Harborview Illustrated Tips & Tricks in Fracture
Surgery, 2nd ed.
著者 | : M.B.Henley, M.F.Githens & M.J.Gardner |
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出版社 | : WOLTERS KLUWER |
ISBN | : 978-1-4963-5598-0 |
ページ数 | : 761pp.(924illus.) |
出版年 | : 2019年 |
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定価31,339円(本体28,490円 + 税)
- 商品説明
- 書評
骨折治療の手技的側面に焦点を当て,外傷治療の現場ですぐに応用できる最新ガイダンスを提供するテキスト,改訂第2版.ワシントン大学ハーバービューメディカルセンターの整形外傷外科プログラムを修了した医師らが,専門的実務から得た新しい秘訣や手技を,独自の問題解決アプローチを用いてわかりやすく解説する.
●大腿骨の各骨折,ハードウェア除去,舟状骨・立方骨骨折に関する各章を新たに追加
●ハーバービュー整形外傷外科のフェロー・プログラム修了医師らにより,前版に比べてさらに多くの手技的秘訣を加えた内容
●頸部,上肢,手関節,足関節,足部,膝関節,下肢における最新の骨折治療について,慌ただしい外傷現場で役立つように要点をおさえた解説
●手技とその背景にある解剖を視覚的に提供する,豊富な図表と注釈付き図解
●重要事項が素早く理解できる,簡潔な箇条書きフォーマットと標準化した組織的構成
●必要機器,患者の最適な体位,画像撮影,ハードウェアとインプラント,修復と固定,骨折整復などを網羅する各トピック
●整形外科医,外傷外科医に加え,外傷治療現場で患者ケアを学ぶ整形外科研修医にも最適な内容
●本書には,タブレットやスマートフォンにダウンロードして専用アプリからいつでもアクセスできるインタラクティブなeBook版がバンドルされている
本書は,ワシントン大学ハーバービューメディカルセンターの整形外傷外科プログラムを修了した医師らにより執筆されたテキストであり,初版は2012年に刊行された.同センターで行われている整形外傷手術について,術前計画に沿った準備物からセッティング,術中の整復手技や固定テクニックなど,実際の手術をいかに遂行するかに特に焦点を当て,イラスト,カラー写真,術中イメージ画像を余すことなく用いて,そのコンセプトを読者に知らしめるという斬新な内容構成により好評を博した名著であった.筆者自身,本書をはじめて手にしたときの衝撃は今でも鮮やかに残っている.初版からの愛読者であるが,その改訂第2版の書評執筆という貴重な機会をいただいた.「同センターの研修プログラムを終了した医師」と何気なく冒頭に書いたが,整形外傷という分野を少しでも勉強した者にとっては垂涎の執筆陣(Barei DP,Chip Routt ML,Cole PA,Gardner MJ, Miller AN,Nork SE,…)といえる.初版のスタイルを踏襲しつつ,さらなる進化を遂げた本書の特長や改良点などについて紹介したい.
まず本書の読者としては,整形外傷手術に携わるすべての医師が対象となりうるが,その中でも特に,まさに「現役執刀医の」先生方,さらには「今にも執刀医になりそうな」先生方にとって,「目から鱗」な手技に溢れた多くの福音をもたらす手術テキストといえよう.研修医の先生方にも十分にためになる内容であるが,実践書としての性格が強いため,Rockwood や Campbell などの成書と合わせて読むことをおすすめしたい.
第1節では枕のおき方なども含めた患者体位の取り方とセッティング,体位に関連したイメージワークについて詳述されており,第2版では回旋を含むアライメント評価法や開放骨折の処置,1皮切による下腿コンパートメント症候群の筋膜切開,感染に対する抗菌薬セメントの作り方と使い方など,すべての部位において骨折治療の基礎となる総論的な内容が追加されており,たいへん勉強になる.
それに引き続く第2節以降では,章の冒頭に準備する滅菌器具と使用インプラント,体位,基本アプローチ,整復固定テクニックの概要が示され,次いで部位ごとの秘伝ともいえるアプローチや整復のtipsが豊富な術中イメージ画像や術中写真とともに解説されていく.自身の気になる部位のページを読み進めると,あたかも模擬手術を行っているような感覚に陥るとともに,しばしば「ほう,その手があったか」とか「へえ,ここまでやるんだ」といった術者同士にしかわからない共感や驚き,さらに時には尊敬の念さえ湧いてくるような症例も提示されている.肩甲骨の骨接合やrim plateなど,ミニインプラントの重度関節内骨折に対する応用も大いに参考になる.
各論においては肩甲骨骨折,インプラント周囲大腿骨骨折,足部骨折(舟状骨,立方骨,Lisfranc損傷,中足骨骨折),鉗子やKirschnerワイヤーの使い方,抜釘のtipsなどのトピックが追加された.新たな知見からのtipsも各章に追加されており,本文分量も425頁(初版)から752頁と大幅に増量されている.また本書は電子化にも対応しており,タブレットやスマートフォンにダウンロードし,専用アプリからいつでもアクセスできるeBook版も書籍購入により使用可能となる.
本書は,40年以上にわたって整形外傷外科プログラムを改良・運営し,世界最高レベルの外傷外科医を輩出し続けるハーバービューメディカルセンターに継承される骨接合技術の真髄ともいえる,整復手技・固定テクニックを惜しみなく披露している.外傷整形外科医もしくはそれを目指す若手医師のみならず,骨接合を愛する一般整形外科医にとっても,整形外傷・骨折治療における戦略や創造力の重要性を思い起こさせられ,かつ即座に臨床にフィードバック可能なおすすめの良書と考える.
評者■ 岡山大学大学院運動器外傷学教授 野田 知之