書籍

がん緩和ケア薬 必携ガイドブック

痛み,便秘,不眠,せん妄

編集 : 荒尾晴惠/岡本禎晃
ISBN : 978-4-524-20341-3
発行年月 : 2024年3月
判型 : A5判
ページ数 : 308

在庫あり

定価3,520円(本体3,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

がん患者の緩和ケアのうちマネジメントが特に重要である4症状「痛み,便秘,不眠,せん妄」の緩和薬剤の情報と投与時の看護のポイントを手軽に調べられるガイドブック.医師による処方の考え方と,薬剤に視点をおいたアセスメントの仕方や臨床推論を学べる.薬物療法を受ける患者の看護を行う際の思考回路が整理され,今よりもっと,看護が楽しくなる!

目 次
第T章 先を見越して動けるナースになろう!
 ❶緩和ケアが目指す症状緩和の考え方─治療方針に至るまでのプロセス〜臨床推論がわかる
 ❷緩和ケア薬を用いて症状を緩和する患者へのケアの考え方

第U章 がん疼痛を緩和する!
 ❶がん疼痛に対する薬剤選択の考え方
 ❷看護師が行うがん疼痛の緩和と薬の考え方
 侵害受容性疼痛
 神経障害性疼痛
 突出痛
 オピオイド使用時のポイント
 鎮痛薬(オピオイド)
  01 フェンタニル
  02 ヒドロモルフォン
  03 オキシコドン
  04 モルヒネ
  05 タペンタドール
  06 メサドン
 鎮痛薬(非オピオイド)
  01 アセトアミノフェン
  02 ジクロフェナク
  03 フルルビプロフェン
  04 エトドラク
 鎮痛補助薬
  01 デュロキセチン
  02 プレガバリン
  03 ミロガバリン
  04 ラコサミド
  05 リドカイン
  06 バルプロ酸

第V章 便秘を緩和する!
 ❶ 便秘に対する薬剤選択の考え方
 ❷ 看護師が行う便秘の緩和と薬の考え方
 便秘治療薬
  01 酸化マグネシウム
  02 センナ・センノシド
  03 ピコスルファート
  04 ルビプロストン
  05 リナクロチド
  06 エロビキシバット
  07 ポリエチレングリコール
  08 ナルデメジン

第W章 不眠を緩和する!
 ❶ 不眠に対する薬剤選択の考え方
 ❷ 看護師が行う不眠の緩和と薬の考え方
 睡眠導入薬
  01 エスゾピクロン
  02 ゾルピデム
  03 ブロチゾラム
  04 レンボレキサント
  05 ラメルテオン
  06 トラゾドン

第X章 せん妄を緩和する!
 ❶ せん妄に対する薬剤選択の考え方
 ❷ 看護師が行うせん妄の緩和と薬の考え方
 せん妄の薬剤
  01 リスペリドン
  02 クエチアピン
  03 ハロペリドール
  04 アセナピン
  05 ブロナンセリン
  06 抑肝散

 がん患者の緩和ケアにおいては,患者が体験している多様な症状のマネジメントを行い,患者らしい生活を維持できるよう支援することが重要です.たとえば,がん疼痛の緩和には適切な薬物療法が重要ですが,処方された薬物を患者に投与し症状の改善をみるまでの過程では,看護師の観察や判断とそれに基づいた看護が展開されています.看護師が患者をよく理解し患者の発するサインに気づくこと,薬剤の知識をもつことで,より良い疼痛緩和が可能となります.しかし薬物療法に関しては,次々と新しい薬の台頭があり,看護師は常に知識をアップデートし,看護に反映していかなければなりません.同様に,便秘,不眠,せん妄といった症状のマネジメントにおける薬物療法についても,看護師の力量が問われるところです.
 一方,実際の臨床現場では「医師の指示で,患者さんに薬を渡している」「薬の説明は薬剤師がやってくれる」という声も聞きます.深く考えないで,「痛い→薬を渡す」といったパターンが生まれているのかもしれません.そこで,看護師が,患者が訴える症状に関して,思考のなかに臨床推論の回路をもつことで,より患者に適した症状マネジメントが行えるのではと考えました.
 本書では,がん緩和ケアでよく遭遇する症状ごとに,まず医師がどのような臨床推論をして薬剤を処方しているのか,という思考を記述してもらいました.次に,生活の視点で患者を理解する看護師の臨床推論の思考を,具体的なイメージがつくように事例を用いて解説しています.事例を通して,押さえておきたい最低限のポイントとなる知識が何かわかるようにして,看護にどう活かせばよいのかを明記しました.症状をもつ患者の薬物療法に着目した看護師の臨床推論について,理解いただけることと期待しています.
 また各薬剤の項目では,薬剤の特徴や作用機序などの薬剤情報の解説と,投与時の看護のポイントを紹介しています.
 この書籍が手元にあれば,症状マネジメントにおいて薬物療法を受ける患者の看護を行う看護師の思考回路が整理され,今よりもっと看護が楽しくなる!と考えており,皆さまの実践の助けになることを期待しています.そして,皆さまが笑顔の患者さんをみる機会が増えるとよいなと思います.

2024 年2 月
荒尾 晴惠
岡本 禎晃

 やや看板に偽りがある本である.タイトルだけみると,がん緩和ケアで使用する薬の使い方や副作用を解説した本のようにみえる.実際にがん緩和ケアで使用するほとんどの薬剤の解説や看護の視点から注意することなどについて,添付文書を超えた実践的内容が網羅的に書かれているので,辞書的に使用することもできる.しかし,本書の本質は「がん緩和ケアの薬物療法に関する臨床推論」のテキストである.

 臨床推論とは,患者の症状や検査結果などから,どのように診断し,どのような思考プロセスで治療方針を決定し,実際の治療やケアを行うかという一連のプロセスである.臨床推論というと,「医師が行うもの」というイメージがあるかもしれないが,看護師にもよいケアを提供するための臨床推論がある.

 臨床の場面で,「私が医師に伝えても医師が動いてくれなかったのに,あの専門看護師が伝えると医師は処方を再検討してくれた」という経験をした人も少なくないと思う.専門看護師と私では何が違ったのだろうか?―この問いの答えが本書にある.

 専門看護師や認定看護師などエキスパート看護師の頭のなかには,医師がどのような臨床推論を行い,そして看護師は何を考えなくてはならないかということが,知識および経験として蓄積されている.そのため,医師が納得する説明と交渉が可能であり,そこには看護師の視点が十分に反映されている.本書は,そのようなエキスパート看護師の経験を出し惜しみなく言語化したものである.

 本書を読むことによって,「なるほど,医師はこのように考えて薬を処方したのか」「そうであれば,看護師はどういう視点で患者のアセスメントを行い,ケアを構築しなければならないのか」という看護師としての臨床推論のプロセスを理解できるようになる.そうなったとき,あなたもエキスパート看護師に一歩近づいていることだろう.

がん看護29巻6号(2024年11-12月号)より転載
評者●宮下光令(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)

9784524203413