域における病因・病態の解明,新規治療薬や治療法開発は大きく進歩した.ゲノムを中心とした分子レベルでの疾患の解析,多くの分子標的薬や細胞療法の開発・導入など,基礎,臨床を含めて血液学は変貌を遂げている.また,この間には世界を揺るがせた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが起こり,社会にパラダイムシフトをもたらした.COVID-19に関連した凝固異常や血液疾患患者での重症化リスクが明らかとなり,血液領域にも関連が深いことが示されるなど,COVID-19について医学的にはさまざまなことが明らかとなってきているが,現在も医療のみならず社会全体にグローバルな影響を与えている.改訂第4版ではこうした新たな知見についても取り入れている.
日本専門医機構による新専門医制度が導入され,新たなカリキュラム制に基づく血液専門医が誕生しているが,新制度下においても血液専門医に対して広く血液学の臨床・基礎知識が求められ,常にアップデートが必要なことに変わりはない.こうした点においても,本書はこれから専門医を目指す先生,そして臨床現場で診療に当たっておられる先生に手に取って参照いただける内容となっている.
本書の原稿執筆を依頼している途中で,造血器腫瘍の世界的な分類としてWHO分類第5版,およびInternational Consensus Classification(ICC)が相次いで発表された.両者はかなり類似しているものの細かな点で相違が見られ,本書の最終的な編集段階ではWHO分類第5版とICCのいずれが世界的に広く利用されるのかなど,それぞれの位置づけが明確ではなかった.そのため,本書の該当する箇所では原則としてWHO分類改訂第4版(2017年)に基づいて執筆いただき,必要に応じてWHO分類第5版,ICCに触れていただいている.読者の皆様にはこの点をご了解いただきたい.
また,これまで巻末に添付していた「血液専門医目標カリキュラム」は日本血液学会のホームページ上でご覧いただけるため(http://www.jshem.or.jp/uploads/files/ketuekisenmoni_kensyuCurriculum20221021.pdf)〔2022年10月21日改訂〕,割愛している.
本テキストの改訂,編集に尽力いただいた,日本血液学会教育委員会と専門医認定委員会の方々,また編集,原稿執筆,査読などを担当いただいた多くの関係者の皆様に深謝申し上げる.本テキストがこれまでと同様に広く血液関連の方々に利用され,この領域の発展に少しでも寄与できることを祈念している.
2023年9月
日本血液学会 教育委員会 委員長 宮ア 泰司
日本血液学会 専門医認定委員会 委員長 張替 秀郎
日本血液学会が総力をあげて編集している公式テキストを大きくアップデート
『血液専門医テキスト』は,「血液専門医研修カリキュラム」に則って,日本血液学会が総力をあげて編集している公式テキストである.日々の血液疾患診療におけるバイブルとして,また血液専門医を目指す若手医師にとっては必読のテキストとして活用されている.2011年に初版,2015年に第2版,2019年に第3版が刊行され,この度,4年ぶりに改訂が行われ待望の改訂第4版として出版された.
改訂第4版の内容は,造血システムと腫瘍化,止血機構,主要な徴候と検査値異常,臨床検査・画像診断,治療法,各種血液疾患の各論,形態学,利益相反などであるが,各項目で「到達目標」が掲げられており,読者の学習効果を高めるのに有益な構成になっている.また,各種血液疾患の病因・病態・疫学,症状・身体所見,診断・検査,治療と予後がコンパクトに過不足なくまとめられているのも魅力的である.
本書では,進歩の著しい血液領域の診療動向を反映して内容が大幅にアップデートされている.近年,ゲノムを中心とした分子レベルでの解析により,白血病や悪性リンパ腫などの各種病型に応じた原因遺伝子が解明されるとともに,非腫瘍性疾患の分子病態についての理解も大いに深まっている.これらの病態解析の進歩に呼応するように,多くの低分子化合物(FLT3阻害薬,BCL—2阻害薬,STAMP阻害薬のasciminib,腎性貧血に対するHIF—PH阻害薬など)や抗体薬剤(brentuximab vedotin,抗PD—1抗体,抗補体治療薬など)が開発され,治療法も変貌している.また,白血病や悪性リンパ腫への攻撃力を高める治療法であるキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子改変T細胞(CAR—T細胞)療法が開発され,良好な治療成績をあげているのも最近のトピックである.さらに,新型コロナウイルス感染症(COVID—19)に関連した凝固異常や血液疾患患者での重症化リスクが明らかになったのも特筆すべきことである.改訂第4版では,これらの新知見が新規項目として,もしくは各項目内にわかりやすく取り入れられている.巻末付録に「血液専門医試験 過去問―解答と解説」として,2017〜2019,2021年度の試験から厳選した問題とその解説が掲載されているのも血液専門医を目指す医師にとっては有益である.
絶えず進化を続けている「血液学」や「血液疾患の診断・治療」に関して,本書では読者にとってわかりやすく,しかも簡潔に必要事項がまとめられている.血液専門医や,血液専門医を目指す医師だけでなく,血液疾患診療における必携の書として初学者からエキスパートまで幅広く役立つものである.わが国における血液疾患の理解促進と治療成績の向上のために,多くの方に本書を活用していただけることを切望する.
臨床雑誌内科133巻6号(2024年6月号)より転載
評者●金倉 譲(一般財団法人住友病院 院長/大阪大学 名誉教授)