スポーツ外傷・障害の手術スタンダード[Web動画付]
編集 | : 石橋恭之 |
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ISBN | : 978-4-524-20336-9 |
発行年月 | : 2023年7月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 328 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
患者の特性上,スポーツ損傷にはより早く競技に復帰できる治療,受傷前と同程度以上の機能を維持できる治療が期待される.こうした治療の実践において不可避な選択肢である手術は,この数年で目覚ましい手技の変化と治療成績の向上をみせている.本書は,関節鏡の基本手技から手術のエッセンスまでを今日この時もメスをとるスポーツドクターが自らの言葉で紡いだ,まさにスポーツ損傷に対する手術のスタンダードである.
T 総 論
A.手術治療を要するスポーツ損傷
B.関節鏡視下手術の基本手技
1.肩関節鏡
2.膝関節鏡
3.股関節鏡
4.その他:肘,足
U 各 論
上肢
A.肩
1.反復性肩関節脱臼
2.肩鎖関節脱臼
3.SLAP lesion,投球障害肩
4.胸郭出口症候群
B.肘
1.上腕骨小頭離断性骨軟骨炎
2.肘頭疲労骨折
3.肘内側側副靱帯損傷
C.手・手関節
1.母指側副靱帯損傷
2.手根骨(舟状骨・有鉤骨鉤骨折)
3.手指の外傷
下肢
A.膝
1.膝靱帯損傷(ACL)
2.膝靱帯損傷(PCL,複合靭帯)
3.半月板損傷(円板状半月含む)
4.離断性骨軟骨炎
5.ジャンパー膝(Osgood,分裂膝蓋骨)
B.股関節・大腿
1.FAI,関節唇損傷
2.肉離れ
C.下腿・足
1.脛骨疲労骨折(跳躍型,内果)
2.足関節外側靱帯損傷
3.腓骨筋腱脱臼
4.距骨骨軟骨損傷
5.足関節前方インピンジメント症候群
6.足関節後方インピンジメント症候群
7.第5中足骨疲労骨折
8.足部の副骨障害
9.アキレス腱断裂・付着部症(滑液包炎)
動画一覧
T 総 論
B.関節鏡視下手術の基本手技
1.肩関節鏡
動画1 マーキングの仕方
動画2 関節鏡の持ち方
動画3 関節鏡の関節内への刺入
動画4 関節内基本鏡視
動画5 肩峰下への刺入の仕方
動画6 側臥位でのポータル作製
動画7 関節内インピンジメントPSI
動画8 腱板小断裂
動画9 脱臼2巨大Hill-Sachs
2.膝関節鏡
動画 膝関節鏡
3.股関節鏡
動画1 股関節鏡セッティング
動画2 関節唇縫合Lasso suture
動画3 関節唇縫合labral base refixation
4.その他:肘, 足
動画1 肘関節鏡マーキング
動画2 肘関節鏡前内側ポータル
動画3 肘関節鏡前外側ポータル
動画4 肘関節前方コンパートメント鏡視(図5a)
動画5 肘関節前方コンパートメント鏡視(図5b)
動画6 肘関節前方コンパートメント鏡視(図5c,d, 図6a,b)
動画7 肘関節前方コンパートメント鏡視(図6c)
動画8 肘関節後方コンパートメント鏡視(図6d)
動画9 足関節前方鏡視(図9a, b)
動画10 足関節前方鏡視(図9c, d)
動画11 足関節後方鏡視(図11c, d)
U 各論
上肢
A.肩
1.反復性肩関節脱臼
動画1 鏡視下Bankart修復術
動画2 HAGL病変
動画3 腱板疎部縫合
動画4 Hill-Sachs remplissage
動画5 腸骨移植術
3.SLAP lesion, 投球障害肩
動画1 関節内の評価
動画2 SLAP病変の評価
動画3 後上方関節唇の処置
動画4 前上方関節唇の処置
動画5 後方関節包解離術
4.胸郭出口症候群
動画 第1肋骨切除術
B.肘
1.上腕骨小頭離断性骨軟骨炎
動画1 鏡視下骨穿孔術(ドリリング)
動画2 鏡視下骨軟骨柱移植術
2.肘頭疲労骨折
動画1 皮切〜展開
動画2 マーキング
動画3 四隅に穿孔
動画4 骨切り
動画5 骨切り ノミ
動画6 骨ブロック摘出
動画7 病巣掻爬
動画8 骨移植〜骨ブロック元に戻す
動画:採骨@ 皮切
動画:採骨A ノミにて穴あけ
動画:採骨B 海綿骨を採取
動画:採骨C 皮質骨を元に戻す
3.肘内側側副靱帯損傷
動画 MUCL再建術
C.手・手関節
1.母指側副靱帯損傷
動画1 ストレステスト
動画2 RCL陳旧例
2.手根骨(舟状骨・有鉤骨骨折)
動画1 舟状骨偽関節手術
動画2 有鉤骨手術
3.手指の外傷
動画 マレットフィンガーの治療(石黒法)
下肢
A.膝
1.膝靱帯損傷(ACL)
動画1 BTBを用いた解剖学的長方形骨孔前十字靱帯再建術
動画2 ハムストリング腱を用いた解剖学的2束ACL再建術
2.膝靱帯損傷(PCL,複合靱帯)
動画 PCL修復術
3.半月板損傷(円板状半月板含む)
動画1 MMバケツ柄状断裂に対するinside-out修復術
動画2 LM中節横断裂に対するinside-out修復術
動画3 MMバケツ柄状断裂に対する「関節包を含むall-inside縫合」の併用
動画4 CDLM水平断裂に対する「関節内のみでのall-inside縫合」の併用
動画5 MMPRTに対するpullout修復術
動画6 LM後角・後根断裂(同時ACL再建)に対するall-inside法とpullout法の併用
4.離断性骨軟骨炎
動画1 大腿骨外顆離断性骨軟骨炎に対する鏡視下ドリリング(右膝)
動画2 大腿骨内顆離断性骨軟骨炎に対する鏡視下固定術(右膝)
動画3 PushLockによる固定
動画4 自家培養軟骨移植術(JACC, 左膝)
5.ジャンパー膝(Osgood,分裂膝蓋骨)
動画1 変性腱部分切除術
動画2 骨片摘出術
B.股関節・大腿
1.FAI,股関節唇損傷
動画1 Pincer変形の切除
動画2 Cam病変の切除@
動画3 Cam病変の切除A
動画4 股関節唇の修復
動画5 股関節唇の再建
動画6 骨頭軟骨のマイクロフラクチャー
動画7 関節包靱帯の縫合
2.肉離れ
動画 RF repair
C.下腿・足
2.足関節外側靱帯損傷
動画1 エコー併用関節鏡視下ATFL修復術
動画2 ATFL補強
3.腓骨筋腱脱臼
動画1 腱鏡視.低位筋腹確認・切除
動画2 仮性嚢閉鎖
4.距骨骨軟骨損傷
動画1 逆行性ドリリング
動画2 骨軟骨片固定術
5.足関節前方インピンジメント症候群
動画 前方インピンジメント
6.足関節後方インピンジメント症候群
動画1 足関節最大底屈位としてインピンジメントのないことを確認
動画2 母趾を底背屈しFHLの滑走に障害のないことを確認
7.第5中足骨疲労骨折
動画 Jones骨折
9.アキレス腱断裂・付着部症(滑液包炎)
動画1 アキレス腱縫合
動画2 アキレス腱付着部症
スポーツとは,勝敗を争う競技スポーツであれ,娯楽や健康を目的とするレクリエーショナルスポーツであれ,人生をより豊かにしてくれるものです.しかし,残念ながらそのスポーツにより,ときに外傷や障害が生じてしまうことも事実です.トップアスリートであれば,その後の競技人生に大きな影響を与え,成長期のアスリートであれば,成長障害をきたしたり,スポーツそのものを諦めたりすることにもつながりかねません.
スポーツ外傷・障害に対する治療のゴールは,疾患を治癒させるだけではなく,受傷前のレベルへの復帰,さらには再発予防です.もちろん,保存治療が大原則であり,その技術は日進月歩しています.スポーツ外傷の代表格といえば,膝前十字靱帯損傷ですが,その予防トレーニングの進歩により,ある程度,発生頻度を減少させることが可能となりました.また,投球障害肩に代表されるスポーツ障害は,その発症メカニズムの解明により,不良フォームの改善やトレーニングなどによって,多くの症例が手術せずに治癒することが可能となりました.
しかし,スポーツ外傷・障害の中には,前十字靱帯損傷のように手術でしか治せない場合や,保存治療では治癒まで長期間を要するため,早期に復帰するには手術が必要となる場合もあります.関節鏡視下手術の普及や各種手術機器の開発により,この数年で手術治療は大きく変化し,その治療成績も年々改善してきています.本書では,日常診療で比較的多く遭遇するスポーツ外傷・障害を取り上げ,各分野の専門の先生方からその手術手技のポイントを,動画を交えながらわかりやすく解説していただきました.また,各項目の終わりには競技復帰までの後療法を簡単にまとめていただきました.
本書は,主にスポーツ外傷・障害の手術手技習得を目指す整形外科専門医を対象に企画されました.スポーツ外傷・障害を負ったアスリートに最適な治療方法を提示し,手術治療後に競技復帰までの道筋を示すためには,保存治療と手術治療のメリット・デメリットを理解する必要があります.そこで,整形外科専門医だけではなく,アスリートの治療に関わる理学療法士やトレーナー,スポーツ専門医の方々にも,ぜひとも本書をご活用いただきたいと思います.
最後になりましたが,本書発刊のためにご執筆にご協力いただいた先生方や,南江堂編集部の方々に深謝いたします.
2023年5月
石橋恭之
スポーツ人口の増加に伴い,競技スポーツ選手のみならず小児から高齢者まで各年代層でスポーツをする人々が増加しています.スポーツは本来競争的な競技種目でありますが,最近では適切な強度のスポーツ活動は精神的,また肉体的健康増進や生活習慣病の予防などにも大いに役立つことが明らかとなっています.しかし,運動強度,運動量や運動方法を誤ると四肢や体幹に障害を引き起こし,スポーツ活動だけでなく時には日常生活などにも支障をきたします.現在の整形外科診療において,「スポーツ外傷・障害」は大きな課題となっています.
「スポーツ外傷」と「スポーツ障害」はその原因が異なります.スポーツ外傷は1回の外力による損傷であり,スポーツ障害はいわゆるオーバーユースが原因となります.また,スポーツ外傷・障害ともに四肢の各関節に多様な病態が生じます.近年,四肢関節の詳細な解剖やバイオメカニクスなどの基礎研究,種々の治療法に関する臨床研究の進展,画像検査や評価法の進歩,新しい治療機器,薬剤の導入により,スポーツ外傷・障害に対する診断・治療は大きな変遷を遂げています.また,障害発生そのものを予防しようとする取り組みも盛んとなり,大きな成果を上げている競技や疾患もあります.スポーツ外傷・障害の治療において,適切で効果的な保存的治療が第一選択であることは間違いありません.一方,保存的治療無効例では手術的治療が選択されます.また膝前十字靱帯損傷などのように手術的治療が第一選択である疾患もあります.スポーツ外傷・障害に対する手術的治療の進歩は目覚ましく,特に関節鏡視下手術手技の進歩や医療機器の改良により,より低侵襲で効率的な手術的治療が開発されています.日進月歩であるその膨大な最新情報や知識を適切に,効果的に獲得することは容易ではありません.
本書は総論と各論に分かれ,スポーツ外傷・障害の手術的治療のエッセンスをスポーツ整形外科の領域で活躍されている新進気鋭の先生方により執筆されています.まず,総論では「手術治療を要するスポーツ損傷」の総説に続いて,肩関節鏡,膝関節鏡,股関節鏡,その他肘および足関節を用いた関節鏡視下手術の基本手技について解説されています.関節鏡視下手術はポータルの作製方法,鏡視の肢位,適切な診断や関節鏡操作などコツの多い手技であり,その詳細が詳しく述べられています.各論においては,上肢では肩,肘,手・手関節,下肢では膝,股関節・大腿,下腿・足の項目ごとに日常診療でしばしば遭遇する疾患が網羅されています.各疾患について総説,診断,必要な検査,詳細な手術手技や術者のコツ,注意点,後療法などが詳細に記載されており,明日からの診療に役立つ情報ばかりです.また,本書の大きな特徴の一つは,総説の関節鏡視下手技から各論の各疾患の手術手技についてWeb動画が付いていることであり,読者は実際の手術見学のように手術術式をその目でみることができます.
編集された石橋恭之先生が本書の序に書かれていますが,本書はスポーツ外傷・障害の手術手技獲得をめざす整形外科専門医のみならず,アスリートの治療に携わる理学療法士やトレーナーの方々などにもぜひ手に取っていただきたい一冊です.本書はその帯にありますように,収載されている「適切な適応判断,手術後のスポーツ復帰までのプロトコル,手術で後悔しないためにやっておくべきこと,結果に差が出る要因,意外と知らない手技のコツ・こだわり」などの内容は豊富であり,まさに「スポーツドクターになるための本物の武器を備える各術式の至高のエッセンス」が凝縮された名著です.
臨床雑誌整形外科75巻2号(2024年2月号)より転載
評者●広島大学大学院整形外科教授・安達伸生