内視鏡下縫合・結紮手技トレーニング[Web動画付]改訂第2版
監修 | : 日本内視鏡外科学会教育委員会 |
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編集 | : 黒川良望/笠間和典/内藤剛 |
ISBN | : 978-4-524-20238-6 |
発行年月 | : 2023年12月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 164 |
在庫
定価9,350円(本体8,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本内視鏡外科学会主催の講習会の内容をベースとして,縫合・結紮手技の基本を学べる実践書の改訂版.トレーニング法から,消化器外科を中心に,泌尿器科,婦人科,呼吸器外科領域の手術実践における縫合・結紮の方法や注意点まで網羅.さらに 講習会のWeb開催移行や新たな自主トレーニング法 ,ロボット手術における縫合・結紮など最近の変化も反映して内容を大幅に拡充.内視鏡外科手術を始めたい助手・術者のみならず,技術認定取得やさらなる上達をめざす読者に最適の一冊である.
ChapterT トレーニングに入る前に─内視鏡下縫合・結紮の基本概念
A.定義,用語
B.縫合・結紮の準備
C.縫合・結紮の基本操作(動画1〜8)
ChapterU 縫合・結紮手技トレーニング
A.トレーニングの流れ
B.到達度評価
C.トレーニングボックスの使い方
D.マルチエンドボックスを用いたリモートトレーニング(動画9)
E.トレーニングの実際
1.針の把持と運針の基本(動画10)
2.専用シート(Step’n Stepシート)を用いた結紮トレーニング(動画11〜18)
3.糸結び,縫合
F.ロボット支援手術における縫合・結紮操作練習(動画34〜44)
ChapterV 実臨床での縫合・結紮
A.領域別・術式別の縫合・結紮
1.消化器外科領域における縫合・結紮の実際
2.泌尿器科領域における縫合・結紮の実際(動画76〜79)
3.婦人科領域における縫合・結紮の実際(動画80〜82)
4.呼吸器外科領域における体外結紮法(動画83)
B.応用:特殊な状況における縫合・結紮
1.ワーキングスペースが狭い状況での縫合・結紮(動画84〜86)
2.トラブルシューティング(止血縫合など)
索 引
Web動画付録 内視鏡下縫合・結紮時の手元の動き
第2版の序
1980年代後半から内視鏡外科が開始され,30年以上の時が過ぎ,ロボット支援手術へと発達を遂げた.その間の医療機器の開発は目覚ましく,外科学の変化・発展に大きく寄与した.しかし,開腹手術の時代から現在の手術まで,外科手術の基本は一貫して,適切な術野の確保,剥離,切離,縫合・結紮であることは変わりがない.様々なデバイスにより剥離,切離は簡便に行えるようになってきたが,依然として縫合は針と糸を使った手作業であり,修練を必要とする操作であることが多い.
2005年より日本内視鏡外科学会が主催する内視鏡下縫合・結紮手技講習会は,2023年までに222回行われ,のべ5,300人を超える受講者が参加した.トレーニングボックスを用いたトレーナーによる直接指導で縫合・結紮手技の基本動作,内視鏡手術の基礎となる理論とhand-eye coordination,両手の協調動作などを習得し,さらに高度な運針や吻合のための練習方法などを習得することを目的としている.2020年に世界を襲った新型コロナウイルス感染症の影響により,同講習会の開催が不可能となったため,新たに遠隔での講習会も開始された.本書は同講習会での練習内容を網羅し,さらに講習会では十分に説明できなかった縫合・結紮手技のコツを講習会の講師を務めた先生方を中心に解説いただいた.
当時の日本内視鏡外科学会教育委員長であった黒川良望先生の編集で作成されていた第1版に引き続き,本第2版は黒川先生のご指示のもと,同講習会コーディネートを担当する理事である笠間・内藤の両名が編集に加わり,ロボット支援手術での縫合など近年新たに必要となった技術に加えて,遠隔でのトレーニングの方法,縫合・結紮の技術を用いないと危機を回避することができないときのトラブルシューティングなどにも言及した.多くの技術をWeb動画によって閲覧することができるので,ぜひ動画もご覧いただきたい.
日本内視鏡外科学会の内視鏡下縫合・結紮手技講習会は世界的にも類を見ない長い歴史をもつ系統的な縫合・結紮手技講習会であり,日本内視鏡外科学会が世界に誇れるものの1つである.これを支えていただいたのは,歴代のコーディネーター,インストラクターの教育への情熱と信念であり,またご協力をいただいた事務局や企業のおかげでもある.
この序文をもって,上記の方々への感謝の意を表明いたします.
2023年12月吉日
日本内視鏡外科学会理事
笠間和典,内藤 剛
本書は2023年12月に出版された.本書の初版は,トレーニングボックスを用いたトレーナーによる直接指導で縫合・結紮手技の基本動作を教習することにより,若手外科医が内視鏡手術の基礎となるhand-eye coordinationや両手の協調運動を習得することを目的に,2005年3月〜2016年3月に150回開催された日本内視鏡外科学会の内視鏡下縫合・結紮手技講習会のテキスト内容をベースとしたものである.詳細な説明,講習会では説明しきれなかった部分の動画,エキスパートによる縫合・結紮のコツの解説が盛り込まれたたいへん魅力的で実用的なもので,当時の日本内視鏡外科学会教育委員会委員長である黒川良望先生の編集により作成された.初版の出版から7年を経て,内視鏡手術は手術支援ロボットなど医療機器のめざましい開発・導入により新たな時代を迎えた.一方で,2020年に世界を襲った新型コロナウイルス感染症の影響により,内視鏡下縫合・結紮手技講習会の開催が不可能となり,新たに遠隔での講習会も開催された.
本書(改訂第2版)では,同講習会の担当理事である笠間和典先生と内藤剛先生のお二人が編集に加わり,ロボット支援手術での縫合など,その間新たに必要になった技術,遠隔でのトレーニング法,縫合・結紮技術を用いたトラブルシューティングに関する記載を加え,webでの動画閲覧を提供している.ChapterU「縫合・結紮手技トレーニング」の「F.ロボット支援手術における縫合・結紮操作練習」の章では,組織損傷を起こさない運針の軌道,術者の手・腕の動きの原則が詳述され,運針,糸の手繰り,結紮それぞれの手順,動作要領,コツが文章と動画により非常にわかりやすく提示されている.この章は胸部領域のロボット支援手術術者・指導者も必読と考える.練習方法のセクションの骨盤モデル連続縫合の両手の協調動作・運針はとりわけ素晴らしく,ロボット支援下に気管支吻合や血管吻合を手がけようとする術者には,ぜひ一度ご覧いただきたい.
ChapterV「実臨床での縫合・結紮」の「A.領域別・術式別の縫合・結紮」の中の「4.呼吸器外科領域における体外結紮法」は,岩ア正之先生が執筆され,動画をお示しくださっているが,糸送りのコツなどがとてもわかりやすく解説されており,若手呼吸器外科医のトレーニング,指導に際し有用である.同じくChapterV「B.応用:特殊な状況における縫合・結紮」の中の「2.トラブルシューティング(止血縫合など)」では,消化管手術,肝胆膵手術,泌尿器科手術,婦人科手術におけるトラブルシューティングが,文章と写真,動画で詳しく提示されている.胸部外科領域とは状況が異なるが,初期対応の基本的な考え方やトラブル時の縫合手技のコツなど,私たちの手術にも通ずる示唆に富む内容である.胸部領域の外科医にもぜひお読みいただきたい.
胸部外科77巻9号(2024年9月号)より転載
評者●藤田医科大学医学部呼吸器外科学教授・星川 康