臨床推論のススメ方
全国GIMカンファで話題を集めた24症例
編集 | : 原田拓/沖中敬二 |
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ISBN | : 978-4-524-20309-3 |
発行年月 | : 2024年3月 |
判型 | : A5判 |
ページ数 | : 272 |
在庫
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
全国各地のGIMカンファレンスで話題が沸騰した診断困難例をもとに,時系列に沿って診断に至るまでの思考プロセスを克明に解説.発熱,頭痛等の初期症状からはじまる診療の思考を,その試行錯誤も含めて追ううちに,現場で真に役立つ臨床推論の力が身に付く,全科医師必読の一冊.あなたの参加を待つ各地GIMカンファレンスの紹介や連絡先も掲載!
SYMPTOMS 1 発 熱
1 黒いのには理由がある 信州GIM
case.皮膚の黒い女性の発熱
2 穴はぜんぶ診たか? 関西GIM
case.中年女性に発症した亜急性の発熱と肝酵素上昇
3 行き詰まったら病歴と身体所見に戻る とうほくGIM
case.発熱で入院となりショックとなった高齢男性
4 出しててよかった! あの検査 北海道GIM
case.発熱と腰痛で動けなくなった若年男性
SYMPTOMS 2 頭痛,めまい
1 労作で悪化するめまい,その原因は? 新撰医チバGIM
case.高齢女性に発症した急性めまい
2 犯人はシックよ! 京都GIM
case.中年女性に急性発症した持続性の回転性めまい
3 ○○医大○○ 大船GIM
case.中年男性に発症した急性頭痛
SYMPTOMS 3 疼 痛
1 quadruple antiplatelet therapy(QAPT)の功罪 東京GIM
case.高齢女性に発症した急性腰痛
2 原因不明の足の付け根の痛み,その原因は? 新撰医チバGIM
case.高齢者に発症した足の付け根の痛み
3 しみじみ感じる事前確率の大切さ 琉球GIM
case.高齢男性に発症した四肢の浮腫と関節痛
4 らしいけど,らしくない 東京GIM
case.中年男性に起こった繰り返す関節痛
5 痛みの原因は? 栃木GIM
case.高齢男性に発症した全身痛
6 痛みに泣かされた夜〜a horrible night with pain〜 大船GIM
case.若年女性に発症した急性の全身痛
7 お腹が痛くなったり関節が痛くなったり 岡山GIM
case.急性腹症を契機に電解質異常が発見され,治療後に関節痛を生じた中年男性
SYMPTOMS 4 呼吸器系症状
1 口内炎が治りません 愛知GIM
case.長引く倦怠感と咳,その後出現した口内炎
2 階下に潜む原因 コロッケ会
case.3週間以上続く咳嗽,風邪と診断されるも改善せず
3 歯磨きをしているときは酸素化がいい? みとのくプロレス
case.転倒による入院から夜間にチアノーゼ発症,低酸素血症も……
4 見えない原因を見つけ出せ! 岡山GIM
case.肺腫瘤を伴わない原因不明の胸水貯留
SYMPTOMS 5 神経系症状
1 担がん患者の神経障害 北海道GIM
case.肺がんに対する化学療法中の患者に発症した亜急性の歩行障害
2 「OK」できずに涙がポロリ 東京GIM
case.左母指と左示指が動かしにくい
3 目くらましにご注意,その診断は飲み込めない 信州GIM
case.高齢男性に出現した急性の嚥下困難
4 You should know this if you know medicine 愛知GIM
case.中年男性に発症した亜急性の性格変化
SYMPTOMS 6 その他
1 マイケル・ジャクソンがキャプテン 栃木GIM
case.中年男性の急性発症した頸部腫瘤
2 過眠で内科外来を受診した1例 何を鑑別? 福岡GIM
case.過眠を主訴に来院
GIM紹介
・北海道GIMカンファレンス
・とうほくGIMカンファレンス
・みとのくプロレス
・栃木GIMカンファレンス
・新撰医チバGIMカンファレンス「Chiba Shinryo Innovation」
・東京GIMカンファレンス
・大船GIMカンファレンス
・信州GIMカンファレンス
・愛知GIMカンファレンス
・関西GIMカンファレンス Diagnostic‘High—Level’Conference(DHC)
・京都GIMカンファレンス
・岡山GIMカンファレンス
・福岡GIMカンファレンス
・コロッケ会
・琉球GIMカンファレンス
Column・GIMのススメ
・オフなGIM〜カンファ以外で得られるこんなお得ポイント〜
・臨床推論の力を磨く上で私が心掛けてきたこと
・ポストコロナとGIM〜リモートはあり? やっぱり集まりたい?〜
・まだGIMに参加したことのない読者の方へ
Column・わたしの診療
・忘れられない患者
・日本初? いや,世界初?「腫瘍リウマチ膠原病科」の誕生
・忘れられない出来事
“混みあった救急外来担当中,頭痛・全身痛を主訴に受診し,痛みで泣いている40歳女性(看護師)にどのように対応しますか?”
本書は,総合診療のエキスパートたちが診断困難な症例に出会ったときにどのように考えるのかを,「The New England Journal of Medicine」のClinical Problem—Solvingを参考に,臨場感を持って解説した珠玉のケースシリーズです.日常診療でしばしば遭遇するような疾患から,非常に稀なものまで,様々な種類の疾患を取り扱っており,臨床現場で困った際のエキスパートの考え方を学ぶことができます.
総合内科医のみならず臓器別専門医の先生にとっても,総合内科の先生がどのように考えて診断にたどり着いたかという診察・考察の流れは新鮮かつ勉強になると確信します.がん専門病院に長く勤める筆者も,本書の編集を通してがん患者に合併する様々な病態を学ぶことができました.
現在,日本各地に素晴らしい総合内科診療(GIM:General Internal Medicine)のカンファレンスがたくさん行われています.ここでどのような議論が行われているのか興味を持たれている方も多いと思います.本書ではその内容を垣間見ることができます.コロナ禍で一時期開催が難しかったものの,再開されたGIMカンファレンスの中には,オンラインで参加できるものもありますので,本書で興味を持たれた場合は,ぜひ実際のカンファレンスへのご参加もご検討ください.
本書は2019年8月〜2021年11月号の臨床雑誌「内科」において連載された内容に加え,新たな症例やコラムを追加したものです.筆者が「内科」の編集委員を務めていた際に,Tokyo GIM conferenceの内容を広く誌上で共有させていただけないかと忽那賢志先生(現・大阪大学教授)に打診し,代表の原田拓先生をご紹介いただきました.原田先生から日本各地のGIMカンファレンスへお声がけいただき,GIMに携わっておられる先生方の連携の良さや協力的な姿勢に感嘆しました.
新進気鋭の先生方からあこがれの御高名な先生方まで多くの方々にご協力いただき,本書が誕生しました.また,編集作業の中心を担っていただいた原田拓先生はもちろんのこと,忽那賢志先生,南江堂の皆さんに多大なるご尽力を賜りました.この場を借りてご執筆・編集等にご協力をいただいた皆様に深く感謝申し上げます.
2024年3月
冲中 敬二
(なお,冒頭の症例はsymptoms 3.疼痛の6症例目「痛みに泣かされた夜」です)
あ,これあの本に書いてあった症例かも?!
臨床現場において,一人の医師が経験できる症例は限られている.また,経験症例の数が多くても,十分吟味することなく数をこなしただけでは,真に理解が深まったとはいえない.本書は,一流の臨床医である執筆陣がまれな疾患の典型例,非典型的な症状・所見を呈するコモンディジーズのリアルな経験を共有してくれ,その後の読者の実臨床に役立てることができる.
実臨床では,診断困難事例や,残念ながら診断がつかない症例もしばしば経験する.マルチタスクに追われる忙しい医療現場においては,すべての症例について文献検索を行って,読み込み,整理して目の前の患者さんに対する方針に落とし込むのは,ハードルが高い作業である.また,診断困難症例では,どのようなキーワードで文献検索すべきであるかの判断が難しく,そもそもプロブレムをプロブレムとして認識できていないこともあるかと思う.本書は,それぞれの症例に対する時系列に沿った思考プロセスを詳細に解説しており,初期症状から最終的な診断に至るまでの試行錯誤の過程をリアルに追体験できる.本書の強みはただ症例を紹介するだけでなく,なぜその診断に至ったのかを明確にしている点だと思う.そのため,単に症例を学ぶことに留まらず,実際の臨床現場で直面するであろうさまざまな課題に対して,どのようにアプローチしていけばよいかという指針を得ることができる.
さて私は,約10年前に市立堺病院(現・堺市立総合医療センター)の総合内科の後期研修医として,月に1回の頻度で京都GIMカンファレンスに参加していた.2ヵ月に1回くらいの頻度でわれわれの施設が症例のプレゼンを担当する機会があったが,症例の選択が難しかったことに加えて,キャッチーなタイトルを考えるのに苦心していた.プレゼンの内容もさることながら,タイトルのセンスとプレゼンターのエスプリが試されていたのである(仕様もないタイトルをつけたときには……).そのような私自身の経験からも,本書の24症例は本当に秀逸だと思う.
本書を通して,京都GIMカンファレンス以外にも,全国でたくさんのGIMカンファレンスが開催されていることに驚きを感じた.オンラインのカンファレンスも多くなっているようで,参加しやすそうである.本書に興味をもたれた方は,ぜひ,お近くのカンファレンスに参加してみてはいかがであろうか?
臨床雑誌内科134巻2号(2024年8月号)より転載
評者●伊東直哉(名古屋市立大学大学院医学研究科生体防御・総合医学専攻生体総合医療学講座感染症学分野 主任教授/
名古屋市立大学医学部附属東部医療センター感染症科 部長)