リウマチ・膠原病治療薬処方ガイド
薬剤の基本からよくある疑問をこの1冊で!
編集 | : 堀内孝彦/有信洋二郎/木本泰孝 |
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ISBN | : 978-4-524-20339-0 |
発行年月 | : 2024年4月 |
判型 | : A5判 |
ページ数 | : 264 |
在庫
定価5,280円(本体4,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
ステロイドやメトトレキサートなどの以前より使用されてきた薬剤から,生物学的製剤,JAK阻害薬,そして今後登場するであろう新規薬剤に至るリウマチ・膠原病の治療薬について,代表的な臨床試験の結果,作用機序,副作用などの基本情報,使用上のコツをまとめ,ベッドサイドで役立つ実践的な内容とした.薬剤選択に迷った症例や初学者から多く寄せられる質問も盛り込んだ,リウマチ・膠原病への理解が深まる一冊.
第T章 リウマチ・膠原病の基礎知識
1 リウマチ・膠原病とは
2 リウマチ・膠原病疾患の理解に必要な免疫学
3 国内での薬剤承認年表
4 関節リウマチ(RA)の活動性評価,治療目標,治療アルゴリズム
5 全身性エリテマトーデス(SLE)の活動性評価,治療目標,治療アルゴリズム
第U章 リウマチ・膠原病治療薬の基本情報と使い方のコツ
1 グルココルチコイド(GC):プレドニゾロン(PSL),ベタメタゾン,メチルプレドニゾンロン(mPSL)など
2 関節リウマチ(RA)の治療薬
a.csDMARDs
1 メトトレキサート(MTX)
2 サラゾスルファピリジン(SASP)
3 ブシラミン(BUC)
4 レフルノミド(LEF)
5 タクロリムス(TAC)
6 イグラチモド(IGU)
b.bDMARDs
1 インフリキシマブ(IFX),エタネルセプト(ETN),アダリムマブ(ADA),ゴリムマブ(GLM),セルトリズマブペゴル(CZP)
2 トシリズマブ(TCZ),サリルマブ(SAR)(IL-6受容体阻害薬)
3 アバタセプト(ABT)(T細胞選択的共刺激調整薬)
4 デノスマブ
5 bDMARDs一覧表
6 生物学的製剤(bDMARDs)の使い分け
c.tsDMARDs
1 トファシチニブ(TOF),バリシチニブ(BAR),ペフィシチニブ(PEF),ウパダシチニブ(UPA),フィルゴチニブ(FIL)(JAK阻害薬)
2 JAK阻害薬一覧表
3 関節リウマチ(RA)以外の治療薬
a.免疫抑制薬(内服薬)
1 ヒドロキシクロロキン(HCQ)
2 シクロホスファミド(CY)
3 シクロスポリン(CsA)
4 タクロリムス(TAC)
5 ミコフェノール酸モフェチル(MMF)
6 アザチオプリン(AZP)
7 ミゾリビン(MZB)
8 メトトレキサート(MTX)
9 アプレミラスト
10 アバコパン
b.免疫抑制薬(生物学的製剤)
1 ベリムマブ(BLM)
2 リツキシマブ(RTX)
3 アニフロルマブ
4 カナキヌマブ
5 メポリズマブ
6 セクキヌマブ(SEC),イキセキズマブ(IXE),ブロダルマブ(BRD)(IL-17阻害薬)
7 ウステキヌマブ(UST)(IL-12・IL-23阻害薬)
8 トシリズマブ(TCZ)
9 インフリキシマブ(IFX),アダリムマブ(ADA)
c.抗線維化薬
1 ニンテダニブ
4 今後期待される新規治療薬・治療法
1 オゾラリズマブ(OZR)
2 ボクロスポリン
3 オビヌツズマブ
4 造血幹細胞移植
第V章 症例で学ぶ リウマチ・膠原病
症例1 ライフイベント(結婚式,挙児希望,妊娠・出産など)を考慮して薬剤調整を行ったSLE患者
症例2 難治性の嚥下機能障害をきたした抗TIF1-γ抗体陽性皮膚筋炎
症例3 関節痛・筋痛を呈する疾患のピットフォール:成人型低ホスファターゼ症
症例4 低カリウム血症性周期性四肢麻痺で救急搬送された1症例
症例5 サイトメガロウイルス(CMV)初感染後に一過性の抗リン脂質抗体症候群を発症した1例
症例6 Schnitzler症候群
症例7 後頸部痛で発症したcrowned dens syndrome(CDS)の1例
症例8 TCZが奏効した超高齢RA
第W章 いまさら聞けない疑問集
@ステロイドパルス(IVMP)療法はなぜ1g×3日間なの?
A組織移行性や半減期を考えて,ステロイドを選択すべきなの?
Bステロイドの減量法や減量のゴールは?中止を目指すべきなの?
Cステロイド内服困難時の投与法・投与量は?
Dステロイド使用中の副腎不全の評価方法は?
E周術期のステロイドカバーの方法は?
FMTXはなぜ週1回投与なの?
G腎機能障害合併RAでの抗リウマチ薬の選択法は?
H間質性肺疾患合併RAでの抗リウマチ薬の選択法は?
ITNF阻害薬には,なぜMTXが必要なの?ほかのbDMARDsには必要ないの?
JbDMARDsの減量・投与間隔延長・中止は,どうやって行うの?
K感染症で入院した患者の抗リウマチ薬・免疫抑制薬の休薬・再開はどうやって行うの?
はじめに
リウマチ・膠原病に関する書籍はたくさんあるが,このたびリウマチ・膠原病の治療薬を基本から学ぶ「治療薬処方ガイド」を上梓することにした.この分野の治療法は日々,進歩を遂げており書籍では追いつかないと思われるかもしれない.しかし,治療薬が日進月歩であるからこそ,われわれはもう一度基本に立ち戻って,今ある治療薬が登場した背景,作用機序,そして特徴や注意点を熟知する必要がある.われわれが日頃,何気なく使っている治療薬についてさまざまな角度から知ることは,今後登場する治療薬についても真に理解し上手に使うためにも必ず役立つと考える.
本書では,ステロイドやメトトレキサート(MTX)などの以前より使用されてきた薬剤から,生物学的製剤,ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬,そして今後登場するであろう新規薬剤に至るまで,幅広い薬剤を対象としている.治療薬の基本情報から使用上のコツまでを解説することで,ベッドサイドで参照できる実践的な内容とした.同時に,薬剤選択に困った症例の提示や,初学者からしばしば寄せられる疑問に答えるパートを設けることで治療薬へのより深い理解を提供したいと考えた.
このような趣旨に添って,本書を「リウマチ・膠原病の基礎知識」「リウマチ・膠原病治療薬の基本情報と使い方のコツ」「症例で学ぶリウマチ・膠原病」「いまさら聞けない疑問集」の4つのパートに分けた.
「リウマチ・膠原病の基礎知識」でリウマチ・膠原病の病態とその治療戦略について俯瞰していただきたい.
続く「リウマチ・膠原病治療薬の基本情報と使い方のコツ」では個々の治療薬について,用法・用量,代謝・排泄経路,開発の経緯,作用機序などの基本から,副作用や使用上のコツを紹介して,臨床医がベッドサイドで患者さんを前にして,すぐに参照して処方に使える実践的な内容とした.
「症例で学ぶリウマチ・膠原病」は,読者に時間があるときにゆっくりと読んでいただきたい部分である.教訓的な症例を提示しており,診療に役立てていただけると確信している.
最後の「いまさら聞けない疑問集」は本書でのユニークな試みである.リウマチ・膠原病の分野では残念ながら治療法すべてにエビデンスが揃っているわけではない.とくにステロイドやMTXなどの古い薬では主治医の経験に任せられている部分が少なからず存在する.そこにあえて焦点をあてて,その根拠と背景を改めて論じることで,読者が理解を深められるようになっている.
本書では,一貫性を保つために堀内孝彦,有信洋二郎,木本泰孝の3名が全体を編集したが,加えてその内容は執筆者全員のコンセンサスを得たものである.治療法の選択,使用法のコツについては議論のある部分もあるかもしれないが,実践的であること,読者自身にも考えていただくことを重視してあえて踏み込んだ内容とした.
最後に本書を上梓するにあたって,お忙しいなか執筆をしてくださった皆様方,建設的な助言を賜り,そして出版までご尽力いただいた南江堂編集部の皆様方に深くお礼を申しあげたい.
そして何よりも,本書の企画段階から編集にいたるまで一貫して粘り強く関わってくださった九州大学病院 免疫・膠原病・感染症内科の有信洋二郎講師,木本泰孝助教の存在なくしては,今回の企画が日の目を見ることはなかった.この場をお借りして両先生に心より感謝を申しあげる.
2024年3月吉日
九州大学病院別府病院 免疫・血液・代謝内科
堀内孝彦
新しい治療ガイド発刊:リウマチ・膠原病領域の革新的進歩を受けて
本書は,近年進歩の著しいリウマチ・膠原病領域における薬物治療を網羅し,基本的知識から最先端の内容までを学べるように企画された治療薬処方のためのガイドである.
澄み渡った空のようにきれいなライトブルーの色合いで,また手にとった感じもとてもすっきりとしている.白衣のポケットに収まるハンドブックとして,日常診療での活用が期待できるつくりになっており,色づかいによって開かなくても簡単に各章を識別できる.電子機器によってさまざまな情報へ簡単にアクセスできるようになったとはいえ,臨床現場において紙の本をパラパラとめくってすぐに欲しい情報に辿り着けるそのメリットは,決して失われることはないと感じる.
本書の内容はリウマチ・膠原病疾患の基本的な病態や分類などの概説から始まる.リウマチ・膠原病領域では近年病態理解が著しく進歩し,分類基準などの改訂も続いているが,これらに関する最新の情報が盛り込まれている.活動性の評価,標準的な治療指針などは,治療を行ううえでの必須知識であるが,この点においても最新の内容を初学者でもわかりやすく,しかも簡潔にまとめられている.
次に各論が展開される.関節リウマチの治療薬から関節リウマチ以外の治療薬へと続く形で項目立てられ,それぞれグルココルチコイドなどの基本的薬剤から,生物学的製剤,JAK阻害薬など,最新の分子標的治療薬まで網羅されている.各薬剤については,その薬剤あるいは薬剤グループの作用機序,特徴,使用方法,副作用まで,冗長になることなく重要なポイントを押さえて簡潔に記載されており,大変読みやすい.
さらに,今後期待される開発中の薬剤,症例提示,いまさら聞けない初歩的な質問などに対する回答へと続いており,初学者はもとより経験のある医師にとっても役立つ大変充実した内容となっている.進歩の著しいリウマチ・膠原病領域において,基盤となるこれまでの治療薬から最新の分子標的治療薬,さらには今後期待される薬剤まで,歴史的な流れをよく捉えている優れた解説書である.実地診療で活用できるのみならず,リウマチ・膠原病の治療学をあらためて体系的に学ぶ際の書としても,大変優れている構成と感じた.
編集にあたられた堀内先生,有信先生,木本先生は,各領域を専門とする著者の選定や記載内容の統一においてご苦労も多かったと推察する.また,その要請に応えられ,専門的な内容に統一感をもたせて工夫された著者の先生方のご尽力に心より敬意を表したい.本書が多くの方の強力な情報源になることを祈念し,推薦したい.
臨床雑誌内科135巻1号(2025年1月号)より転載
評者●竹内 勤(埼玉医科大学 学長,慶應義塾大学 名誉教授)